全日本選手権タイムトライアルより、日本最速の座を争ったTTバイク11台を2編に分けて紹介。前編はサプライズ優勝を飾った中村龍太郎(イナーメ信濃山形)、増田成幸(宇都宮ブリッツェン)、山本元喜(NIPPOヴィーニファンティーニ)、土井雪広(Team UKYO)、小山貴大(シマノレーシング)のバイクをチェックします。



中村龍太郎(イナーメ信濃山形)のフェルト DA

中村龍太郎(イナーメ信濃山形)のフェルト DA中村龍太郎(イナーメ信濃山形)のフェルト DA photo:Makoto.AYANO
並み居るプロを下してサプライズ優勝を果たしたサラリーマンレーサー、中村龍太郎(イナーメ信濃山形)。バイクは自ら購入したというフェルトのTTマシン「DA」。中村はロードバイクもフェルトを使用しており、同ブランドを非常に気に入っているとのことだ。

コンポーネントはシマノ7970系DURA-ACE Di2をメインに、クランク及びブレーキは7800系DURA-ACEとしている。なお、リアディレーラーのプーリーケージは大径プーリーによってフリクションロスを低減したバーナーに換装。「チェーン落ちのリスクを考慮し、終盤の急勾配区間を含めフロントの変速無しで走りきれる様に」と、フロントのアウターチェーンリングは、他のライダーよりも小さめな53Tとしている。

右側のバーエンドシフターはレース中に脱落してしまったとのこと右側のバーエンドシフターはレース中に脱落してしまったとのこと こだわりのポイントというPROのベースバーこだわりのポイントというPROのベースバー

コンポーネントは7090系DURA-ACE Di2。プーリーケージはバーナーに換装されているコンポーネントは7090系DURA-ACE Di2。プーリーケージはバーナーに換装されている 行きつけのショップの店長が貸してくれたというマヴィックのホイール行きつけのショップの店長が貸してくれたというマヴィックのホイール


ホイールは行きつけのサイクルショップ「サイクルフリーダム」の店長が貸してくれたというマヴィック。IO、COMETE、コスミックカーボン80、コスミックカーボン60という4モデルを会場に持ち込み、最終的には風が強くないことからフロントがバトンタイプのIO、リアがディスクタイプのCOMETEという組み合わせにしたとのこと。

ホイール選択も勝因の1つとなったようで「トラック用ということもあり、雨の中だとIOの制動力は決して高くなかったのですが、それならあまりブレーキせずにコーナーをこなそうと思ったのが今日の勝因の1つになったのではと思います。リスキーな走りではありますが、結果オーライですね」と語っている。

サドルはフィジークARESサドルはフィジークARES 表面のカバーだけ変えられたガーミン Edge500表面のカバーだけ変えられたガーミン Edge500

クランクは7800系のアームに夢屋のチェーンリングを組み合わせる。アウターの歯数は53Tと、他のライダーと比較して小さめだクランクは7800系のアームに夢屋のチェーンリングを組み合わせる。アウターの歯数は53Tと、他のライダーと比較して小さめだ BB下にマウントされたブレーキは専用設計品BB下にマウントされたブレーキは専用設計品


タイヤは前後ともヴェロフレックスExtreme。中村といえば「気合の10(Bar)!」のキャッチフレーズが、ホビーレーサーの間では知られているが、今シーズン落車が続いていたことに加え、雨が降りだしたことから、出走前に当初予定していた9Barから更に1Bar落としたという。

ハンドルバーはPRO。登りを考慮して、肩が下がっているタイプではなく、フラットなタイプのベースバーを買い直したとのこと。サドルはフィジークのTT用ショートデザインモデルARES。ペダルは歴戦の跡が刻まれたシマノPD-7800だ。



増田成幸(宇都宮ブリッツェン)のメリダ WARP TT

増田成幸(宇都宮ブリッツェン)のメリダ WARP TT増田成幸(宇都宮ブリッツェン)のメリダ WARP TT photo:Yuya.Yamamoto
ホイールはフロントがシマノWH-9000-C50-TU、リアがPROのTextreamカーボン製ディスクという組み合わせホイールはフロントがシマノWH-9000-C50-TU、リアがPROのTextreamカーボン製ディスクという組み合わせ ステムクランプ部を翼断面とした専用ハンドルと対応ステムステムクランプ部を翼断面とした専用ハンドルと対応ステム


