3月6日に第74回パリ〜ニース(UCIワールドツアー)が開幕。A.S.O.主催の初春のステージレースには別府史之(トレック・セガフレード)も出場する。今シーズンの展望を占う上で重要なレースの特徴や注目選手をチェックしておこう。



パリ近郊から地中海を目指す8日間のステージレース

フランス内陸部の丘陵地を駆け抜けるプロトンフランス内陸部の丘陵地を駆け抜けるプロトン photo:CorVos

パリ〜ニース2016コースマップパリ〜ニース2016コースマップ image:A.S.O.毎年3月に開催されるパリ〜ニースは、ツール・ド・フランスと同じA.S.O.(アモリー・スポール・オルガニザシオン)が主催。3日遅れてイタリアで開幕するティレーノ〜アドリアティコとともに、春のヨーロッパを代表する中級ステージレースだ。

パリ〜ニース2016第3ステージパリ〜ニース2016第3ステージ image:A.S.O.「パリからニースまで」という名前が示すように、レースはフランス北部のパリ近郊から地中海沿岸のニースまでひたすら南下する。まだまだ寒さの厳しいフランス内陸部をスタートし、比較的温暖な太陽を求めて地中海のコートダジュールに向かうその行程から、ときに「太陽へのレース(La Course au Soliel)」と呼ばれる。フランスを駆け抜けるその様子から「ミニ=ツール・ド・フランス」とも。

パリ〜ニース2016第5ステージパリ〜ニース2016第5ステージ image:A.S.O.第74回大会はパリ郊外のコンフラン=サントノリーヌで開幕。セーヌ川沿いをスタートし、街中を走る平坦な6.1kmコースでマイヨジョーヌの持ち主が決まる。ざっくり言うと、前半4ステージは平坦で後半4ステージが山岳。とは言っても単純な平坦コースは第2ステージと第4ステージだけ。第1ステージの終盤には未舗装区間が2ヶ所登場し、第3ステージのフィニッシュ地点は2級山岳モン・ブルイイ(登坂距離3km/平均勾配7.7%)だ。ボジョレーの丘の上に向かう登りは、残り1kmを切ってから10%近い勾配が続く。

第5ステージはモンヴァントゥーの中腹まで登る1級山岳シャレーレイナール(登坂距離9.5km/平均勾配9.3%)を経て、そこからさらに2級山岳を3つ越えてフィニッシュ。「登れるスプリンターたち」による勝負に持ち込まれる可能性が高い。そして総合争いは残る2ステージで決まる。終着地ニースをスタートし、5つの2級山岳と2つの1級山岳を超える第6ステージが大会最難関のクイーンステージ。断続的なアップダウンの先にある初登場の1級山岳ラ・マドーヌ・デュテル(登坂距離15.3km/平均勾配5.7%)でマイヨジョーヌは7月のマイヨジョーヌ候補の手に渡るだろう。

近年パリ〜ニースは1級山岳エズ峠の山岳タイムトライアルで締めくくられていたが、2016年の第74回大会の最終日は地中海を見下ろすコートダジュールの峠をつなぐ山岳ステージ。1級山岳エズ峠(登坂距離7.7km/平均勾配5.7%)を越えてからハイスピードダウンヒルを経てニースの海岸通りにフィニッシュする。終盤の3ステージに詰め込まれたカテゴリー山岳は18ヶ所。必然的にハイレベルな山岳バトルが繰り広げられるはずだ。

パリ〜ニース2016第6ステージパリ〜ニース2016第6ステージ image:A.S.O.パリ〜ニース2016第7ステージパリ〜ニース2016第7ステージ image:A.S.O.



