本格的なシクロクロスシーズン突入前に広く選手を招聘し、その中国的なホスピタリティと主催者の千森集団のゴージャスな運営、そして何よりもUCIポイントを荒稼ぎできることで定評のあるシクロクロスレース、「China Cyclocross千森杯」に今年も日本チームが出場した。



レース前日に主催社が用意した万里の頂上観光。日本チームは選手11名が参加したレース前日に主催社が用意した万里の頂上観光。日本チームは選手11名が参加した photo:Masakazu.Abe
日本から参加したのは、小坂光(宇都宮ブリッツェンシクロクロスチーム)を筆頭に、前田公平と織田聖の弱虫ペダルサイクリングチームコンビ、松本駿(SCOTT)、武田和佳(Liv)ら選手11名と、菅田純也監督を筆頭にしたスタッフ5名からなるチーム。体制としては過去最大規模であり、メカニック3名が帯同したことで充実した遠征となった。

昨年は万里の長城のある延慶県(Yanqing County)と海南島のほぼ中央に位置する苗族自治区の瓊中(Qiongzhong)という2会場でのレースを組み合わせた2連戦だったが、今年は延慶での2会場2連戦に。昨年の段階では3つめの会場を杭州に用意してUCIクラス1の3連戦となるとのことだったのだが…。去年初開催だった海南島は亜熱帯で多湿のため欧米選手の不評を買ったことも、今年リスト漏れした理由にあるのかもしれない。

オーストラリアチームと大量の荷物をバスに詰め込んで移動する。通訳がついていたのでスムーズだったオーストラリアチームと大量の荷物をバスに詰め込んで移動する。通訳がついていたのでスムーズだった photo:Masakazu.Abe試走に臨む弱虫ペダルサイクリングチーム試走に臨む弱虫ペダルサイクリングチーム photo:Masakazu.Abe

食事はホテルでのビュッフェ形式。野菜も豊富で美味しくいただいた食事はホテルでのビュッフェ形式。野菜も豊富で美味しくいただいた photo:Masakazu.Abeおじさまメンバーで足裏マッサージへ。1時間およそ800円と激安おじさまメンバーで足裏マッサージへ。1時間およそ800円と激安 photo:Masakazu.Abe


8月28日(日)に日本チームは北京空港入り。現地ではバス移動だったが、英語を話せる若いボランティアが添乗し、膨大な機材の積み込みの交渉から諸々気を配ってくれる。翌月曜、火曜にはコース試走と恒例の主催者が用意した万里の長城ツアーに他チームと出かけるなどした。海外チームには日本のレースにも馴染み深い選手も参加しており、挨拶や会話を楽しんだ。



女子エリート:武田和佳(Liv)が7位入賞、UCIポイントを獲得

女子エリートのスタート。最前列から武田和佳(Liv)が加速していく女子エリートのスタート。最前列から武田和佳(Liv)が加速していく photo:Masakazu.Abe女子エリートの先頭3名。このままゴールまでもつれ込んだ女子エリートの先頭3名。このままゴールまでもつれ込んだ photo:Masakazu.Abe第1戦のコースは主に森林公園の木立の中の小径を走る高速コースで、周回コース長はUCI規定最長の3.5km。路面は硬く土煙が多く上がり、混走状態では前走者が巻き上げる土煙による喉の痛みを訴える選手も多かった。

女子エリートの出走人数29名で、昨年大会でも活躍したアーサ・エランドソン(スウェーデン)がUCIランクで40位と最も上位。エランドソンは昨年の世界選手権29位、ワールドカップ30位に入っており、強豪選手のレベルは概ねこのあたりだ。

UCIランキング118位の武田は1列目と絶好の位置からスタート。レース前日から良い集中を見せていた彼女は落ち着いた走りで集中を切らさず、大きなミスも無くポジションを守り、結果は本人も驚く過去最高位の7位。続く男子に弾みを付けた。須藤むつみは途中トラブルやテクニカル区間で苦戦する選手に行く手を阻まれながらも完走し賞金をゲット。安田朋子も健闘し完走を果たした。

