フェルトはロードバイクラインナップにおいてAR、F、Zの3つのシリーズを基軸に展開している。各々の役割はエアロフォルムロード、スタンダードロード、コンフォートロードといった具合に異なるジャンルだ。

フェルトZ5フェルトZ5 (c)MakotoAYANO/cyclowired.jp
ロードバイクと言えば、以前は基本的に一種類しか存在しなかった。それがこの10年ほどで、同じ700Cホイールであるものの、まるで別種の自転車のごとき分化を見せてきた。よりユーザーの走り方に沿うように最適化、分化するようになったのだ。フェルトはこの時代の流れにいち早く反応し、上記の3機種を揃えるに至っているブランドだ。

フェルトの創始者、ジム・フェルトはアメリカ人だが、生産、流通の専門家、ビル・ドーリングとともにドイツで会社を起ち上げた。彼は自転車界において、アルミが『新素材』と呼ばれていた頃からイーストンのチューブの開発に携わり、自転車のデザインを始めた初期にはトライアスロンバイクの開発を積極的に行ってきた。

カーボンが高級ロードバイクのスタンダードとなった今日でも、彼の卓越した見識はバイク作りに発揮されており、『フレームの魔術師』と呼ばれる一因になっている。

今回のZシリーズは、これまでもコンフォートでありながら高い剛性を持つモデルとして人気を博してきた。トップチューブがスローピング(傾斜)しているが、このZシリーズの場合はシートチューブ側を下げているのではなく、ヘッドチューブ側を上げていると言う方が正しいだろう。このジオメトリーにより、長いヘッドチューブでもヨレることがなく高いフロント周り剛性を実現している。

チューブは角ばった造形のアワーグラス形状が特徴だチューブは角ばった造形のアワーグラス形状が特徴だ ヘッドチューブが長いことが良くわかるヘッドチューブが長いことが良くわかる


さらにこの長いヘッドチューブはアップライトなポジションを容易に取ることが出来るので、レース指向でないロードバイクを求める人、ツーリングを快適に楽しみたい人などに適しているだろう。ダウンチューブからBB部にかけてのチューブはかなり大口径だ。これが快適でありながらも十分な剛性が保たれている秘密かも知れない。

フレームの製法はモノコックで、素材にはトレカ・T700をベースに数種類のカーボンを組み合わせたハイモジュラスカーボンを採用している。フレーム設計には、Fシリーズの『セミコンパクトジオメトリー』をよりリラックスしたポジションをとれるようにした『コンパクトジオメトリー』を採用している。

フレームと同じくモノコックで作られるフォークフレームと同じくモノコックで作られるフォーク フレームと同じラインが入ったシートポスト。デザインに気が配られているフレームと同じラインが入ったシートポスト。デザインに気が配られている 前三角と比べて細身の後ろ三角。モジュラーモノコック形式により接合される前三角と比べて細身の後ろ三角。モジュラーモノコック形式により接合される


チェーンステーもBB部と一体化することで剛性を出し、また限りなくシートチューブに近づける事もできたので、ここでも剛性の向上に一役買っている。ヘッドチューブやBB、シートクランプ部分にアルミチューブを補強のために入れることで、ナーバスになりがちな軽量カーボンフレームの扱いを容易にしている。

コンポーネントもシマノ・105をメインに使用しており、安易にコストダウンに走らない姿勢に好感が持てる。また、ステム、ハンドル、シートピラーなどもフレームデザインに合わせたオリジナルプロダクツを採用しており、完成車として非常にまとまりのある仕上がりとなっている。

前三角と後ろ三角の左右の3ピースを繋ぐ、モジュラーモノコック形式。継ぎ目は全く見えない前三角と後ろ三角の左右の3ピースを繋ぐ、モジュラーモノコック形式。継ぎ目は全く見えない サドルもフェルトオリジナルで全体のデザインに統一感があるサドルもフェルトオリジナルで全体のデザインに統一感がある


カーボンフレームの10スピードバイクは、メーカー各社が熾烈な競争を繰り広げているセグメントだ。そこに20万円台前半という破格のプライスでフェルトは殴り込みを掛けてきた。フェルトは以前にも20万円を切るデュラエース搭載モデルという、反則ワザに等しい製品をリリースしたことがあったが、このZ5もそれに近い超お手頃製品と言っていいだろう。

しかし、ただ価格が安いだけでは他社と比肩すると言えない。
実際の走りでその実力を見せつけることが出来るのだろうか?





