ロンドンに凱旋したツアー・オブ・ブリテン。勾配2%ほどの登りスプリントでアンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ソウダル)が先着したものの、最終コーナー後に進路を変更してライバルのスプリントを妨害したとして降格処分に。エリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、チームスカイ)の大会3勝目で幕を閉じた。



ロンドン中心部のピカデリーサーカスをレースは通過するロンドン中心部のピカデリーサーカスをレースは通過する photo:Kei Tsuji
気さくにサインに応じるエリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、チームスカイ)気さくにサインに応じるエリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、チームスカイ) photo:Kei Tsujiエドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、MTNキュベカ)のノルウェーチャンピオン仕様のバイクエドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、MTNキュベカ)のノルウェーチャンピオン仕様のバイク photo:Kei Tsuji



ツアー・オブ・ブリテン2015第8ステージツアー・オブ・ブリテン2015第8ステージ image:www.tourofbritain.co.uk8日間にわたって開催されたツアー・オブ・ブリテンを締めくくるのは人口700万人の大都市ロンドンを舞台にしたクリテリウム的な平坦レース。市内中心部を大々的に規制して6.2km周回(14周:全長86.8km)が作られた。

イエロージャージのエドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、MTNキュベカ)らを先頭にスタートイエロージャージのエドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、MTNキュベカ)らを先頭にスタート photo:Kei Tsujiまさにロンドンの心臓部とも言えるピカデリーサーカスやトラファルガースクエア、ホワイトホールを経てリージェントストリートでフィニッシュする。ポールモールからクリミア戦争記念碑を右に曲がり、ウォーターループレイスからリージェントストリートに向かう最終ストレートは勾配2%ほどの登り基調だ。

逃げグループを牽引するユライ・サガン(スロバキア、ティンコフ・サクソ)逃げグループを牽引するユライ・サガン(スロバキア、ティンコフ・サクソ) photo:Kei Tsuji降雨が予想されていたため、路面の荒い市街地周回コースを警戒する声が多く聞かれたが、雨雲はロンドン市内の東側をかすめるようにして過ぎ去った。ほぼドライな状態の周回コースに、開幕時より幾分小さくなった102名のプロトンが駆け出した。

総合表彰台まで1秒差の総合4位オーウェン・ドゥール(イギリス、チームウィギンズ)のために、チームウィギンズがスタート直後から集団を支配した。アワーレコード保持者で今大会最も大きな人気を集めたブラドリー・ウィギンズ(イギリス、チームウィギンズ)が集団先頭に立ち、トラックチームとしてのスピードを生かして周回。そして3周目の第1スプリントポイントを2番手通過したドゥールが狙い通りボーナスタイム2秒を獲得し、ラスムス・グルトハマー(デンマーク、クルトエナジー)を退けて総合3位に浮上した。

その後のアタックでダニーロ・ウィス(スイス、BMCレーシング)やユライ・サガン(スロバキア、ティンコフ・サクソ)、ディラン・ファンバールレ(オランダ、キャノンデール・ガーミン)を含む8名が逃げグループを形成。第2と第3スプリントポイントを1位通過したディフェンディングチャンピオンのファンバールレはボーナスタイムを合計6秒獲得したものの、総合順位を上げることは出来なかった。

リーダージャージ擁するMTNキュベカがメイン集団を率い、レース中盤に差し掛かったところでチームスカイが協力を開始。平坦基調の高速サーキットで逃げを追い詰め、最終周回を前に集団を一つに戻した。



フィニッシュラインを過ぎ、ピカデリーサーカスを経てリージェントストリートへフィニッシュラインを過ぎ、ピカデリーサーカスを経てリージェントストリートへ photo:Kei Tsuji
総合首位を守るとともにスプリントを狙うエドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、MTNキュベカ)総合首位を守るとともにスプリントを狙うエドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、MTNキュベカ) photo:Kei Tsuji積極的に逃げて敢闘賞を獲得したダニーロ・ウィス(スイス、BMCレーシング)積極的に逃げて敢闘賞を獲得したダニーロ・ウィス(スイス、BMCレーシング) photo:Kei Tsuji




ピーター・ケノー(イギリス、チームスカイ)がメイン集団を牽引ピーター・ケノー(イギリス、チームスカイ)がメイン集団を牽引 photo:Kei Tsujiアンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ソウダル)がエリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、チームスカイ)をバリケードに追いやるアンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ソウダル)がエリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、チームスカイ)をバリケードに追いやる photo:Kei Tsuji両手を広げるアンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ソウダル)と、抗議するエリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、チームスカイ)両手を広げるアンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ソウダル)と、抗議するエリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、チームスカイ) photo:Kei Tsuji最終周回に入ってようやくロット・ソウダルが集団先頭に姿を見せ、グライペルのために強力なトレインを走らせる。残り2kmを切ったところで再びウィギンズがドゥールを引き連れて集団先頭へ。しかし主導権を握ったのは人数を揃えたロット・ソウダルだった。

