マリアローザ候補が「ジロらしいトリッキーなステージ」と口をそろえたジロ・デ・イタリア第6ステージで4名の逃げが決まる。登りスプリントでストゥイヴェンとの接戦を制したシルヴァン・ディリエ(スイス、BMCレーシング)がキャリア最大の勝利を飾った。



美しい海岸線が続いたステージ前半はあいにくの曇り空美しい海岸線が続いたステージ前半はあいにくの曇り空 photo:Kei Tsuji / TDWsport
ジロ・デ・イタリア2017第6ステージジロ・デ・イタリア2017第6ステージ image:RCSsportサルデーニャ島とシチリア島に別れを告げて、イタリア半島を北上する1週間が始まった。第6ステージはイタリア半島の「足の甲」を北上する217km。コースの大部分はティレニア海に沿った平坦なオーシャンロードだが、残り45kmを切ったあたりから4級山岳フスカルド(全長2.1km/平均6.7%)を含むアップダウンが始まる。特に残り8kmを切ってからは抜きどころの少ないアップダウン&ワインディングロードで、残り2km地点からコースは上昇を開始。平均勾配5.3%の登りは後半にかけて勾配が増し、およそ最大勾配10%の登りがフィニッシュラインまで続いている。

時折雨粒が落ちるレッジョ・カラブリアをスタートすると、レースは追い風に乗って超ハイスピードな進行を見せる。アタックとカウンターアタックの末に逃げグループを形成したのは5名。初日にマリアローザを獲得したルーカス・ペストルベルガー(オーストリア、ボーラ・ハンスグローエ)とシルヴァン・ディリエ(スイス、BMCレーシング)、ジャスパー・ストゥイヴェン(ベルギー、トレック・セガフレード)、マッズ・ペデルセン(デンマーク、トレック・セガフレード)、シモーネ・アンドレッタ(イタリア、バルディアーニCSF)が追い風吹くオーシャンロードを逃げ始めた。

逃げグループの中で総合成績が最も良いディリエは総合82位・16分58秒遅れ。つまりマリアローザ争いには関係しない逃げであり、217kmという長いコース設定であることも影響してタイム差は8分を超えた。スプリンターチームがステージ優勝に興味を示さなければ逃げ切りが決まるパターン。足並みの揃った5名の逃げがリードを維持したままステージ後半に入った。

スタート直後に飛び出したジャスパー・ストゥイヴェン(ベルギー、トレック・セガフレード)らスタート直後に飛び出したジャスパー・ストゥイヴェン(ベルギー、トレック・セガフレード)ら photo:Kei Tsuji / TDWsport
メイン集団はクイックステップフロアーズのコントロール下に置かれるメイン集団はクイックステップフロアーズのコントロール下に置かれる photo:Kei Tsuji / TDWsportカラブリア州の田舎町を進むマリアローザカラブリア州の田舎町を進むマリアローザ photo:Kei Tsuji / TDWsport
ステージ前半の2級山岳をこなすメイン集団ステージ前半の2級山岳をこなすメイン集団 photo:Kei Tsuji / TDWsportミケル・ランダ(スペイン、チームスカイ)とゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ)ミケル・ランダ(スペイン、チームスカイ)とゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ) photo:Kei Tsuji / TDWsport
マリアローザを着るボブ・ユンゲルス(ルクセンブルク、クイックステップフロアーズ)マリアローザを着るボブ・ユンゲルス(ルクセンブルク、クイックステップフロアーズ) photo:Kei Tsuji / TDWsport
メイン集団は概ね総合リーダーチームであるクイックステップフロアーズがコントロール。ちょうどレースが折り返し地点を通過する頃、ようやくタイム差は縮小を開始する。前日にステージ優勝を争ったフェルナンド・ガビリア(コロンビア、クイックステップフロアーズ)やアンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ソウダル)といったピュアスプリンターたちはアシストとしてエースのためにボトル運びを行った。

