2017/05/24(水) - 11:58
5月20日(土)と21日(日)の2日間に渡り、長野県の木島平村で「2Days race in木島平2017」が行われた。2日間のステージレースの一部始終と、このレースが目指すものをレポートする。
5月21日、日本最大のステージレースであるツアー・オブ・ジャパンがスタートした一方で、日本最小規模のステージレースが開催された。会場は長野県北部、長野市から車で1時間ほどの場所に位置する木島平村のローラースキー場だ。
この大会は、昨年まで同じ長野県の木祖村で開催されていた「2Days木祖村」を継承するもの。コースとして使用していた木祖村の味噌川ダム周辺道路が、がけ崩れにより使用できる見込みが立たなくなってしまったため、木祖村で開催される前の2002年まで会場として使用していた木島平のローラースキー場に場所を戻し再スタートする事になった。
レースの形式は昨年までと同様で、初日はステージ1aの個人タイムトライアルとステージ1bのロードレース、2日目はステージ2のロードレースを行う2日間3ステージ。初日のステージ1bで足切りされてしまっても、2日目の午前中にコンソレーションレース、通称「残念レース」を走る事が出来るのもこの大会の伝統だ。
冒頭にも書いた通り、コースはローラースキーに使用する1周3.4kmのクローズドコース。冬はクロスカントリースキーのコースとしても使用する場所なので、適度なアップダウンはあるものの斜度のきつい坂はない。それでも、1周の距離が短い分周回数が増えるので、じわじわと足にくるコースだ。
出場できるのは、クラブチームや同時期の国際レースに出場していないUCI登録チームの選手、および学連登録の大学生。レベルとしては、JBCFのE2以上を想定している。1チーム5人でのエントリーとなるが、同一チームで人数が足りない場合はジャージを揃えれば混成チームでも出場可能。また、ジャージを変えれば同一チームから2チーム出場する事も可能となる。今年は14チーム67人がスタートした。
下島将輝から新城銀二へリーダージャージのバトンタッチ
個人タイムトライアルはコースを2周する6.8km。山藤祐輔(Honda栃木レッド)、近藤正紀(なるしまフレンドレーシングチーム)らが9分36秒台を出すものの、最後にスタートした昨年総合3位の下島将輝(那須ブラーゼン)が、9分34秒のトップタイムを出してステージ1aを勝ち取った。
続くステージ1bは、24周81.6kmのロードレース。1周のローリングの後リアルスタートが切られると、リーダージャージの下島と、チームメイトの新城銀二(那須ブラーゼン)を含む5人が抜け出す。メイン集団は那須ブラーゼンがコントロールを始める中、1人2人とブリッジをかけて逃げ集団に合流していく。最終的に逃げ集団は10人となり、後続に2分以上の差をつける。
終盤には8人になった逃げ集団だが、後続との差は縮まる気配がないままゴール勝負へ。最後は下島のリードアウトを受けた新城が、小川恵佑(なるしまフレンドレーシングチーム)との僅差のスプリントを制して優勝。下島からリーダージャージを引き継ぐ形で総合首位に立った。
ステージ2 那須ブラーゼンのコントロールの間隙をついて山口雄大がステージ優勝
2日目のステージ2は38周129.2km。ここに残ったのは39人で、半数近くが前日のステージ1bで足切りとなった。
スタート直後からリーダーチームの那須ブラーゼンがレースコントロールを行い、8人の逃げを容認して、メイン集団との差を30秒から40秒に維持する。逃げる8人の中には、27秒差で個人総合6位の大東泰弘(イナーメ)が含まれており、バーチャルリーダーは一時大東に。しかし那須ブラーゼンはその事は織り込み済みとばかりに逃げ集団とのタイム差をコントロール。レース中盤に差が30秒以下になると次の周には40秒まで開かせる。
