3年前の7月にキッテルがマイヨジョーヌを獲得したハロゲートの登りスプリントでナセル・ブアニが勝利。與那嶺恵理も出場した女子レースは地元出身エリザベス・ダイグナンによる圧巻の独走勝利が決まった。
出走サインに向かう與那嶺恵理(エフデジヌーヴェル) photo:Kei Tsuji / TDWsport
チームメイトをケアしながらQOMコート・ド・ロフトハウスを登る與那嶺恵理(エフデジヌーヴェル) photo:Kei Tsuji / TDWsport
ツール・ド・ヨークシャー第2ステージはタッドキャスターからハロゲートまでの122.5km。前後のステージよりも明らかに距離が短い理由は、午前中に全く同じコースでウィメンズ・ツール・ド・ヨークシャーが開催されるため。女子レースはステージレースではなくこの日限りのワンデーレース。UCIウィメンズワールドチームが顔を揃え、クラシックシーズンを終えたばかりの與那嶺恵理(エフデジヌーヴェル)も出場した。
短距離コースはヨークシャー特有の起伏に富んだもの。レース中盤のKOM(女子はQOM)ロフトハウスは全長1.7km/平均12%という急勾配の登りだ。ハロゲートのフィニッシュレイアウトはカヴェンディッシュが落車リタイアしてキッテルが勝利した2014年ツール・ド・フランス第1ステージと共通。残り1kmを切ってから勾配7%ほどの直線的な登りが登場する。
QOMコート・ド・ロフトハウスでペースを上げるエリザベス・ダイグナン(イギリス、ブールスドルマンス) photo:Kei Tsuji / TDWsport
後続を1分近く引き離したエリザベス・ダイグナン(イギリス、ブールスドルマンス)が勝利 photo:Kei Tsuji / TDWsport
43位でフィニッシュする與那嶺恵理(エフデジヌーヴェル) photo:Kei Tsuji / TDWsport
女子レースは序盤から主要チームが選手を送り込む強力な逃げが先行。急勾配のQOMロフトハウスで集団は形を崩し、エリザベス・ダイグナン(イギリス)とアンナ・ファンデルブレゲン(オランダ)というアルデンヌクラシック3戦すべてでワンツー勝利を飾ったブールスドルマンスの2人が逃げグループに追いつく。逃げグループの中でアタックを繰り返したダイグナンが独走に持ち込み、後続を1分近く引き離す力走で地元ヨークシャー最大のレースを制した。
アルデンヌクラシック3連戦を走り終えた與那嶺は初のイギリスレース出場。2016年のロード世界選手権で6位に入っているエーススプリンターのロクサーヌ・フルニエ(フランス)をサポートし、43位でレースを終えている。※後ほどコメントを追加します
この日も序盤から地元イギリスのUCIコンチネンタルチーム勢が動く photo:Kei Tsuji / TDWsport
曇り空のヨークシャー地方を行く photo:Kei Tsuji / TDWsport
逃げグループの先頭は2014年にマトリックスに所属していたセバスティアン・モラ(スペイン、ラレーGAC) photo:Kei Tsuji / TDWsport
ロットNLユンボが率いるメイン集団 photo:Kei Tsuji / TDWsport
女子レースが終わるとすぐ、大会関係車両は一斉にスタート地点タッドキャスターへ逆戻り。息つく間もなく午後2時に男子レースのスタートが切られた。この日もUCIコンチネンタルチームの選手たちがスタート直後からアタックを繰り返し、4名の選手が先行を開始する。逃げグループの中には、2014年にマトリックス・パワータグに所属していたセバスティアン・モラ(スペイン、ラレーGAC)の姿も。2016年にイギリスのラレーGACに移籍したモラは同年トラック世界選手権スクラッチで金メダル、同マディソンで銅メダルを獲得している。
ロットNLユンボがコントロールするメイン集団は逃げグループとのタイム差を3分台に抑え込み、KOMロフトハウスを難なくクリアし、フィニッシュまで22kmを残して早くも逃げを吸収してしまう。この早めの逃げ吸収はカウンターアタックを誘発。短い登りを利用してトマ・ヴォクレール(フランス、ディレクトエネルジー)らが果敢に飛び出したが、集団を振り切るような動きは生まれなかった。
鈴なりの観客が沿道を埋める photo:Kei Tsuji / TDWsport
ジュリアン・エルファレス(スペイン、デルコ・マルセイユ)のアタックが残り2km地点で封じ込められると、いよいよハロゲートのフィニッシュが近づいてくる。約100名の大集団の先頭を切って走ったのはオリカ・スコットとディメンションデータ。しかし登りと下りでどのチームもトレインを崩してしまい、混沌とした状態でフィニッシュ手前の登りに突入した。
