4月の発売開始を目前に控えたアンカーの新型フラッグシップロードバイク「RS9」のメディア向け試乗会が開催された。今回は開発陣インタビューやインプレッションを通して「ブランド史上最も進むフレーム」を謳う自信作に迫った。



キーワードは「舵角のズレの低減」

アンカー RS9アンカー RS9 photo:Makoto.Ayano
「アンカーはレーシングバイクである」。これはブリヂストンサイクルがメディア向けに開催した新型モデル試乗会の中での言葉だ。2015年には同社初の本格的TTバイク「RT9」をラインアップに加え、今年はロードのフラッグシップを刷新。「ブランド史上最も進むフレーム」を謳う自信作として「RS9」を発表し、レーシングブランドとしての立ち位置を再び明確とした。

ブリヂストンサイクルによれば、現在もなおロングライド派のサイクリストが増えており、エンデュランス系モデル「RL8」は好調なセールスを記録している。一方で、JCFの登録者数は初めて1万人を突破し、レースバイクのニーズも高まっていることが「RS9」の誕生した背景にある。

剛性強化が図られた後ろ三角剛性強化が図られた後ろ三角 BB側に向けて末広がりとされたシートチューブBB側に向けて末広がりとされたシートチューブ ストレート形状のフロントフォークストレート形状のフロントフォーク


RS9の開発コンセプトは「推進力最大化」。フルモデルチェンジにおける最大の目標は、ペダリングで入力したパワーを余すことなく推進力へと変換するために、パワーロスを更に低減すること。そのためにアンカーが導入したのが「PROFORMAT」だ。

PROFORMATは、ブリヂストンの研究開発部門である「ブリヂストン中央研究所」とブリヂストンサイクルが共同研究で構築した、自転車設計専用のシミュレーションシステム。バイクにライダーが乗車して実走している動的な状態を再現し、材質や肉厚などといったフレーム側の条件と、出力や荷重バランスなどのライダー側の条件を変更しながら「進む距離」を数値として算出できることが特徴である。

ケーブルは全て内蔵とされているケーブルは全て内蔵とされている テーパードデザインのヘッドチューブテーパードデザインのヘッドチューブ

半分よりBB側を太く、エンド側を細くしたチェーンステー半分よりBB側を太く、エンド側を細くしたチェーンステー BB上部にはリブが設けられているBB上部にはリブが設けられている


シミュレーションの結果、従来モデルRIS9からの改善点として導き出されたのが「舵角のズレの低減」である。舵角のズレとは、フレームを上から見た際のリアエンドの変形量であり、静止状態でのフレームの中心軸と、入力を受けた際のフレームの中心軸のズレのことを指す。RS9では「舵角のズレ」を低減するために、従来モデルより素材と形状の双方を見直したのである。これらの改良により、シミュレーション上では、RS9が8秒間の走行で50m推進したとすると、従来モデルに対して4cmの差が付くという結果が算出された。

素材には、これまでのハイエンドモデルのカーボンと比較して、1.5倍以上の弾性率をもつウルトラハイモジュラスカーボンを使用。メーカー等の詳細は公表されていないものの、一部に60tクラスや80tクラスのカーボンを採用し、レジンと繊維の組み合わせを数種類揃え、適材適所で使い分けているとしている。

エンド爪までフルカーボンのフォーク先端にはアルミ製の補強パーツが配されるエンド爪までフルカーボンのフォーク先端にはアルミ製の補強パーツが配される リベット留めから、一体成型のループエンドデザインへと変更されたリアエンドリベット留めから、一体成型のループエンドデザインへと変更されたリアエンド


フレーム形状の変化は前三角と後ろ三角に分けて説明しよう。前三角は従来モデルRIS9の面影を残しつつも、トップチューブとダウンチューブの断面積を拡大し、ダウンチューブとシートチューブの内角には、リブを設置。シートチューブは大径化と共に、複雑な形状となった。

