気温20度ほどの雨と風と山頂フィニッシュ。ミッチェルトン・スコット勢を封じ込めたカトリン・ガーフット(オーストラリア、UniSAオーストラリア)がサントス・ウィメンズツアー・ダウンアンダーの最難関ステージで首位に立った。


中原恭恵(マースランドスターインターナショナル)と與那嶺恵理(ウィグル・ハイファイブ)中原恭恵(マースランドスターインターナショナル)と與那嶺恵理(ウィグル・ハイファイブ) photo:Kei Tsuji / TDWsport
雨のため軒先を借りてローラー台でアップ雨のため軒先を借りてローラー台でアップ photo:Kei Tsuji / TDWsportオポッサムを抱く総合リーダーのアネット・エドモンソン(オーストラリア、ウィグル・ハイファイブ)オポッサムを抱く総合リーダーのアネット・エドモンソン(オーストラリア、ウィグル・ハイファイブ) photo:Kei Tsuji / TDWsport

アデレードにまとまった雨が降るのは2017年11月以来3カ月ぶり。気温は前日比15度ダウンの20度前後。乾いた大陸を濡らす雨の中、サントス・ウィメンズツアー・ダウンアンダー第2ステージはスタートが切られた。

KOMメングラーズヒル(全長2.7km/平均5.9%)にフィニッシュする今大会最難関ステージは、地元オーストラリアのミッチェルトン・スコット勢による攻撃により幕開ける。前半の登りから積極的にペースを上げて集団を分裂させ、集団が一つに戻っては横風吹く平坦路でペースアップ。

世界的なワインの産地として知られ、広大なワイン畑が広がるバロッサバレーを貫く直線路で集団はエシュロンを形成しながら分裂していく。ミッチェルトン・スコットによる断続的な攻撃によって、逃げという逃げが生まれないまま、先頭集団がおよそ30名に絞られた状態で最後のメングラーズヒルの登りが始まった。

ミッチェルトン・スコットのペースアップによって縮小したメイン集団ミッチェルトン・スコットのペースアップによって縮小したメイン集団 photo:Kei Tsuji / TDWsport
ペースアップに加わる世界TTチャンピオンのアネミエク・ファンフルーテン(オランダ、ミッチェルトン・スコット)ペースアップに加わる世界TTチャンピオンのアネミエク・ファンフルーテン(オランダ、ミッチェルトン・スコット) photo:Kei Tsuji / TDWsport登りを集団内でこなす與那嶺恵理(ウィグル・ハイファイブ)登りを集団内でこなす與那嶺恵理(ウィグル・ハイファイブ) photo:Kei Tsuji / TDWsport
エシュロンを形成して分裂する集団エシュロンを形成して分裂する集団 photo:Kei Tsuji / TDWsport

先手を打ったのは世界TTチャンピオンのアネミエク・ファンフルーテン(オランダ、ミッチェルトン・スコット)とオーストラリアチャンピオンのシャロン・マルシード(オーストラリア、ティブコSVB)で、ここにガーフットらが反応して先頭はすぐさま7名に。ミッチェルトン・スコットは攻撃の手を緩めず、続いてディフェンディングチャンピオンのアマンダ・スプラット(オーストラリア)とルーシー・ケネディ(オーストラリア)がアタックを連発する。しかしいずれのアタックもガーフットを引き離すには至らなかった。

最後はケネディとガーフットによるスプリント一騎打ちとなり、タイミング良く仕掛けた36歳ガーフットが勝利。ボーナスタイムも獲得したガーフットがオークル色(黄土色)のリーダージャージを手にした。

元陸上競技選手で、元高校教師という経歴を持つガーフット。自転車競技を始めたのは2011年(当時30歳)で、2013年にオセアニア選手権ロードで優勝するとその翌年にオリカAISでキャリアを本格的にスタートさせた。オーストラリア選手権女子エリートロードでは2016年と2017年に優勝。2017年ロード世界選手権女子エリートロードで2位、個人タイムトライアルで3位という成績を残している。

オーストラリアナンバーワンの選手と言えるガーフットだが、オーストラリアにいる家族と過ごす時間を優先するため、ヨーロッパでのレース活動に主眼を置くオリカ・スコットと契約を更新しなかった。2018年は無所属としてオーストラリア国内に限定してレース活動を行っている。

「昨年所属していたのでミッチェルトンの強さは分かっていた。だから登りの戦いに向けた準備はできていたけど少し怖さもあった。交互にアタックしたスプラッティ(スプラット)とルーシー(ケネディ)に自分のペースを保って対応。ペースが速かったので誰も飛び出せなかったし、気がつけば後ろに誰もいなかった」と、古巣のオーストラリアチームを封じ込めたガーフット。総合2位のケネディとの総合タイムは4秒だ。

