標高2744mの「チーマコッピ」アニェッロ峠を越えるジロ・デ・イタリア第19ステージでマリアローザ争いに激震が走った。下りで落車したクルイスウィクがリードを失い、復調したニーバリが1級山岳リスールを制覇。マリアローザはステージ3位のチャベスの手に渡っている。



スタート直後からスピードが上がり、レース序盤は集団が一列棒状スタート直後からスピードが上がり、レース序盤は集団が一列棒状 photo:Kei Tsuji


5月27日(金)第19ステージ ☆☆☆☆☆ ピネローロ〜リスル(フランス)162km5月27日(金)第19ステージ ☆☆☆☆☆ ピネローロ〜リスル(フランス)162km image:Giro d'Italia2016年のチーマコッピ(大会最高地点)が第19ステージに登場する。目指すはフランス国境に佇むアルプスの峠、標高2744mのアニェッロ峠(21.3km/平均6.8%)と、その先に待つ1級山岳リスル(12.9km/平均6.9%)の山頂フィニッシュだ。単純に言って2つの峠を登るだけだが獲得標高差は3600mに達する。

マキシム・モンフォール(ベルギー、ロット・ソウダル)らを含む28名の逃げが決まるマキシム・モンフォール(ベルギー、ロット・ソウダル)らを含む28名の逃げが決まる photo:Kei Tsuji山本元喜(NIPPOヴィーニファンティーニ)が「逃げが決まって集団が安定するまでが一番きつかった」と振り返るほど、レースは序盤からアタックの応酬で高速化。アニェッロ峠に向かってじわりじわりと高度を上げる登り基調にもかかわらず最初の1時間の平均スピードは50.3km/hをマークした。

チーマコッピのアニェッロ峠に向かうプロトンチーマコッピのアニェッロ峠に向かうプロトン photo:Kei Tsuji74km地点のスプリントポイントを前に28名が先行を開始すると、総合に危険を及ぼす選手が入っていないとしてメイン集団はペースダウン。ディエゴ・ウリッシ(イタリア、ランプレ・メリダ)やマキシム・モンフォール(ベルギー、ロット・ソウダル)、ミケル・ニエベ(スペイン、チームスカイ)、ダミアーノ・クネゴ(イタリア、NIPPOヴィーニファンティーニ)を含む大きな逃げがリードを広げながらアニェッロ峠の登りに突入した。

霧に包まれたアニェッロ峠を進むプロトン霧に包まれたアニェッロ峠を進むプロトン photo:Kei Tsuji総合逆転を狙うアスタナ、モビスター、オリカ・グリーンエッジはそれぞれミケーレ・スカルポーニ(イタリア、アスタナ)、ローリー・スザーランド(オーストラリア、モビスター)、ルーベン・プラサ(スペイン、オリカ・グリーンエッジ)を逃げに送り込むことに成功する。ロットNLユンボ率いるメイン集団とのタイム差が4分まで広がり、登り勾配が増したところでウリッシらがアタック。やがて登坂力で頭一つ抜け出たスカルポーニが先頭を奪った。

最大勾配が15%に達し、深い霧と雪の壁に囲まれたチーマコッピをスカルポーニが単独登頂。1分27秒遅れでニエベやウリッシを含む追走グループが続く。その5分後方のメイン集団では総合上位陣による動きが白熱し、エステバン・チャベス(コロンビア、オリカ・グリーンエッジ)の数度のアタックによって集団は人数を減らした。

断続的に加速するチャベスにはマリアローザのステフェン・クルイスウィク(オランダ、ロットNLユンボ)とヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)だけが反応し、逆に総合3位アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)やラファル・マイカ(ポーランド、ティンコフ)らはポジションを落とした。



雪壁が続くアニェッロ峠を先頭で登るミケーレ・スカルポーニ(イタリア、アスタナ)雪壁が続くアニェッロ峠を先頭で登るミケーレ・スカルポーニ(イタリア、アスタナ) photo:Kei Tsuji
アニェッロ峠でアタックしたエステバン・チャベス(コロンビア、オリカ・グリーンエッジ)らアニェッロ峠でアタックしたエステバン・チャベス(コロンビア、オリカ・グリーンエッジ)ら photo:Kei Tsujiアニェッロ峠でペースアップするヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)アニェッロ峠でペースアップするヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ) photo:Kei Tsuji
アニェッロ峠のダウンヒルを先頭でこなすヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)アニェッロ峠のダウンヒルを先頭でこなすヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ) photo:Kei Tsuji


先頭から20分遅れでアニェッロ峠に差し掛かる山本元喜(NIPPOヴィーニファンティーニ)先頭から20分遅れでアニェッロ峠に差し掛かる山本元喜(NIPPOヴィーニファンティーニ) photo:Kei Tsuji総合1位クルイスウィク、総合2位チャベス、総合4位ニーバリの3名がライバルたちを1分近く引き離してフランスに入国し、長い長い40km以上にわたるダウンヒルに突入する。下りコーナーを攻めるニーバリにはチャベスが食らいついたが、その後ろでオーバーランしたクルイスウィクが雪の壁に衝突して一回転した。

