2015/06/29(月) - 05:11
日本チャンピオンを決める全日本選手権ロードレースの最終プログラムはエリート男子。240km・6時間のレースの最後はチームUKYOが土井、畑中、そして窪木とつなげ、屈指のスピードを誇る窪木がロード日本チャンピオンに輝いた。
栃木県北部の那須町と那須塩原市で初開催される全日本ロード。関東で初めての全日本選手権開催であるということの他にも、市街地を通る過去に例を見ないコース、コース上にブルーのラインを引いたこと、サイクルフェスティバルなどと連動しての盛り上げなど、「初めてづくし」の全日本だ。
朝から沿道に詰めかけた観客の様子はひと目で過去最高の人出と盛況を確信させるもので、レース後に発表された観客動員数は2万7千人。しかも天気は終日雨が降り続く悪天の予報を裏切り、奇跡的に終日もちこたえた。
別府史之、新城幸也は出場を見送り、大本命の居ない全日本。多くの選手にチャンスがあり、優勝候補は絞り切れないほど。五輪への切符がかかるといったことも無い”平常年”のため、レースにかける選手たちのプレッシャーや緊張度も比較的小さいはずだ。
地元栃木の期待を大きく浴びるブリッツェンとブラーゼン。チームとしてはいちばん人数と脚が揃っているのが愛三工業とブリヂストンアンカー。そしてチーム右京やマトリックスなど普段は海外勢をエースに走っているチームは日本人選手によるチームワークの再構築も必要だ。
愛三工業の別府匠監督はレース前に「チームとして動いて当然のように他のチームから期待されないようにしたい」と話す。またコースに関しては「どう走るかセンスが問われるコースで、走り方は選手それぞれの判断に任せたい」とも。
1周16kmに、登坂距離500m〜900m/勾配4〜7%ほどの上りセクションが6つ散りばめられる。プロフィール的には「群馬CSCサーキットのようでいて、かつ捉えどころ、決めどころが見出しにくい。またアタックが決まりにくく、逃げても差がつけにくいようだ」と話す。確かに前日のレースを見ると、アタックを掛けても決まらず、戻ってきてしまうケースが多く見られた。
昨シーズンを最後に引退し、ブリヂストンアンカーのスタッフとしてレースに臨む清水都貴氏は「思うように差が開かず、登りも集団のなかにいるほうが楽で、アタックを決めにくいようだ。しかしレースを厳しくしようとすればやりようはあるはず」と話す。そして、「最終盤に集団が崩れないなら勝負はスプリントで決するでしょう」とも。そうなれば、警戒しなければいけないのは窪木一茂と畑中勇介(ともにTeam UKYO)、吉田隼人(マトリックス)、大久保陣(宇都宮ブリッツェン)、黒枝士揮(NIPPOヴィーニファンティーニ)らだと言う。果たしてその予想は当たることに。
平均時速40km/hとしても6時間、240kmの長丁場のレースだ。ぐずつき気味の空だが、雨が降ることはなく時折晴れ間も顔を出す。遠くには那須連山も見渡せる。
スタート後すぐにアタック合戦に。小さなアタックが繰り返されたが、逃げが決まったのは3周目なかば。しかも優勝候補の有力選手複数を含む19人の大きな逃げグループが形成される。メンバーは以下のとおり。
西薗良太、井上和郎、初山翔 (ブリヂストンアンカー)
土井雪広、平井栄一 (Team UKYO)
増田成幸、堀孝明 (宇都宮ブリッツェン)
石橋学、山本元喜 (NIPPOヴィー二ファンティーニ)
小森亮平、平塚吉光 (愛三工業レーシング)
佐野淳哉 (那須ブラーゼン)
水野恭兵 (KINAN)
川田優作 (Honda栃木)
豊田勝徳 (Coraggio Kawanishi)
高岡亮寛 (イナーメ信濃山形)
藤田晃三 (チームOLD NEW)
小渡健悟 (シエルヴォ奈良MIYATA-MERIDA)