残り10周をきると、那須ブラーゼンが集団をペースアップ。人数が減り始めた逃げ集団との差を詰め始め、残り5周をきるとタイム差は20秒以下にまで縮める。大東と石井祥平(Honda栃木レッド)の2人になった逃げ集団は、後方にメイン集団の姿が見えるようになり、大東が踏むのをやめる。石井が最後まで抵抗するも吸収され、残り4周でレースは振り出しに戻った。
逃げを吸収したメイン集団ではアタック合戦が始まるが、決定打となる動きは生まれず。残り2周に入ると牽制から集団はペースダウン。20人ほどがまとまったまま最終周回に入り、最後のスプリント勝負へ。残り200mあたりから集団の前に出たのは山口雄大(Pinazou Test Team)。新城がそれに続くが、ホームストレートでスピードにのった山口を捉えきれず。山口がステージ2を制した。
2日間を終え、個人総合優勝とU23賞を新城が獲得。ステージ2で、逃げ集団でポイントを稼いだ大東がスプリント賞を獲得した。また、40歳以上を対象とするO-40賞は、個人総合4位に入った高橋伸成(FITS GRODEN日本ロボティクス)が獲得した。
総合優勝した新城は、「2日間天気にも恵まれていい大会でした。今日はチームとしては徹底的にコントロールしようという作戦で臨みました。本当はステージ優勝を取りたかったのですが隙をつかれてしまい、メンバーに申し訳ないです」と語った。
2Days race in 木島平村2017個人総合結果
1位 新城銀二(那須ブラーゼン) 5時間32分17秒
2位 小川恵佑(なるしまフレンドレーシングチーム) +11秒
3位 大東泰弘(イナーメ) +30秒
4位 高橋伸成(FITS GRODEN日本ロボティクス) +32秒
5位 岸 崇仁(那須ブラーゼン)
6位 阿部航大(Honda栃木レッド) +46秒
※チーム名はこの大会のための登録名
選手もスタッフもステージレースを経験できる場として
この大会の仕掛け人である藤森信行さんに、今大会の総括と、この大会が目指すものについてお話を伺った。藤森さんは「シクロクロスミーティング(現在の信州クロス)」と銘打ったシクロクロスのシリーズ戦を日本で初めて開催した事でも知られる。
「今回はチームへの告知も不十分で、色々と不足した中での開催となってしまいました。本当なら賞金も出したかったのですが、その代わりに賞金相当額の毛皮を出しました。今年は14チームにとどまりましたが、来年は出来れば28チームまで増やしたいですね。
2日間開催は開催地にメリットを出すためです。選手の宿泊や、買い出し、表彰式に名前を出すようにするとか、そういう事で地元への理解も深められる。今回は初の試みとして、ステージレースとは別に「地元の部」をつくり、小中学生や地元の方々に走ってもらいました。その中から自転車競技に興味を持ってもらい、地元が応援してくれるような選手が出てくるきっかけになればと思っています」。
「ステージレースの2日目がどれだけ辛いのかは、経験しないとわからないと思うんです。現状では、ステージレースを経験した事がないままエリートになって、いきなりUCIのステージレースを走る事になってしまう。それは泳いだ事がない人に競泳をさせているようなものだと思うんです。だから、UCIレースの下のクラスくらいのレベルで、ステージレースを経験できる場としてこのレースがあります。
審判も同じで、この大会で審判執務を経験した人で、国際審判や国内審判の上級資格に合格している方がいます。違反行為を取り締まるのではなく、違反させないようにするのが審判の役目だと思うし、選手も怒られながらレースするよりも楽しくレースした方が良いでしょう?だから、そう出来る審判がこの大会を通じて増えてくれると良いなと思ってます。」
レースがゴールして10分もすれば表彰式が始まり、リザルトもすぐに出る。2日間の表彰式で開けるシャンパンの数は12本と「小さな大会だけれど日本一」と、藤森さんは自負する。国内では数少ないステージレースを経験できる場としての「2Days木島平」。興味があれば来年の出場を是非検討していただきたい大会だ。