後ろ三角はシートステーとチェーンステーの交点を「リベット留め」から、一体化した「ループエンドデザイン」へと変更したことが最大のトピックだ。チェーンステーは左右非対称設計とし、半分よりBB側の断面積を拡大。シートステーは断面形状の最適化が図られている。



開発陣インタビュー

「ブランド史上最も進むフレーム」として満を持して登場したRS9。シクロワイアードでは、ブリヂストンサイクルの出井光一さんとブリヂストンアンカーサイクリングチームの井上和郎選手の両名にRS9の開発過程をインタビューした。

ブリヂストンサイクルの出井光一さんブリヂストンサイクルの出井光一さん 開発テストライダーを務めたチームブリヂストンアンカーを代表して井上和郎さんに語ってもらった開発テストライダーを務めたチームブリヂストンアンカーを代表して井上和郎さんに語ってもらった ― RS9開発にあたって目指したものとは?

出井:RS9は、選手達が如何に早く200kmを走りきることができるかに重点を置いたモデルです。昨今はエアロロードの注目度が高いですが、レースバイクの根幹を追求しました。RS9の投入で、チームの成績が良くなってくれれば嬉しいですね。

従来モデルRIS9からは、素材自体や各チューブの断面形状を大幅に変更し、選手達のニーズに叶う剛性の実現を目指しました。ジオメトリーは変更していません。重量は50gほど軽くなっています。

新型は、舵角がずれないというのを大前提として設計していて、全体的に硬くなったのは間違えないのですが、実際にはハンガーにウィップを持たせています。

― 選手サイドからはどのような要望を?

井上:まず最初にオーダーしたのは、フレームリア側の剛性向上です。従来モデルのRIS9は、剛性不足によるリアのバタつきが気になっていて、その原因はシートステーとチェーンステーの交点をリベットで固定しているからでは?と指摘しました。RS9では、チェーンステーとシートステーを一体成型にしたループエンドに設計変更してもらいました。加えて、フレーム下側の剛性を全体的に強化して「たわみ過ぎない」ように調整してもらっています。

― たわみ過ぎないとは?

井上:個人的にはものスゴく硬いフレームが好みではあります。ただ、色々なバイクに乗ってきた中で、たわみが少なすぎても進まず、かえって反発力が疲労に繋がるというのも感じています。

ですから、剛性を上げるにしてもどのレベルで落ち着かせるのか=どの程度のたわみを許容するかというのは、開発段階で大きな課題になっていました。また、選手用と市販品は全く同じですが、プロとアマではニーズが異なるという点も、剛性レベルを決める上での大きなポイントになっていました。

「登りで体感できるほど走りが軽やかになっている」井上和郎(ブリヂストンアンカー)「登りで体感できるほど走りが軽やかになっている」井上和郎(ブリヂストンアンカー)
― その剛性レベルをどのように決定したのでしょうか?

出井:カーボンの配合などによって剛性レベルを高・中・低と変えた3種類のプロトタイプを造り、その中から選手たちの意見を聞いてチョイスするという形をとりました。最終的に製品版に選んだのは中剛性のフレームです。

井上:最も剛性の高いプロトタイプは、フロントの剛性だけが高く、前後の剛性バランスが悪いためにリアがバタついてしまいました。理想論的にはリアの剛性を上げれば良いのですが設計上難しく、前後の剛性バランスが整っている中剛性のフレームを最終版としました。製品版のRS9には確かにたわみがありますが、たわみを的確に制御して推進力につなげることができています。それでいて軽量化も実現しており、登りで体感できるほど走りが軽やかになっています。

― 前モデルとRS9では乗り方も変わりますか?

