一体誰がここまでの展開を予想できただろうか。絶対的優勝候補マテュー・ファンデルポール(オランダ)の予期せぬ失速と、完璧な強さを披露したワウト・ファンアールト(ベルギー)。オランダ人ファンは涙をこぼし、完全勝利を遂げたベルギーサポーターの大絶叫が会場を揺らした。



最前列に並んだワウト・ファンアールト(ベルギー)最前列に並んだワウト・ファンアールト(ベルギー) photo:So.Isobeコルヌ・ファンケッセルと何かを打ち合わせるマテュー・ファンデルポール(オランダ)コルヌ・ファンケッセルと何かを打ち合わせるマテュー・ファンデルポール(オランダ) photo:So.Isobe

マテュー・ファンデルポール(オランダ)をリードして2周目のキャンバー区間に入るワウト・ファンアールト(ベルギー)マテュー・ファンデルポール(オランダ)をリードして2周目のキャンバー区間に入るワウト・ファンアールト(ベルギー) photo:So.Isobe
シクロクロス世界選手権、最終種目の男子エリートを一目見ようと詰め掛けた観客数は、なんと25,736人。雪がちらつき、より泥の粘着度が増した超タフコンディションの中で繰り広げられたアルカンシェル争奪戦は、まさにスペクタクルなものになった。

スタートボックスの最前列を埋めたのは、ダッチオレンジとベルジャンブルーのナショナルジャージ。今シーズン影を潜めていたラース・ファンデルハール(オランダ)のスタートダッシュが決まり、続いてティム・メルリエ(ベルギー)が先頭を奪う。序盤から展開されるシクロクロス大国同士の一騎打ちに、熱狂の渦が先頭集団の動きと合わせて会場内を駆け巡る。

半周ほど先行したメルリエはコーナーを曲がりきれず失速し、代わってファンデルポールが前に出る。ここまでは今シーズン幾度となく繰り返されてきた展開同様だったが、「今日は絶対にマテューを離さないと決めていた。最初にして最大級に難しい課題だと覚悟していた」と言うファンアールトががっちりと食い付いた。

冴えない表情で遅れていくマテュー・ファンデルポール(オランダ)冴えない表情で遅れていくマテュー・ファンデルポール(オランダ) photo:So.Isobeマテュー・ファンデルポール(オランダ)を引き離すマイケル・ファントーレンハウト(ベルギー)マテュー・ファンデルポール(オランダ)を引き離すマイケル・ファントーレンハウト(ベルギー) photo:So.Isobephoto:So.Isobe

大声援を受けて担ぎ区間を進む,スティーヴ・シェネル(フランス)ら大声援を受けて担ぎ区間を進む,スティーヴ・シェネル(フランス)ら photo:So.Isobe
ディフェンディングチャンピオンの追走を確認したファンデルポールは一旦ペースを落とし、ファンアールトの様子を窺うことを選んだ。1周回完了時点のラップタイムは9分46秒。轍の処理が光るマイケル・ファントーレンハウト(ベルギー)が5秒差で続き、トーン・アールツ(ベルギー)やローレンス・スウィーク(ベルギー)が続いた4位グループは25秒以上後ろ。この時点で表彰台争いのメンバーが選び出された。

今季26勝という圧倒的勝利数を携えて臨んだファンデルポールだったが、長いダウンヒル区間ではフェンスに捕えられ、コーナーの立ち上がりでもバランスを崩すなど、ファンアールトの後ろで走りに陰りが見え始める。「マテューと一緒に走っていてチャンスを感じた」と言うファンアールトが攻撃に転じたのは2周目のことだった。

泥区間で加速したファンアールトは一気に20秒ほどの差を得て、優勝まで続く独走態勢に持ち込んだ。明らかに精神的に崩れたファンデルポールはファントーレンハウトの合流を許し、さらに水をあけられてしまう。エースの予期せぬ後退にオランダ人ファンも落胆を隠せなかった。

圧倒的な走りで後続との差を広げていくワウト・ファンアールト(ベルギー)圧倒的な走りで後続との差を広げていくワウト・ファンアールト(ベルギー) photo:So.Isobe
単独4位で走行したトーン・アールツ(ベルギー)単独4位で走行したトーン・アールツ(ベルギー) photo:So.Isobe転倒した選手を気遣いながら走るジェレミー・パワーズ(アメリカ)転倒した選手を気遣いながら走るジェレミー・パワーズ(アメリカ) photo:So.Isobe

最終周回に猛然とペースアップしたマテュー・ファンデルポール(オランダ)最終周回に猛然とペースアップしたマテュー・ファンデルポール(オランダ) photo:So.Isobe
またこの日、ローレンス・スウィーク(ベルギー)やマテューの兄、デーヴィッド(オランダ)らは普段の力を見せられなかった。木の根が露出したライン上でスウィークは5度のパンクに見舞われ、コルヌ・ファンケッセル(オランダ)もペースを上げられずに撃沈。一方ジョエーレ・ベルトリーニ(イタリア)とスティーヴ・シェネル(フランス)は10位以内を走行し、泥を得意とする37歳のフランシス・ムレー(フランス)も最終的に13位まで順位を上げる好調ぶりを披露する。

先頭をひた走るファンアールトが刻んだラップタイムはまさに圧倒的だった。パワフルかつ安定したペダリングで泥海を突き進み、誰よりも速いランニングを披露してリードを積み重ねていく。途中フェンスの足に捕まって前転を喫したものの、その時既に2位グループは遥か後方にあった。

