総合優勝候補を含む17人が逃げ切ったツール・ド・熊野第1ステージ。入部正太朗(シマノレーシング)がスプリントを制し、自身UCIレース初優勝を飾った。メイン集団に1分22秒差をつけた総合狙いの選手たちはオスカル・プジョル(チーム右京)ら早くも数人に絞られた。



熊野川温泉さつき前からスタート熊野川温泉さつき前からスタート photo:Hideaki TAKAGI
大前翔(東京ヴェントス)は新人賞リーダージャージで出走大前翔(東京ヴェントス)は新人賞リーダージャージで出走 photo:Hideaki TAKAGI新宮市内をパレード新宮市内をパレード photo:Hideaki TAKAGI

ツール・ド・熊野2日目の第1ステージ赤木川清流コースが6月2日(金)、和歌山県新宮市熊野川町で行なわれた。JR新宮駅前から新宮市内をパレード走行のあと、国道168号で熊野川沿いを熊野川町方面へ。スタート地点は熊野川温泉さつき前。

ツール・ド・熊野で最も難しいのはこの第1ステージだ。コースや距離は例年通りで1周16.3kmを7周する114.1km。コントロールライン手前に狭い急坂のKOMを、そしてコントロールラインより後方には狭く曲がりくねった道を入れている。この2箇所で伸びた集団は、ペースが上がると分断されて復帰不可能になる。上位陣でもタイム差はつくし完走できない選手もまた多い。

2周目にできた11人の逃げ。ブリヂストンアンカー勢がリードする2周目にできた11人の逃げ。ブリヂストンアンカー勢がリードする photo:Hideaki TAKAGI小口集落を抜けるリーダージャージ小口集落を抜けるリーダージャージ photo:Hideaki TAKAGI
6月からアユ漁が解禁になった清流が選手を見送る6月からアユ漁が解禁になった清流が選手を見送る photo:Hideaki TAKAGI
1周目終盤のKOMで細長く伸びた集団は分裂し、2周目に入り11人が先行する。ブリヂストンアンカー勢が4人を送り込んで主導権を握り、ハイペースで逃げ続ける。メンバーはアンカーが西薗良太、大久保陣、鈴木龍、石橋学。さらに阿部嵩之(宇都宮ブリッツェン)、ホセ・ビセンテ・トリビオ(マトリックスパワータグ)、オスカル・プジョル(チーム右京)、ミルサマ・ポルセイェディゴラコール(タブリーズ・シャハルダリ)、キナンサイクリングチームのマルコス・ガルシアと山本元喜、マリオ・フォクト(アタッキ・チーム・グスト)だ。

さらにここへブリッジしたのは佐野淳哉(マトリックスパワータグ)、ブロディ・タブロット(セントジョージコンチネンタル)、マルセロ・フェリペ(セブンイレブンロードバイクフィリピンズ)の3人。3周目に入り入部正太朗(シマノレーシング)、パク・サンホン(LXサイクリングチーム)、チャ・ドンヒョン(LXサイクリングチーム)、イリヤ・ダビデノク(タブリーズ・シャハルダリ)、ペーラポル・チャウチャンクワン(タイコンチネンタルサイクリングチーム)の5人が最終便でブリッジ。石橋とのちにフォクトが下がり17人の逃げが完成する。

5周目、2分差のメイン集団はアタッキチームグストが引く5周目、2分差のメイン集団はアタッキチームグストが引く photo:Hideaki TAKAGI6周目、逃げ集団をアジアチャンピオンのパク・サンホン(LXサイクリングチーム)が引く6周目、逃げ集団をアジアチャンピオンのパク・サンホン(LXサイクリングチーム)が引く photo:Hideaki TAKAGI
KOMへの狭い急な上り。集団が伸び縮みして完走が一番難しいステージだKOMへの狭い急な上り。集団が伸び縮みして完走が一番難しいステージだ photo:Hideaki TAKAGI
メイン集団はリーダーチームのアタッキ・チームグスト、そしてのちにセントジョージコンチネンタルが引く。逃げ集団は2分の差をつけ、ここにステージ狙いで大久保と鈴木龍、パクが、翌日以降の総合狙いでタイム差をつけたいのはプジョル、ホセ・ビセンテ、西薗、ガルシア、ポルセイェディゴラコールらがいる。それぞれの思惑は一致し逃げ続ける。

終盤に入りメイン集団はグスト、セントジョージに加えて那須ブラーゼン、愛三工業レーシングチームも集団を牽引する。いっぽうの逃げ集団は牽制も入るがタイム差は縮まっても1分30秒までで逃げ切りの可能性が高くなる。

6周目、メイン集団を愛三工業レーシングチームが引く6周目、メイン集団を愛三工業レーシングチームが引く photo:Hideaki TAKAGI7周目、逃げ集団には総合狙いのオスカル・プジョル(チーム右京)らが順当に入る7周目、逃げ集団には総合狙いのオスカル・プジョル(チーム右京)らが順当に入る photo:Hideaki TAKAGI
ラスト4km、逃げ集団から抜け出したメンバーからさらにホセ・ビセンテ・トリビオ(マトリックスパワータグ)がアタックラスト4km、逃げ集団から抜け出したメンバーからさらにホセ・ビセンテ・トリビオ(マトリックスパワータグ)がアタック photo:Hideaki TAKAGIフィニッシュへは阿部嵩之(宇都宮ブリッツェン)が先頭で現れるフィニッシュへは阿部嵩之(宇都宮ブリッツェン)が先頭で現れる photo:Hideaki TAKAGI