少し涙を浮かべながら何度もガッツポーズするエリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、チームスカイ)少し涙を浮かべながら何度もガッツポーズするエリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、チームスカイ) photo:Kei Tsujiエティックス・クイックステップが先頭を奪って最終コーナーを抜けたものの、好位置をキープしたグライペルが残り200mで加速を開始。ほぼ同時にヴィヴィアーニも腰を上げたが、左側に進路を振ったグライペルに前を阻まれてしまう。

前日に引き続きグライペルが力強いスプリントを見せ、ヴィヴィアーニの追い上げを振り切って先着。どこか緊張感漂う表情で両手を広げたグライペルの後ろでは、ヴィヴィアーニが進路妨害を訴えながらフィニッシュした。

一旦はグライペルのステージ優勝が発表されたものの、ヴィヴィアーニの抗議によってコミッセールが審議を行った結果、進路妨害を行ったとしてグライペルは集団最後尾への降格処分に。ステージ3勝目で締めくくったヴィヴィアーニが、うれし涙を浮かべながらピカデリーサーカスの表彰台に登場した。

「ピーター(ケノー)とイアン(スタナード)が集団を牽引して逃げを捕まえ、そこから(ベン)スウィフティーとアンディ(フェン)にエスコートされて完璧なポジションで最終コーナーへ。登り基調だったので早掛けは禁物だとわかっていた。グライペルの加速に反応して左側から追い上げたところ、彼が左側に斜行。危うくバリアと接触するところだった。グライペルは偉大なチャンピオンであり、進路を妨害する姿を見るのはこれが初めて。こんな勝ち方になったのは残念だけど、とにかくロンドンで勝った意味は大きい」。チームスカイに大会4勝目をもたらしたヴィヴィアーニは記者会見でレースを振り返った。

ヴィヴィアーニはアメリカ・リッチモンドで開催されるロード世界選手権にイタリア代表として出場予定。ヴィヴィアーニは「200km超のステージが続いたので、世界選手権に向けてのベーストレーニングになった。今年のツアー・オブ・ブリテンは世界選手権の準備レースとしてパーフェクトだったと思う」と自信を見せた。

そして総合優勝の栄冠はエドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、MTNキュベカ)の手に。2009年に続く2度目の総合優勝を飾ったボアッソンハーゲンは「ファンタスティックな1週間だった。(アフリカに寄付する)バイクのキャンペーンも成功したし、大勢の観客の中を走ることは素晴らしかったよ。強力なチームサポートを得て総合優勝したことを嬉しく思う」とコメントしている。



総合優勝を果たしたエドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、MTNキュベカ)総合優勝を果たしたエドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、MTNキュベカ) photo:Kei Tsujiイエロージャージに袖を通すエドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、MTNキュベカ)イエロージャージに袖を通すエドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、MTNキュベカ) photo:Kei Tsuji

総合3位オーウェン・ドゥール(イギリス、チームウィギンズ)、総合優勝エドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、MTNキュベカ)、総合2位ワウト・ポエルス(オランダ、チームスカイ)総合3位オーウェン・ドゥール(イギリス、チームウィギンズ)、総合優勝エドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、MTNキュベカ)、総合2位ワウト・ポエルス(オランダ、チームスカイ) photo:Kei Tsuji


ツアー・オブ・ブリテン2015第8ステージ結果
1位 エリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、チームスカイ)           1h50’16”
2位 フアンホセ・ロバト(スペイン、モビスター)
3位 マッテオ・トレンティン(イタリア、エティックス・クイックステップ)
4位 エドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、MTNキュベカ)
5位 イェンス・デブシェール(ベルギー、ロット・ソウダル)
6位 ソンドレホルスト・エンゲル(ノルウェー、IAMサイクリング)
7位 マーク・レンショー(オーストラリア、エティックス・クイックステップ)
8位 グラハム・ブリッグス(イギリス、JLTコンドール)
9位 ルーベン・ゼプントケ(ドイツ、キャノンデール・ガーミン)
10位 オーウェン・ドゥール(イギリス、チームウィギンズ)

個人総合成績
1位 エドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、MTNキュベカ)     34h52’52”
2位 ワウト・ポエルス(オランダ、チームスカイ)                +13”
3位 オーウェン・ドゥール(イギリス、チームウィギンズ)            +44”
4位 ラスムス・グルトハマー(デンマーク、クルトエナジー)           +43” 
5位 ゼネク・スティバル(チェコ、エティックス・クイックステップ)       +51”
6位 ルーベン・フェルナンデス(スペイン、モビスター)
7位 ステフェン・クルイスウィク(オランダ、ロットNLユンボ)
8位 ディラン・ファンバールレ(オランダ、キャノンデール・ガーミン)      +53”
9位 クリスアンケル・セレンセン(デンマーク、ティンコフ・サクソ)       +59”
10位 サンドロ・メウリセ(ベルギー、アンポスト・チェーンリアクション)    +1’02”

ポイント賞
オーウェン・ドゥール(イギリス、チームウィギンズ)

山岳賞
ピーター・ウィリアムス(イギリス、ワンプロサイクリング)

スプリント賞
ピーター・ウィリアムス(イギリス、ワンプロサイクリング)

チーム総合成績
キャノンデール・ガーミン

text&photo:Kei Tsuji in London, United Kingdom


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