西薗、井上、初山の主力級3人を送り込んだブリヂストンアンカー。そしてUKYO土井、ブリッツェン増田、NIPPO石橋&山本元喜、ブラーゼン佐野淳哉ら、優勝候補を多く含む強力なグループだ。4周回目完了時点で先頭19名とメイン集団のタイム差は約5分と開く。
3周半から5周半までは時差スタートのエリート女子とフィニッシュライン通過のタイミングが被らないように審判による調整が入り、女子の集団が男子の逃げ集団とメイン集団の間を走る事態が続いた。この間、女子集団はニュートラリゼーションによるスローダウンを強いられる。このニュートラル走行で女子のゴール勝負に男子のレースが被ることが無いように調整されたはずだったが...。
大きなタイム差を持って順調に逃げる先頭集団から、パンクした平塚と一緒に小森の愛三工業ふたりが離脱し、メイン集団に戻った。これをきっかけにメイン集団は愛三工業が中心となって逃げを潰しにかかる。
10周目に逃げは吸収される。有力選手たちの逃げだったが、レースはいったん振り出しに。そして女子が8周回の最終盤に差し掛かる頃、男子のメイン集団は次の展開を迎えアタック合戦となっていたが、女子のフィニッシュと被る可能性がでてきたため、男子のレースが一時ニュートラルとなる。そのときアタックして単独の逃げに出ていた内間康平(ブリヂストンアンカー)もスローダウンし、メイン集団に戻ることになった。
残り3周。内間が戻ったことで再び振り出しに戻った集団はすぐさま活性化。20人ほどの新たなグループが形成される。そこから単独で抜けだしたのは伊丹健治(KINAN)だ。
後方集団は70人以上の人数を残し、ラスト2周で激化する争いを前に静かになる。しかし伊丹の逃げがほどなくして捕まると、今度は入部正太朗(シマノレーシング)、中島康晴(愛三工業)、そして再び内間康平の3人が登り口から抜け出る。しかし後方からの14人の追走アタックに飲み込まれると、代わって畑中勇介、面手利輝、井上和郎の3名が飛び出す。しかしその3人も大きな差を開けずに集団に吸収される。
いよいよラスト1周へ向かう約50人の大きな集団から、商店街の平坦路で抜けだした11人の逃げ集団ができる。メンバーは増田成幸(宇都宮ブリッツェン)、土井雪広(チームUKYO)、畑中勇介(チームUKYO)、吉岡直哉(那須ブラーゼン)、山本元喜(NIPPOヴィーニファンティーニ)、才田直人(レモネード・ベルマーレ)、高岡亮寛(イナーメ信濃山形)、早川朋宏(愛三工業レーシング)、岡篤志(EQADS)、山下貴宏(シエルボ奈良ミヤタメリダ)、青木峻二(ウォークライド)。
これに鈴木龍(那須ブラーゼン)、鈴木譲(宇都宮ブリッツェン)、西薗良太(ブリヂストンアンカー)の3名がブリッジをかけて追いつく。そしてさらに後方から窪木一茂(チームUKYO)が追いついた。そうして形成された合計15人の逃げグループ。後方集団との差を開き、この中から優勝者が出ることは確定的になる。
ゴールまでラスト5kmを切った登りで土井雪広がアタック。じりじりと逃げ集団から差を開き、独走に入る。
ラスト2km。土井は吸収されるが、代わってアタックを仕掛けたのはUKYOの畑中勇介。アンカー西薗良太とブリッツェン増田成幸らが追うが、その後ろにぴったりと付けていたのはUKYOの窪木一茂。ラスト1kmで畑中が追いつかれると、今度は窪木がアタックして先行した。
窪木はロングスパートを掛けて独走でゴールへ向かう。そして得意のスピードを発揮し、そのまま逃げ切った。ゴール前では沿道の観客が差し出す手にハイタッチする余裕まで見せ、両手を大きく広げてゴールした。
2位は窪木を追わせたブリッツェンの増田をゴール前で楽々交わした畑中が、こちらも大きなガッツポーズでチームUKYOのワン・ツーフィニッシュを祝福しながらゴール。ロード日本チャンピオンとなった窪木はチームメイトたちと抱き合って喜びを噛み締めた。
