ダミアーノ・クネゴ(イタリア)を始めとするベテランと若手選手で構成されたNIPPOヴィーニファンティーニのジロ・デ・イタリア出場メンバー。オランダ・アペルドールンでの開幕を前に、初めて3週間のグランツールに挑む山本元喜に話を聞いた。



山本元喜(NIPPOヴィーニファンティーニ)山本元喜(NIPPOヴィーニファンティーニ) photo:Kei Tsuji


今回のジロで果たしたい目標はありますか?

『日本人だから出してもらっている』なんて言われないためにも、完走しないといけないというプレッシャーと同時に、チームの仕事をしっかりこなせるかどうかというプレッシャーを感じています。逃げに乗りたいという気持ちもありますが、完走が第一の目標です。メインの仕事はボトルを運んだりエースの側にいて何かあったときに対応する役割になると思います。

3週間という長丁場、ジロを完走するために必要なことは?

今まで走った中で一番長いステージレースは2週間のチンハイレイク。3週間の想像はつかないですが、チンハイレイクでは後半にかけて身体が楽になった。クラスもレベルも違いますが、後半に身体が馴染めばいいなと思います。

(獲得標高差5400mのような)厳しいレースはまだ走ったことがないです。完走に向けて、自分と同じぐらい登れるチームメイトが誰なのか把握していますし、彼らが遅れるタイミングまで遅れなければ完走できると思います。今回のメンバーの中では自分とイウリィ・フィロージを除いてジロを走ったことがあって、全員が完走している。チームメイトから遅れないことが一つの指標になります。

現在のコンディションは?

とにかく前半から生き残りをかけた戦いなので、後半のために前半は脚を貯めるということができない。だからすでに絞り込んでベストの状態です。そもそもレースのレベルに自分のレベルが追いついていないので、強度の高いレースを走ることで強くなれると思います。全く経験したことない世界なので想像がつきませんが、とにかくやらないといけない。成績を出すことは難しいと思いますが、選手としての目標であるトップレースを走ることは貴重な経験です。1日でも長くそれを経験し、完走したいですね。

チームメイトからアドバイスをもらいましたか?

オランダは風が強いという話題がチーム内で出ていますし、序盤から危険なステージが続きます。とりあえずオランダの3日間を乗り切ってイタリアの地を踏みたい(笑)じゃないとジロ・デ・オランダで終わってしまうので。

ダミアーノ・クネゴからは『1週目が一番厳しい』と言われました。1週目はみんな元気なのでペースも速い。何があっても集団の中に残れと。そして2週目を乗り切れば3週目は比較的楽に走れるとも言われています。昨年出場した石橋選手からは『最初のアタック合戦が半端ない』と言われました。



山本元喜(NIPPOヴィーニファンティーニ)山本元喜(NIPPOヴィーニファンティーニ) photo:Kei Tsuji


役割を与えられれば逃げに乗りたい?

逃げようと思っても序盤にアタックしすぎると終わってしまうし、逃げに乗れてもどこまで逃げれるか分からないので慎重に見極めて走りたいです。

集団の後ろでスタートすると、アタックするために集団前方に上がるだけで大変。逆に集団前方でスタートすると比較的アタックに反応しやすい。だから逃げに乗るように言われたステージは必ず集団の前でスタートします。逃げるのは得意ですが、やはりトップレースで乗るのは簡単なことじゃない。アジアや日本のレースで逃げに乗れても、こっちは全然レベルが違うので難しい。逆にこっちで逃げに乗れる選手はアジアでも楽に乗れる。

シーズン序盤に右手を負傷したようですが影響は?

2月下旬にトレーニング中に車と接触し、右手の人差し指を怪我(腱を損傷)しましたが、今はもう完治しています。今思うと、今年1月から全開で走っていた自分が一旦休むことになったので、このジロに向けてちょうど良かったかなと思います。

怪我をしてから右手でしっかりブレーキを握れなくなったのでブレーキを左前(左レバー前ブレーキ)に変更したんですが、ブレーキングが難しく、怪我が治ってからは慣れ親しんだ右前(右レバー前ブレーキ)に戻しました。確かにこっち(右側通行の国)でチームカーからボトルを受け取る時は右手を離さないといけない。そうなると左で後ろブレーキを握ることになるのでスピードの調整が難しい。でもやっぱり自分は右前じゃないと怖いですね。

最後に、毎日の長編ブログはジロ期間中も書きますか? → ブログ「Genki一杯」

ジロ期間中もよっぽどのことがない限り書き続けたいと思います。移動中などに平均して1時間半〜2時間ほどで書き上げます。晩ご飯までに書き終わってますし、ブログが負担になっていることはないです。きつい時に限って鮮明にそのシチュエーションを記憶しているのですが、何があったのかはその時にしか書けない。例えば前回のレースで何を思ったかは今はもう覚えていない。書くことで自分の記憶に残り、失敗や成功を蓄積して今に生かせていると思います。

text:Kei Tsuji