トップ3人は序盤から先頭グループを形成し、優勝はアメリカのエミリー・カチョレック。2位はセリン・アルヴァラード(オランダ)、3位はビアンカ・ヴァンデンホック(オランダ)が入った。

男子エリート:クレラン・ファストフードサービスがレースを圧倒 前田11位、小坂光12位

男子エリート。クリスジョンワード(オーストラリア、Jブラッド・アドヴェンチャー)がホールショット男子エリート。クリスジョンワード(オーストラリア、Jブラッド・アドヴェンチャー)がホールショット photo:Masakazu.Abe
タイス・アル(オランダ)や、ロブ・ピータース(ベルギー、クレラン・ファストフードサービス)が先頭に立つタイス・アル(オランダ)や、ロブ・ピータース(ベルギー、クレラン・ファストフードサービス)が先頭に立つ photo:Masakazu.Abe2名がエントリーした男子エリートには、ヨーロッパから一昨年覇者のタイス・アル(オランダ)や、ロブ・ピータースとイェンス・アダムスのクレラン・ファストフードサービスコンビらも顔を合わせた。

UCIランキング86位の小坂光は4番グリッド最前列からのスタート、前田公平と小坂正則は2列目から前を目指す展開に。アダムスはスタートでミスをしたものの猛烈に追い上げ、一気に先頭争いに復帰。中盤を過ぎるとピータースが実力を見せて独走に持ち込み、アダムスを22秒引き離してゴール。3位にはクリス・ジョンワード(オーストラリア)が入った。

小坂光の当初の作戦は先頭パックに加わって上位入賞を狙うというものだったが 先頭パックのペースアップに遅れをとり、小坂正則や前田を含む後続に。しかしそこからの抜け出しは叶わず、前田が11位、小坂光12位、正則14位という結果に。今年からエリートカテゴリーを走るジュニアナショナルチャンピオンの織田も初の60分レースを耐え抜き18位と大健闘。日本勢は残念ながらここまでが同一周回での完走となった。

小坂光(宇都宮ブリッツェンシクロクロスチーム)は12位に沈んでしまった小坂光(宇都宮ブリッツェンシクロクロスチーム)は12位に沈んでしまった photo:Masakazu.Abe14位に入った小坂正則(スワコレーシング)14位に入った小坂正則(スワコレーシング) photo:Masakazu.Abe

今年からエリートカテゴリーを走る織田聖(弱虫ペダルサイクリングチーム)今年からエリートカテゴリーを走る織田聖(弱虫ペダルサイクリングチーム) photo:Masakazu.Abe男子エリート表彰台男子エリート表彰台 photo:Masakazu.Abe




各選手コメント
武田和佳(Liv)

第1戦は躊躇せずミスしないよう、タレないよう自分のルールを決めて臨み、レース中も周回ごとにライン取りや細かな修正を行った。10位くらいかと思っていたのに7位でUCIポイントも獲得でき、少々びっくりしたが嬉しい。自分が(海外で)どういう位置で試合ができるのか試したかったこともあり、この結果は自信になった。
 
第2戦のコースは高低差がある平地と山林の組み合わせで湘南や千葉CX、松本城など思い出させるどこか日本的なもの。特に平地はクイックなコーナーが続くそこをリズムを崩さず処理できればタイムの短縮につながると思う。全体に面白く好きなコースなので、第1戦以上の結果が残せるよう頑張りたい。

前田公平(弱虫ペダルサイクリングチーム)
スタートのゴタゴタで出遅れたりパンクしたりと序盤トラブったが、その後はリカバリーでき順調に順位を上げていけた。第2戦のコースはガラッと変わってスピードレンジも低く滑りやすいコーナーが続くので、ミスでリズムを狂わせないよう集中していきたい。

