24名の大逃げが決まったジロ・デ・イタリア第18ステージ。山本元喜を含む逃げグループの中から抜け出した2名を残り300mで捉え、タイミングよくスプリントに持ち込んだマッテオ・トレンティン(イタリア、エティックス・クイックステップ)が勝利した。



逃げグループのローテーションに入る山本元喜(NIPPOヴィーニファンティーニ)逃げグループのローテーションに入る山本元喜(NIPPOヴィーニファンティーニ) photo:Kei Tsuji
水田が広がるピエモンテ州を走る水田が広がるピエモンテ州を走る photo:Kei Tsujiメイン集団の先頭はロットNLユンボが固めるメイン集団の先頭はロットNLユンボが固める photo:Kei Tsuji


5月26日(木)第18ステージ ☆☆☆ ムッジョ〜ピネローロ 240km5月26日(木)第18ステージ ☆☆☆ ムッジョ〜ピネローロ 240km image:Giro d'Italia第18ステージはミラノ近郊のムッジョから西に向かい、トリノの街をかすめるようにしてピネローロへ。大部分が真っ平らな大会最長240kmコースは一見スプリンターにもチャンスがありそうだが、残り19.5km地点でピークを迎える2級山岳プラマルティーノ(4.7km/平均10.5%/最大17%)は常に勾配が11%前後を刻む急坂であり、ピュアスプリンターの侵入を拒む。

山本元喜(NIPPOヴィーニファンティーニ)が逃げグループを牽引山本元喜(NIPPOヴィーニファンティーニ)が逃げグループを牽引 photo:Kei Tsujiスプリンター向きの難易度ではなく、かと言って翌日にアルプス山岳決戦を控えた総合上位陣が活発に動くステージでもない。まだステージ優勝を手にしていない11チームを中心に、この日は24名の大きな逃げグループが開始直後に形成された。

ロットNLユンボを先頭にメイン集団が進むロットNLユンボを先頭にメイン集団が進む photo:Kei Tsuji逃げグループの中で総合成績が最も良いのは第8ステージで勝利してマリアローザを着たジャンルーカ・ブランビッラ(イタリア、エティックス・クイックステップ)で、ステフェン・クルイスウィク(オランダ、ロットNLユンボ)から55分36秒遅れの総合29位。つまりロットNLユンボにしてみれば、50分を超えるタイム差で24名が逃げ切ってもマリアローザは安泰という展開。

マリアロッサ擁するトレック・セガフレードは逃げに選手を送り損ねたものの、ジャコモ・ニッツォロ(イタリア、トレック・セガフレード)にステージ優勝のチャンスはないと判断して集団コントロールに加わらない。エーススプリンターのサーシャ・モードロ(イタリア、ランプレ・メリダ)を逃げに乗せたランプレ・メリダも動きを見せず、先頭24名の逃げ切りは事実上容認された。

このステージ優勝のチャンスをはらんだ逃げに、チームメイトのジャンフランコ・ジリオーリ(イタリア)とともに山本元喜(NIPPOヴィーニファンティーニ)が入った。5時間半に及ぶ長丁場が中盤に差し掛かった時点で逃げグループとメイン集団のタイム差は12分。逃げグループのリードは一向に縮まらず、トリノ通過後のアップダウン区間でいよいよステージ優勝を懸けた戦いが始まった。



逃げグループのローテーションに入る山本元喜(NIPPOヴィーニファンティーニ)逃げグループのローテーションに入る山本元喜(NIPPOヴィーニファンティーニ) photo:Kei Tsuji
フィニッシュまで40kmを残して独走を開始したパヴェル・ブラット(ロシア、ティンコフ)フィニッシュまで40kmを残して独走を開始したパヴェル・ブラット(ロシア、ティンコフ) photo:Kei Tsuji2級山岳プラマルティーノに向かうマッテオ・トレンティン(イタリア、エティックス・クイックステップ)ら2級山岳プラマルティーノに向かうマッテオ・トレンティン(イタリア、エティックス・クイックステップ)ら photo:Kei Tsuji
2級山岳プラマルティーノを登るジャンルーカ・ブランビッラ(イタリア、エティックス・クイックステップ)とモレーノ・モゼール(イタリア、キャノンデール)2級山岳プラマルティーノを登るジャンルーカ・ブランビッラ(イタリア、エティックス・クイックステップ)とモレーノ・モゼール(イタリア、キャノンデール) photo:Kei Tsuji


