アムステル・ゴールド・レースを彷彿とさせるアップダウンコースで16名の精鋭集団が形成。終盤に独走に持ち込んだラルス・ボーム(オランダ、ロットNLユンボ)が勝利し、総合首位に浮上した。


チームスカイやBMCレーシングを先頭に高速で進むメイン集団チームスカイやBMCレーシングを先頭に高速で進むメイン集団 photo:MVH / TDWsport
集団内で走る新城幸也(バーレーン・メリダ)集団内で走る新城幸也(バーレーン・メリダ) photo:Miwa Iijima
ビンクバンク・ツアー第5ステージのスタートとフィニッシュ地点は、オランダ南部リンブルフ州シッタート・ヘレーンにある「トム・デュムラン・バイクパーク」。その名の通りトム・デュムラン(オランダ、サンウェブ)の功績をたたえて造られた自転車用施設で、6月にはハンマーシリーズの舞台にもなった場所だ。

全長167.3kmコースは18カ所の登りを含むもので、アムステル・ゴールド・レースでお馴染みのカウベルグを含む大周回(89.7km)を完了後、小刻みなアップダウンを含む小周回(38.8km)を2周する。獲得標高差は1,400mほどだが、総合争いが本格化する大会最初の重要なステージとして注目を集めた。

朝まで降り続いた雨によってウェットな路面状況の中スタートしたレースは、ヨス・ファンエムデン(オランダ、ロットNLユンボ)やマティアス・ブランドル(オーストリア、トレック・セガフレード)といったTTスペシャリストを含む7名が逃げを形成し、約4分のリードを得てカウベルグを越えていく。前半の大周回で動きは生まれず、一旦「トム・デュムラン・バイクパーク」のフィニッシュラインを越えて小周回に入った。

狭い農道やテクニカルコーナーが組み合わされた小周回のウェグ・ラングス・スタンメン(全長350m/平均8%)の登りで集団が2つに割れる。パンクしたリーダージャージのシュテファン・キュング(スイス、BMCレーシング)が後方に取り残されるシーンも見られたが、長い追走の末に集団復帰を果たす。最終周回の中盤に集団は1つに戻った。

フィニッシュまで20kmを残して先頭ではマイケル・ヘップバーン(オーストラリア、オリカ・スコット)とペトル・ヴァコッチ(チェコ、クイックステップフロアーズ)が20秒リードで逃げ続け、ここにメイン集団から抜け出したアレクシ・グジャール(フランス、アージェードゥーゼール)、ティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・ソウダル)、ミカエル・ヴァルグレン(デンマーク、アスタナ)の3名が追いついた。

ジェットコースターのような小刻みなアップダウンとワインディングをこなし、ウェグ・ラングス・スタンメンの登りに突入した先頭5名と、10秒遅れのメイン集団。フィニッシュまでおよそ12kmを残したこの登りで逃げグループが吸収されるとともに集団は2つに割れ、ペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)やトム・デュムラン(オランダ、サンウェブ)、ラルス・ボーム(オランダ、ロットNLユンボ)、オリバー・ナーセン(ベルギー、アージェードゥーゼール)といった強豪ぞろいの13名が先行を開始した。

逃げるマイケル・ヘップバーン(オーストラリア、オリカ・スコット)やペトル・ヴァコッチ(チェコ、クイックステップフロアーズ)逃げるマイケル・ヘップバーン(オーストラリア、オリカ・スコット)やペトル・ヴァコッチ(チェコ、クイックステップフロアーズ) photo:MVH / TDWsport
ボーラ・ハンスグローエがメイン集団を牽引ボーラ・ハンスグローエがメイン集団を牽引 photo:MVH / TDWsport
協調体制を築けない先頭グループからサガンやデュムランが数度の加速を試みたが決まらない。アタックと牽制が繰り返された精鋭グループには後方からフィリップ・ジルベール(ベルギー、クイックステップフロアーズ)、アンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ソウダル)、イェンス・クークレール(ベルギー、オリカ・スコット)が追いついて先頭は16名に。

残り5kmを切ってからのジャスパー・ストゥイヴェン(ベルギー、トレック・セガフレード)とヤン・バークランツ(ベルギー、アージェードゥーゼール)のアタックも、残り2kmからのセップ・ヴァンマルク(ベルギー、キャノンデール・ドラパック)のアタックも決まらない。すると、ヴァンマルクの吸収と同時にボームが加速した。

