9月11日からツール・ド・北海道(UCI2.2)が開幕する。NIPPOヴィーニファンティーニが唯一のUCIプロコンとして出場。昨年の優勝チーム、バジェットフォークリフトはトラック世界チャンピオン2名が参戦する。19チーム94名が十勝岳を含む3ステージ550kmに挑む。



美瑛、富良野地方を巡る第2ステージ(写真は2009年大会より)美瑛、富良野地方を巡る第2ステージ(写真は2009年大会より) photo:Hideaki TAKAGI
今年のコースは、発表されているコースマップおよびプロフィールマップをみる限り毎年のように見られる「トラップ(罠)」のようなポイントはない。坂の勾配以外に、時間とともに変わるであろう風向きも勝敗を決める大きな要素となるだろう。旭川市を拠点とする全3ステージ計550kmが今年のコースだ。

毎年秒差となるツール・ド・北海道で重要なのはタイムボーナス。昨年の個人総合1位と2位の差は、最終的にわずか2秒だった。ステージ途中のホットスポットは計4箇所で、3秒・2秒・1秒、フィニッシュは10秒・6秒・4秒が得られる。山岳ポイントは計6箇所配される。今年も秒差争いの可能性が高いが、大きな山岳後の小さなピークや横風で勝敗が決まる可能性もまた高そうだ。

各ステージ概要

第1ステージ 9月11日(金)188km 旭川市~名寄市~東川町

第1ステージ山岳ポイント第1ステージ山岳ポイント photo:Hideaki TAKAGI旭川市郊外の春光台公園で開会式が9時から行なわれ、レースは10時にパレードスタートで始まる。第1ステージは急な上りのないコース。47km地点にホットスポット(HS)があり、まずはここで秒差を獲得する争いが勃発するだろう。その後に少人数の逃げが決まるはずだ。中盤以降に山岳ポイント(KOM)が2箇所あり、山岳リーダージャージを巡る戦いになるのは必至だ。

2回目のHSはラスト36kmにあり、そしてここからフィニッシュまでの30kmの間に小さいピークが4箇所ある。残り距離からアタックがかかるのは必然だ。最終盤2箇所のピークのうち、1つ目は全区間狭く、上り勾配は緩いがむしろ路面の悪い下りがポイントになる。ここから平坦をこなし、フィニッシュ前3.5kmのピークがあるが、ここも勾配が緩く短いため決定的な逃げになる可能性は少ない。むしろスプリンターチームが高速で牽引してアタックを封じる動きになるはずで、逃げを狙うチームとのせめぎ合いになるだろう。ただし上りは距離が短いため、ゴールは集団スプリントの可能性が高いだろう。

このステージは上りが少ない代わりに風の影響も無視できない。台風関係の気象により、前日の10日にはおおむね東風だったが当日は変わる可能性がある。横風が吹くと分断され上り坂よりも影響が大きい。

第2ステージ 9月12日(土)162km 美瑛町~富良野市~美瑛町

第2ステージフィニッシュ地点 美瑛町内第2ステージフィニッシュ地点 美瑛町内 photo:Hideaki TAKAGI十勝岳への上り、美瑛丘陵のアップダウンと見どころの多いステージだ。スタート後は緩いアップダウンが連続する美瑛丘陵を巡る。富良野へ入り一直線の道を走るが、風の影響を受ける区間だ。いったん十勝岳麓まで上り下りする。その後に本格的に登り始め、十勝岳の吹上温泉そして白金温泉へと上る。吹上温泉KOMまでの4kmは勾配もきつく、集団はばらけるはずだ。

KOMから下って白金温泉から白金模範牧場への標高差100mほどの上り返しがあり、ここが思いのほかきついため逃げができる可能性がある。バラけた集団はゴルフ場横の道を下り、フィニッシュへ向けて2回尾根を越える。その2回目、ラスト21kmの上りは最後のアタックポイントだ。ここでフィニッシュまで届く逃げができるかもしれない。ラストは美瑛町内へ降りて最終コーナーから700m直線でフィニッシュ。2012年はおよそ逆回りのコースで10人ほどの逃げが決まった展開だった。今回も逃げが決まる可能性があるだろう。

第3ステージ 9月13日(日)200km 鷹栖町~新十津川町~札幌市

最終第3ステージフィニッシュと閉会式は札幌市モエレ沼公園最終第3ステージフィニッシュと閉会式は札幌市モエレ沼公園 photo:Hideaki TAKAGIチームカーの番号が決まったチームカーの番号が決まった photo:Hideaki TAKAGI最終ステージは個人総合、ポイント賞、山岳賞、チーム総合などの順位争いのために各チーム様々な思惑が絡み合う。大会中最長の200km、大きな峠はなく、北海道らしい風景の丘陵地帯や原野・原生林を抜けて札幌市内へと至る。スタート後すぐの江丹別峠が最大の峠だ。KOM狙いと逃げを作る動きでいったんはバラバラになるが、その多くは吸収される。ここで少数の逃げ集団ができる可能性もある。いっぽうここで完全に集団から離れてしまうとこのステージを完走するのは不可能となる。

