雨に濡れたツアー・オブ・ブリテン第6ステージは大集団によるスプリントに。下り基調の危険な最終コーナーを抜け、発射台を失いながらもロングスプリントに持ち込んだカレイブ・ユアン(オーストラリア、オリカ・スコット)が今大会3勝目を飾った。


バリー・セントエドマンズの街中を駆け抜けるバリー・セントエドマンズの街中を駆け抜ける
スペアバイクを積み込んだカチューシャ・アルペシンのチームカースペアバイクを積み込んだカチューシャ・アルペシンのチームカー スタート直前に雨が降り始めるスタート直前に雨が降り始める
一人だけピナレロF10XLIGHTに乗るミカル・クウィアトコウスキー(ポーランド、チームスカイ)一人だけピナレロF10XLIGHTに乗るミカル・クウィアトコウスキー(ポーランド、チームスカイ) スペシャルペイントが施されたマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、ディメンションデータ)のバイクスペシャルペイントが施されたマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、ディメンションデータ)のバイク

ツアー・オブ・ブリテン第6ステージのスタート地点はイギリス有数の競馬場があることで有名なニューマーケット。郊外に広大な競馬場や飼育場、厩舎、牧場が広がる「競走馬の聖地」にUCIワールドチームをはじめとする大型チームバスがやってきた。

フラットな186.9kmコースは再びスプリンター向き。スタート直前に降り始めた雨は本降りに変わり、途中、洗車機の中を走るような大雨が選手を襲う。雨降りに慣れている路面は比較的滑りにくいが、選手たちはずっと水に濡れた状態での走りを強いられた。

スタート直後に形成された7名の逃げグループのリードは、グリーンジャージを擁するロットNLユンボの集団コントロールによって2分30秒に押さえ込まれる。レース中盤からオリカ・スコットやディメンションデータ、チームスカイも集団コントロールに参加。3つあるスプリントポイントで激しく競り合いながら、先頭7名は集団とのタイム差とペースを調整しながら逃げ続けた。

中盤まで体力を温存し、終盤にかけて加速するペースメイクで粘った逃げグループだったが、残り13kmでタイム差は1分を切る。逃げグループからアタックしたジェームス・ショー(イギリス、ロット・ソウダル)の独走も長続きせず、ウェットな路面をハイスピードで突き進んだメイン集団は残り3kmで逃げをすべて飲み込んだ。

ニューマーケットのメイン通りがスタート地点ニューマーケットのメイン通りがスタート地点
逃げグループを形成するハリー・タンフィールド(イギリス、バイクチャンネル・キャニオン)ら逃げグループを形成するハリー・タンフィールド(イギリス、バイクチャンネル・キャニオン)ら
イギリス田舎町特有の茅葺民家を通過するイギリス田舎町特有の茅葺民家を通過する リーダーチームのロットNLユンボがメイン集団をコントロールするリーダーチームのロットNLユンボがメイン集団をコントロールする
ロットNLユンボとチームスカイを先頭に進むメイン集団ロットNLユンボとチームスカイを先頭に進むメイン集団
ロットNLユンボだけでなくオリカ・スコットやBMCレーシングも集団前方に位置ロットNLユンボだけでなくオリカ・スコットやBMCレーシングも集団前方に位置

クイックステップフロアーズが人数を揃え、フィリップ・ジルベール(ベルギー、クイックステップフロアーズ)を先頭に残り1kmアーチを通過。そのままマキシミリアーノ・リケーゼ(アルゼンチン、クイックステップフロアーズ)、ゼネク・スティバル(チェコ、クイックステップフロアーズ)、ルカ・メズゲッツ(スロベニア、オリカ・スコット)、カレイブ・ユアン(オーストラリア、オリカ・スコット)、フェルナンド・ガビリア(コロンビア、クイックステップフロアーズ)の並びで残り400mの最終コーナーに突入する。

しかしこの最終コーナーが下り&鋭角という曲者で、濡れた路面にハンドルを取られた2番手スティバルがバランスを崩してペダルを外す。こうしてクイックステップフロアーズとオリカ・スコットのトレインが同時に崩れてしまう。ガビリアを見失って先頭で彷徨うリケーゼの後ろから、フィニッシュラインまで300mを残してユアンがスプリントに入った。

後続の選手の頭が完全に見えるほど低いエアロポジションで突き進んだユアンが、後方から追い上げるガビリアやディラン・フルーネウェーヘン(オランダ、ロットNLユンボ)を振り切る。最終コーナーで後方に沈んだ選手にはなす術がなく、長時間先頭でもがき切ったユアンが先着した。

