7月末、神奈川県の湘南国際村にて台湾ブランド「メリダ」2016モデルの販売店/メディア向け試乗会が開催された。今回は展示会の様子を紹介すると共に、今季の新モデルであるフルサスXCバイク「NINETY-SIX」と、カーボン化したマラソンバイク「ONE-TWENTY」をピックアップしてフォーカスする。



多くのメデイアがプレスキャンプに集まった多くのメデイアがプレスキャンプに集まった メリダの国内正規代理店を務めるミヤタサイクルの高谷信一郎代表メリダの国内正規代理店を務めるミヤタサイクルの高谷信一郎代表


全国の取り扱いプロショップや、主要自転車メディアが一堂に会して行われたメリダの2016年展示会。2年前にはメリダ・ミヤタカップが開催され、オンオフを問わない抜群のライド環境が辺りに広がる神奈川県は湘南国際村を舞台に行われた。主催はメリダの国内正規代理店を務めるミヤタサイクルだ。

松尾純のBIG.NINE(手前)と、小野寺健のBIG.SEVEN(奥)松尾純のBIG.NINE(手前)と、小野寺健のBIG.SEVEN(奥) バイクコントロールに定評のある大久保陣(宇都宮ブリッツェン)がMTBで魅せるバイクコントロールに定評のある大久保陣(宇都宮ブリッツェン)がMTBで魅せる 今回紹介するMTBラインアップには、復活を果たしたフルサスXCバイク「NINETY-SIX」と、オールマウンテンモデルのカーボン仕様「ONE-TWENTY CARBON」という2つの新モデルが登場した。

一方、プロからの信頼も厚いハードテールXC「BIG-SEVEN」及び「BIG.NINE」にはシマノXTR Di2や、この春に登場した新型XTを搭載した完成車が新たに加わるなど、継続となる各モデルもアップデートが行われている。ランプレ・メリダの活躍もあって、国内ではロードのイメージが強くなってきたが、従来よりMTBに力を入れているだけあり、そのラインアップは抜け目が無いという印象だ。

また、試乗会に先立って行われたプレゼンテーションでは、ミヤタサイクルの高谷信一郎代表が登壇。「2016年もレース活動を通したブランディングを継続していく」と語り、MTBでは来季もミヤタメリダバイキングチームの活動をサポートしていく意向を示した。

そして、ミヤタメリダバイキングチームの山路篤監督、小野寺健と松尾純の両選手も登場し、アメリカ遠征や7月中旬の全日本選手権など、シーズン前半戦の活動報告を行った。終盤にかけてチームは、国内シリーズ戦の「Coupe du Japon」を主戦場とし、勝利を狙っていく予定だ。



復活したフルサスXCバイク「NINETY-SIX」

メリダ NINETY-SIXメリダ NINETY-SIX photo:Yuya.Yamamoto
2016のメリダMTBラインアップにおいて、最大のトピックスといえるのが復活したフルサスXCバイク「NINETY-SIX」。近年、更に難易度が増すワールドカップのコースに対応すべく、マルチバン・メリダ・バイキングチームとの共同開発によって誕生した1台で、5月末にドイツで開催されたワールドカップより実戦投入されている。

2015年までラインアップされていたフルサスXCバイク「NINETY-NINE」と大きく異なる点は2つ。まずひとつ目は、従来モデルの「NINETY-SIX」より踏襲したサスペンションのレイアウトだ。NINETY-NINEがトレイルライド系もモデルと同じくシートチューブにサスペンションを配置していたのに対して、NINETY-NINEでは、よりXCに最適化するため本体をトップチューブにマウントする「Race Link」レイアウトとしている。