パリ〜ニース2016ステージリスト
3月6日(日)プロローグ コンフラン=サントノリーヌ 6.1km
3月7日(月)第1ステージ コンデ=シュル=ヴェグル~ヴァンドーム 195km
3月8日(火)第2ステージ コントル~コマントリー 214km
3月9日(水)第3ステージ キュセ~モン・ブルイイ 165.5km
3月10日(木)第4ステージ ジュリエナ~ロマン=シュル=イゼール 193.5km
3月11日(金)第5ステージ サン=ポール=トロワ=シャトー~サロン=ド=プロヴァンス 198km
3月12日(土)第6ステージ ニース~ラ・マドーヌ・デュテル 177km
3月13日(日)第7ステージ ニース~ニース 141km



マイヨジョーヌ候補はポートやコンタドール、トーマス、バルデ

独走でフィニッシュに向かうリッチー・ポート(オーストラリア、BMCレーシング)独走でフィニッシュに向かうリッチー・ポート(オーストラリア、BMCレーシング) photo:Kei Tsuji出場するのは18あるUCIワールドチームと、ワイルドカード出場枠を獲得したコフィディス、デルコ・マルセイユプロヴァンス、ディレクトエネルジー、フォルトゥネオ・ヴァイタルコンセプトの4チーム。

第5ステージ 最終日の山頂フィニッシュを制したアルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ)第5ステージ 最終日の山頂フィニッシュを制したアルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ) photo:Tim de Waeleディフェンディングチャンピオンとして大会連覇を狙うのはリッチー・ポート(オーストラリア、BMCレーシング)だ。ポートはツアー・ダウンアンダーで好調ぶりを見せたが、ツアー・オブ・オマーンでは精彩を欠いた。終盤の山岳ステージは普段からトレーニングに使用しているエリアであり、過去に2度総合優勝している相性の良いパリ〜ニースまでに調子を上げているはず。プロローグの有力候補ローハン・デニス(オーストラリア)とのタッグに注目が集まったが、デニスは体調不良により欠場する。

マルセル・キッテル(ドイツ、エティックス・クイックステップ)マルセル・キッテル(ドイツ、エティックス・クイックステップ) photo:Tim de Waeleポートの前には、現役引退へのカウントダウンが始まっているアルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ)が立ちはだかる。2007年と2010年大会の総合優勝者で、6年ぶりの出場となるコンタドールはヴォルタ・アン・アルガルヴェでステージ優勝&総合3位。アシストにキセロフスキーやマイカ、パウリーニョら一軍を揃えての出場であり、ツール・ド・フランスに向けてのリハーサルが始まる。

アレクサンダー・クリストフ(ノルウェー、カチューシャ)アレクサンダー・クリストフ(ノルウェー、カチューシャ) photo:Tim de Waele「北のクラシック」からステージレースまで対応する真のオールラウンダーとして活躍するゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ)は、昨年ポートをアシストしながら総合5位。今シーズンはヴォルタ・アン・アルガルヴェで総合優勝しており、エースとしてニエベやエナオモントーヤ、ボズウェルを従えての出場だ。

別府史之(トレック・セガフレード)別府史之(トレック・セガフレード) photo:Jayco Herald Sun Tour地元フランスのロメン・バルデ(AG2Rラモンディアール)やトニー・ギャロパン(ロット・ソウダル)、ピエール・ロラン(キャノンデール)の他、ルイ・コスタ(ポルトガル、ランプレ・メリダ)やイサギーレ兄弟(スペイン、モビスター)も総合争いに絡んでくるだろう。TTスペシャリストからオールラウンダーに進化しつつあるトム・ドゥムラン(オランダ、ジャイアント・アルペシン)は初日のプロローグでリードを得るはずだ。

平坦ステージではマルセル・キッテル(ドイツ、エティックス・クイックステップ)とアレクサンダー・クリストフ(ノルウェー、カチューシャ)の直接対決に注目。クラシックレースに向けて調整を続けるボーネンやテルプストラがキッテルのためにトレインを組むことになる。

この二強スプリンターにナセル・ブアニ(フランス、コフィディス)や、肋骨骨折を負いながらも出場するアンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ソウダル)らが絡む。起伏のあるステージではマイケル・マシューズ(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)やフィリップ・ジルベール(ベルギー、BMCレーシング)らにチャンスが回ってくる。

日本人選手としては別府史之(トレック・セガフレード)が出場。第3ステージのフィニッシュ地点は普段から別府がトレーニングで走っているエリアであり、第4ステージではレース序盤に自宅の近くを通過する。平坦ステージではボニファツィオやファンポッペル、山岳ステージではシュレクらのために働くことになるだろう。

text:Kei Tsuji

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