2015年の海外ロードレースを振り返るシリーズ第3弾。ツール前哨戦やアワーレコードに注目の6月、真夏のツール・ド・フランスや萩原麻由子のジロステージ優勝に沸いた7月を振り返ります。



6月

54.526kmのアワーレコードを樹立したブラドレー・ウィギンズ(イギリス)54.526kmのアワーレコードを樹立したブラドレー・ウィギンズ(イギリス) photo:UCI

フルームを引き離すティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシング)フルームを引き離すティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシング) photo:Tim de Waeleジロ・デ・イタリアが終わるといよいよツール・ド・フランスの足音が聞こえ始める。6月にはツールの前哨戦と呼ばれるステージレースが連続。ツールと同じASOが主催するクリテリウム・ドゥ・ドーフィネでフルームやニーバリ、ヴァンガーデンが激突した。ピーター・ケノー(イギリス、チームスカイ)の開幕ステージ逃げ切りやナセル・ブアニ(フランス、コフィディス)のスプリント2勝、BMCレーシングのチームTT制覇を経てレースは山岳決戦へ。

ヴァンガーデレンを突き放すクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)ヴァンガーデレンを突き放すクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ) photo:Tim de Waele第5ステージで首位に立ったティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシング)は翌日のステージでマイヨジョーヌをヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)に明け渡したものの、1級山頂フィニッシュで首位返り咲き。勝負は最終山岳ステージに持ち込まれ、首位ヴァンガーデンを力で引き離したクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)がステージ2連勝&逆転総合優勝を果たした。

レッテンバッハ氷河に向かって独走するティボー・ピノ(フランス、FDJ)レッテンバッハ氷河に向かって独走するティボー・ピノ(フランス、FDJ) photo:Tim de Waeleもう一つの前哨戦ツール・ド・スイスではサガンやドゥムランらが活躍する。開幕個人TTでカンチェラーラを2秒差で下したトム・ドゥムラン(オランダ、ジャイアント・アルペシン)が首位スタート。ペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ・サクソ)は山岳ステージを含めてステージ2勝を飾ったがリーダージャージ獲得はならず。

ツール・ド・スイス総合表彰台ツール・ド・スイス総合表彰台 photo:Tim de Waele標高2669mの超級山頂フィニッシュでティボー・ピノ(フランス、FDJ)が優勝して首位に立ったが、総合争いは最終日の個人タイムトライアルで決した。タイムトライアル2勝目を飾ったドゥムランに次いでステージ2位に入ったサイモン・スピラック(スロベニア、カチューシャ)が総合優勝に輝いている。

コンタドールらとともに最終ステージをスタートする新城幸也(ユーロップカー)コンタドールらとともに最終ステージをスタートする新城幸也(ユーロップカー) photo:Miwa Iijima4日間の日程で開催されたルート・ドゥ・スッドには、4月のリエージュで肩甲骨と肋骨を骨折した新城幸也(ユーロップカー)も出場。ツールのメンバー入りに向けて完全復活をアピールしたが、結果的に6度目のツール出場は果たせず。総合優勝はクイーンステージでナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)を下したアルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ)の手に渡っている。

ロードレースの裏ではアワーレコードも加熱。前年にフォイクトが記録した51.115kmやブランドルの51.852kmをスペシャリストたちが次々と塗り替える。2月にはローハン・デニス(オーストラリア、BMCレーシング)が52.491kmの新記録を叩き出し、5月にはアレックス・ダウセット(イギリス、モビスター)が52.937kmまで記録を伸ばす。そして6月に挑んだ本命ブラドレー・ウィギンズ(イギリス、チームウィギンズ)が54.526kmという圧倒的な記録を打ち立てた。

また、6月にはバイオロジカルパスポートの異常値でドーピング疑惑がかけられていたロマン・クロイツィゲル(チェコ、ティンコフ・サクソ)に対し、WADAとUCIが上訴を取り下げる判断。2年間にわたってかけられていた同選手の疑惑が晴らされた。