― インプレッション


「Zシリーズのコンセプトにブレなし。剛性と快適性が同居したコンフォートバイク」 鈴木祐一(Rise Ride)


「乗車姿勢がコンフォ  ートバイクとしてとても良い」鈴木祐一「乗車姿勢がコンフォ ートバイクとしてとても良い」鈴木祐一 フェルトには色々なシリーズがある中で、このZ5はいわゆるレーシングバイクではなく、コンフォートでクルージングするための自転車であることを中心に話をしたいと思う。

剛性感は凄く良い。そこから生まれる安心感が自転車をぶれさせない。そこが非常に良い。

ハンドリング特性もゆったりとサイクリングをするということをターゲットに作られているので、細かい切り返しなどより、安定感のあるコーナーリングなどが得意だ。ここも評価が高く、このバイクの優れたところだ。

振動吸収性もかなり高い。嫌なストレスとか突き上げ感とかをうまくカットしてくれている。一方で「滑りやすい」「砂利が浮いている」「大きな凹凸」などのロードインフォメーションは、ぶれずに伝えてくれる。サスペンションが付いている訳ではないのでもちろん衝撃はあるが、いやな突き上げはカットしてくれる。いいフィーリングで仕事をしてくれているなぁ、という印象を受けた。

ポジションに起因するのだが、加速感はおとなしめ。ハンドルがどうしても高めになるので、ダンシングしてグイグイもがくのは苦手だろう。ダンシングしたときにレーシーな加速ではなく、のんびりと加速していく傾向がある。

まずギヤを軽くしておいて、そこから徐々に上げていく。そうすることでケイデンスを一定に保ちながら、すうっと伸びていくように走らせると非常に良いフィーリングだ。

最近の自分の走り方だと、普段でもレーシングやトレーニングを意識してしまう。そうすると加速するために重いギヤをいきなり踏んで、力でねじ伏せてしまう傾向があるのだが、久しぶりに軽いギヤから始めたら、すうっと伸びていく感覚が得られた。この感覚は新鮮というか、気持ちいいなあと思った。それはZ5の変速タイミングとうまく合わせることで、生まれるようだ。

自転車自体が乗るフィールドを訴えかけてくるので、コンフォートとして使うならば、他のレーシングユースバイクより優れている部分は非常に多い。アップライトなポジションにしても「あ、こんなに楽なのか」と思わせてくれる。また、視線が高くなるので、遠くまで見渡せる。腰回り、肩周りの負担軽減効果もあり、乗車姿勢がコンフォートバイクとしてとても良い。

ステムは内部のシムを調整することでライズ角を変化させることができるステムは内部のシムを調整することでライズ角を変化させることができる 半日くらいのツーリングだとか、レーサージャージを着て軽く汗を流したいだとか、あるいは通勤でスポーティに走りたいといった用途でも、結構キビキビ走って楽しいと思う。スポーツ的な視点で見ると、有酸素運動までの運動強度であれば、フィーリングはすこぶる良好だ。フィットネスなどにも適している。無酸素領域はレーシングな要素が多いので、このバイクには向かないかも知れない。

パーツアッセンブルで評価できるところは、クランクやブレーキなどコスト削減のためにサードパーティを使いがちな部分も、しっかりと同グレードのシマノ製品を使ってくれていること。そういったところがオーナーに安心感を与えてくれる。

もう一点、ホイールについて。このバイクには最近流行りの完組ホイールではなく、昔ながらのいわゆる手組ホイールがついている。このホイールは完組だと高くなりすぎる剛性を抑えてくれる。スポークが増えることでしなやかな乗り心地になっている。リムハイトが高いハイテンションスポークの完組と違い、リムハイトを抑えてスポークを長くすることにより、ホイールにサスペンションのような役割を持たせ、快適感を出している。この点も優れていると思う。

使い方を挙げれば、輪行ツーリングなどがいいだろう。カーボン素材でそれなりに軽い自転車に仕上がっているし、スローピングが大きいフレームはサドルを下げれば簡単に輪行袋に入るはず。出先でツーリングするときに、手組ホイールなら一本くらいスポークが曲がってしまっても、ホイールに振れが出にくいなどのメリットもある。

レーシングユースを全く度外視して見ると、意外なまでに優れた自転車の一台になると思う。それはこの自転車の目的がはっきりしているから。性能の他にも価格から考えても非常にお買い得だし、ライトウエイプロダクツジャパンが「ライフスタイルバイク」を謳ってくるのもよく分かる。

