UCIがセルジオルイス・エナオモントーヤ(コロンビア、チームスカイ)のバイオロジカルパスポートに異常値が発見されたとし、選手に情報提供と説明を求めた。過去にもチーム内の調査で異常値が見つかったが、"異常値は山岳出身者の特性”としてエナオモントーヤはレースに復帰していた。



セルジオルイス・エナオモントーヤ(コロンビア、チームスカイ)セルジオルイス・エナオモントーヤ(コロンビア、チームスカイ) photo:Kei Tsujiグランツールを前に、チームスカイの重要な山岳アシストであるコロンビアンクライマーの活動にストップがかかった。UCIのCADF(自転車競技アンチドーピングファウンデーション)の発表によると、2011年から2015年までに蓄積されたエナオモントーヤのバイオロジカルパスポートの血液データにアンチドーピング違反が疑われる値の変動が発見された。通達を受けたチームスカイは即座にエナオモントーヤのレース活動を中止し、フレーシュ・ワロンヌへの出場をキャンセルしている。

セルジオルイス・エナオモントーヤ(コロンビア、チームスカイ)セルジオルイス・エナオモントーヤ(コロンビア、チームスカイ) photo:Tim de Waeleエナオモントーヤの異常値発覚は今回が初めてではなく、2014年にも血液データに異常値が見つかったとして活動を中断している。当時はUCIではなくチームスカイ独自の判断であり、その後チームはコロンビアのアンチドーピング機構やシェフィールド大学の協力を得て科学的な調査を行った。

WADA(世界アンチドーピング機構)認証の研究所による検査を経て、高地での生活が身体に与える影響を10週間にわたって監視した結果、コロンビアのリオネグロ(標高2,100m)出身のエナオモントーヤの異常値は「ドーピングによるものではなく、標高の高い場所で生まれた選手の特性」によるものであるとチームスカイは結論付けた。2014年3月から6月までの3ヶ月間の中断を経て、エナオモントーヤはレースに復帰している。

今回の異常値はドーピング違反を断定するものではなく、CADFはエナオモントーヤに20日間の情報提供ならびに説明期間を与えている。チームスカイは2014年の独自調査が正しく行われたことを強調するとともにエナオモントーヤをサポートする姿勢を見せている。

チームスカイのデイヴ・ブレイルスフォードGMは「"高地出身者"の生理学は複雑な領域であり、科学的に未知の部分が多い。セルジオとクリーンなスポーツへの見識を深めるため、チームは詳細な科学的調査を率先して行った。我々と同様にCADFが異常値を発見したことは理解出来る。セルジオのバックグラウンドやすべての証拠を確認し、CADFが我々と同じ結論に達することに期待している。我々はセルジオを信じている。彼はキャリアが終わってもおかしくないほどの大怪我から8ヶ月間かけてコンディションを戻したばかり。彼を引き続きサポートし、早期のレース復帰を願う」との声明を出している。

エナオモントーヤは「言葉では表せないほど失望している。昨年(ツール・ド・スイスで)膝に大怪我を負ってからというもの、多くのものを犠牲にし、ハードなトレーニングを経てようやく戦える状態まで戻ったばかりなんだ。落ち着いているし、早くこの一件が解決してレースに復帰出来るという自信があるよ」とコメントしている。

text:Kei Tsuji