逃げグループから脱落した山本元喜(NIPPOヴィーニファンティーニ)逃げグループから脱落した山本元喜(NIPPOヴィーニファンティーニ) photo:Kei Tsujiダニエル・オス(イタリア、BMCレーシング)やマテイ・モホリッチ(スロベニア、ランプレ・メリダ)のアタックは決まらず、2日連続逃げのパヴェル・ブラット(ロシア、ティンコフ)だけが逃げグループから単独で抜け出すことに成功する。

メイン集団を牽引するエンリコ・バッタリーン(イタリア、ロットNLユンボ)メイン集団を牽引するエンリコ・バッタリーン(イタリア、ロットNLユンボ) photo:Kei Tsuji独走に持ち込んだブラットは残り27km地点で一旦フィニッシュラインを通過する。しかしその直後に登場した最大勾配20%の石畳坂サンマウリツィオでリードを失い、2級山岳プラマルティーノを前に追走グループに吸収。山本は石畳坂で逃げから脱落した。

最後のサンマウリツィオでアタックするモレーノ・モゼール(イタリア、キャノンデール)最後のサンマウリツィオでアタックするモレーノ・モゼール(イタリア、キャノンデール) photo:Kei Tsuji平均勾配が10%を超える急勾配の2級山岳プラマルティーノで先頭はジャンルーカ・ブランビッラ(イタリア、エティックス・クイックステップ)とモレーノ・モゼール(イタリア、キャノンデール)の2人に絞られ、追走グループを30秒引き離して頂上をクリアする(メイン集団は12分40秒遅れ)。

急勾配の石畳坂を登るプロトン急勾配の石畳坂を登るプロトン photo:Kei Tsuji最大の難所を越えたブランビッラとモゼールは協力してダウンヒル&平坦区間でリードを保ち、およそ15秒のリードで再び石畳坂サンマウリツィオ(残り2km地点)にアタック。観客に覆われたこの激坂で互いにアタックを仕掛けたが決まらず、逆に追走グループから飛び出したトレンティンが後方に迫った。

先行する2名に追いつくと同時にスプリントしたマッテオ・トレンティン(イタリア、エティックス・クイックステップ)が勝利先行する2名に追いつくと同時にスプリントしたマッテオ・トレンティン(イタリア、エティックス・クイックステップ)が勝利 photo:Kei Tsujiピネローロのフィニッシュ地点に向かう2人の協調体制は崩れ、追い上げるチームメイトのトレンティンを待つブランビッラは先頭交代に応じない。モゼールが先頭固定で引き続けて残り1kmアーチ。2人の逃げ切りと思われた矢先、残り250mを切って追いついたトレンティンが間髪入れずにスプリントに持ち込んだ。

後方からスピード差をつけて飛び出したトレンティンにモゼールは反応できず、ジャージのジッパーを閉める余裕もない追い込みを見せたトレンティンが勝利した。

ツール・ド・フランスでステージ2勝の経験を持つトレンティンがジロでステージ初優勝。エティックス・クイックステップにステージ4勝目をもたらしたトレンティンは「2級山岳を出来るだけ遅れずにクリア。先頭でブランビッラが逃げていたので、力を使うことなく追走し、登りで飛び出したんだ。残り350mになって勝利のチャンスを感じ始めた。彼ら(ブランビッラとモゼール)に並ぶことなくスプリント。ブランビッラには無線を通して前を引かないように指示した。おそらくモゼールは自分の存在に気づいていなかったと思う」とコメントしている。この日の勝利でトレンティンはポイント賞2位に浮上した。

山本元喜は13分02秒遅れでフィニッシュ。そのすぐ後ろ、最終的に13分24秒遅れとなったメイン集団ではアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)やヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)が登りと下りでそれぞれ動きを見せたものの決まらず、クルイスウィクがタイムを失うことなくフィニッシュしている。総合10位のカンスタンティン・シウトソウ(ベラルーシ、ディメンションデータ)が12秒を失った以外、総合上位陣の成績に変動はない。