PRCのシートポストやプロロゴのサドルなど、マルチバン・メリダ・バイキングチームと同じパーツアッセンブルとしているPRCのシートポストやプロロゴのサドルなど、マルチバン・メリダ・バイキングチームと同じパーツアッセンブルとしている ダウンチューブには内部にリブを設けることで剛性を高める「DOUBLE CHAMBER」を採用ダウンチューブには内部にリブを設けることで剛性を高める「DOUBLE CHAMBER」を採用 フロントフォークは倒立式のロックショックス RS-1フロントフォークは倒立式のロックショックス RS-1


これにより、リアサスペンションの性能を更に引き出すことに成功し、トラクション性能の向上を実現。同時に、ロックアウト時にはリアリジットバイクの様な高効率な走りを可能とした。また、リンクをフルカーボン製とすることで軽量化を図っており、フレーム全体重量は2,000gを下回っているという。

もう一つ大きく異なる点は、レームサイズに応じてホイール径を変更したこと。国内では4サイズがラインアップされるうち、41cmと46cmは27.5インチ、46cmと51cmは29インチとされており、46cmは27.5インチとは29インチは2つのホイールサイズで展開されることになる。「ライダーの身長に応じてジオメトリーを最適化するため」とは開発責任者であるユルゲン・ファルケ氏の言葉で、メリダミヤタバイキングチームの小野寺健と松尾純の両選手も歓迎すべきこととコメントしている。

サスペンション本体をトップチューブにマウントする「Race Link」レイアウトサスペンション本体をトップチューブにマウントする「Race Link」レイアウト アグレッシブなライディングポジションに対応する短いヘッドチューブアグレッシブなライディングポジションに対応する短いヘッドチューブ

TEAMはフルカーボン製スイングアームを採用するTEAMはフルカーボン製スイングアームを採用する リアブレーキの台座をチェーンステーに設けることで、石や枝にヒットするリスクを低減リアブレーキの台座をチェーンステーに設けることで、石や枝にヒットするリスクを低減


なお、27.5インチ仕様は、メリダのフルサスXCとして初の27.5インチモデルとなる。サスペンションストロークは、27.5インチ仕様がバイクネームの通り96mmストロークなのに対して、29インチ仕様が119mm。これは全てのフレームサイズでサスペンションの動きを同一とする「M.O.R.E」テクノロジーによるものだ。

NINETY-SIXと共にガレたダウンヒルを攻めるトーマス・リッシャー(スイス)NINETY-SIXと共にガレたダウンヒルを攻めるトーマス・リッシャー(スイス) (c)ミヤタサイクル カーボンには、ナノテクノロジーによって従来比で40%の高強度を達成した「NANO MATRIX CARBON」を採用。ダウンチューブ内にリブを設け剛性を高める「DOUBLE CHAMBER」や、成形時には内部のシワを排除し耐久性を高める「AWS」などのテクノロジーと合わせて、XCバイクに求められる軽量性と耐久性の両立に成功した。

また、ディレーラー、ブレーキ、サスペンションと煩雑になるケーブル類をフレーム内に収納することで不意の断線を防ぐ「Smart Entry」も新型NINETY-SIXの大きなトピックの1つ。シマノXTR Di2の電動ケーブル内装や、ドロッパーシートポストにも対応。ブレーキは欧州で主流の左前/右後と、国内で主流の右前/左後のどちらにも対応する。

そして、フレームへの出入口に設けられたプラスチック製ワイヤーガイドがケーブルをしっかりと固定するため、フレーム内部にガイドが必要なく、無駄な重量の増加は無いとのこと。開発時には3Dプリンターを用いて繰り返し試作が行われており、台湾の職人の手によってしっかりと内部のガイドがアッセンブルされているため、あらゆるセッティングでスムーズなワイヤリングが可能だとという。

ディレーラー、ブレーキ、サスペンションと煩雑になるケーブル類を全てフレーム内に収納する「Smart Entry」ディレーラー、ブレーキ、サスペンションと煩雑になるケーブル類を全てフレーム内に収納する「Smart Entry」 メリダがプロデュースするパーツブランドPRCを全面的に採用するメリダがプロデュースするパーツブランドPRCを全面的に採用する