雨の中でも沿道からは声援が飛ぶ雨の中でも沿道からは声援が飛ぶ
レインジャケットを着て走るカレイブ・ユアン(オーストラリア、オリカ・スコット)レインジャケットを着て走るカレイブ・ユアン(オーストラリア、オリカ・スコット) ヨーロッパチャンピオンのアレクサンドル・クリストフ(ノルウェー、カチューシャ・アルペシン)ヨーロッパチャンピオンのアレクサンドル・クリストフ(ノルウェー、カチューシャ・アルペシン)
噛み合わないクイックステップフロアーズのトレインを利用して先頭に立つカレイブ・ユアン(オーストラリア、オリカ・スコット)噛み合わないクイックステップフロアーズのトレインを利用して先頭に立つカレイブ・ユアン(オーストラリア、オリカ・スコット)
極めて低いポジションでスプリントするカレイブ・ユアン(オーストラリア、オリカ・スコット)極めて低いポジションでスプリントするカレイブ・ユアン(オーストラリア、オリカ・スコット)
ステージ3勝目を飾ったカレイブ・ユアン(オーストラリア、オリカ・スコット)ステージ3勝目を飾ったカレイブ・ユアン(オーストラリア、オリカ・スコット)
安全に集団内でフィニッシュしたラルス・ボーム(オランダ、ロットNLユンボ)安全に集団内でフィニッシュしたラルス・ボーム(オランダ、ロットNLユンボ)

「レース中に、最終コーナーがタイトでオフキャンバーになっているという情報が無線を通して入ってきた。雨は上がっていたけど路面は濡れていたし、勝負に絡むためには必ず集団前方で最終コーナーを抜けないといけなかった。そして理想通りのポジションで最終コーナーに入ったんだ」。スプリント3勝目を飾ったユアンはテクニカルなコースレイアウトについて説明する。

「でもライン取りを間違えたクイックステップの選手(スティバル)がバランスを崩してしまい、そのおかげで最終発射台役のルカ(メズゲッツ)がフェンス際に追いやられてしまった。そこで発射台を失ってしまったので、早すぎると思ったけどスプリントを開始するしかなかった。(残り300mからの)長いスプリント。誰にも追い抜かれずに踏み切ることができてよかった」と、今シーズン10勝目を飾った23歳の弾丸スプリンター。

ユアンは第5ステージの個人タイムトライアルでタイムリミットである2分17秒遅れ(トップタイム19分03秒の12%)に届かなかった35名の中の一人。中盤のメカトラによってノーマルバイクで走ったことが原因だが、ユアンは15ポイントの減点を受けて救済されている。そのためステージ3勝を飾りながらポイント賞は4位。スプリントで4位、5位、3位、3位、4位という安定した成績を残すアレクサンドル・クリストフ(ノルウェー、カチューシャ・アルペシン)がポイント賞のトップに立っている。

翌日の第7ステージについてユアンは「(終盤に2級山岳が設定されているため)明日はピュアスプリンターには厳しすぎるかもしれない。展開によってはチャンスがあるけど、スプリンターを連れてきていないチームが攻撃を仕掛けるはず」と予想する。グリーンジャージはラルス・ボーム(オランダ、ロットNLユンボ)がキープ。総合タイム差30秒以内に11名がひしめく接戦のまま8日間のステージレースは終盤戦に入る。

ステージ3勝目を飾ったカレイブ・ユアン(オーストラリア、オリカ・スコット)ステージ3勝目を飾ったカレイブ・ユアン(オーストラリア、オリカ・スコット)
グリーンジャージを守ったラルス・ボーム(オランダ、ロットNLユンボ)グリーンジャージを守ったラルス・ボーム(オランダ、ロットNLユンボ) ポイント賞ジャージはアレクサンドル・クリストフ(ノルウェー、カチューシャ・アルペシン)の手にポイント賞ジャージはアレクサンドル・クリストフ(ノルウェー、カチューシャ・アルペシン)の手に

ステージ成績
1位 カレイブ・ユアン(オーストラリア、オリカ・スコット) 4:13:06
2位 フェルナンド・ガビリア(コロンビア、クイックステップフロアーズ)
3位 ディラン・フルーネウェーヘン(オランダ、ロットNLユンボ)
4位 アレクサンドル・クリストフ(ノルウェー、カチューシャ・アルペシン)
5位 アンドレア・パスクアロン(イタリア、ワンティ・グループゴベール)
6位 ブレントン・ジョーンズ(オーストラリア、JLTコンドル)
7位 エンゾ・ワウテルス(ベルギー、ロット・ソウダル)
8位 エドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、ディメンションデータ)
9位 パトリック・ベヴィン(ニュージーランド、キャノンデール・ドラパック)
10位 ミカル・クウィアトコウスキー(ポーランド、チームスカイ)
個人総合成績
ポイント賞
1位 アレクサンドル・クリストフ(ノルウェー、カチューシャ・アルペシン) 61pts
2位 フェルナンド・ガビリア(コロンビア、クイックステップフロアーズ) 53pts
3位 エリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、チームスカイ) 51pts
山岳賞
1位 ジェイコブ・スコット(イギリス、アンポスト・チェーンリアクション) 26pts
2位 グラハム・ブリッグス(イギリス、JLTコンドル) 25pts
3位  ルーカス・オウシアン(ポーランド、CCCスプランディ・ポルコウィチェ) 21pts
スプリント賞
1位 グラハム・ブリッグス(イギリス、JLTコンドル) 15pts
2位 マーク・マクナリー(イギリス、ワンティ・グループゴベール) 14pts
3位 ハリー・タンフィールド(イギリス、バイクチャンネル・キャニオン) 7pts
チーム総合成績
1位 ロットNLユンボ 66:31:56
2位 チームスカイ 0:24
3位 カチューシャ・アルペシン 1:27

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