タイム差は残り50km地点で5分。キャノンデール・ドラパックが一時的に先頭でペースアップするシーンも見られたが、追い風に乗る逃げグループは3分リードのまま4級山岳フスカルドを越え、メイン集団の追撃を振り切って残り8kmから始まるアップダウン区間に入っていく。

ペデルセンの脱落によって4名となった逃げグループ内では、ストゥイヴェンがセレクションをかけるために登りでアタック。アンドレッタが脱落し、こうしてストゥイヴェン、ディリエ、ペストルベルガーの3名がステージ優勝をかけて登りスプリントを繰り広げることに。ブエルタ・ア・エスパーニャの集団スプリントで優勝経験があり、今大会第1ステージ7位、第2ステージ3位、第5ステージ9位と、集団スプリントで成績を残しているストゥイヴェンに圧倒的有利な展開と見られたが、最後の最後に番狂わせが起こった。

逃げグループを率いるマッズ・ペデルセン(デンマーク、トレック・セガフレード)逃げグループを率いるマッズ・ペデルセン(デンマーク、トレック・セガフレード) photo:Kei Tsuji / TDWsportマリアチクラミーノを着るフェルナンド・ガビリア(コロンビア、クイックステップフロアーズ)マリアチクラミーノを着るフェルナンド・ガビリア(コロンビア、クイックステップフロアーズ) photo:Kei Tsuji / TDWsport
残り6km地点の登りでアタックを仕掛けるジャスパー・ストゥイヴェン(ベルギー、トレック・セガフレード)残り6km地点の登りでアタックを仕掛けるジャスパー・ストゥイヴェン(ベルギー、トレック・セガフレード) photo:Kei Tsuji / TDWsport
スイッチバックの下りを進むメイン集団スイッチバックの下りを進むメイン集団 photo:Kei Tsuji / TDWsport
残り150mで最初に腰を上げたディリエが加速すると、ペストルベルガーはなす術がなく失速。すぐさま反応したストゥイヴェンが勢いよく追い上げ、先頭のディリエに並ぶ。しかしストゥイヴェンは先頭に出ることができない。横並びで、ほぼ同じケイデンスで登りを進んだディリエとストゥイヴェン。最後まで先頭を譲らなかったディリエが驚きの表情を浮かべながら両手を広げた。

数分遅れでアップダウン区間に入ったメイン集団は主にチームスカイやモビスターがペースメイク。サプライズアタックは生まれず、残り2km地点から始まる登りでアタックしたルイ・コスタ(ポルトガル、UAEチームエミレーツ)も引き戻される。最終的に精鋭25名がディリエから39秒遅れでフィニッシュ。トリッキーなステージだったが、大きな脱落者は出なかった。

登りスプリントを繰り広げるジャスパー・ストゥイヴェン(ベルギー、トレック・セガフレード)とシルヴァン・ディリエ(スイス、BMCレーシング)登りスプリントを繰り広げるジャスパー・ストゥイヴェン(ベルギー、トレック・セガフレード)とシルヴァン・ディリエ(スイス、BMCレーシング) photo:Kei Tsuji / TDWsport
ストゥイヴェンとのスプリントを制したシルヴァン・ディリエ(スイス、BMCレーシング)ストゥイヴェンとのスプリントを制したシルヴァン・ディリエ(スイス、BMCレーシング) photo:Kei Tsuji / TDWsport
26歳のシルヴァン・ディリエ(スイス、BMCレーシング)がグランツール初勝利26歳のシルヴァン・ディリエ(スイス、BMCレーシング)がグランツール初勝利 photo:Kei Tsuji / TDWsportアダム・イェーツ(イギリス、オリカ・スコット)らを先頭にフィニッシュする39秒遅れのメイン集団アダム・イェーツ(イギリス、オリカ・スコット)らを先頭にフィニッシュする39秒遅れのメイン集団 photo:Kei Tsuji / TDWsport
「ストゥイヴェンをどうやってスプリントで下したのか自分でもわからない。最後はアウターチェーンリングに入れて渾身の力でスプリント。登りスプリントは得意なので、自分を信じて、力が続く限りに踏んだ」と、スプリンターを力で下したディリエは語る。プロレースでの勝利は2015年のアークティックレース・オブ・ノルウェーのステージ優勝に続く2勝目。「間違いなくこれはキャリア最高の勝利だ」と喜んだ。