DTスイス XR1501 Spline OneをアッセンブルするDTスイス XR1501 Spline Oneをアッセンブルする TEAMのコンポーネントはスラムXX1TEAMのコンポーネントはスラムXX1


国内ではマルチバンメリダのチームモデルと、スイングアームをアルミとしたスタンダードモデルの2種類が展開される。マルチバンメリダモデルは、フロントフォークにロックショックス RS-1、リアショックに同Monarch XX Remote、コンポーネントにスラムXX1、ホイールにDTスイス XR1501 Spline Oneを採用した完成車と、フレームセットの2種類がラインアップされる。スタンダードモデルはシマノXTをメインコンポーネントに、前後ともサスペンションをフォックスとした完成車のみラインアップされる。

来季はNINETY-SIXを使用するミヤタメリダバイキングチームの小野寺健と松尾純来季はNINETY-SIXを使用するミヤタメリダバイキングチームの小野寺健と松尾純 photo:Yuya.Yamamoto
下記には、メリダミヤタバイキングチームの小野寺健と松尾純の両選手のコメントを紹介しよう。

— NINETY-SIXのファーストインプレッションを教えて下さい。

小野寺:持っても軽いですが、それ以上にNINETY-SIXは走りが軽いですね。サスペンションの動きがスムーズで、しっかりと路面に追従してくれるため、トラクションが逃げることがありません。海外ではレーススピードが速く、かつ路面が硬くて、ロックセクションがハードなので、NINETY-SIXは大きなメリットになってくれると思います。国内だと、三重県多気町の勢和の森マウンテンバイクコースなんかにピッタリではないでしょうか。

松尾:これまで、フルサスバイクを使いたいと思うシーンはほとんど無かったですが、NINETY-SIXならレースで走らせてみたいと感じました。シーズン前半にアメリカでレースを走りましたが、海外に行くと顕著にフルサスが良いなと感じますし、NINETY-SIXがあれば、もっと良いリザルトを残せると感じました。

— 27.5インチと29インチ、NINETY-SIXに乗るならどちらのホイールサイズでしょうか?

小野寺:現在は27.5インチのリアリジット「BIG.SEVEN」を使用していて、NINETY-SIXも27.5インチになると思います。自分の場合は、ホイールサイズは変更しませんが、同じバイクで2つのホイールサイズがラインアップされるのは、ライダーにとって大きなメリットになると思います。

松尾:自分の場合には身長があるので、29インチですね。現在は29インチのリアリジット「BIG.NINE」を使用していて、やはり29インチに慣れているというのが大きな理由です。

メリダ NINETY-SIX TEAM
フレーム:NINETY-SIX Superlite BC CF5
フロントフォーク:ロックショックス RS-1
リアサスペンション:ロックショックス Monarch XX Remote
メインコンポーネント:スラム XX1
ホイール:DTスイス XR1501 Spline One
ホイールサイズ:27.5インチ、29インチ
サイズ:41cm(27.5)、46cm(27.5)、46cm(29)、51cm(29)
カラー:マットUDカーボン(グリーン/ホワイト)
税抜価格:1,050,000円(完成車)、639,000円(フレームセット)

メリダ NINETY-SIX XT
フレーム:NINETY-SIX lite BC CFA
フロントフォーク:フォックス FLOAT Performance 100mm travel
リアサスペンション:フォックス FLOAT DPS Performance Elite
メインコンポーネント:シマノ Deore XT
ホイール:DTスイス 466D
ホイールサイズ:27.5インチ、29インチ
サイズ:41cm(27.5)、46cm(27.5)、46cm(29)、51cm(29)
カラー:レッド(ブラック)
税抜価格:429,000円(完成車)



