2003年から3年連続でタイムトライアル世界チャンピオンに輝き、ツール・ド・フランスとジロ・デ・イタリアでステージ優勝経験のある36歳のマイケル・ロジャース(オーストラリア、ティンコフ)が引退を発表した。不整脈が原因で16年間の現役生活にピリオドを打った。



「とても楽しいサイクリングだった」。引退を発表したマイケル・ロジャース(オーストラリア、ティンコフ)「とても楽しいサイクリングだった」。引退を発表したマイケル・ロジャース(オーストラリア、ティンコフ) photo:Tim de Waele


マイケル・ロジャース(オーストラリア、ティンコフ)マイケル・ロジャース(オーストラリア、ティンコフ) photo:Kei Tsuji「とても楽しいサイクリングだった」と綴られたレターを添えて、4月25日、ロジャースは自身のTwitterで現役引退を発表した。

ロジャースはオーストラリア・ニューサウスウェールズ州出身の36歳(1979年12月20日生まれ)。2001年にマペイでプロ入りし、クイックステップ、Tモバイル、チームスカイを経て2013年からティンコフに所属している。

2005年には史上初めて世界選手権タイムトライアルで3連覇を達成。オールラウンダーとしてツアー・ダウンアンダーやツアー・オブ・カリフォルニア、ツアー・オブ・ベルギーなどで総合優勝を果たし、2006年ツール・ド・フランス総合9位、2009年ジロ・デ・イタリア総合6位という成績を残す。夏季五輪にはオーストラリア代表として4回出場し、2004年アテネ五輪タイムトライアルではハミルトン失格による繰り上げで銅メダルを獲得した。

2013年にはジャパンカップで優勝を飾ったものの、期間中のドーピング検査で禁止薬物クレンブテロールの陽性が発覚する。しかしロジャースは来日直前に訪れた中国で摂取した汚染肉が原因であると主張し、UCIはその訴えを認めた

出場停止処分を免れたロジャースは翌年のジロでモンテゾンコランを含むステージ2勝を飾り、さらにツールでも独走勝利を飾る破竹の活躍を見せる。2015年は0勝に終わったものの、グランツールでアルベルト・コンタドール(スペイン)のアシストとして活躍した。

2001年に大動脈に先天性の異常が発見されたものの、運動に差し支えない症状であるとして選手活動を続行していたロジャース。しかし2016年シーズンの開幕前に不整脈の症状が出たため、出場予定だったツアー・ダウンアンダーをキャンセルするとともにレースを離れた。2月のドバイツアーでレースに復帰したが、第3ステージで不整脈によりバイクを降りている。

「幸運にも大動脈弁の異常による心臓への影響はこれまでなかった。おかげでオーストラリアの片田舎を飛び出して世界トップレースまで上り詰めることができたんだ。でも最近の心臓検査で初めて不整脈が発見された。そのことは自分の競技人生の終わりを意味していた。13回目のツール・ド・フランスや、5回目の五輪出場を逃したことを残念に思う」とロジャースはコメントしている。引退後の進路については明らかにされていない。

精巣がんによって現役引退を余儀なくされたイヴァン・バッソ(イタリア)に続くベテランの引退。コンタドールは心強いアシストをまた一人失ってしまった。

text:Kei Tsuji