3月29日、ベルギー・フランドル地方でデパンヌ・コクサイデ3日間レース(UCI2.HC)が開幕。「北のクラシック」本番さながらの難関コースで先行し、3名でのスプリントを制した前年度の総合優勝者アレクサンダー・クリストフ(ノルウェー、カチューシャ)が勝利した。



最大勾配20%のミュール・ド・ヘラールツベルヘンを駆け上がる最大勾配20%のミュール・ド・ヘラールツベルヘンを駆け上がる photo:Tim de Waele


デパンヌ・コクサイデ3日間レース2016第1ステージデパンヌ・コクサイデ3日間レース2016第1ステージ image:Driedaagse De Panne-Koksijde前半にかけて雨が降ったフランドル地方を走る前半にかけて雨が降ったフランドル地方を走る photo:Tim de Waeleヘント〜ウェヴェルヘムとロンド・ファン・フラーンデレンの間に開催されるデパンヌ・コクサイデ3日間レースは、その名の通り3日間のステージレース。最終日に111.5kmのロードレースと14.2kmの個人タイムトライアルが開催されるため全4ステージで争われる。

先頭集団に選手を送り損ねたエティックス・クイックステップが第2集団を牽引先頭集団に選手を送り損ねたエティックス・クイックステップが第2集団を牽引 photo:Tim de Waeleロンドとパリ〜ルーベを狙う選手たちにとっての最終調整レースであり、事実、2015年の総合優勝者クリストフは好調のまま挑んだロンドで初優勝を飾っている。

濡れた石畳を走る先頭の精鋭集団濡れた石畳を走る先頭の精鋭集団 photo:Tim de Waele初日の第1ステージは北海に面したデパンヌからフランドルの平野を貫き、ロンドの舞台となる丘陵地帯を駆け抜ける198.2km。近年ロンドから姿を消している「ミュール・ド・ヘラールツベルヘン(1075m/最大勾配20%)」を含む急坂が後半にかけて11ヶ所設定されている。

先頭グループを率いるアレクサンダー・クリストフ(ノルウェー、カチューシャ)先頭グループを率いるアレクサンダー・クリストフ(ノルウェー、カチューシャ) photo:Tim de Waeleレースのスタート前には、直前に亡くなったベルギーのアントワーヌ・デモアティエとダーン・ミングヘールに捧げる1分間の黙祷は行われた。デモアティエが所属していたワンティ・グループグベルトはレース出場を辞退している。

3名でのスプリントで勝利したアレクサンダー・クリストフ(ノルウェー、カチューシャ)3名でのスプリントで勝利したアレクサンダー・クリストフ(ノルウェー、カチューシャ) photo:Tim de Waele日本から石橋学と小石祐馬(NIPPOヴィーニファンティーニ)も出場したレースは序盤から超ハイスピードな展開。降りしきる雨の中を平均53km/hという猛烈なスピードで最初の1時間を終えると先頭は30名の精鋭集団に絞られる。この動きに乗り遅れた(トニ・マルティンだけが第1集団に乗った)エティックス・クイックステップが中心となって第2集団が追撃したものの、タイム差は最後まで詰まらなかった。

リーダージャージに袖を通したアレクサンダー・クリストフ(ノルウェー、カチューシャ)リーダージャージに袖を通したアレクサンダー・クリストフ(ノルウェー、カチューシャ) photo:Tim de Waele人数を揃えたBMCレーシングやカチューシャ、アスタナが第1集団を率い、連続するフランドルの急坂を越えていく。フィニッシュまで35kmを残した「ベレンドリーシュ(936m/最大勾配12.3%)」で人数が絞られると、続く「テンボシュ(450m/最大勾配8.7%)」でクリストフ、ルーク・ロウ(イギリス、チームスカイ)、リエーベ・ヴェストラ(オランダ、アスタナ)、アレクセイ・ルトセンコ(カザフスタン、アスタナ)の4名が抜け出した。