追いすがるサガンを振り切って独走に持ち込んだボーム。2008年のシクロクロス世界チャンピオンで、ツール・ド・フランスとブエルタ・ア・エスパーニャでステージ優勝を飾っている31歳のTTスペシャリストが独走を続け、スプリントで追い込むサガンらを3秒差で振り切った。

独走でフィニッシュするラルス・ボーム(オランダ、ロットNLユンボ)独走でフィニッシュするラルス・ボーム(オランダ、ロットNLユンボ) photo:MVH / TDWsport
後続スプリントでグレッグ・ヴァンアーヴェルマート(ベルギー、BMCレーシング)と下したペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)後続スプリントでグレッグ・ヴァンアーヴェルマート(ベルギー、BMCレーシング)と下したペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ) photo:MVH / TDWsport
「今年は思うようなクラシックシーズンを過ごせなかったので、独走でフィニッシュするときは怒りと喜びが混じり合う特別な気持ちに包まれた。ここまでコンディションを戻すために数ヶ月にわたって打ち込んできたトレーニングの成果が出たよ」と、2年ぶりの勝利を飾ったボームは語る。ライバルたちにつけた3秒差とボーナスタイム10秒によって、スタートの時点で総合6位につけていたボームが総合首位に躍り出た。2ステージを残して総合2位サガンと2秒差、総合3位デュムランと8秒差という僅差の展開に。

2014年にアムステル・ゴールド・レースで10位の成績を残している新城幸也(バーレーン・メリダ)は精鋭グループから46秒遅れの集団内でフィニッシュ(29位)。「今日はミニ・アムステルゴールドレースと言われていたが、走った感じでは、不思議とそのようには感じなかった。小周回に入って肝心な所で、落車の影響で集団の後ろまでポジションを下げてしまい、ポジションの悪いまま道の狭い区間で更にアタックかかって、と流れが悪かった。一度、前に追い付いたけど、集団の前までポジションを上げる時間は無く、逃げ切った集団が行ってしまい、第2集団でのゴールとなった」とタフレースを振り返る。「調子は悪くないのに…。逃げにも乗れず、先頭グループにも入れずの悪い流れを後2日でどうにか変えたい(チームユキヤ通信)」と気を引き締めている。

リーダージャージに袖を通すラルス・ボーム(オランダ、ロットNLユンボ)リーダージャージに袖を通すラルス・ボーム(オランダ、ロットNLユンボ) photo:MVH / TDWsport
ステージ成績
1位 ラルス・ボーム(オランダ、ロットNLユンボ) 3:43:46
2位 ペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ) 0:00:03
3位 グレッグ・ヴァンアーヴェルマート(ベルギー、BMCレーシング)
4位 オリバー・ナーセン(ベルギー、アージェードゥーゼール)
5位 ジャスパー・ストゥイヴェン(ベルギー、トレック・セガフレード)
6位 フィリップ・ジルベール(ベルギー、クイックステップフロアーズ)
7位 セップ・ヴァンマルク(ベルギー、キャノンデール・ドラパック)
8位 ティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・ソウダル)
9位 ダニー・ファンポッペル(オランダ、チームスカイ)
10位 ヤシャ・ズッタリン(ドイツ、モビスター)
29位 新城幸也(日本、バーレーン・メリダ) 0:00:46
個人総合成績
1位 ラルス・ボーム(オランダ、ロットNLユンボ) 15:23:17
2位 ペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ) 0:00:02
3位 トム・デュムラン(オランダ、サンウェブ) 0:00:08
4位 ティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・ソウダル) 0:00:19
5位 ヤシャ・ズッタリン(ドイツ、モビスター) 0:00:27
6位 グレッグ・ヴァンアーヴェルマート(ベルギー、BMCレーシング)
7位 フィリップ・ジルベール(ベルギー、クイックステップフロアーズ) 0:00:29
8位 ペトル・ヴァコッチ(チェコ、クイックステップフロアーズ) 0:00:32
9位 イェンス・クークレール(ベルギー、オリカ・スコット) 0:00:35
10位 ジャスパー・ストゥイヴェン(ベルギー、トレック・セガフレード) 0:00:36
ポイント賞
1位 ペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ) 104pts
2位 エドワード・トゥーンス(ベルギー、トレック・セガフレード) 55pts
3位 ディラン・フルーネウェーヘン(オランダ、ロットNLユンボ) 55pts
チーム総合成績
1位 クイックステップフロアーズ 46:11:46
2位 BMCレーシング 0:00:23
3位 ロットNLユンボ

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