さらなる軽量化でトレイルバイクの新境地を切り開くカーボン版のONE-TWENTY

メリダ ONE-TWENTY 7.7000メリダ ONE-TWENTY 7.7000 photo:Yuya.Yamamoto
レーシングモデルに強い一方で、マスプロメーカーらしからぬ「楽しさ」を追求したバイクをも得意とするメリダ。その最たる例が120mmトラベルのオールラウンドトレイルバイク「ONE-TWENTY」だ。2015年にフレーム形状を一新すると共に27.5インチ化。MTBフリークから、高い注目を集めている。

120mmストロークと聞けば下り寄りなバイクを連想するが、「ONE-TWENTY」はトラクション性能が高いことに起因する優れた登り性能も特長である。2015年モデルではアルミフレーム仕様のみの展開だったものの、2016年モデルでは、フロントトライアングルにカーボンを採用した上位モデル「メリダ ONE-TWENTY 7.7000」が登場。アルミモデルより400g軽量化を果たし、フルサスXCに勝るとも劣らないと登坂性能を実現しているという。

シマノの新規格サイドスイングに対応するFD台座シマノの新規格サイドスイングに対応するFD台座 リアサスペンションはロックショックスMonarch RLリアサスペンションはロックショックスMonarch RL


素材となるカーボンには、ナノテクノロジーによって従来比で40%の高強度を達成した「NANO MATRIX CARBON」を採用。成形時には内部のシワを排除し耐久性を高める「AWS」テクノロジーを用いるなど、その内容はピュアレーシングマシンとほぼ同等で、軽さとMTBに求められる堅実性の両立に成功した。

リアサスペンションのレイアウトはアルミモデルを踏襲。リアサスペンションの沈み込みに応じて下部ユニット取付部を動かすことでストローク量以上の走破性を実現した「FLOAT LINK」に、サイズごとにリアサスペンションの動きを最適化する「M.O.R.E」テクノロジーを組み合わせている。これによりフルサスバイクに起こりがちなボビングやダウンヒルでのダイブを解消し、トラクション性能を高め、登り下りを問わない軽快な走りを可能とした。

NINETY-SIXと同じく、スムーズなワイヤリングを可能とするSmart Entryシステムを採用するNINETY-SIXと同じく、スムーズなワイヤリングを可能とするSmart Entryシステムを採用する スイングアームはアルミ製だスイングアームはアルミ製だ

11速化を果たした話題のシマノXTを全面的に採用11速化を果たした話題のシマノXTを全面的に採用 ホイールはサンリングル Helix TR27ホイールはサンリングル Helix TR27


その他、細部の作り込みもONE-TWENTY.の大きなポイント。ディレーラー、ブレーキ、サスペンションと煩雑になるケーブル類をフレーム内に収納することで不意の断線を防ぐ「Smart Entry」を採用。フロントディレーラーハンガーはパーツアッセンブルに合わせて取り外し可能で、シマノのダイレクトマウント方式にも対応する。なお、国内では27.5インチホイールのみでの展開となる。

販売パッケージはフレームセットと、リア11速化を果たした新型シマノXTを搭載した完成車の2種類。ドライブトレインはあらゆる地形に対応可能なフロントダブル仕様で、ディスクブレーキのシマノXTとされている。サスペンションは前後ともロックショックスで、フロントは130mmストロークのRevelation RL、リアがMonarch RLという定評のある組み合わせ。マラソンXCレースから、トレイルライディングまで、1台で様々なシチュエーションをこなしたいというライダーにオススメだ。

リダ ONE-TWENTY 7.7000
フレーム:ONE-TWENTY lite CFA R12
フロントフォーク:ロックショックス Revelation RL
リアサスペンション:ロックショックス Monarch RL
コンポーネント:シマノ DEORE XT
ホイール:サンリングル Helix TR27
サイズ:41cm、46cm
カラー:マットUDカーボン/グリーン
税抜価格:479,000円(完成車)、279,000円(フレームセット)

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