最初に仕掛けたのはジョナサン・イヴェール(フランス、ディレクトエネルジー)。ロングスプリントではなく登りアタックと呼びべき加速で先行したイヴェールを追って、ブアニやカレイブ・ユアン(オーストラリア、オリカ・スコット)がスプリント体制に入る。イヴェールを捉えたブアニはそのまま踏み続け、ユアンの追随を許さないほどのリードを広げて勝利した。
ユアンらを振り切ったナセル・ブアニ(フランス、コフィディス) photo:Kei Tsuji / TDWsport
「今日は平坦ステージとは呼べないほどアップダウンの連続だった。勢いよくアタックしたジョナサン・イヴェールを追う形で、かなり早いタイミングでスプリントを開始した。フィニッシュラインまで350〜400mはあったと思う。イヴェールを追い抜いて振り返ると後ろが離れていたんだ」。いつもの尖った表情がこの日ばかりは緩んだ。
「今シーズンすでに4回も2位を経験している。スプリンターは勝たなければならない。勝つことが最も大切なんだ」。3年前にキッテルが勝利したハロゲートで掴んだ勝利。ブアニはツール・ド・フランスでの活躍を目標に掲げている。ジロ・デ・イタリアとブエルタ・ア・エスパーニャでステージ優勝を経験しているが、まだツールでのステージ優勝はゼロだ。
「2日連続ステージ2位という結果は残念の一言。良い感触を得ていただけに勝ちたかった。フィニッシュ手前の登りで失敗を犯してしまった。残り600mで前に出ることを躊躇してしまい、集団の中に埋もれてしまったんだ」と語るユアンは、表彰台で青いリーダージャージと緑のポイント賞ジャージをどこか晴れない表情で受け取った。ユアンはヨークシャー閉幕の5日後に開幕するジロ・デ・イタリアに出場する予定だ。
ユアンが総合トップに立った状態で迎えるヨークシャー最終日はブラッドフォードからフォックスヴァレーまでの194.5kmで行われる。主催者が「ヨークシャー史上最高の厳しさ」と自信を見せるコースには合計8つのKOMが登場。最終ステージの勝者が総合優勝に輝く可能性が高い。
笑顔でチームメイトを迎えるナセル・ブアニ(フランス、コフィディス) photo:Kei Tsuji / TDWsport
2日連続ステージ2位のカレイブ・ユアン(オーストラリア、オリカ・スコット)が総合首位に photo:Kei Tsuji / TDWsport
ツール・ド・ヨークシャー2017第2ステージ
1位 ナセル・ブアニ(フランス、コフィディス) 2h45'51"
2位 カレイブ・ユアン(オーストラリア、オリカ・スコット)
3位 ジョナサン・イヴェール(フランス、ディレクトエネルジー)
4位 ディラン・フルーネウェーヘン(オランダ、ロットNLユンボ)
5位 クリストファー・ローレス(イギリス、イギリスナショナル)
6位 クリスティアン・ズバラーリ(イタリア、ディメンションデータ)
7位 ソーレンクラーク・アンデルセン(デンマーク、サンウェブ)
8位 トニー・ユレル(フランス、ディレクトエネルジー)
9位 マシュー・ホームズ(イギリス、マディソンジェネシス)
10位 アダム・ブライス(イギリス、アクアブルースポート)
個人総合成績
1位 カレイブ・ユアン(オーストラリア、オリカ・スコット) 6h55'17"
2位 ナセル・ブアニ(フランス、コフィディス) +02"
3位 ディラン・フルーネウェーヘン(オランダ、ロットNLユンボ)
4位 クリス・オピー(イギリス、バイクチャンネル・キャニオン) +08"
5位 ジョナサン・イヴェール(フランス、ディレクトエネルジー)
6位 アンヘル・マドラソ(スペイン、デルコ・マルセイユ) +10"
7位 クリスティアン・ズバラーリ(イタリア、ディメンションデータ) +12"
8位 スティール・ヴォンホフ(オーストラリア、ワンプロサイクリング)
9位 アダム・ブライス(イギリス、アクアブルースポート)
10位 ソーレンクラーク・アンデルセン(デンマーク、サンウェブ)
ポイント賞
1位 カレイブ・ユアン(オーストラリア、オリカ・スコット) 24pts
2位 ナセル・ブアニ(フランス、コフィディス) 22pts
3位 ディラン・フルーネウェーヘン(オランダ、ロットNLユンボ) 22pts
山岳賞
1位 エティエンヌ・ファンエンペル(オランダ、ルームポット) 9pts
2位 ペリグ・ケムヌール(フランス、ディレクトエネルジー) 4pts
3位 ジェームス・ガレン(イギリス、JLTコンドール) 4pts
ウィメンズ・ツール・ド・ヨークシャー2017