「快適性が多少犠牲になっている印象があったので、ハンドルを変えることで対処」「快適性が多少犠牲になっている印象があったので、ハンドルを変えることで対処」 井上:はい。乗り味が異なるため、私はセッティングを変更することで対処しています。まず、浅めだったクリートの位置を、深めの方向に1.5mm移動させました。RIS9はリアのたわみが大きく、変形してからの返しに時間が掛かるため、ギアをかけて下死点まで踏み切ってから引き上げる必要があり、引き上げを重視してクリート位置を浅めにしていました。対称的にRS9は必ずしも踏み込む必要が無く、ケイデンスが高めでも進んでくれます。踏み込んでもロスなく推進力に変わってくれますから、どんな状況にも対応してくれるようになりました。ですからクリート位置を深め方向に調整しなおしました。

快適性が多少犠牲になっている印象があったので、ハンドルを変えることで対処しています。チームでサポートを受けているシマノPROのハンドルでいうと、私の場合は以前から使用してきたステム一体式の「STEALTH EVO」から、「VIBE」シリーズのカーボンハンドルとアルミステムという組み合わせに変更しました。これによって、ハンドル変更前に気になっていたフロントの突き上げがなくなりました。

アジア選手権でRS9を使用した内間康平(ブリヂストンアンカー)アジア選手権でRS9を使用した内間康平(ブリヂストンアンカー) photo:Satoru.KATOツアー・オブ・ジャパンに参加したブリヂストンアンカーのRMZツアー・オブ・ジャパンに参加したブリヂストンアンカーのRMZ photo:Yuya.Yamamoto― ハンドリングについてはいかがでしょうか?

井上:ものスゴくよくなっていて、スムーズに曲がってくれるようになりました。前モデルと比較すると俊敏になり、意のままに操ることができて、的確に切れ込んでくれます。RS9に乗った後だと、今まで乗っていたモデルがアンダーステアに感じてしまいます。これも、剛性バランスの向上による好影響といえるでしょう。

― 井上選手は硬いフレームが好きと仰いました。RS9のしなりはデメリットには繋がりませんか?

井上:基本的には感じないですね。従来モデルとの比較では全てのシーンでアドバンテージがあります。1,500W出せるライダーだと、どこかにバタつきを感じてしまうかもしれません。しかし、パワーライダー向けのフレームは、他の多くの方にとって乗りづらいでしょうから、RS9ではバランスを重視しました。

硬くて進むというのは当たり前ですが、しなりを持たせても進むフレームを作ることができるということがRS9に乗ってみて分かりました。恐らく、多くのメーカーがしなりをコントロールしきれず、入力をスポイルしてしまうから剛性を過剰に高めているのでしょう。

― ブレーキはノーマルのキャリパータイプですが、他方式は検討されたのでしょうか?

出井:キャリパーと同じリムブレーキ方式であるダイレクトマウントブレーキについては、設計段階では検討を行いました。特にネックとなったのがリアで、BB裏マウントは整備性に乏しく、レース中の調整も困難です。シートステーマウントはシートステーの断面形状が制限されてしまうため、今回は不採用としました。キャリパータイプでもDURA-ACEであれば充分な制動力を得られるという点も、ダイレクトマウントを不採用とした理由です。

今年から解禁されるディスクブレーキについては、社内で試作したりはしていますが、今のところ必要ないと判断しています。

埼玉の山奥で新型アンカーを試す埼玉の山奥で新型アンカーを試す
― 同じくフラッグシップに位置づけられるRMZとの棲み分けは?

出井:RMZとRS9は、コンセプトや製法が全く異なります。RMZは「パーソナルマッチング」というコンセプトに基づき剛性とジオメトリーをライダーに合わせるバイクです。RS9と比較すれば、マッチするライダーの幅が広いのはRMZの方です。

井上:ただ、RS9は懐が広く、レースからロングライドまで何でもこなせてしまう。本音で、不満に感じる部分が少ないですね。レースシーンとなれば尚更不満はありません。



ーインプレッション

「アンカーのイメージを覆す1台 万人が扱いやすいレースバイク」
山添悟志(WALKRIDE コンセプトストア)


良く言えばしっかりとした、悪く言えば鈍重で、レーススピードでの扱いやすさや巡航性に的を絞っているというのが、バイクブランドとしてのアンカーのイメージでした。これは、重量、踏み味、ハンドリングに通じる印象です。

