「準備は整った」。グランデパールを前に開かれた記者会見で自信を見せたクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)。同時に、ディフェンディングチャンピオンは「自分史上最も厳しい挑戦になる」と緊張した表情を見せた。



3度目の総合優勝を狙うクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)3度目の総合優勝を狙うクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ) photo:Kei Tsuji


大勢の報道陣が詰めかけたチームスカイの記者会見大勢の報道陣が詰めかけたチームスカイの記者会見 photo:Kei Tsuji「クリテリウム・ドゥ・ドーフィネを良い形で終えた今、とても良い状態でツールの開幕を迎える」。メンバー9名全員が揃った記者会見でジャーナリストの質問の95%を集めたフルームは開口一番そう語った。

時にフランス語も駆使し、質問にひとつひとつ答えていくクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)時にフランス語も駆使し、質問にひとつひとつ答えていくクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ) photo:Kei Tsujiオリンピックイヤーの今年、フルームは例年とは異なるレースプログラムを組んだ。2月のヘラルド・サンツアーでシーズンイン(総合優勝)したものの、春先のステージレースやクラシックレースへの出場日数を減らした。4月下旬のツール・ド・ロマンディでは序盤ステージで遅れ、山岳ステージで勝利したものの総合38位と振るわず。1ヶ月のトレーニング期間を経て挑んだツール前哨戦クリテリウム・ドゥ・ドーフィネで2年連続総合優勝を飾った。

イギリスのEU離脱について質問されるクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)イギリスのEU離脱について質問されるクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ) photo:Kei Tsuji「例年は春にコンディションを上げ、そのコンディションを7月までキープしていたけど、今年はレースプログラムを変更。春ではなく、ツール開幕の今この時期にちょうど仕上がった。例年よりもコンディショニングを遅らせたことで調子が長持ちし、リオ五輪までつなげることができればと思う」とフルームは語る。

2016年の第103回ツールは山頂フィニッシュこそ4ステージと少ないものの(2014年は6ステージ、2015年は5ステージ)、山岳の比重が高いと言われる。「今年はクライマー向きのコースレイアウト。タイムトライアルは2つ設定されているけど、そのうち1つはほぼ登りっぱなしの山岳タイムトライアルで、もう1つは登りを含むコース。クライマーも対応可能なタイムトライアルだと言える」とフルームは断言する。

「しかも3週間の登りの量は例年を上回っている。この 『クライマー向きのツール・ド・フランス』に合わせ、今回はより山岳に重点を置いてチームのメンバーを選んだんだ」。



小雨が降る中、トレーニングライドに出るチームスカイ小雨が降る中、トレーニングライドに出るチームスカイ photo:Kei Tsuji


注目度ナンバーワンチームだけに多くのフォトグラファーモトが伴走する注目度ナンバーワンチームだけに多くのフォトグラファーモトが伴走する photo:Kei Tsujiノルマンディーの開幕3ステージは平坦基調ながら、雨がちな天気と細く曲がりくねったコースが特徴。海風によるナーバスな展開も予想される。「北のクラシック」を得意とするイアン・スタナード(イギリス)やルーク・ロウ(イギリス)、ゲラント・トーマス(イギリス)らがフルームを護衛する。

フランスのノルマンディー地方を走るチームスカイフランスのノルマンディー地方を走るチームスカイ photo:Kei Tsujiフルームは「まずは安全に序盤のステージを走りきり、タイムを失うことなくピレネーに到着することが重要。3週間の長い戦いの中では収拾のきかない状況も発生するので、様々なシチュエーションに対応できるメンバーを揃えた。強力なメンバーが揃ったチームスカイのリーダーとして入ることを誇りに思う」と語る。

「いつもよりライバルは強力で、しかもマークすべき選手が多い。今年の総合争いの競技レベルは例年よりもずっと高い」とフルームは警戒する。タイムトライアルの距離が短いことはライバルのナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)やアルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ)に有利に働くと見られる。

「3度目の総合優勝に向けた挑戦は、自分のキャリアの中で最も厳しいものになるだろう」と、タイトルを防衛する立場のディフェンディングチャンピオンは語る。時折冗談を交えて会見場の雰囲気を和ませながらも、気づけばピリッとした緊張感に溢れる表情に戻っていた。



開幕を前に最終調整するクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)開幕を前に最終調整するクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ) photo:Kei Tsuji

text&photo:Kei Tsuji in Saint-Lo, France