1位 エリザベス・ダイグナン(イギリス、ブールスドルマンス) 3h09'36"
2位 コリン・リベーラ(アメリカ、サンウェブ) +55"
3位 ジョルジャ・ブロンジーニ(イタリア、ウィグル・ハイファイブ)
4位 アミー・ピーターズ(オランダ、ブールスドルマンス)
5位 ハンナ・バーンズ(イギリス、キャニオン・スラム)
6位 カトリーン・アーレルド(ノルウェー、ハイテクプロダクツ) +59"
7位 シェイラ・グティエレス(スペイン、サイレンスプロサイクリング)
8位 シャーラ・ギロー(オーストラリア、エフデジヌーヴェル)
9位 ロクサンヌ・クネットマン(オランダ、エフデジヌーヴェル)
10位 ダニエーレ・キング(イギリス、サイレンスプロサイクリング)
43位 與那嶺恵理(日本、エフデジヌーヴェル) +7'45"
text&photo:Kei Tsuji in Harrogate, United Kingdom


ツール・ド・ヨークシャー第2ステージはタッドキャスターからハロゲートまでの122.5km。前後のステージよりも明らかに距離が短い理由は、午前中に全く同じコースでウィメンズ・ツール・ド・ヨークシャーが開催されるため。女子レースはステージレースではなくこの日限りのワンデーレース。UCIウィメンズワールドチームが顔を揃え、クラシックシーズンを終えたばかりの與那嶺恵理(エフデジヌーヴェル)も出場した。
短距離コースはヨークシャー特有の起伏に富んだもの。レース中盤のKOM(女子はQOM)ロフトハウスは全長1.7km/平均12%という急勾配の登りだ。ハロゲートのフィニッシュレイアウトはカヴェンディッシュが落車リタイアしてキッテルが勝利した2014年ツール・ド・フランス第1ステージと共通。残り1kmを切ってから勾配7%ほどの直線的な登りが登場する。



女子レースは序盤から主要チームが選手を送り込む強力な逃げが先行。急勾配のQOMロフトハウスで集団は形を崩し、エリザベス・ダイグナン(イギリス)とアンナ・ファンデルブレゲン(オランダ)というアルデンヌクラシック3戦すべてでワンツー勝利を飾ったブールスドルマンスの2人が逃げグループに追いつく。逃げグループの中でアタックを繰り返したダイグナンが独走に持ち込み、後続を1分近く引き離す力走で地元ヨークシャー最大のレースを制した。
アルデンヌクラシック3連戦を走り終えた與那嶺は初のイギリスレース出場。2016年のロード世界選手権で6位に入っているエーススプリンターのロクサーヌ・フルニエ(フランス)をサポートし、43位でレースを終えている。※後ほどコメントを追加します




女子レースが終わるとすぐ、大会関係車両は一斉にスタート地点タッドキャスターへ逆戻り。息つく間もなく午後2時に男子レースのスタートが切られた。この日もUCIコンチネンタルチームの選手たちがスタート直後からアタックを繰り返し、4名の選手が先行を開始する。逃げグループの中には、2014年にマトリックス・パワータグに所属していたセバスティアン・モラ(スペイン、ラレーGAC)の姿も。2016年にイギリスのラレーGACに移籍したモラは同年トラック世界選手権スクラッチで金メダル、同マディソンで銅メダルを獲得している。
ロットNLユンボがコントロールするメイン集団は逃げグループとのタイム差を3分台に抑え込み、KOMロフトハウスを難なくクリアし、フィニッシュまで22kmを残して早くも逃げを吸収してしまう。この早めの逃げ吸収はカウンターアタックを誘発。短い登りを利用してトマ・ヴォクレール(フランス、ディレクトエネルジー)らが果敢に飛び出したが、集団を振り切るような動きは生まれなかった。

ジュリアン・エルファレス(スペイン、デルコ・マルセイユ)のアタックが残り2km地点で封じ込められると、いよいよハロゲートのフィニッシュが近づいてくる。約100名の大集団の先頭を切って走ったのはオリカ・スコットとディメンションデータ。しかし登りと下りでどのチームもトレインを崩してしまい、混沌とした状態でフィニッシュ手前の登りに突入した。
最初に仕掛けたのはジョナサン・イヴェール(フランス、ディレクトエネルジー)。ロングスプリントではなく登りアタックと呼びべき加速で先行したイヴェールを追って、ブアニやカレイブ・ユアン(オーストラリア、オリカ・スコット)がスプリント体制に入る。イヴェールを捉えたブアニはそのまま踏み続け、ユアンの追随を許さないほどのリードを広げて勝利した。

