サーヴェロより、ロングディスタンス向けの新型トライアスロンバイク「P5X」が登場した。トライアスリートの声に応え、ストレージ容量を増やしつつ、シートチューブとシートステーを取り払ったY字型デザインのフレーム設計などによって空力性能を高めた意欲的な1台を紹介する。



サーヴェロ P5Xサーヴェロ P5X (c)東商会
毎年10月、アメリカ・ハワイ島はコナを舞台に開催されるアイアンマン世界選手権大会。世界各地で開催される予選を通過した猛者のみが出場できるトライアスロン界の最高峰イベントの1つである。各パートの距離はスイムが3.86km、バイクが180.25km、ランが42.195km。いずれも過酷を極めるが、コナにおいては「バイクパートが特にハード」という声がよく聞かれる。

コナの180.25kmは、海と山からの風に影響されやすく、もちろんドラフティングも禁止。アスリート自身は言うまでもないが、バイクのエアロ性能が成績や完走の可否に大きく影響してくる。そういった中で、12年連続してメーカー別のバイクシェアNo.1を獲得してきたのがサーヴェロだ。トライアスロンバイクにおいてもリーディングカンパニーとして君臨するカナディアンブランドは、2016年のコナに向けて「究極のトライアスロンバイク」と銘打った新型マシン「P5X」を発表した。

空力性能に優れるヒンジ式フロントフォーク空力性能に優れるヒンジ式フロントフォーク (c)東商会いち早くトライアスロンバイクにディスクブレーキを採用したいち早くトライアスロンバイクにディスクブレーキを採用した (c)東商会エクステンションバーの角度は0°~12°の範囲で調整できるエクステンションバーの角度は0°~12°の範囲で調整できる (c)東商会


P5Xが掲げるコンセプトは「Personal. Best.」。トレーニング、レース、移動の各シーンにおけるトライアスリートならではのニーズに応えると同時に、UCIレギュレーションやトレンド、常識にとらわれることなく高性能化を図った「サーヴェロの自己ベスト」とも言うべき1台だ。もちろん、このバイクの至上命題はトライアスリートの自己ベスト更新に貢献することである。

P5Xを開発するにあたりサーヴェロが行ったリサーチの中で、最も多くのトライアスリートがバイクに対して改善の必要性を感じていると判明したのがストレージである。アイアンマンレースでは、2本もしく3本のウォーターボトル、パンク修理キットやハンディーツールに加え、平均的なエイジグルーパーでも1,600kcal相当の補給食を携行。寒暖差のある時期のトレーニングでは、ウィンドブレーカーやウォーマー類も加わる。しかし、伝統的なダイヤモンド型フレームでは、収納場所が不足しているのが現状だ。

調整幅の大きなシートポスト調整幅の大きなシートポスト (c)東商会開発段階で描かれたデザインスケッチ開発段階で描かれたデザインスケッチ (c)東商会

BB周辺に配置されたストレージボックスBB周辺に配置されたストレージボックス (c)東商会パッキングを容易とするために左右分割式とされたハンドル。エンヴィとの共同開発により誕生したパッキングを容易とするために左右分割式とされたハンドル。エンヴィとの共同開発により誕生した (c)東商会


そこでサーヴェロは、同社の処女作である「Baracchi」にも似たシートステー&シートチューブレスのフレームデザインを復活させてP5Xに採用。いずれも専用設計というBB上方の「Speedcase」とBB前方の「Stealthbox」、ステム後方の「Smartpak」という3つのストレージによって収納力を高めた。なお、ボトルゲージマウントはハンドルとサドル後方、BB上ストレージの上面の3箇所に設けられている。

もちろんフレームは、ストレージを含めたシステムとして空力性能を追求。CFD解析を用いて150以上のデザイン案を検討し、180時間にも及ぶ風洞実験を経て、最終形状へと至った。また、ホイールでお馴染みのアメリカンブランド「HED」とパートナーシップを組み、エアロダイナミクスとカーボン素材の分野で共同開発を実施。Y字型フレームデザインやヒンジフォークなどにより最小限に抑えられた空気抵抗に加え、優れた軽量性や最適化された剛性がトライアスリートを自己ベストへと後押ししてくれることだろう。

別売オプションとして用意されるP5X専用設計のバイクケース別売オプションとして用意されるP5X専用設計のバイクケース (c)東商会
分割式ハンドルを採用し、パンキング時の作業を容易とした分割式ハンドルを採用し、パンキング時の作業を容易とした (c)東商会トライアスリートが自己ベストを更新するためには、バイク単体の性能に加え、効率良くペダリングできるセッティグが不可欠。アームレストは上下方向と前後方向にそれぞれ91mmと112mm、エクステンションの角度は0°~12°、仮想シートチューブ角(=サドルの前後位置)は74°~81°と、各所の調整幅が大きくとられており、最適なライディングポジションを実現することができる。

「安心安全」も自己ベストの更新には大きな要素となってくる。P5Xでは他のトライアスロンバイクよりもいち早くディスクブレーキを採用。エアロブレーキレバーでも、より確実な制動操作を可能としている。前後ともにエンドは12mmスルーアクスルとしており、ディスクブレーキの高い制動力にも屈しない剛性を確保した。ブレーキ本体にはワイヤー引き/油圧式対向ピストンのTRP HY-RDが採用されており、ローター径は前後ともに160mmとなっている。

そして、世界中のレースを転戦するトライアスリートのために、専用設計の輪行バックを別売オプションとして用意。また、パッキング作業を容易とするべく、左右で分割可能なハンドルを標準搭載したこともP5Xの大きな特徴だ。なお、ハンドルはエンヴィと共に開発したもので、強度面での不安はないだろう。

販売は完成車で行われ、スラムRED eTap+エンヴィSES7.8仕様と、シマノULTEGRA Di2+HED Jet 6/9 Plus仕様がラインアップされる。サイズはS、M、L、XLの4種類。取り扱いは東商会が行う。

トライアスリートをPersonal.Best.へと導くべく開発されたP5XトライアスリートをPersonal.Best.へと導くべく開発されたP5X (c)東商会

Cervélo P5x from Cervélo on Vimeo.




サーヴェロ P5X(完成車)
フォーク:Cervélo All-Carbon, P5X
ヘッドセット:FSA IS2 1-1/8 x 1-1/2"
シートポスト:Cervélo P5X Seatpost with Ritchey Head
メインコンポーネント:スラム RED eTap、シマノ ULTEGRA Di2
ギア比:52/36x11-28T
クランク:スラム RED(RED eTap仕様)、ローター FLOW BBright Aero(ULTEGRA Di2仕様)
ボトムブラケット:セラミックスピード
ブレーキ:TRP HY/RD
ローター:TRP-25 Centerlock 2-Piece Rotor 160mm
ハンドル:Cervélo P5X Aerobar
サドル:ISM PS 1.0
ホイール:エンヴィ SES 7.8(RED eTap仕様)、HED Jet 6/9 Plus Rear(ULTEGRA Di2仕様)
タイヤ:コンチネンタル GP4000 S II 700x25c(RED eTap仕様)
    コンチネンタル GP Attack/Force 700x22/24c(ULTEGRA Di2仕様)
税別価格:1,900,000円(RED eTap仕様)、1,400,000円(ULTEGRA Di2仕様)