最終周回の復路、逃げ切り確実となりここからホセ・ビセンテがアタック。これに山本、ダビデノク、入部が合流するがふたたびホセ・ビセンテがアタック。後方は西薗や阿部らが追走する。結局ラスト1kmには4人の逃げは吸収されて17人でのスプリント勝負へ。最終コーナーを阿部、入部の順にクリアし阿部がスプリントするがこれを入部がかわして優勝した。

優勝した入部正太朗(シマノレーシング)のコメント
「UCIレースで一桁順位は多いのですが優勝は初めてで嬉しいです。先頭でコーナーをクリアしようとしたらインから阿部選手が抜いたので2番手についてあとはスプリントしました。2番手はたまたまです。かなり疲れていたのですが、風もありみんな脚を使っていた状態でのスプリントだったから勝てたと思います。逃げてそこからのスプリントという自分のスタイルだったので嬉しいですね。」

入部正太朗(シマノレーシング)が第1ステージを制する入部正太朗(シマノレーシング)が第1ステージを制する photo:Hideaki TAKAGI
UCIレース初優勝の入部正太朗(シマノレーシング)UCIレース初優勝の入部正太朗(シマノレーシング) photo:Hideaki TAKAGI第1ステージ表彰第1ステージ表彰 photo:Hideaki TAKAGI

翌第2ステージは熊野山岳コース。丸山千枚田など風光明媚な場所を走るが、厳しい上りと、日本一と言ってよい下りの厳しさが特徴のコース。特に札立峠の下り区間は、上りの2分差なら挽回できるほどのテクニカルコース。登坂力に加え自転車のコントロール能力も必要なタフなもの。

第1ステージ早くもプジョル、ガルシア、ホセ・ビセンテ、西薗、ポルセイェディゴラコールら総合系の選手が1分22秒差の17人の中に入った。ここから個人総合優勝の候補が出るのは間違いないだろう。

新人賞リーダーはチャ・ドンヒョン(LXサイクリングチーム)新人賞リーダーはチャ・ドンヒョン(LXサイクリングチーム) photo:Hideaki TAKAGI個人総合山岳リーダーは鈴木龍(ブリヂストンアンカー)個人総合山岳リーダーは鈴木龍(ブリヂストンアンカー) photo:Hideaki TAKAGI
個人総合ポイントリーダーは阿部嵩之(宇都宮ブリッツェン)個人総合ポイントリーダーは阿部嵩之(宇都宮ブリッツェン) photo:Hideaki TAKAGI個人総合リーダーの入部正太朗(シマノレーシング)個人総合リーダーの入部正太朗(シマノレーシング) photo:Hideaki TAKAGI



ツール・ド・熊野2017 第1ステージ結果

第1ステージ赤木川清流 114.1km
1位 入部正太朗(シマノレーシング)           2時間33分30秒
2位 阿部嵩之(宇都宮ブリッツェン)
3位 ホセ・ビセンテ・トリビオ(マトリックスパワータグ)
4位 大久保陣(ブリヂストンアンカー)
5位 オスカル・プジョル(チーム右京)
6位 パク・サンホン(LXサイクリングチーム)
7位 鈴木龍(ブリヂストンアンカー)
8位 チャ・ドンヒョン(LXサイクリングチーム)
9位 ミルサマ・ポルセイェディゴラコール(タブリーズ・シャハルダリ)
10位 マルコス・ガルシア(キナンサイクリングチーム)

個人総合時間賞 第1ステージ終了時点
1位 入部正太朗(シマノレーシング)           2時間34分12秒
2位 阿部嵩之(宇都宮ブリッツェン)               +03秒
3位 オスカル・プジョル(チーム右京)              +07秒
4位 鈴木龍(ブリヂストンアンカー)
5位 ホセ・ビセンテ・トリビオ(マトリックスパワータグ)     +08秒
6位 大久保陣(ブリヂストンアンカー)              +09秒
7位 パク・サンホン(LXサイクリングチーム)           +10秒
8位 チャ・ドンヒョン(LXサイクリングチーム)          +11秒
9位 西薗良太(ブリヂストンアンカー)              +12秒
10位 ペーラポル・チャウチャンクワン(タイコンチネンタルサイクリングチーム)

個人総合ポイント賞 第1ステージ終了時点
1位 阿部嵩之(宇都宮ブリッツェン)  26点
2位 入部正太朗(シマノレーシング)  25点
3位 大久保陣(ブリヂストンアンカー) 19点

個人総合山岳賞 第1ステージ終了時点
1位 鈴木龍(ブリヂストンアンカー)           4点
2位 ホセ・ビセンテ・トリビオ(マトリックスパワータグ) 1点
3位 チャ・ドンヒョン(LXサイクリングチーム)      1点

個人総合U23賞 第1ステージ終了時点
1位 チャ・ドンヒョン(LXサイクリングチーム)  2時間34分23秒

チーム総合 第1ステージ終了時点
1位 ブリヂストンアンカー   7時間43分05秒
2位 LXサイクリングチーム     +1分24秒
3位 タブリーズ・シャハルダリ   +1分33秒

photo&text:Hideaki TAKAGI