ドーフィネ最初の山頂フィニッシュは30名弱の集団によるスプリント勝負に持ち込まれ、逃げていた選手を追い抜いたヘスス・エラーダ(スペイン、モビスター)がUCIワールドツアーレース初勝利。アルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ)がリーダージャージを守った。



ローヌ渓谷の西に広がる山岳地帯を走るローヌ渓谷の西に広がる山岳地帯を走る photo:Tim de Waele


クリテリウム・ドゥ・ドーフィネ2016第2ステージクリテリウム・ドゥ・ドーフィネ2016第2ステージ image:Criterium du Dauphiné3級山岳シャルマゼル=ジャンサニエール(6.8km/平均3.7%)の山頂フィニッシュが設定されたクリテリウム・ドゥ・ドーフィネ第2ステージ。登り自体の難易度は低いが、直前に登場する2級山岳サンジョルジュ=アン=クザン(7.5km/平均5.6%)との組み合わせがスプリンターたちの侵入を阻止し、クライマーやパンチャーたちの脚を試す。

逃げグループを形成するジャック・バウアー(ニュージーランド、キャノンデール)ら5名逃げグループを形成するジャック・バウアー(ニュージーランド、キャノンデール)ら5名 photo:Tim de Waeleワイン造りが盛んなローヌ渓谷を発つ168kmの中級山岳ステージ。別府史之(トレック・セガフレード)のトレーニングエリアである山岳地帯に入るとすぐにこの日の逃げが生まれる。前年度の山岳賞獲得者ダニエル・テクレハイマノ(エリトリア、ディメンションデータ)に5名が加わる形で逃げグループが形成されると、ティンコフ率いるメイン集団はこの動きを見送った。

コンタドールの後方でチームメイトとともに走るクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)コンタドールの後方でチームメイトとともに走るクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ) photo:Tim de Waeleアレクセイ・ルトセンコ(カザフスタン、アスタナ)の脱落によってテクレハイマノ、アレクシ・グジャール(フランス、AG2Rラモンディアール)、ジャック・バウアー(ニュージーランド、キャノンデール)、バルトス・フザルスキー(ポーランド、ボーラ・アルゴン18)、リリアン・カルメジャーヌ(フランス、ディレクトエネルジー)の5名となった先頭グループは、最大5分半のリードでアップダウンコースをエスケープ。2つのカテゴリー山岳を先頭通過して合計7ポイントを獲得したテクレハイマノは山岳賞ランキング3位にジャンプアップしている。

レース後半にかけて先頭5名のリードは縮まり、残り30kmを切ったところでエティックス・クイックステップの集団ペースアップが始まるとさらに縮小スピードは早まる。約2分半のリードで2級山岳サンジョルジュ=アン=クザンの登坂を開始した逃げグループは崩壊し、やがてグジャールが独走に持ち込んだ。

集団先頭ではミカル・クヴィアトコウスキー(ポーランド、チームスカイ)のアタックを切っ掛けにステージ優勝を見据えた動きが活発化。その一方で、ポイント賞ジャージを着るナセル・ブアニ(フランス、コフィディス)を始めとするピュアスプリンターだけでなく、エドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、ディメンションデータ)に代表されるいわゆる登れるスプリンターはこの2級山岳で軒並み脱落した。



ティンコフがメイン集団をコントロールするティンコフがメイン集団をコントロールする photo:Tim de Waele


独走に持ち込むアレクシ・グジャール(フランス、AG2Rラモンディアール)独走に持ち込むアレクシ・グジャール(フランス、AG2Rラモンディアール) photo:Tim de Waele元世界チャンピオンのクヴィアトコウスキーにはトニー・ギャロパン(フランス、ロット・ソウダル)とセルジュ・パウエルス(ベルギー、ディメンションデータ)、ファブリス・ジャンデボズ(フランス、ディレクトエネルジー)の3名が反応し、集団から抜け出したまま2級山岳をクリアするとそのまま残り9km地点で先頭グジャールに追いつく(クヴィアトコウスキーは脱落)。

メイン集団からアタックするミカル・クヴィアトコウスキー(ポーランド、チームスカイ)メイン集団からアタックするミカル・クヴィアトコウスキー(ポーランド、チームスカイ) photo:Tim de Waele総合6位につけていたリエージュ〜バストーニュ〜リエージュ覇者のワウト・ポエルス(オランダ、チームスカイ)や優勝候補の一角サイモン・ゲランス(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)が脱落する中、フィニッシュに向かう3級山岳シャルマゼル=ジャンサニエールの登りではミケル・ランダ(スペイン、チームスカイ)やセルジオルイス・エナオモントーヤ(コロンビア、チームスカイ)、ダニエル・ナバーロ(スペイン、コフィディス)が立て続けにアタックしたが決まらない。