2位でフィニッシュした増田成幸が駆ったのは、メリダのTTバイク「WARP TT」。カムテール断面のチューブを多用したことや、専用設計のヴィジョン製ステム/ハンドルによって空力性能を追求したことが特徴の1台だ。なお、カラーリングは市販品にはないレッド/ホワイトのチーム仕様とされている。

コンポーネントはシマノDURA-ACE Di2で統一され、前後のギア比はフロントが55-42Tで、リアが11-25Tであった。パワーメーターはパイオニアのペダリングモニターとしている。ホイールはフロントがシマノWH-9000-C50-TU、リアがTextreamカーボンを使用したPROのディスクという組み合わせ。

サドルはプロロゴ Zero IIサドルはプロロゴ Zero II タイヤはパナレーサー Race C Evo 2。前後とも空気圧は7.75Barと1/100単位までこだわっているタイヤはパナレーサー Race C Evo 2。前後とも空気圧は7.75Barと1/100単位までこだわっている

フロントチェーンリングの歯数は55-42Tフロントチェーンリングの歯数は55-42T コンポーネントはDURA-ACEで統一。パワーメーターにはパイオニアのペダリングモニターを採用コンポーネントはDURA-ACEで統一。パワーメーターにはパイオニアのペダリングモニターを採用


タイヤはトラディショナルなトレッドパターンによりグリップを高めたパナレーサー Race C Evo 2で、前後とも空気圧は7.75Bar。メカニックによると、1/100単位まで空気圧を調整しているのは増田自身のこだわりなのだとか。サドルはプロロゴのTT用ショートデザインモデルZero IIとしている。



山本元喜(NIPPOヴィーニファンティーニ)のデローザ FORMULA

山本元喜(NIPPOヴィーニファンティーニ)のデローザ FORMULA山本元喜(NIPPOヴィーニファンティーニ)のデローザ FORMULA photo:Yuya.Yamamoto
円盤型のスパイダー部が特徴的なBORA ULTRAクランク円盤型のスパイダー部が特徴的なBORA ULTRAクランク 専用ステムを使用する専用ステムを使用する


山本元喜の駆るTTバイクは、デローザ FORMULA。国内はもとより、海外レースでもこれまで中々お目にかかれなかったレアな1台だ。専用ステムやBB下のブレーキ、ヘッド周りのインテグレーテッドデザインなど、トレンドを満遍なく網羅したバイクだが、流麗なフレームワークにはデローザらしさを感じることができる。

コンポーネントはカンパニョーロで、機械式の新型RECORDをメインに、クランクは円盤型のスパイダー部が特長的な「BORA ULTRA」としている。歯数はフロントが55-42Tで、リアが11-29Tと、コース終盤の急勾配区間を考慮したと思われるセッティングだ。なお、ロード同様にパワーメーターは搭載せず、CICLO SPORTのサイクルコンピューターを使用していた。

ロードでも使用するセライタリアFLITEをTTバイクに装着ロードでも使用するセライタリアFLITEをTTバイクに装着 ハンドルバーはヴィジョン製ハンドルバーはヴィジョン製

ホイールはフロントがBORA ULTRA 80、リアがBORA ULTRA TTという組み合わせホイールはフロントがBORA ULTRA 80、リアがBORA ULTRA TTという組み合わせ IRCがプロトタイプとして現在テスト中のチューブラータイヤIRCがプロトタイプとして現在テスト中のチューブラータイヤ


ホイールは前後ともカンパニョーロで、フロントがBORA ULTRA 80、リアがBORA ULTRA TTという組み合わせだ。タイヤはIRCが開発を進めるチューブラータイプのプロトタイプFormula PRO RACE TEAM。シートポストの突き出し量は大きくないものの、TT用のショートデザインでは無く、セライタリアのロード用定番モデルFLITEを使用し、後退幅のレギュレーションをクリアできている。