後続を45秒引き離して最後の「ミュール・ド・ヘラールツベルヘン」に差し掛かった先頭4名からは、ロウがパンクで脱落する。こうして先頭はアスタナのヴェストラとルトセンコ、そしてディフェンディングチャンピオンのクリストフの3名に。ロウはヘント〜ウェヴェルヘムのU23レースで優勝したばかりのマッズ・ペデルセン(デンマーク、ストルティングサービス)と合流したものの、先頭3名との30秒差を詰めることができない。

ぎこちなくもローテーションを回す先頭3名。当然スプリントに持ち込みたくないアスタナ勢が交互にアタックを繰り出すもクリストフが落ち着いて対処する。3名はフィニッシュラインが引かれたゾッテヘムの街に入り、牽制しながら残り1kmアーチを通過した。

先頭を走るクリストフがヴェストラとルトセンコの様子をチェックしながらスローペースで進み、残り200mサインを通過したところで自分から腰を上げる。ルトセンコとヴェストラも応戦したが、クリストフには敵わなかった。

「とてもハードな一日だった。先頭グループの中ではヴェストラが強力で、ずっと自分とルトセンコのために前を引いてくれた。自分も協力したけど、正直言って脚の状態はそこまで良くなかった。最後まで先頭に生き残ってスプリントに持ち込めて良かったよ。この数日間は体調が良くなかったので、明日以降さらにコンディションが良くなっていることを願っている」と、リーダージャージに袖を通したクリストフは語る。

クリストフは発熱によってヘント〜ウェヴェルヘムを欠場。全快とは言わないまでも、ロンドに向けて復調していることをアピールした。クリストフは「アスタナの2人は総合成績を見据えた走りをしていたし、自分の最終日のタイムトライアルでタイムを失うかも知れない。でももちろん大会連覇は狙っていく」と語っている。

スタートからフィニッシュまでスピードが落ちなかったため、ステージ優勝者クリストフの平均スピードは45.291km/h。ハイスピードな展開に集団から脱落した石橋学はリタイア。小石祐馬は14分22秒遅れの集団でフィニッシュに辿り着いている。

選手コメントはチーム公式サイトより。



デパンヌ・コクサイデ3日間レース2016第1ステージ
1位 アレクサンダー・クリストフ(ノルウェー、カチューシャ)      4h22’34”
2位 アレクセイ・ルトセンコ(カザフスタン、アスタナ)
3位 リエーベ・ヴェストラ(オランダ、アスタナ)
4位 マッズ・ペデルセン(デンマーク、ストルティングサービス)       +29”
5位 ルーク・ロウ(イギリス、チームスカイ)
6位 ピム・リヒハルト(オランダ、ロット・ソウダル)            +36”
7位 マヌエル・ベレッティ(イタリア、サウスイースト)
8位 ユライ・サガン(スロバキア、ティンコフ)
9位 ショーン・デビー(ベルギー、ロット・ソウダル)
10位 マルコ・ハラー(オーストリア、カチューシャ)
136位 小石祐馬(日本、NIPPOヴィーニファンティーニ)          +14’22”
DNF 石橋学(日本、NIPPOヴィーニファンティーニ)

個人総合成績
1位 アレクサンダー・クリストフ(ノルウェー、カチューシャ)      4h22’24”
2位 アレクセイ・ルトセンコ(カザフスタン、アスタナ)           +01”
3位 リエーベ・ヴェストラ(オランダ、アスタナ)              +06”
4位 マッズ・ペデルセン(デンマーク、ストルティングサービス)       +39”
5位 ルーク・ロウ(イギリス、チームスカイ)
6位 ルーク・ダーブリッジ(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)    +42”
7位 トニ・マルティン(ドイツ、エティックス・クイックステップ)      +44”
8位 リック・ツァベル(ドイツ、BMCレーシング)
9位 ミカエル・モルコフ(デンマーク、カチューシャ)            +45”
10位 ピム・リヒハルト(オランダ、ロット・ソウダル)            +46”

ポイント賞
1位 アレクサンダー・クリストフ(ノルウェー、カチューシャ)

山岳賞
1位 ロイック・フリーゲン(ベルギー、BMCレーシング)

スプリント賞
1位 ダニー・ファンポッペル(オランダ、チームスカイ)

チーム総合成績
1位 アスタナ

text:Kei Tsuji
photo:Tim de Waele