小坂光(宇都宮ブリッツェンシクロクロスチーム)
第1戦は体調や暑さのせいもあり一旦先頭集団から単独で下がったが、そこから再度上げて行くのに脚を使ってしまったため 追い上げて来た前田選手、父を含むパックに入って仕切り直そうと思ったが、そのタイミングでサドルが下がるトラブルがあったりと思ったような結果にならなかった。第2戦はタイム差の出にくいコースなので、順位の入れ替わりが多い展開が予想される。自分はフロントローからのスタートという位置を活かし、丁寧に走って前から離されないようにして上を狙っていきたい。

小坂正則(スワコレーシング)
第1戦はスタートもうまく行き、順調に滑りだし先頭の見える位置で走れたが、中盤にかけて身体が重くなりじわじわ離されていった。後続パックに吸収された後は回復し再び集団を牽き前に出て行ったが届かず終わってしまった。今考えるともうちょっと行けたかなとも思う。

織田聖(弱虫ペダルサイクリングチーム)
序盤落車に巻き込まれたりしたものの影響もなく、その後はパックを作って順調に周回できた。しかしラスト2周でタレて一人旅になってしまったので そこで踏ん張り切れなかったのが課題。

菅田遠征代表監督
今までの最大規模の体制の遠征で海外強豪も多い中、第1戦はトラブルがありつつもそれぞれ結果を出せたと思う。中でも前田、小坂光、小坂正則がUCIポイントを獲得でき、女子は3名全員完走、武田が千森杯遠征過去最高位の7位を獲るなど活躍してくれた。

次回レポートは3日後の9月3日、場所を北京市の西の郊外にある豊台(Fengtai)に移して争われた第2戦の模様をお送りする予定です。



千森杯UCIシクロクロス Qiansen Trophy2016第1戦結果
男子エリート

1位 ロブ・ピータース(ベルギー、クレラン・ファストフードサービス) 
2位 イェンス・アダムス(ベルギー、クレラン・ファストフードサービス) 
3位 クリス・ジョンジワード(オーストラリア、Jブラッド・アドヴェンチャー)
11位 前田公平(弱虫ペダルサイクリングチーム)
12位 小坂光(宇都宮ブリッツェンシクロクロスチーム)
14位 小坂正則(スワコレーシング)
18位 織田聖(弱虫ペダルサイクリングチーム)
42位 松本駿(SCOTT)
51位 池本真也(Frieten)
54位 齋藤拓真(Team GARNEAU CHAINRING)
56位 藤田拓海(SNEL CYCLOCROSS TEAM)

女子エリート
1位 エミリー・カチョレック(アメリカ)
2位 セリン・アルヴァラード(オランダ)
3位 ビアンカ・ヴァンデンホック(オランダ)
7位 武田和佳(Liv)
20位 須藤むつみ(Ready Go JAPAN)
25位 安田朋子(SNEL CYCLOCROSS TEAM)



参加メンバー
男子エリート

小坂光(宇都宮ブリッツェンシクロクロスチーム)
前田公平(弱虫ペダルサイクリングチーム)
小坂正則(スワコレーシング)
池本真也(Frieten)
松本駿(SCOTT)
織田聖(弱虫ペダルサイクリングチーム)
藤田拓海(SNEL CYCLOCROSS TEAM)
齋藤拓真(Team GARNEAU CHAINRING)

女子エリート
武田和佳(Liv) 
須藤むつみ(Ready Go JAPAN)
安田朋子(SNEL CYCLOCROSS TEAM) 

スタッフ
諏訪孝浩(SNEL CYCLOCROSS TEAM) 
佐藤成彦(弱虫ペダルサイクリングチーム)
日比谷篤史(弱虫ペダルサイクリングチーム)
菅田純也(Team GARNEAU CHAINRING)
池本秀紀(宇都宮ブリッツェンシクロクロスチーム)

report:Masakazu.Abe