アニェッロ峠の下りで落車したイルヌール・ザッカリン(ロシア、カチューシャ)アニェッロ峠の下りで落車したイルヌール・ザッカリン(ロシア、カチューシャ) photo:Kei Tsujiクルイスウィクはすぐさま立ち上がったものの、バイクの故障によって再スタートに時間がかかり、ニュートラルサポートを受けたものの再びストップ。チームカーからスペアバイクを受け取ってペースを戻すまでに時間がかかり、ニーバリとチャベスに先行を許すどころか登りで遅れていたバルベルデグループにも追い抜かれた。

ユンヘルスを含む追走グループに入ったステフェン・クルイスウィク(オランダ、ロットNLユンボ)ユンヘルスを含む追走グループに入ったステフェン・クルイスウィク(オランダ、ロットNLユンボ) photo:Kei Tsujiアニェッロ峠の下りでは総合5位イルヌール・ザッカリン(ロシア、カチューシャ)も派手にクラッシュし、レースに復帰することができずにそのまま病院に搬送。ブリアンソンの病院での検査の結果、鎖骨と肩甲骨の骨折が判明している。

先頭で1級山岳リスルを駆け上がるエステバン・チャベス(コロンビア、オリカ・グリーンエッジ)ら先頭で1級山岳リスルを駆け上がるエステバン・チャベス(コロンビア、オリカ・グリーンエッジ)ら photo:Kei Tsuji長いダウンヒル区間で先頭スカルポーニにはモンフォールが合流。そのまま協力して最後の1級山岳リスルに向かうと思われたが、スカルポーニは後方のニーバリを待つためにスローダウン。作戦通り貴重な戦力を得たニーバリとチャベスは後方のグループを引き離しにかかる。

残り5kmを切ってチャベスからリードを奪うヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)残り5kmを切ってチャベスからリードを奪うヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ) photo:Kei Tsujiフィニッシュまで30kmを残して先頭モンフォールから1分10秒遅れでウリッシやニエベを含む追走グループ、3分遅れでスカルポーニが牽引するニーバリ&チャベスのグループ、3分20秒遅れでバルベルデ&マイカのグループ、そして3分50秒遅れでマリアローザのクルイスウィク&マリアビアンカのボブ・ユンヘルス(ルクセンブルク、エティックス・クイックステップ)のグループという展開。

1級山岳リスルで苦しむステフェン・クルイスウィク(オランダ、ロットNLユンボ)1級山岳リスルで苦しむステフェン・クルイスウィク(オランダ、ロットNLユンボ) photo:Kei Tsuji緩い下り基調の渓谷道路を最も速く駆け抜けたのはニーバリ&チャベスのグループで、前を走るウリッシらを飲み込み、後方で懸命に追走する総合ライバルたちを引き離した状態で最後の1級山岳リスルに差し掛かった。

独走でフィニッシュにやってきたヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)独走でフィニッシュにやってきたヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ) photo:Kei Tsujiスカルポーニがハイペースを刻む精鋭グループは登りに入ってすぐモンフォールを追い抜き、残り9km地点でついにニーバリが加速する。この動きにはチャベスとニエベだけがジョイン。登りを進めば進むほど、先頭3名と後続のタイム差は広がっていった。

53秒遅れでフィニッシュしたエステバン・チャベス(コロンビア、オリカ・グリーンエッジ)53秒遅れでフィニッシュしたエステバン・チャベス(コロンビア、オリカ・グリーンエッジ) photo:Kei Tsuji残り5kmのニーバリのアタックに乗じてチャベスがカウンターアタックを仕掛けるも、逆にスピードを失ってニーバリがリードを開始。ニーバリは追いすがるチャベスとニエベを振り払うスピードで九十九折の登りを独走し、両手で天を指差して標高1862mのスキーリゾート地にフィニッシュした。

登りと下りでレースを作り、今大会初勝利を飾ったイタリアチャンピオンは「今日は怒りを込めて走り、勝利した。ここ最近の不調に対処するのは厳しいものがあったが、自分を信じ、乗り越えることができた。今日は想像を絶するほど厳しいステージだった。標高のある登りで良い感触を得ていたので、苦しんでいる選手たちを振り切るようにアタックした。スカルポーニが逃げに入っていたことが味方したよ」と記者会見で語っている。

1級山岳リスルでさらにタイムを失ったクルイスウィクが4分54秒遅れでフィニッシュしたため、マリアローザはステージ3位のチャベスの手に。初めてマリアローザに袖を通したチャベスは「厳しいステージの最後にマリアローザを獲得したことをとても嬉しく思う。今日はヴィンチェンツォ・ニーバリに食らいつくだけで精一杯だった。ステフェン・クルイスウィクが落車で遅れたことは聞かされていなかった」と語る。「でもまだ何も終わったわけではなくて、明日の厳しいステージが残っている」。

