UCI(国際自転車競技連合)とWADA(世界アンチドーピング機構)は、ロマン・クロイツィゲルのバイオロジカルパスポートの異常値への容疑に関して、CAS(スポーツ仲裁裁判所)への提訴を取り下げることを発表。長きに渡る疑惑がようやく晴れることになった。

ロマン・クロイツィゲル(チェコ、ティンコフ・サクソ)ツール・ド・スイス2014でロマン・クロイツィゲル(チェコ、ティンコフ・サクソ)ツール・ド・スイス2014で photo:Tim de Waele6月5日金曜日、UCIは公式サイト上でプレスリリースにおいてロマン・クロイツィゲル(チェコ、ティンコフ・サクソ)の2011年と2012年のバイオロジカルパスポートの数値の異常に関してかけていた容疑についてクロイツィゲル側と争っていた一件について、UCIとWADA(世界アンチドーピング機構)は、6月10日の期日に控えていたCAS(スポーツ仲裁裁判所)への上訴を取り下げると発表した。

UCIとWADAは今回の判断に至った理由について、新たに得られた情報の有効性に基づき、アンチドーピング規則とバイオロジカル・パスポートのガイドラインに従い、現段階でこの一件を進展させる根拠は無いと結論づけた。「新たに得られた情報」が何なのかについては明らかにされていない。

クロイツィゲルは3年前のアスタナ在籍時代のバイオロジカルパスポートの数値異常により、ドーピング容疑をかけられ、2014年より暫定的にメジャーレースへの出場ができない状態が続いていた。
今回のクロイツィゲルのケースでは尿サンプルなどにドーピング陽性反応が出たわけではなく、バイオロジカルパスポートの数値自体を問題としてUCIおよびWADAが出場停止処分を求めていた稀なケース。2014年6月末に端を発した問題だったため、当時開幕直前だったツール・ド・フランス2014には影響を鑑みたチーム側の自粛という判断により出場できず、また続くブエルタ・ア・エスパーニャ2014などへの出場も叶わなかった。

しかしチェコ五輪委員会から無罪の裁定を受けたことにより2014年10月1日からは係争中ながらクロイツィゲルはレースに復帰。先の5月のジロ・デ・イタリアにも出場していたが、これで潔白の身としてレースに完全復帰できることになる。

今回の発表を受けてクロイツィゲルは声明を出し、「この一件が幕を閉じることが嬉しい。ここまでは本当に苦しい期間だった。バイオロジカル・パスポートの運用がフェアだったことが証明されて、そして新しく提出した情報が最後の最後に認められて本当に嬉しい。バイオロジカル・パスポートについてはアンチ・ドーピングのツールとして有効なものだと信じている。これからも全力でサポートする」

ティンコフ・サクソは「UCIとWADAが今回クロイツィゲルへの上訴を取り下げたことは本当に喜ばしい。我々チームは問題が起こった時からずっとクロイツィゲルを信じ、サポートしてきた。チームは今回の決定を評価し、これ以上言うことはない」と短いチーム声明を発表している。

クロイツィゲルは言うまでもなくアルベルト・コンタドールの山岳における重要なアシストとして期待がかかる。7月に開幕の迫ったツール・ド・フランスでもダブルツール制覇のかかったコンタドールを支える姿を観ることができそうだ。

text:Makoto.AYANO