土井雪広(Team UKYO)のクォータ KALIBUR

土井雪広(Team UKYO)のクォータ KALIBUR土井雪広(Team UKYO)のクォータ KALIBUR photo:Yuya.Yamamoto
ファストフォワードのホイールを使用するファストフォワードのホイールを使用する デダ・エレメンティをメインのDHバー及びベースバーを使用デダ・エレメンティをメインのDHバー及びベースバーを使用


全日本TTでもコンスタントにシングルリザルトを残す土井雪広(Team UKYO)のバイクは、トライアスロン界で数々の実績を残しているクォータのTT兼用モデル KALIBUR。ブレーキは一般的なキャリパータイプである点や、汎用品のステム/ハンドルが使用可能な点など、扱いやすさに長けることが特徴の1台だ。

コンポーネントはシマノで、ULTEGRA Di2をメインに、クランクのみDURA-ACEとされている。ギア比はフロントが55-42Tで、リアが11-28T。パワーメーターは、サポートを受けるインターマックス取り扱いのステージズパワーで、計測したデータはパイオニアのモニターで表示させている。

ビニールテープを用いて固定されたパイオニアのモニタービニールテープを用いて固定されたパイオニアのモニター アジャスタブルステムを用いて、理想のポジションを実現しているアジャスタブルステムを用いて、理想のポジションを実現している

タイヤはヴィットリアの定番モデルCORSA CXタイヤはヴィットリアの定番モデルCORSA CX パワーメーターはステージズパワーパワーメーターはステージズパワー


ホイールはファストフォワードで、フロントがF4R、リアがFull Carbon Discという組み合わせだ。タイヤはヴィットリアの定番レーシングモデルCORSA CXで、太さは23mm。ハンドル周りはデダ・エレメンティを基本としつつ、より低いポジションを実現するために、PROのアジャスタブルステムを使用。その他、サドルはプロロゴZero II、ペダルはスピードプレイ、ボトルケージはTOKENとしている。



小山貴大(シマノレーシング)のジャイアント TRINITY ADVANCED SL

小山貴大(シマノレーシング)のジャイアント TRINITY ADVANCED SL小山貴大(シマノレーシング)のジャイアント TRINITY ADVANCED SL photo:Yuya.Yamamoto
ステムとトップチューブを面一とすることでエアロ性能を高めているステムとトップチューブを面一とすることでエアロ性能を高めている 専用品のブレーキは前後共フォーリアーズ製だ専用品のブレーキは前後共フォーリアーズ製だ


シマノレーシングのTTバイクはジャイアント「TRINITY ADVANCED SL」。ヘッド周りのデザインや、シマノレーシング仕様のカラーリングが市販車と異なる点で、シマノとPROの製品で固められたアッセンブルが特徴だ。写真は男子U23カテゴリーに出走した小山貴大のバイクである。

コンポーネントはシマノDURA-ACE Di2がメインで、バッテリーは外出しで、左側のチェーンステーに配置。歯数はフロントが53-39Tで、リアが11-25T。ブレーキは前後とも、台湾に居を構えるパーツブランド「フォーリアーズ」のTRINITY専用品としている。

リアホイールはPRO textreamディスクリアホイールはPRO textreamディスク ジャイアント製のベースバーにPROのDHバーを組み合わせるジャイアント製のベースバーにPROのDHバーを組み合わせる

外装バッテリーは非駆動側チェーンステーに配置されている外装バッテリーは非駆動側チェーンステーに配置されている タイヤはロードと同じくヴィットリア CORSA SC。幅は23mmだタイヤはロードと同じくヴィットリア CORSA SC。幅は23mmだ


ホイールはフロントがWH-9000-C75-TU、リアがtextreamカーボンを使用したPROのディスクとしている。タイヤはロードと共通で、アメサイドが特徴的なヴィットリアのレーシングモデルCORSA SCの23mm幅。ハンドルはジャイアント製のベースバーに、PROミサイルシリーズのDHバーという組み合わせ。サドルはTT用ではなく、ロード用のTURNIXだ。



text&photo:Yuya.Yamamoto
photo:Makoto.AYANO