総合上位陣が秒差になった場合、57.5km地点のHSまでは集団の可能性が高い。ここを過ぎてから小数の逃げが決まることも。終盤は平坦であり、おそらくすべての逃げが集団に吸収されてからゴールスプリントによる決着が見られそうだ。モエレ沼公園を南側から入り、ラスト1.2kmの狭い左直角コーナーを前方でクリアすることが必要だ。

チーム情報

19チーム94名が550kmに挑む

UCIプロコンチネンタルチームがイタリア籍のNIPPOヴィーニファンティーニの1チームのみ。海外コンチネンタルチームが3チーム、国内コンチネンタルチームが9チームすべて、地域チームが1チーム、そして大学チームが5チームの計19チーム・各5名までが出場する。事前に予定されていたUCIアジアツアーチームランキング上位のイラン2チームが直前に出場をキャンセルしたため、当初の予定出場チームから2チームが減った。

唯一のプロコン、NIPPOヴィーニファンティーニの意地が見られるか
2014年はバジェットフォークリフトとNIPPOの戦い2014年はバジェットフォークリフトとNIPPOの戦い photo:Hideaki TAKAGIキャプテンはスプリンターのダニエーレ・コッリ。ジロ・デ・イタリアでは観客との接触により左腕を複雑骨折したが、7月からレースに復帰している。ほか4人は若手で、山本元喜は鹿屋体育大在学中に北海道でステージ2勝している。チームの昨年は最終ステージのラスト50mまでは個人総合優勝目前だっただけに、今年にかける意気込みもある。レースをコントロールする力はトップで、今年もNIPPOヴィーニファンティーニを中心とした展開になるだろう。
2013年ワン・ツー達成のブリヂストンアンカー2013年ワン・ツー達成のブリヂストンアンカー photo:Hideaki TAKAGI
トラック世界チャンピオン2人を擁するバジェットフォークリフト
昨年個人総合優勝のチームバジェットフォークリフトは昨年とメンバーを変えてきたが、今年もスピードを武器に強力な走りを仕掛ける。スコット・サンダーランドは2012年にチームスプリントで、ミッチェル・ムルハーンは2014年に団抜きでそれぞれトラック世界チャンピオン。この2名のスピードは今大会随一のはずだ。

CCT p/b チャンピオンシステムは橋川健監督のもと、徳田鍛造・優兄弟が出場する。鹿屋体育大3年の優はUCI登録が優先されるため、このチームで出場。チームはマイケル・ヴィンクが2015年のニュージーランド個人TTチャンピオン。RTSサンティックレーシングチームは全員が台湾の選手で固めている。
過去ステージ3勝の鹿屋体育大学過去ステージ3勝の鹿屋体育大学 photo:Hideaki TAKAGIインカレロード2015優勝の吉田悠人(左、日本大)インカレロード2015優勝の吉田悠人(左、日本大) photo:Hideaki TAKAGI
国内チームでは2013年の個人総合優勝者トマ・ルバ(ブリヂストンアンカー)がゼッケン1番で登場。好調の西薗良太そして昨年総合3位の内間康平らでレースに臨む。2013年は第1ステージで横風を味方につけて大会の大勢を決めたチームだ。

チーム右京は全日本ロードチャンピオンの窪木一茂、土井雪広、平井栄一、パブロ・ウルタスン、サルバドール・グアルディオラと強力な布陣。

宇都宮ブリッツェンは1週間前に渡良瀬でのJBCF個人TTで勝利を挙げた増田成幸を筆頭に、鈴木譲、北海道出身の阿部嵩之、鈴木真理、大久保陣で臨む。マトリックスパワータグはホセビセンテ・トリビオを中心に、ツール・ド・熊野で総合優勝したベンジャミン・プラデス、アイラン・フェルナンデス、吉田隼人、安原大貴という構成。

キナンサイクリングチームはジャイ・クロフォード、ロイック・デリアク、リカルド・ガルシアそして野中竜馬、中西重智で戦う。
愛三工業レーシングチームは西谷泰治監督のもと、福田真平、伊藤雅和、小森亮平、早川朋宏、中根英登とバランスが取れている。
シマノレーシングは入部正太朗、木村圭佑、秋丸湧哉、横山航太、小山貴大と若手で、那須ブラーゼンはJBCF個人TT2位の佐野淳哉、吉岡直哉、鈴木龍、雨澤毅明、新城雄大と伸び盛りの若手で構成。
群馬グリフィンレーシングチームは最年長42歳の狩野智也、普久原奨、管洋介、倉林巧和、岸崇仁で臨む。

さらに北海道地域選抜、そして大学チームとしては鹿屋体育大、日本大、法政大、明治大、東京大が出場する。鹿屋は橋本英也と黒枝咲哉のスピード、日本大はインカレロードチャンピオンの吉田悠人ら、法政大は新村穣と2014RCSチャンピオンの相本祥政ら、明治大は松本祐典らと層が厚く、東京大は浦佑樹が注目どころ。大学生がプロ相手に一矢報いることにも期待したい。

photo&text:高木秀彰