ロードでの活躍は4月の宇都宮クリテリウムでの勝利が記憶に新しいが、窪木はトラック競技のスペシャリストでもある。なかでも2日間で計6種目のトラック競技を行い、各順位をポイント換算して合計ポイントを争う「オムニアム」競技では、2014年11月開催のトラック全日本選手権で優勝。オムニアムの全日本チャンピオンに輝いている。今回獲得するロードのナショナルチャンピオンジャージはそれに次ぐものとなる。
窪木はレース後、今回のレースではチームUKYOのエースとして勝負を託されていたことを明かした。
「前夜のチームミーティングで、僕と土井さんのどちらかが優勝を狙うということで走りました。そしてとくに最後のスプリントのために控えながら走っていたので、脚を溜めることが出来ました。
終盤、先行する小グループには後半のアップダウンで追いつけるという自信がありました。そして前の小グループにジャンプして追い付くときに、スプリントでライバルになると意識していたマトリックスの吉田隼人、NIPPOの黒枝士揮選手を置き去りに出来たので、もうスプリンターは自分以外にいなくなった。そして自分にはまだチームメイトが2人もいたので、勝てると確信できました。勝負を任されていたのは確かにプレッシャーでしたが、チームメイトが護ってくれるので自信がありました」と話す。
高校時代から続けているトラック競技。近年はトラックに比重を置いたトレーニングを積んできたが、トラック競技は秋から冬にレースを行なうことが多いが、最近はロード中心の練習を行い、同時にこの全日本ロードに向けては勝利を狙う前提で試走に試走を重ね、万全の準備をして今日を迎えたという。
勝負の鍵を握った土井雪広は、序盤から逃げに乗り、レース全体を通してほとんどを集団前方で展開した。そして終盤は畑中とともに窪木のために動いた。
「チームとしてはこれ以上ないほどのいい展開でした。ずっと前で走りながら、誰に脚があるのかを見ていました。そして ”ここで行ったら皆が嫌がるだろうな” というところでアタックしました。もし西薗選手が追ってこれなければ僕が逃げ切ることも考えたし、その動きが結果的には彼らの脚を削ることにつながった。それはスプリントになった場合にも大事なことです。最後はロードレースらしくて面白かった(笑)」。
増田成幸をアシストした鈴木譲(宇都宮ブリッツェン)は言う。「今日のラストの展開は、増田さん単独だと厳しかったですね。アタック合戦で僕と増田さんの2人になってしまったので、そのときに畑中選手に行かれてしまったのは厳しかった。ブリッツェンとしては最後に人数を残せなかったのが痛いですね。僕にはもう脚が残っていなかった。今日は ”展開次第のレース” でした。逃げかスプリントか、どちらかを選ばなければいけないような難しさがありました。UKYOは全員、個人個人も強かったですね」。
ブリヂストンアンカーはスタートからアタックを繰り返したが、表彰台の一角を手に入れることはできなかった。水谷監督は言う。「ゴールスプリント勝負に持ち込ませないようにアタックを繰り返して、先手先手で攻撃を続けましたが、UKYOは強い選手を何枚も揃えていて、作戦通りの展開に持ち込みましたね。いいレースをしたと思います。彼らが強かった」。
何度もアタックしたが、結果的には勝負に絡めなかった内間康平。逃げを繰り返したが、タイミングも悪かったようだ。
「待つことも大事なんですが、攻撃することが僕にとっての勝つためのスタイル。西薗さんらが序盤に逃げてくれたおかげで脚をためることができ、それが捕まってからまた新たな逃げを作ろうとアタックしたんですが、そこで女子のゴールと重なりニュートラルになってしまって...。かなり踏んでいたのでリズムが狂ってしまいましたね。最終局面に向けて僕も残れればよかったんですが、そのせいで厳しくなったので最後は西薗さんにアタックを、初山にスプリントを任せるようにしました。まぁこれもレースなので仕方がないです」。