個人的な希望だが、フロントホイールだけラジアル組みではなく、タンジェント組みで組んでくれないだろうか?そうすればより快適なモデルになるだろう。



「コストパフォーマンス高し! 初心者に本当にお勧めな一台」 浅見和洋(なるしまフレンド)


「ハンドリング特性は非常に操りやすい」浅見和洋「ハンドリング特性は非常に操りやすい」浅見和洋 ヘッドチューブが長く、フォークコラムにスペーサーを多く入れる必要がないので、コンフォートバイクとしてはヘッド周りの剛性が高いレベルで確保されている。ダンシングしたときによれやたわみなどが感じられず、グイグイ反応してくれる。

しかしコーナーリング性能については、重心が高いアップポジション設計のため高速域が苦手か。速度域の低いライダーであれば、全く問題ない性能は確保している。ブレーキにシマノ・105が付いているのがうれしい。非常に効きが良く、安心感がある。

ハンドリング特性は非常に操りやすいものだ。初心者などが乗っても全く問題の無いレベルだと思う。比較的高い剛性が確保されているので、この手のコンフォートバイクとしてはいいのではないだろうか?

エントリーモデルでありながら、ハイモジュラスカーボンという高品質な素材を使っているので、剛性の確保に効いているのだろう。

振動吸収性は良かった。完成車として装備されているタイヤが700×25Cが入っているからだろう。これにより衝撃が分散され、ライダーへの刺激が抑えられている。さらにハンドルに巻いているバーテープもジェル素材入りの製品を使用しているので、これも一役買っている。このバイクの使用目的をしっかりと分かっている人が、パーツアッセンブルを決めたに違いない。

トップチューブの割合からすると、ヘッドチューブは長い。使用目的を考えると当然なのだが。ステムをドン付け(コラムにアヘッドスペーサーを入れずに、ステムを可能な限り低くすること)するにしても、かなりアップなポジションになると思う。ヘッド周りの剛性を保ちつつ、アップライトポジションが可能なので、運動性能を損なうことなく快適なサイクリングをすることが可能な自転車だと思った。

気になった点は、組み付けが甘かったこと。ワイヤの長さや取り回しなど、ツメが甘かった。低価格で提供しているバイクなのでしょうがない面はあるのだが。

フェルト・ARシリーズで話した内容と重複するが、購入するコツとしては信頼のあるショップで買った方が良い。理由は甘い組み付けを組み立て技術でカバーしてくれるから。そうすれば高いパフォーマンスが得られる。購入の際は、値段だけで判断しないようにして欲しい。この自転車に限らず全ての自転車に言えることだが、組み付けも含めて自転車の性能になるのだ。

税込みで228,900円。ハイモジュラスカーボンのモノコックフレームでフル105搭載完成車でのこの価格は、他社と比べてもものすごく安い。これだけ機材パフォーマンスが高ければ、スポーツバイクを始めるにあたって本当にお勧めと言うことができる。


フェルトZ5フェルトZ5 (c)MakotoAYANO/cyclowired.jp

フェルトZ5

フレーム FELT HMモノコックカーボン
フォーク FELT 1.4 HMモノコックカーボン
カラー グロスカーボン
コンポーネント シマノ・105
ホイール マヴィック・CXP-22N
タイヤ ヴィットリア・ザフィーロ
サイズ  510、540、560
希望小売価格(税込み) \228,900




インプレライダーのプロフィール


鈴木祐一(Rise Ride)鈴木祐一(Rise Ride) 鈴木祐一(Rise Ride)

サイクルショップ・ライズライド代表。バイシクルトライアル、シクロクロス、MTB-XCの3つで世界選手権日本代表となった経歴を持つ。元ブリヂストンMTBクロスカントリーチーム選手としても活躍した。
2007年春、神奈川県橋本市にショップをオープン。クラブ員ともにバイクライドを楽しみながらショップを経営中。各種レースにも参戦中。セルフディスカバリー王滝100Km覇者。
サイクルショップ・ライズライド


浅見和洋(なるしまフレンド)浅見和洋(なるしまフレンド) 浅見和洋(なるしまフレンド)

プロショップ「なるしまフレンド原宿店」スタッフ。身長175cm、体重65kg。かつては実業団トップカテゴリーで走った経歴をもつ。脚質は厳しい上りがあるコースでの活躍が目立つクライマータイプだ。ダンシングでパワフルに走るのが得意。最近の嗜好は日帰りロングランにあり、例えば東京から伊豆といった、距離にして300kmオーバーをクラブ員らと楽しんでいる。
なるしまフレンド

ウェア協力:パールイズミ
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