「自分に勝負権が無いと分かってからは精神的にだいぶ苦しかった」と言うファンデルポールはファントーレンハウトから離れ、更にトーン・アールツ(ベルギー)の合流も許しベルギーの1-2-3体制が敷かれようとする。しかしオランダファンの後押しを受けてギアを入れ替え、最終周回にアールツを再び引き離すことに成功。2位へも追いつかんばかりの猛烈なプッシュだったが、追い上げを察知していたファントーレンハウトも全力で逃げ続けた。

独走でフィニッシュラインに飛び込んだワウト・ファンアールト(ベルギー)独走でフィニッシュラインに飛び込んだワウト・ファンアールト(ベルギー) photo:So.Isobe
最終的にファントーレンハウトに対して2分13秒、ファンデルポールに対して2分半もの大差をつけたファンアールトは、ゆっくりと最後のフライオーバーを駆け下り、3勝目を表現しながらフィニッシュラインへ。一昨年とも昨年とも違う、自信に満ち溢れた表情で3連覇を達成した。

ファンデルポールの追い上げを払い除けたファントーレンハウトが歓喜の2位を射止め、失意のファンデルポールは表彰台の一角を確保。アールツが4位、後続グループの戦いから抜け出したファンデルハールが5位となり、ベルトリーニが非オランダ・ベルギー勢最上位の6番手でフィニッシュした。

落胆の色を隠せないマテュー・ファンデルポール(オランダ)落胆の色を隠せないマテュー・ファンデルポール(オランダ) photo:So.Isobe2位を喜ぶマイケル・ファントーレンハウト(ベルギー)2位を喜ぶマイケル・ファントーレンハウト(ベルギー) photo:So.Isobe

満面の笑顔でベルギー国歌を聞くワウト・ファンアールト(ベルギー)満面の笑顔でベルギー国歌を聞くワウト・ファンアールト(ベルギー) photo:So.Isobe
シクロクロス世界選手権2018男子エリート表彰台シクロクロス世界選手権2018男子エリート表彰台
今季限りでシクロクロスへのフル参戦を止め、ロードレースへの本格転向を表明しているファンアールト。「二人のマッチアップになると予想していたけれど、まさかこんな展開になるとは思っていなかった。これまで僕を育ててくれたシクロクロスに対して最高の形でさよならが言える」と後に語っている。

またこの日、小坂光(宇都宮ブリッツェンシクロクロスチーム)と竹之内悠(東洋フレーム)は苦戦を強いられ、共に53位と54位で途中リタイアとなった。以下は小坂のコメント。

後方からレースを進める竹之内悠(東洋フレーム)と小坂光(宇都宮ブリッツェンシクロクロスチーム)後方からレースを進める竹之内悠(東洋フレーム)と小坂光(宇都宮ブリッツェンシクロクロスチーム) photo:So.Isobeスリッピーな下りをこなす小坂光(宇都宮ブリッツェンシクロクロスチーム)スリッピーな下りをこなす小坂光(宇都宮ブリッツェンシクロクロスチーム) photo:So.Isobe


「正直に言えば、ここまで差が付くとは思っていませんでした。これまで走った世界選手権の中で一番レベルが高かったし、コースの難易度も高かった。とにかく全てのフィジカルが高くないと跳ね除けられてしまうレースで、特に泥を踏み抜くパワーが足りていませんでした。当初の目標は完走、つまり30番手台で走ることでしたが、スタートでの遅れを取り戻せずに沈んだという展開です。普段のレースで一緒に走っている選手にも離されてしまったので、ドライコースでは見えづらい体力差が明確に現れたレースだったと思います。

全日本王者として臨んだレースでしたが、今は不甲斐なくて、悔しい気持ちでいっぱいです。でも、世界選手権に挑戦し始めた時から世界との差は感じているし、挑戦する意味を問う声ももちろんあるでしょうが、個人的に大好きなシクロクロス、そして世界一を決める大会へ挑む気持ちはこれからも変わりません。僕は平日は仕事をしながらのサラリーマンレーサーとして国内を盛り上げて、シクロクロス人口を増やして有望な選手が生まれる土壌作りをしたい。こっち(ヨーロッパ)には、(竹之内)悠が作ってきてくれた人の繋がりもあるし、道は拓けています。ヨーロッパを目指す若い選手たちには、積極的にこちらに出てきてもらえたら良いと思います」。

スタートに向かう小坂光(宇都宮ブリッツェンシクロクロスチーム)と竹之内悠(東洋フレーム)スタートに向かう小坂光(宇都宮ブリッツェンシクロクロスチーム)と竹之内悠(東洋フレーム) photo:So.Isobe
シクロクロス世界選手権2018男子エリート結果
1位ワウト・ファンアールト(ベルギー)1h09’00”
2位マイケル・ファントーレンハウト(ベルギー)+2’13”
3位マテュー・ファンデルポール(オランダ)+2’30”
4位トーン・アールツ(ベルギー)+3’16”
5位ラース・ファンデルハール(オランダ)+4’29”
6位ジョエーレ・ベルトリーニ(イタリア)+4’42”
7位ティム・メルリエ(ベルギー)+4’56”
8位ローレンス・スウィーク(ベルギー)+5’21”
9位ダーン・ソエテ(ベルギー)+5’30”
10位スティーヴ・シェネル(フランス)+5’51”
53位小坂光(宇都宮ブリッツェンシクロクロスチーム)
54位竹之内悠(東洋フレーム)
text&photo:So.Isobe in Valkenburg, Nederland
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