今回のレースでは男子・女子エリートの混走を避けるためのニュートラリゼーションが数周・数度に渡り指示され、レースに水を差す結果になってしまった。
アップダウンコースでの240kmのレース。「このコースでこの長距離。厳しいレースだった?」の問いに、土井雪広はこう応えた。「あれだけの人数が最後まで残ったんだから、ラクなレースだったと言わざるをえない。もしフミ(別府史之)やユキヤ(新城幸也)がいればもっとハードなレースになったはずです」。
全日本選手権ロードレース2015 男子エリート結果
photo&text:Makoto.AYANO
栃木県北部の那須町と那須塩原市で初開催される全日本ロード。関東で初めての全日本選手権開催であるということの他にも、市街地を通る過去に例を見ないコース、コース上にブルーのラインを引いたこと、サイクルフェスティバルなどと連動しての盛り上げなど、「初めてづくし」の全日本だ。
朝から沿道に詰めかけた観客の様子はひと目で過去最高の人出と盛況を確信させるもので、レース後に発表された観客動員数は2万7千人。しかも天気は終日雨が降り続く悪天の予報を裏切り、奇跡的に終日もちこたえた。
別府史之、新城幸也は出場を見送り、大本命の居ない全日本。多くの選手にチャンスがあり、優勝候補は絞り切れないほど。五輪への切符がかかるといったことも無い”平常年”のため、レースにかける選手たちのプレッシャーや緊張度も比較的小さいはずだ。
地元栃木の期待を大きく浴びるブリッツェンとブラーゼン。チームとしてはいちばん人数と脚が揃っているのが愛三工業とブリヂストンアンカー。そしてチーム右京やマトリックスなど普段は海外勢をエースに走っているチームは日本人選手によるチームワークの再構築も必要だ。
愛三工業の別府匠監督はレース前に「チームとして動いて当然のように他のチームから期待されないようにしたい」と話す。またコースに関しては「どう走るかセンスが問われるコースで、走り方は選手それぞれの判断に任せたい」とも。
1周16kmに、登坂距離500m〜900m/勾配4〜7%ほどの上りセクションが6つ散りばめられる。プロフィール的には「群馬CSCサーキットのようでいて、かつ捉えどころ、決めどころが見出しにくい。またアタックが決まりにくく、逃げても差がつけにくいようだ」と話す。確かに前日のレースを見ると、アタックを掛けても決まらず、戻ってきてしまうケースが多く見られた。
昨シーズンを最後に引退し、ブリヂストンアンカーのスタッフとしてレースに臨む清水都貴氏は「思うように差が開かず、登りも集団のなかにいるほうが楽で、アタックを決めにくいようだ。しかしレースを厳しくしようとすればやりようはあるはず」と話す。そして、「最終盤に集団が崩れないなら勝負はスプリントで決するでしょう」とも。そうなれば、警戒しなければいけないのは窪木一茂と畑中勇介(ともにTeam UKYO)、吉田隼人(マトリックス)、大久保陣(宇都宮ブリッツェン)、黒枝士揮(NIPPOヴィーニファンティーニ)らだと言う。果たしてその予想は当たることに。
平均時速40km/hとしても6時間、240kmの長丁場のレースだ。ぐずつき気味の空だが、雨が降ることはなく時折晴れ間も顔を出す。遠くには那須連山も見渡せる。
スタート後すぐにアタック合戦に。小さなアタックが繰り返されたが、逃げが決まったのは3周目なかば。しかも優勝候補の有力選手複数を含む19人の大きな逃げグループが形成される。メンバーは以下のとおり。
西薗良太、井上和郎、初山翔 (ブリヂストンアンカー)
土井雪広、平井栄一 (Team UKYO)
増田成幸、堀孝明 (宇都宮ブリッツェン)
石橋学、山本元喜 (NIPPOヴィー二ファンティーニ)
小森亮平、平塚吉光 (愛三工業レーシング)
佐野淳哉 (那須ブラーゼン)
