いよいよ9月23日、スイス・メンドリシオで“世界一”を決めるロード世界選手権が開幕する。ロードレースに先立って行なわれるのはタイムトライアル。エリート男子、女子、U23それぞれの有力候補を見ておこう。

エリート男子/U23個人タイムトライアルコースエリート男子/U23個人タイムトライアルコース image:www.mendrisio09.chメンドリシオのコースはエリート男子とU23男子が共通。高低差120mの16.6kmの周回をエリート男子は3周(総標高差360m)、U23は2周(総標高差240m)する。コース中盤に登場する長さ650mの「ロッサ・ディ・ランカテ」の上りが最大の難所。上りの距離は短いが最大勾配は10%に達する。ゴール地点はロードレースと共通だ。

エリート女子は標高差110mの13.4km周回を2周。男子レースと同じくロッサ・ディ・ランカテがコース中盤に登場する。


9月24日(木)エリート男子タイムトライアル 49.8km(16.6km x 3周回)

大会3勝目を狙うファビアン・カンチェラーラ(スイス、サクソバンク)大会3勝目を狙うファビアン・カンチェラーラ(スイス、サクソバンク) photo:Unipublic“世界最速”を決める大一番は、この人無しには語れない。地元スイスが生んだ精巧な超特急、ファビアン・カンチェラーラ(スイス)が優勝候補の筆頭に間違いない。地元開催だけに今まで以上にモチヴェーションは高いハズだ。

2006年から2年連続でこの世界選手権個人TTを制したカンチェラーラ。昨年は大会3連覇と北京五輪の個人TT金メダルに次ぐダブルタイトルがかかっていたが、シーズン序盤からフルスロットルで駆け抜けた精神的な疲労を理由に欠場した。

大会2連覇を狙うベアト・グラブシュ(ドイツ、チームコロンビア・HTC)大会2連覇を狙うベアト・グラブシュ(ドイツ、チームコロンビア・HTC) photo:Unipublic今年はツアー・オブ・カリフォルニアのプロローグで優勝して幸先よくシーズンスタートを切ったが、体調不良によりミラノ〜サンレモを欠場。6月のツール・ド・スイスでステージ2勝&総合優勝で完調をアピールすると、ツール・ド・フランスでプロローグを制してマイヨジョーヌを6日間着続けた。

世界選直前のブエルタ・ア・エスパーニャでも初日の個人TTで優勝してマイヨオロを獲得。第7ステージの個人TTでも優勝を飾って絶好調ぶりをアピールし、世界選に万全を期すため早めにリタイアしている。

個人TTだけに的を絞るブラドレー・ウィギンズ(イギリス、ガーミン)個人TTだけに的を絞るブラドレー・ウィギンズ(イギリス、ガーミン) photo:Makoto Ayano昨年カンチェラーラがいない間にタイトルを獲得したベアト・グラブシュ(ドイツ)は、地元の皇帝に挑戦状を叩き付ける。アルカンシェル獲得後は少し伸び悩んだが、ドーフィネ・リベレで個人TT制覇を達成している。普段からチームメイトであるトニ・マルティン(ドイツ)はダークホース的な存在だ。

2003年から3年連続TT世界チャンピオンに輝いたマイケル・ロジャース(オーストラリア)は、近年山岳もこなすオールラウンダーとして進化を遂げた。現オーストラリアTTチャンピオンの名にかけて、再びメダル獲得を目指す。チームコロンビア・HTC所属選手は他にも、ツアー・オブ・ブリテン総合優勝のエドヴァルド・ボアッソン(ノルウェー)やフランティセク・ラボン(チェコ)ら実力のあるメンバーが揃っている。

昨年大会3位のデーヴィッド・ザブリスキー(アメリカ、ガーミン)昨年大会3位のデーヴィッド・ザブリスキー(アメリカ、ガーミン) photo:Makoto Ayanoロードレースと個人TTのダブルタイトルを見据えるカンチェラーラに対し、個人TT一本に絞っているのがブラドレー・ウィギンズ(イギリス)だ。トラック世界選手権で合計7つの金メダルを獲得し、今年のツールで総合4位に入ってオールラウンドぶりを発揮したウィギンズだが、意外にもロード世界選の個人TTでメダル獲得経験はゼロ。初タイトル獲得なるか。

全米TTチャンピオンで、ツアー・オブ・ミズーリで総合優勝したデーヴィッド・ザブリスキー(アメリカ)やリーヴァイ・ライプハイマー(アメリカ)、昨年の世界選個人TT銀メダルのスヴェイン・タフト(カナダ)ら、北米出身選手もカンチェラーラの王座を揺るがす存在になりえるだろう。