翌日はチーマコッピ(大会最高地点)のアニェッロ峠(標高2744m)を越える難関山岳ステージ。いよいよマリアローザ争いの最終決戦地アルプスにジロを脚を踏み入れる。



13分02秒遅れでフィニッシュする山本元喜(NIPPOヴィーニファンティーニ)13分02秒遅れでフィニッシュする山本元喜(NIPPOヴィーニファンティーニ) photo:Kei Tsuji13分24秒遅れの集団先頭はアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)13分24秒遅れの集団先頭はアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) photo:Kei Tsuji
プロセッコを開けるマッテオ・トレンティン(イタリア、エティックス・クイックステップ)プロセッコを開けるマッテオ・トレンティン(イタリア、エティックス・クイックステップ) photo:Kei Tsuji



ジロ・デ・イタリア2016第18ステージ結果
1位 マッテオ・トレンティン(イタリア、エティックス・クイックステップ)   5h25’34”
2位 モレーノ・モゼール(イタリア、キャノンデール)
3位 ジャンルーカ・ブランビッラ(イタリア、エティックス・クイックステップ)
4位 サーシャ・モードロ(イタリア、ランプレ・メリダ)              +20”
5位 ニキアス・アルント(ドイツ、ジャイアント・アルペシン)           +30”
6位 イワン・ロフニー(ロシア、ティンコフ)                   +34”
7位 マッテーオ・ブザート(イタリア、ウィリエール・サウスイースト)      +1’10”
8位 クリスティアン・クネース(ドイツ、チームスカイ)             +1’16”
9位 アクセル・ドモン(フランス、AG2Rラモンディアール)            +1’24”
10位 ダヴィデ・マラカルネ(イタリア、アスタナ)                +4’28”
23位 山本元喜(日本、NIPPOヴィーニファンティーニ)             +13’02”
24位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)            +13’24”
25位 ステフェン・クルイスウィク(オランダ、ロットNLユンボ)
6位 ラファル・マイカ(ポーランド、ティンコフ)
27位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)
28位 エステバン・シャベス(コロンビア、オリカ・グリーンエッジ)
29位 イルヌール・ザッカリン(ロシア、カチューシャ)

マリアローザ 個人総合成績
1位 ステフェン・クルイスウィク(オランダ、ロットNLユンボ)       73h50’37”
2位 エステバン・シャベス(コロンビア、オリカ・グリーンエッジ)       +3’00”
3位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)            +3’23”
4位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)            +4’43”
5位 イルヌール・ザッカリン(ロシア、カチューシャ)             +4’50”
6位 ラファル・マイカ(ポーランド、ティンコフ)               +5’34”
7位 ボブ・ユンヘルス(ルクセンブルク、エティックス・クイックステップ)   +7’57”
8位 アンドレイ・アマドール(コスタリカ、モビスター)            +8’53”
9位 ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、AG2Rラモンディアール)    +10’05”
10位 カンスタンティン・シウトソウ(ベラルーシ、ディメンションデータ)   +11’15”

マリアロッサ ポイント賞
1位 ジャコモ・ニッツォロ(イタリア、トレック・セガフレード)       185pts
2位 マッテオ・トレンティン(イタリア、エティックス・クイックステップ)  141pts
3位 ディエゴ・ウリッシ(イタリア、ランプレ・メリダ)           137pts

マリアアッズーラ 山岳賞
1位 ダミアーノ・クネゴ(イタリア、NIPPOヴィーニファンティーニ)     134pts
2位 ステファン・デニフル(オーストリア、IAMサイクリング)         72pts
3位 ダルウィン・アタプマ(コロンビア、BMCレーシング)           69pts

マリアビアンカ ヤングライダー賞
1位 ボブ・ユンヘルス(ルクセンブルク、エティックス・クイックステップ) 73h58’34”
2位 セバスティアン・エナオゴメス(コロンビア、チームスカイ)       +16’44”
3位 ダヴィデ・フォルモロ(イタリア、キャノンデール)           +44’36”

チーム総合成績
1位 アスタナ                             211h53’12”
2位 キャノンデール                            +12’42”
3位 モビスター                              +16’59”

text&photo:Kei Tsuji in Pinerolo, Italy
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