カウンターアタックで飛び出したトニー・ギャロパン(フランス、ロット・ソウダル)らカウンターアタックで飛び出したトニー・ギャロパン(フランス、ロット・ソウダル)ら photo:Tim de Waele「アタックするべきかスプリントを待つべきか迷っていたタイミングでクヴィアトコウスキーがアタック。そこからステージ優勝のために全ての力をぶつけた。勝てると思っていた」と振り返るギャロパンと、パウエルス、ジャンデボズの3名が先頭のままフラムルージュを通過。しかし後方から迫り来る約30名の集団のスピードには敵わず、モビスター勢の加速によって先頭3名のステージ優勝の希望は途絶えた。

登りスプリントで勝利したヘスス・エラーダ(スペイン、モビスター)登りスプリントで勝利したヘスス・エラーダ(スペイン、モビスター) photo:Tim de Waele最初に先頭3名を捉えたダニエル・モレーノ(スペイン、モビスター)の後ろからエラーダが加速する。「今日は自分向きだと思っていたフィニッシュに合わせて体力の温存に徹した」というエラーダの登りスプリントが冴え渡り、後続に2秒差をつける走りで勝利した。

「ティンコフが一日中ずっと集団を牽引して、終盤にかけてエティックス・クイックステップが強力にペースを作るタフな一日だった。スプリントで100%の力を発揮するためにエネルギーを浪費しないように心がけた。残り500mで逃げていた選手を吸収し、まずはダニ(モレーノ)がアタック。その動きに導かれる形でスプリントして勝利した」とエラーダは語る。兄のホセ・エラーダとともにモビスターに所属し、2013年にスペイン選手権で優勝を飾っている25歳がUCIワールドツアーレース初勝利を飾った。

ハイペースに対応できずに21秒遅れたファビオ・アル(イタリア、アスタナ)と、チームメイトと絡む落車で45秒遅れたロメン・バルデ(フランス、AG2Rラモンディアール)を除いて総合上位陣のタイムに変動なし。総合首位を守ったコンタドールは「最初から最後までハイスピードな一日だった。風も強く、地形はアップダウンの繰り返し。今はまだスピードに対応できる脚の状態ではないので良いトレーニングになったと思う。チームの状態は良く、ツールに向けての調整は順調に進んでいるけど、イエロージャージを今着ていることは重要じゃない。最終日に着ることに意味があるので、チームスカイ勢の攻撃にも落ち着いて対処した」と語っている。

今大会最長の187.5kmコースで行われる翌日の第3ステージは、急勾配区間を含む2級山岳セシェラ(2.9km/平均8.2%)が残り16km地点に登場する。コンタドールの「ドーフィネには平穏な一日が存在しない」という言葉の通り、アタックが連発するハイスピードな展開が予想される。

選手コメントはレース公式サイトより。



UCIワールドツアーレース初勝利を飾ったヘスス・エラーダ(スペイン、モビスター)UCIワールドツアーレース初勝利を飾ったヘスス・エラーダ(スペイン、モビスター) photo:Tim de Waeleライオンにキスするアルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ)ライオンにキスするアルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ) photo:Tim de Waele


クリテリウム・ドゥ・ドーフィネ2016第2ステージ結果
1位 ヘスス・エラーダ(スペイン、モビスター)                4h12’43”
2位 トニー・ギャロパン(フランス、ロット・ソウダル)              +02”
3位 セルジュ・パウエルス(ベルギー、ディメンションデータ)
4位 ファブリス・ジャンデボズ(フランス、ディレクトエネルジー)
5位 ダニエル・モレーノ(スペイン、モビスター)
6位 バウク・モレマ(オランダ、トレック・セガフレード)
7位 グレッグ・ファンアフェルマート(ベルギー、BMCレーシング)
8位 クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)
9位 ヴァレリオ・コンティ(イタリア、ランプレ・メリダ)
10位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)
36位 ファビオ・アル(イタリア、アスタナ)                   +21”
51位 ロメン・バルデ(フランス、AG2Rラモンディアール)             +45”
129位 別府史之(日本、トレック・セガフレード)               +15’41”

個人総合成績
1位 アルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ)            8h53’14”
2位 リッチー・ポート(オーストラリア、BMCレーシング)              +06”
3位 クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)                  +13”
4位 ダニエル・マーティン(アイルランド、エティックス・クイックステップ)     +21”
5位 ジュリアン・アラフィリップ(フランス、エティックス・クイックステップ)    +24”
6位 ヘスス・ヘラーダ(スペイン、モビスター)                   +27”
7位 アダム・イェーツ(イギリス、オリカ・グリーンエッジ)             +31”
8位 ディエゴ・ローザ(イタリア、アスタナ)                    +37”
9位 ダニエル・ナバーロ(スペイン、コフィディス)                 +43”
10位 バウク・モレマ(オランダ、トレック・セガフレード)              +48”

ポイント賞
1位 ナセル・ブアニ(フランス、コフィディス)

山岳賞
1位 アルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ)

ヤングライダー賞
1位 ジュリアン・アラフィリップ(フランス、エティックス・クイックステップ)

チーム総合成績
1位 チームスカイ

text:Kei Tsuji
photo:Tim de Waele

最新ニュース(全ジャンル)