登りフィニッシュを制したカトリン・ガーフット(オーストラリア、UniSAオーストラリア)登りフィニッシュを制したカトリン・ガーフット(オーストラリア、UniSAオーストラリア) photo:Kei Tsuji / TDWsport
登りフィニッシュを制したカトリン・ガーフット(オーストラリア、UniSAオーストラリア)登りフィニッシュを制したカトリン・ガーフット(オーストラリア、UniSAオーストラリア) photo:Kei Tsuji / TDWsportオーストラリアのオールスターチームであるUniSAオーストラリアオーストラリアのオールスターチームであるUniSAオーストラリア photo:Kei Tsuji / TDWsport

「オーストラリアで1カ月間乗り込み、トレーニングを詰め込んだ状態からリカバリーせずに大会が始まったので脚の状態は決して良くないんです。今はチームの仕事をして、しっかり乗り込む時期」と語っていた與那嶺恵理(ウィグル・ハイファイブ)は、この日ステージ12位に入ったエイミー・キュア(オーストラリア)をアシストし、最後の登りで遅れてステージ40位フィニッシュ。

「今日は総合リーダーのネッティ(エドモンソン)を守りながら、レース中に脚の状態を見て誰で勝負するかを決める作戦でした。前半の登りでペースが上がった時に私も先頭集団に残ったんですが、エイミー(キュア)のほうが登れていたので最後はエイミーで勝負することに。そこから私の役目はエイミーを最後の登りまでしっかり連れて行くこと。登りが始まる残り2kmまでチームメイトたちを引き連れて前に上がり、そこで私の仕事は終わりました」と、淡々と距離を乗り込みながらチームの仕事をこなしている。

後方で苦しい走りを強いられたのは中原恭恵(マースランドスターインターナショナル)。前半から遅れたチームメイト2名をアシストしたが、その後の横風ペースアップによって自身も集団から脱落してしまう。レースに残っているメンバーが減りつつあるチームの中で「『これ以上、明日のチーム戦力を削るわけにはいかない、完走がマストだ』と強く思った」という中原はチームメイトのセリーン・リー(シンガポール)と協力して最後尾で走行を続け、17分以上遅れてフィニッシュに辿り着いている。

初の海外UCIレースに挑戦中の中原は「どのくらいトップと差がついたのかもフィニッシュ時にはわからず、帰りの車の中で明日の出走が決まった時に『あぁ良かった』とやっと安堵しました。トップチームが展開するレベルでのステージレースの過酷さを痛感せざるを得ません。私自身もかなりハードな負荷がかかって足が悲鳴をあげているので、回復に努めて、また明日頑張ります!」とコメントしている。

雨と風の第2ステージを終えた與那嶺恵理(ウィグル・ハイファイブ)雨と風の第2ステージを終えた與那嶺恵理(ウィグル・ハイファイブ) photo:Kei Tsuji / TDWsport17分遅れでフィニッシュを目指す中原恭恵(マースランドスターインターナショナル)17分遅れでフィニッシュを目指す中原恭恵(マースランドスターインターナショナル) photo:Kei Tsuji / TDWsport
メングラーズヒルの絵を受け取ったカトリン・ガーフット(オーストラリア、UniSAオーストラリア)メングラーズヒルの絵を受け取ったカトリン・ガーフット(オーストラリア、UniSAオーストラリア) photo:Kei Tsuji / TDWsport
ステージ成績
1位 カトリン・ガーフット(オーストラリア、UniSAオーストラリア) 2:43:43
2位 ルーシー・ケネディ(オーストラリア、ミッチェルトン・スコット)
3位 アマンダ・スプラット(オーストラリア、ミッチェルトン・スコット) 0:00:08
4位 アネミエク・ファンフルーテン(オランダ、ミッチェルトン・スコット) 0:00:15
5位 ケイト・マキロイ(ニュージーランド、スペシャライズドウィメンズ) 0:00:16
6位 シャロン・マルシード(オーストラリア、ティブコSVB) 0:00:21
7位 ローレン・スティーブンス(アメリカ、サイレンスプロサイクリング)
8位 キャスリン・ハンメス(イギリス、ドロップス・トレック) 0:00:51
9位 タリン・ヒーザー(オーストラリア、スペシャライズドウィメンズ)
10位 グレース・ブラウン(オーストラリア、ホールデン・グスト)
40位 與那嶺恵理(ウィグル・ハイファイブ) 0:02:19
84位 中原恭恵(マースランドスターインターナショナル) 0:17:28
個人総合成績
1位 カトリン・ガーフット(オーストラリア、UniSAオーストラリア) 5:52:26
2位 ルーシー・ケネディ(オーストラリア、ミッチェルトン・スコット) 0:00:04
3位 アマンダ・スプラット(オーストラリア、ミッチェルトン・スコット) 0:00:14
4位 アネミエク・ファンフルーテン(オランダ、ミッチェルトン・スコット) 0:00:25
5位 ケイト・マキロイ(ニュージーランド、スペシャライズドウィメンズ) 0:00:26
6位 ローレン・スティーブンス(アメリカ、サイレンスプロサイクリング) 0:00:31
text&photo:Kei Tsuji