「今日は平坦ステージとは呼べないほどアップダウンの連続だった。勢いよくアタックしたジョナサン・イヴェールを追う形で、かなり早いタイミングでスプリントを開始した。フィニッシュラインまで350〜400mはあったと思う。イヴェールを追い抜いて振り返ると後ろが離れていたんだ」。いつもの尖った表情がこの日ばかりは緩んだ。
「今シーズンすでに4回も2位を経験している。スプリンターは勝たなければならない。勝つことが最も大切なんだ」。3年前にキッテルが勝利したハロゲートで掴んだ勝利。ブアニはツール・ド・フランスでの活躍を目標に掲げている。ジロ・デ・イタリアとブエルタ・ア・エスパーニャでステージ優勝を経験しているが、まだツールでのステージ優勝はゼロだ。
「2日連続ステージ2位という結果は残念の一言。良い感触を得ていただけに勝ちたかった。フィニッシュ手前の登りで失敗を犯してしまった。残り600mで前に出ることを躊躇してしまい、集団の中に埋もれてしまったんだ」と語るユアンは、表彰台で青いリーダージャージと緑のポイント賞ジャージをどこか晴れない表情で受け取った。ユアンはヨークシャー閉幕の5日後に開幕するジロ・デ・イタリアに出場する予定だ。
ユアンが総合トップに立った状態で迎えるヨークシャー最終日はブラッドフォードからフォックスヴァレーまでの194.5kmで行われる。主催者が「ヨークシャー史上最高の厳しさ」と自信を見せるコースには合計8つのKOMが登場。最終ステージの勝者が総合優勝に輝く可能性が高い。


ツール・ド・ヨークシャー2017第2ステージ
1位 ナセル・ブアニ(フランス、コフィディス) 2h45'51"
2位 カレイブ・ユアン(オーストラリア、オリカ・スコット)
3位 ジョナサン・イヴェール(フランス、ディレクトエネルジー)
4位 ディラン・フルーネウェーヘン(オランダ、ロットNLユンボ)
5位 クリストファー・ローレス(イギリス、イギリスナショナル)
6位 クリスティアン・ズバラーリ(イタリア、ディメンションデータ)
7位 ソーレンクラーク・アンデルセン(デンマーク、サンウェブ)
8位 トニー・ユレル(フランス、ディレクトエネルジー)
9位 マシュー・ホームズ(イギリス、マディソンジェネシス)
10位 アダム・ブライス(イギリス、アクアブルースポート)
個人総合成績
1位 カレイブ・ユアン(オーストラリア、オリカ・スコット) 6h55'17"
2位 ナセル・ブアニ(フランス、コフィディス) +02"
3位 ディラン・フルーネウェーヘン(オランダ、ロットNLユンボ)
4位 クリス・オピー(イギリス、バイクチャンネル・キャニオン) +08"
5位 ジョナサン・イヴェール(フランス、ディレクトエネルジー)
6位 アンヘル・マドラソ(スペイン、デルコ・マルセイユ) +10"
7位 クリスティアン・ズバラーリ(イタリア、ディメンションデータ) +12"
8位 スティール・ヴォンホフ(オーストラリア、ワンプロサイクリング)
9位 アダム・ブライス(イギリス、アクアブルースポート)
10位 ソーレンクラーク・アンデルセン(デンマーク、サンウェブ)
ポイント賞
1位 カレイブ・ユアン(オーストラリア、オリカ・スコット) 24pts
2位 ナセル・ブアニ(フランス、コフィディス) 22pts
3位 ディラン・フルーネウェーヘン(オランダ、ロットNLユンボ) 22pts
山岳賞
1位 エティエンヌ・ファンエンペル(オランダ、ルームポット) 9pts
2位 ペリグ・ケムヌール(フランス、ディレクトエネルジー) 4pts
3位 ジェームス・ガレン(イギリス、JLTコンドール) 4pts
ウィメンズ・ツール・ド・ヨークシャー2017
1位 エリザベス・ダイグナン(イギリス、ブールスドルマンス) 3h09'36"
2位 コリン・リベーラ(アメリカ、サンウェブ) +55"
3位 ジョルジャ・ブロンジーニ(イタリア、ウィグル・ハイファイブ)
4位 アミー・ピーターズ(オランダ、ブールスドルマンス)
5位 ハンナ・バーンズ(イギリス、キャニオン・スラム)
6位 カトリーン・アーレルド(ノルウェー、ハイテクプロダクツ) +59"
7位 シェイラ・グティエレス(スペイン、サイレンスプロサイクリング)
8位 シャーラ・ギロー(オーストラリア、エフデジヌーヴェル)
9位 ロクサンヌ・クネットマン(オランダ、エフデジヌーヴェル)
10位 ダニエーレ・キング(イギリス、サイレンスプロサイクリング)
43位 與那嶺恵理(日本、エフデジヌーヴェル) +7'45"
text&photo:Kei Tsuji in Harrogate, United Kingdom
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