text&photo:Satoru.Kato
5月21日、日本最大のステージレースであるツアー・オブ・ジャパンがスタートした一方で、日本最小規模のステージレースが開催された。会場は長野県北部、長野市から車で1時間ほどの場所に位置する木島平村のローラースキー場だ。
この大会は、昨年まで同じ長野県の木祖村で開催されていた「2Days木祖村」を継承するもの。コースとして使用していた木祖村の味噌川ダム周辺道路が、がけ崩れにより使用できる見込みが立たなくなってしまったため、木祖村で開催される前の2002年まで会場として使用していた木島平のローラースキー場に場所を戻し再スタートする事になった。
レースの形式は昨年までと同様で、初日はステージ1aの個人タイムトライアルとステージ1bのロードレース、2日目はステージ2のロードレースを行う2日間3ステージ。初日のステージ1bで足切りされてしまっても、2日目の午前中にコンソレーションレース、通称「残念レース」を走る事が出来るのもこの大会の伝統だ。
冒頭にも書いた通り、コースはローラースキーに使用する1周3.4kmのクローズドコース。冬はクロスカントリースキーのコースとしても使用する場所なので、適度なアップダウンはあるものの斜度のきつい坂はない。それでも、1周の距離が短い分周回数が増えるので、じわじわと足にくるコースだ。
出場できるのは、クラブチームや同時期の国際レースに出場していないUCI登録チームの選手、および学連登録の大学生。レベルとしては、JBCFのE2以上を想定している。1チーム5人でのエントリーとなるが、同一チームで人数が足りない場合はジャージを揃えれば混成チームでも出場可能。また、ジャージを変えれば同一チームから2チーム出場する事も可能となる。今年は14チーム67人がスタートした。
下島将輝から新城銀二へリーダージャージのバトンタッチ
個人タイムトライアルはコースを2周する6.8km。山藤祐輔(Honda栃木レッド)、近藤正紀(なるしまフレンドレーシングチーム)らが9分36秒台を出すものの、最後にスタートした昨年総合3位の下島将輝(那須ブラーゼン)が、9分34秒のトップタイムを出してステージ1aを勝ち取った。
続くステージ1bは、24周81.6kmのロードレース。1周のローリングの後リアルスタートが切られると、リーダージャージの下島と、チームメイトの新城銀二(那須ブラーゼン)を含む5人が抜け出す。メイン集団は那須ブラーゼンがコントロールを始める中、1人2人とブリッジをかけて逃げ集団に合流していく。最終的に逃げ集団は10人となり、後続に2分以上の差をつける。
終盤には8人になった逃げ集団だが、後続との差は縮まる気配がないままゴール勝負へ。最後は下島のリードアウトを受けた新城が、小川恵佑(なるしまフレンドレーシングチーム)との僅差のスプリントを制して優勝。下島からリーダージャージを引き継ぐ形で総合首位に立った。
ステージ2 那須ブラーゼンのコントロールの間隙をついて山口雄大がステージ優勝
2日目のステージ2は38周129.2km。ここに残ったのは39人で、半数近くが前日のステージ1bで足切りとなった。
スタート直後からリーダーチームの那須ブラーゼンがレースコントロールを行い、8人の逃げを容認して、メイン集団との差を30秒から40秒に維持する。逃げる8人の中には、27秒差で個人総合6位の大東泰弘(イナーメ)が含まれており、バーチャルリーダーは一時大東に。しかし那須ブラーゼンはその事は織り込み済みとばかりに逃げ集団とのタイム差をコントロール。レース中盤に差が30秒以下になると次の周には40秒まで開かせる。
残り10周をきると、那須ブラーゼンが集団をペースアップ。人数が減り始めた逃げ集団との差を詰め始め、残り5周をきるとタイム差は20秒以下にまで縮める。大東と石井祥平(Honda栃木レッド)の2人になった逃げ集団は、後方にメイン集団の姿が見えるようになり、大東が踏むのをやめる。石井が最後まで抵抗するも吸収され、残り4周でレースは振り出しに戻った。