昨年北京五輪個人TTで銀メダルを獲得したグスタフエリック・ラーション(スウェーデン)や、元U23世界TTチャンピオンのラース・ボーム(オランダ)、2005年大会2位のホセイバン・グティエレス(スペイン)ら、世界屈指のTTスペシャリストがスイスに集う。

今年は日本からTTへのエントリーは無い。アジア勢としては、現役復帰のアレクサンドル・ヴィノクロフ(カザフスタン)に注目。エントリーリストには、かつてのヴィノの相棒で、ドーピングによる出場停止処分が明けたアンドレイ・カシェチキン(カザフスタン)も入っている。


9月23日(水)エリート女子タイムトライアル 26.8km(13.4km x 2周回)

昨年エリート女子個人TTでアルカンシェルを獲得したアンバー・ネーベン(アメリカ)昨年エリート女子個人TTでアルカンシェルを獲得したアンバー・ネーベン(アメリカ) photo:Cor Vos女子カテゴリーでメダル候補の最有力に上げられるのがアメリカ勢。何しろディフェンディングチャンピオンのアンバー・ネーベン(アメリカ)と、2006年大会の覇者で北京五輪TT金メダリストのクリスティン・アームストロング(アメリカ)が揃っているのだ。

最大のライバルになると目されていたドイツだが、2007年チャンピオンのハンカ・クプファーナゲル(ドイツ)は欠場。2003年&2004年2位、昨年3位のユーディト・アルント(ドイツ)が大国アメリカに立ち向かう。
 
北京五輪TT金メダリストのクリスティン・アームストロング(アメリカ)北京五輪TT金メダリストのクリスティン・アームストロング(アメリカ) photo:Cor Vos地元スイスの期待を集めるのは、2005年に大会2連覇を達成したカリン・チューリグ(スイス)。現在37歳のチューリグは過去の栄光を地元で取り戻せるか。昨年大会2位で、2年連続表彰台に上ったクリスティアン・ゼーダー(オーストリア)も注目の存在だ。

ネーベン34歳、アームストロング36歳、アルント33歳、チューリグ37歳、ゼーダー34歳。いずれもロード選手としては脂の乗り切った30歳中盤のベテランばかり。そろそろ世代交代が行なわれてもいい頃だ。

しかし過去に4回優勝(ロードでは5回優勝)している50歳のジャンニ・ロンゴ(フランス)の前には、どの選手も若手に思えてしまう。超人の域に達しつつあるロンゴは2007年大会で7位。再びトップ10に絡む走りを見せてくれるだろうか。


9月23日(水)U23タイムトライアル 33.2km(16.6km x 2周回)

昨年U23個人TTでアルカンシェルを獲得したアドリアーノ・マローリ(イタリア)昨年U23個人TTでアルカンシェルを獲得したアドリアーノ・マローリ(イタリア) photo:Cor Vos未来のTTスペシャリストが集うU23カテゴリーは、ディフェンディングチャンピオンのアドリアーノ・マローリ(イタリア)と、昨年大会2位パトリック・グレッチュ(ドイツ)を中心に争われるだろう。

トラック世界選手権の個人追い抜きで金メダルを獲得したタイラー・フィニー(アメリカ)は、残念ながら7月に負った骨折により欠場。アメリカの希望は、昨年大会6位で全米TTチャンピオンのピーター・ステティーナ(アメリカ)とタジェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ)に託される。ステティーナは来季ガーミン、ヴァンガーデレンはチームコロンビア・HTC入りが決まっている若手有力株。

アメリカ期待のピーター・ステティーナ(アメリカ)アメリカ期待のピーター・ステティーナ(アメリカ) photo:Cor Vosトラック競技をベースにもつ選手として、オーストラリア人選手の活躍に期待したい。ロードレース、個人TTともに、オーストラリア勢はまだU23カテゴリーで優勝経験が無い。今年TOJ(ツアー・オブ・ジャパン)でステージ2勝を飾ったジャック・ボブリッジ(オーストラリア)や、昨年TOJ総合優勝&世界選TT3位のキャメロンを兄に持つトラヴィス・マイヤー(オーストラリア)らが、ヨーロッパ&アメリカ勢に闘いを挑む。


ロード世界選手権2009日程
9月23日(水) U23タイムトライアル 33.2km
9月23日(水)エリート女子タイムトライアル 26.8km
9月24日(木)エリート男子タイムトライアル 49.8km
9月26日(土)U23ロードレース 179.4km(13.8km x 13Laps)
9月26日(土)エリート女子ロードレース 124.2km(13.8km x 9Laps)
9月27日(日)エリート男子ロードレース 262.2km(13.8km x 19Laps)

text:Kei Tsuji
photo:Cor Vos, Makoto Ayano

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