今回試乗したRS9は、これまでのアンカーの良点を維持しつつ、対応する速度帯が低速側に広がっています。低速域から踏みや振りが軽快で、身のこなしが軽い自転車になっています。それでいて、高速域が犠牲になっていません。舵角を抑えるために剛性を高めつつも、必要以上に硬くせず、反発力だけを逃すべくしなりをコントロールするという、設計で意図した通りの乗り味に仕上がっているといえるでしょう。

「アンカーのイメージを覆す1台 万人が扱いやすいレースバイク」「アンカーのイメージを覆す1台 万人が扱いやすいレースバイク」 ただ、ブリヂストンアンカーの選手達が使用するということは、剛性は間違いなく高いはずなのですが、今回のインプレッションでは硬さを感じられなかったのです。数年前の高剛性フレームと感覚で比較したら「そんなに硬いわけではないよね?」という印象を持つ方がほとんどでしょう。

入力が推進力に変換されている感触は大いにあるものの、反発や踏み負けるという感覚がなく、これなら長距離レースの後半でも脚が残るはずです。最大出力でのスプリントに絞れば、感触的にも数値的にもより高剛性なフレームが良いのでしょうが、プロでも最大出力で踏み続けるのはほんの一瞬のことですから。200kmのレースを如何に早く走れるかという点を考えれば、RS9の剛性は最適解といえるでしょう。

登りは斜度を問わず軽快です。ケイデンス高めで回して上げるとリズムよく登ってくれますし、ギアを掛けながらのアタック的な走りや、斜度のキツい坂でも、頼もしく反応してくれます。

ペダリングはギアが重くとも軽くともスムーズな印象で、フレームが乗り手に合わせてくれます。今回のインプレでは軽いギアをグルグルと回しながら緩斜面をこなしましたが、スムーズに回し続けられました。ダンシングも、ギアが重くても軽くても、重量も相まって軽快。それでいて、ハンドルに体重を預けながらバイクを振ってもなんら不安はありません。

フォークを含め、振動吸収性は高いレベルにあります。ロードインフォメーションは的確に伝えてきてくれますが、不快な振動だけをいなしてくれるため、疲労に繋がったりというころはありません。レーシングバイクは剛性とトレードオフで振動吸収性が犠牲になることが多く、これまでのアンカーも例外では無かったのですが、今回のRS9では一転して快適な乗り味になっています。この点でも、これまでのアンカーとは別物になったという印象です。

ブリヂストンアンカーのライダー達とRS9について意見を交わすブリヂストンアンカーのライダー達とRS9について意見を交わす
この性能で40万円以下はバリュープライスといえるでしょう。カラーオーダーもできて、完成車は堅実なパーツアッセンブルはで組まれているという点でもオススメですね。

ホイールについては、キビキビとした乗り味であれば、どういったモデルでもマッチするはずです。その中でもカーボンホイールであれば、リムハイトは35~40mmぐらいがオールラウンドに使うことができ、ローハイトモデルであれば登坂性能を更に伸ばすことができるでしょう。

一方、今回のテストにはシマノWH-9000-C35-CLがアッセンブルされていましたが、重量の割に重い印象がありませんでした。つまりRS9はホイールの重量感を打ち消すことができるので、リムハイトの高いエアロホイールで巡航性を高めてあげても面白いかもしれません。



インプレライダーのプロフィール

井上和郎(ブリヂストンアンカー)と山添悟志さん(WALKRIDE コンセプトストア)井上和郎(ブリヂストンアンカー)と山添悟志さん(WALKRIDE コンセプトストア) 山添悟志(WALKRIDE コンセプトストア)

神奈川県厚木市に2014年にオープンしたロード系プロショップ、WALKRIDE コンセプトストアの店主。脚質はスプリンターで、過去にいわきクリテリウムBR-2で優勝した経験を持つ。走り系ショップとして有名だが、クラブ員と一緒にグルメツーリングを行うなど、「自転車で走る楽しみ」も同時に追求している。

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WALKRIDE コンセプトストア

photo:Makoto.AYANO
text:Yuya.Yamamoto
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