逃げを吸収したメイン集団ではアタック合戦が始まるが、決定打となる動きは生まれず。残り2周に入ると牽制から集団はペースダウン。20人ほどがまとまったまま最終周回に入り、最後のスプリント勝負へ。残り200mあたりから集団の前に出たのは山口雄大(Pinazou Test Team)。新城がそれに続くが、ホームストレートでスピードにのった山口を捉えきれず。山口がステージ2を制した。
2日間を終え、個人総合優勝とU23賞を新城が獲得。ステージ2で、逃げ集団でポイントを稼いだ大東がスプリント賞を獲得した。また、40歳以上を対象とするO-40賞は、個人総合4位に入った高橋伸成(FITS GRODEN日本ロボティクス)が獲得した。
総合優勝した新城は、「2日間天気にも恵まれていい大会でした。今日はチームとしては徹底的にコントロールしようという作戦で臨みました。本当はステージ優勝を取りたかったのですが隙をつかれてしまい、メンバーに申し訳ないです」と語った。
2Days race in 木島平村2017個人総合結果
1位 新城銀二(那須ブラーゼン) 5時間32分17秒
2位 小川恵佑(なるしまフレンドレーシングチーム) +11秒
3位 大東泰弘(イナーメ) +30秒
4位 高橋伸成(FITS GRODEN日本ロボティクス) +32秒
5位 岸 崇仁(那須ブラーゼン)
6位 阿部航大(Honda栃木レッド) +46秒
※チーム名はこの大会のための登録名
選手もスタッフもステージレースを経験できる場として
この大会の仕掛け人である藤森信行さんに、今大会の総括と、この大会が目指すものについてお話を伺った。藤森さんは「シクロクロスミーティング(現在の信州クロス)」と銘打ったシクロクロスのシリーズ戦を日本で初めて開催した事でも知られる。
「今回はチームへの告知も不十分で、色々と不足した中での開催となってしまいました。本当なら賞金も出したかったのですが、その代わりに賞金相当額の毛皮を出しました。今年は14チームにとどまりましたが、来年は出来れば28チームまで増やしたいですね。
2日間開催は開催地にメリットを出すためです。選手の宿泊や、買い出し、表彰式に名前を出すようにするとか、そういう事で地元への理解も深められる。今回は初の試みとして、ステージレースとは別に「地元の部」をつくり、小中学生や地元の方々に走ってもらいました。その中から自転車競技に興味を持ってもらい、地元が応援してくれるような選手が出てくるきっかけになればと思っています」。
「ステージレースの2日目がどれだけ辛いのかは、経験しないとわからないと思うんです。現状では、ステージレースを経験した事がないままエリートになって、いきなりUCIのステージレースを走る事になってしまう。それは泳いだ事がない人に競泳をさせているようなものだと思うんです。だから、UCIレースの下のクラスくらいのレベルで、ステージレースを経験できる場としてこのレースがあります。
審判も同じで、この大会で審判執務を経験した人で、国際審判や国内審判の上級資格に合格している方がいます。違反行為を取り締まるのではなく、違反させないようにするのが審判の役目だと思うし、選手も怒られながらレースするよりも楽しくレースした方が良いでしょう?だから、そう出来る審判がこの大会を通じて増えてくれると良いなと思ってます。」
レースがゴールして10分もすれば表彰式が始まり、リザルトもすぐに出る。2日間の表彰式で開けるシャンパンの数は12本と「小さな大会だけれど日本一」と、藤森さんは自負する。国内では数少ないステージレースを経験できる場としての「2Days木島平」。興味があれば来年の出場を是非検討していただきたい大会だ。
text&photo:Satoru.Kato
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