チーマコッピステージを終えてチャベスはニーバリから44秒、クルイスウィクから1分05秒のリード。復活を遂げて総合4位からマリアローザを狙えるポジションにまで舞い戻ったニーバリは「グランツールの最終週は何が起こるか分からない。とても幸せな気持ちに包まれているけど、今はまだ浮き足立っている場合じゃない。まだ厳しいステージが残っている」とコメントしている。

マリアローザを失ったクルイスウィクはレース後にブリアンソンの病院へ直行。X線検査の結果、肋骨にヒビが見つかった。脚や脇腹にも痛みを抱えており、レースを続行するか否かは第20ステージの朝に判断するとチームは発表している。

アニェッロ峠を先頭から約20分遅れでクリアした山本元喜は総勢60名のグルペットでフィニッシュ。厳しい山岳ステージは登り1ステージ。初めてのジロ完走に王手をかけた。



4分54秒遅れでフィニッシュするステフェン・クルイスウィク(オランダ、ロットNLユンボ)4分54秒遅れでフィニッシュするステフェン・クルイスウィク(オランダ、ロットNLユンボ) photo:Kei Tsujiプロセッコを開けるヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)プロセッコを開けるヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ) photo:Kei Tsuji
コロンビア国旗を羽織ったマリアローザのエステバン・チャベス(コロンビア、オリカ・グリーンエッジ)コロンビア国旗を羽織ったマリアローザのエステバン・チャベス(コロンビア、オリカ・グリーンエッジ) photo:Kei Tsuji




ジロ・デ・イタリア2016第19ステージ結果
1位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)           4h19’54”
2位 ミケル・ニエベ(スペイン、チームスカイ)                 +51”
3位 エステバン・チャベス(コロンビア、オリカ・グリーンエッジ)        +53”
4位 ディエゴ・ウリッシ(イタリア、ランプレ・メリダ)            +1’02”
5位 ラファル・マイカ(ポーランド、ティンコフ)               +2’14”
6位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)
7位 リゴベルト・ウラン(コロンビア、キャノンデール)
8位 ゲオルグ・プレイドラー(オーストリア、ジャイアント・アルペシン)    +2’43”
9位 ニコラス・ロッシュ(アイルランド、チームスカイ)            +2’51”
10位 ユベール・デュポン(フランス、AG2Rラモンディアール)
14位 ボブ・ユンヘルス(ルクセンブルク、エティックス・クイックステップ)  +3’45”
15位 アンドレイ・アマドール(コスタリカ、モビスター)           +4’30”
16位 ステフェン・クルイスウィク(オランダ、ロットNLユンボ)        +4’54”
17位 カンスタンティン・シウトソウ(ベラルーシ、ディメンションデータ)   +5’53”
24位 ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、AG2Rラモンディアール)    +7’55”
136位 山本元喜(日本、NIPPOヴィーニファンティーニ)           +36’31”

マリアローザ 個人総合成績
1位 エステバン・チャベス(コロンビア、オリカ・グリーンエッジ)     78h14’20”
2位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)             +44”
3位 ステフェン・クルイスウィク(オランダ、ロットNLユンボ)         +1’05”
4位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)            +1’48”
5位 ラファル・マイカ(ポーランド、ティンコフ)               +3’59”
6位 ボブ・ユンヘルス(ルクセンブルク、エティックス・クイックステップ)   +7’53”
7位 アンドレイ・アマドール(コスタリカ、モビスター)            +9’34”
8位 リゴベルト・ウラン(コロンビア、キャノンデール)            +12’18”
9位 カンスタンティン・シウトソウ(ベラルーシ、ディメンションデータ)    +13’19”
10位 ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、AG2Rラモンディアール)    +14’11”

マリアロッサ ポイント賞
1位 ジャコモ・ニッツォロ(イタリア、トレック・セガフレード)       185pts
2位 ディエゴ・ウリッシ(イタリア、ランプレ・メリダ)           152pts
3位 マッテオ・トレンティン(イタリア、エティックス・クイックステップ)  141pts

マリアアッズーラ 山岳賞
1位 ダミアーノ・クネゴ(イタリア、NIPPOヴィーニファンティーニ)     134pts
2位 ミケル・ニエベ(スペイン、チームスカイ)                98pts
3位 ステファン・デニフル(オーストリア、IAMサイクリング)         73pts

マリアビアンカ ヤングライダー賞
1位 ボブ・ユンヘルス(ルクセンブルク、エティックス・クイックステップ) 78h22’13”
2位 セバスティアン・エナオゴメス(コロンビア、チームスカイ)       +22’09”
3位 ヴァレリオ・コンティ(イタリア、ランプレ・メリダ)          +59’22”

チーム総合成績
1位 アスタナ                             235h05’31”
2位 キャノンデール                            +12’09”
3位 モビスター                              +18’56”

text&photo:Kei Tsuji in Risoul, France

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