7月

ツール初登場の2級山岳ラセ・ド・モンヴェルニエツール初登場の2級山岳ラセ・ド・モンヴェルニエ photo:Kei Tsuji

トップタイムを叩き出したローハン・デニス(オーストラリア、BMCレーシング)トップタイムを叩き出したローハン・デニス(オーストラリア、BMCレーシング) photo:Tim de Waele第102回ツール・ド・フランスはオランダのユトレヒトで開幕。ローハン・デニス(オーストラリア、BMCレーシング)による開幕タイムトライアル勝利(55.446km/h!)でスタートする。第2ステージでファビアン・カンチェラーラ(スイス、トレックファクトリーレーシング)が首位に立ったものの、ユイの壁にフィニッシュする第3ステージでマイヨジョーヌが落車&脱落する波乱。

マイヨジョーヌのファビアン・カンチェラーラ(スイス、トレックファクトリーレーシング)が顔を歪めるマイヨジョーヌのファビアン・カンチェラーラ(スイス、トレックファクトリーレーシング)が顔を歪める photo:Tim de Waeleさながらパリ〜ルーベのような石畳決戦が繰り広げられた第4ステージでトニ・マルティン(ドイツ、エティックス・クイックステップ)が勝利してマイヨジョーヌに袖を通したが、その首位も長続きしなかった。

圧倒的な走りでフィニッシュするクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)圧倒的な走りでフィニッシュするクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ) photo:Tim de Waele第6ステージで落車したマルティンが鎖骨を骨折すると、マイヨジョーヌは早くもクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)の手に。ミュール・ド・ブルターニュでも、BMCレーシングがチームスカイを0.77秒差で下したチームタイムトライアルでもフルームは首位を守った。

1級山岳ラ・トゥッスイールをハイペースで駆け上がるナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)1級山岳ラ・トゥッスイールをハイペースで駆け上がるナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター) photo:Tim de Waeleポーで迎えた第1休息日にはイヴァン・バッソの精巣がんが発覚。即座にツールを離脱して治療に入ったバッソはがんを克服し、2016年からティンコフのトレーナーとしてチームに携わる予定だ。

チームスカイ率いるマイヨジョーヌグループチームスカイ率いるマイヨジョーヌグループ photo:Kei Tsujiピレネー山岳決戦初日の超級山岳ラ・ピエール・サンマルタンで早速フルームがライバルたちに鉄槌を振り下ろし、総合リードを拡大する。

大会最初の山頂フィニッシュを制したフルームは、ラファル・マイカ(ポーランド、ティンコフ・サクソ)が勝利した超級山岳トゥールマレー越えの難関ステージや、ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)が制した嵐の超級山岳プラトードベイユでも首位を堅守した。

ポイント賞ペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ・サクソ)、総合優勝&山岳賞クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)、ヤングライダー賞ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)ポイント賞ペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ・サクソ)、総合優勝&山岳賞クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)、ヤングライダー賞ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター) photo:Tim de Waele中央山塊を走る第14ステージでスティーブ・クミングス(イギリス)が南アフリカのMTNキュベカに記念すべき1勝目をもたらす。ギャップにフィニッシュする第16ステージでペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ・サクソ)は大会5度目のステージ2位。サガンは最後までステージ優勝に届かなかったが、その圧倒的な安定感によって4年連続マイヨヴェール獲得を果たしている。

総合3位ヴァンガーデンはアルプス初日の第17ステージでリタイアを喫したが、アルプス山脈に差し掛かるとライバルたちがフルームに対して総攻撃開始。ディフェンディングチャンピオンのニーバリが勝利した第19ステージで総合2位キンタナがフルームから30秒稼ぎ出すことに成功する。

そして迎えた最終決戦地、超級山岳ラルプデュエズでキンタナが再びアタック。キンタナはフルームから1分20秒を奪ったが、マイヨジョーヌには1分12秒届かなかった。

3週間の戦いはパリ・シャンゼリゼでのアンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ソウダル)のスプリント4勝目で幕。フルームの2度目の総合優勝が決まった。キンタナをアシストしたアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)が自身初のツール総合表彰台に上っている。

イタリアで開催されたジロ・ローザでは全日本チャンピオンの萩原麻由子(ウィグル・ホンダ)が大活躍。第6ステージで独走逃げ切りを果たし、歴史的な勝利を飾った。萩原は続くツール・ド・ブルターニュでもステージ優勝を飾っている。


独走でゴールに飛び込む萩原麻由子(ウィグル・ホンダ)独走でゴールに飛び込む萩原麻由子(ウィグル・ホンダ) photo:Sonoko Tanaka



text:Kei Tsuji

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