この日もボブ・ユンゲルス(ルクセンブルク、クイックステップフロアーズ)がマリアローザをキープ。その他の3賞ジャージも移動していないが、ステージ2位のストゥイヴェンがガビリアと3ポイント差のポイント賞2位に浮上している。

ステージ優勝を飾ったシルヴァン・ディリエ(スイス、BMCレーシング)ステージ優勝を飾ったシルヴァン・ディリエ(スイス、BMCレーシング) photo:Kei Tsuji / TDWsport
マリアローザはボブ・ユンゲルス(ルクセンブルク、クイックステップフロアーズ)がキープマリアローザはボブ・ユンゲルス(ルクセンブルク、クイックステップフロアーズ)がキープ photo:Kei Tsuji / TDWsport


ジロ・デ・イタリア2017第6ステージ結果
1位 シルヴァン・ディリエ(スイス、BMCレーシング)             4h58'01"
2位 ジャスパー・ストゥイヴェン(ベルギー、トレック・セガフレード)
3位 ルーカス・ペストルベルガー(オーストリア、ボーラ・ハンスグローエ)     +12"
4位 シモーネ・アンドレッタ(イタリア、バルディアーニCSF)           +26"
5位 マイケル・ウッズ(カナダ、キャノンデール・ドラパック)           +39"
6位 アダム・イェーツ(イギリス、オリカ・スコット)
7位 ウィルコ・ケルデルマン(オランダ、サンウェブ)
8位 ボブ・ユンゲルス(ルクセンブルク、クイックステップフロアーズ)
9位 バウケ・モレマ(オランダ、トレック・セガフレード)
10位 ゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ)

マリアローザ 個人総合成績
1位 ボブ・ユンゲルス(ルクセンブルク、クイックステップフロアーズ)     28h20'47"
2位 ゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ)                 +06"
3位 アダム・イェーツ(イギリス、オリカ・スコット)                +10"
4位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、バーレーン・メリダ)
5位 ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、アージェードゥーゼール)
6位 ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)
7位 トム・デュムラン(オランダ、サンウェブ)
8位 バウケ・モレマ(オランダ、トレック・セガフレード)
9位 ティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシング)
10位 アンドレイ・アマドール(コスタリカ、モビスター)

マリアチクラミーノ ポイント賞
1位 フェルナンド・ガビリア(コロンビア、クイックステップフロアーズ)     140pts
2位 ジャスパー・ストゥイヴェン(ベルギー、トレック・セガフレード)      137pts
3位 アンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ソウダル)             105pts

マリアアッズーラ 山岳賞
1位 ヤン・ポランツェ(スロベニア、UAEチームエミレーツ)           43pts
2位 ダニエル・テクレハイマノ(エリトリア、ディメンションデータ)       23pts
3位 イルヌール・ザカリン(ロシア、カチューシャ・アルペシン)         18pts

マリアビアンカ ヤングライダー賞
1位 ボブ・ユンゲルス(ルクセンブルク、クイックステップフロアーズ)     28h20'47"
2位 アダム・イェーツ(イギリス、オリカ・スコット)               +10"
3位 ダヴィデ・フォルモロ(イタリア、キャノンデール・ドラパック)

チーム総合成績
1位 キャノンデール・ドラパック   85h03'15"
2位 UAEチームエミレーツ         +05"
3位 モビスター              +32"

text&photo:Kei Tsuji in Terme Luigiane, Italy