ツール・ド・フランス期間中に精巣がんが発覚し、レースを離脱するとともに治療に専念していたイヴァン・バッソ(イタリア、ティンコフ・サクソ)が現役引退を発表した。「これからも自転車と関わりを持ち続けるので、今日は悲しみにくれる日ではない」。2度のジロ・デ・イタリア覇者は新たなキャリアを歩み始める。



2010年ジロ・デ・イタリア 優勝トロフィーにキスするイヴァン・バッソ(イタリア、当時リクイガス)2010年ジロ・デ・イタリア 優勝トロフィーにキスするイヴァン・バッソ(イタリア、当時リクイガス) photo:Kei Tsuji


ジロ・デ・イタリアでコンタドールのアシストを務めたイヴァン・バッソ(イタリア、ティンコフ・サクソ)ジロ・デ・イタリアでコンタドールのアシストを務めたイヴァン・バッソ(イタリア、ティンコフ・サクソ) photo:Kei Tsujiツール離脱後すぐイタリアに戻り、7月15日に精巣がんの手術を受けたバッソ。術後はがんの転移も発見されずに順調に回復し、医師の許可を得て8月17日からバイクトレーニングに復帰した。9月24日にはがんを完全に克服したと宣言している。

コンタドールをアシストするイヴァン・バッソ(イタリア、ティンコフ・サクソ)コンタドールをアシストするイヴァン・バッソ(イタリア、ティンコフ・サクソ) photo:Tim de Waeleその後バッソは地元のライドイベントにも顔を出していたが、ティンコフ・サクソとの話し合いの末に現役引退を決めた。

2012年ジャパンカップで優勝したイヴァン・バッソ(イタリア、当時リクイガス・キャノンデール)2012年ジャパンカップで優勝したイヴァン・バッソ(イタリア、当時リクイガス・キャノンデール) photo:Kei Tsujiイタリア・ミラノで開催されたジロのコースプレゼンテーションで引退を発表した37歳のバッソは「今日は特別な日だ。でもこれからも自転車と関わりを持ち続けるので、今日は悲しみにくれる日ではない」と気持ちを打ち明ける。

ティンコフ・サクソのプレスリリースの中でバッソは「キャリアを通して輝き続ける選手はいない。あるポイントから光は力を弱める。いつその光をオフにするのかを見極めながら走ってきた。ファンやサポーターを裏切る気持ちなんてない。レースに出場し続けることは可能だが、これまでのような競技レベルでは戦えない。出場してもただ苦しみながら完走するのがやっとだろう」とコメントする。

「キャリアにピリオドを打つことを悔いてはいない。自転車競技は我が家の情熱なんだ。自分を信頼し、新しいチャンスを与えてくれるチームがいることをとても嬉しく思う。立ち止まることなく新しい船出を迎えるんだ」。具体的な役割は明らかにしていないが、バッソは2016年以降コーチやトレーナーとしてティンコフ・サクソに携わる可能性が高い。

2006年にジロ・デ・イタリア初制覇を果たしたバッソは、2007年にドーピングへの関与を認めて2年間出場停止に。2008年のジャパンカップでレースに復帰し、2010年ジロで2度目の総合優勝を達成した。2012年にはジャパンカップで優勝。2015年はティンコフ・サクソに移籍し、アルベルト・コンタドール(スペイン)をジロ総合優勝に導いた。

text:Kei Tsuji