水野恭兵 (KINAN)
川田優作 (Honda栃木)
豊田勝徳 (Coraggio Kawanishi)
高岡亮寛 (イナーメ信濃山形)
藤田晃三 (チームOLD NEW)
小渡健悟 (シエルヴォ奈良MIYATA-MERIDA)
西薗、井上、初山の主力級3人を送り込んだブリヂストンアンカー。そしてUKYO土井、ブリッツェン増田、NIPPO石橋&山本元喜、ブラーゼン佐野淳哉ら、優勝候補を多く含む強力なグループだ。4周回目完了時点で先頭19名とメイン集団のタイム差は約5分と開く。
3周半から5周半までは時差スタートのエリート女子とフィニッシュライン通過のタイミングが被らないように審判による調整が入り、女子の集団が男子の逃げ集団とメイン集団の間を走る事態が続いた。この間、女子集団はニュートラリゼーションによるスローダウンを強いられる。このニュートラル走行で女子のゴール勝負に男子のレースが被ることが無いように調整されたはずだったが...。
大きなタイム差を持って順調に逃げる先頭集団から、パンクした平塚と一緒に小森の愛三工業ふたりが離脱し、メイン集団に戻った。これをきっかけにメイン集団は愛三工業が中心となって逃げを潰しにかかる。
10周目に逃げは吸収される。有力選手たちの逃げだったが、レースはいったん振り出しに。そして女子が8周回の最終盤に差し掛かる頃、男子のメイン集団は次の展開を迎えアタック合戦となっていたが、女子のフィニッシュと被る可能性がでてきたため、男子のレースが一時ニュートラルとなる。そのときアタックして単独の逃げに出ていた内間康平(ブリヂストンアンカー)もスローダウンし、メイン集団に戻ることになった。
残り3周。内間が戻ったことで再び振り出しに戻った集団はすぐさま活性化。20人ほどの新たなグループが形成される。そこから単独で抜けだしたのは伊丹健治(KINAN)だ。
後方集団は70人以上の人数を残し、ラスト2周で激化する争いを前に静かになる。しかし伊丹の逃げがほどなくして捕まると、今度は入部正太朗(シマノレーシング)、中島康晴(愛三工業)、そして再び内間康平の3人が登り口から抜け出る。しかし後方からの14人の追走アタックに飲み込まれると、代わって畑中勇介、面手利輝、井上和郎の3名が飛び出す。しかしその3人も大きな差を開けずに集団に吸収される。
いよいよラスト1周へ向かう約50人の大きな集団から、商店街の平坦路で抜けだした11人の逃げ集団ができる。メンバーは増田成幸(宇都宮ブリッツェン)、土井雪広(チームUKYO)、畑中勇介(チームUKYO)、吉岡直哉(那須ブラーゼン)、山本元喜(NIPPOヴィーニファンティーニ)、才田直人(レモネード・ベルマーレ)、高岡亮寛(イナーメ信濃山形)、早川朋宏(愛三工業レーシング)、岡篤志(EQADS)、山下貴宏(シエルボ奈良ミヤタメリダ)、青木峻二(ウォークライド)。
これに鈴木龍(那須ブラーゼン)、鈴木譲(宇都宮ブリッツェン)、西薗良太(ブリヂストンアンカー)の3名がブリッジをかけて追いつく。そしてさらに後方から窪木一茂(チームUKYO)が追いついた。そうして形成された合計15人の逃げグループ。後方集団との差を開き、この中から優勝者が出ることは確定的になる。
ゴールまでラスト5kmを切った登りで土井雪広がアタック。じりじりと逃げ集団から差を開き、独走に入る。
ラスト2km。土井は吸収されるが、代わってアタックを仕掛けたのはUKYOの畑中勇介。アンカー西薗良太とブリッツェン増田成幸らが追うが、その後ろにぴったりと付けていたのはUKYOの窪木一茂。ラスト1kmで畑中が追いつかれると、今度は窪木がアタックして先行した。
窪木はロングスパートを掛けて独走でゴールへ向かう。そして得意のスピードを発揮し、そのまま逃げ切った。ゴール前では沿道の観客が差し出す手にハイタッチする余裕まで見せ、両手を大きく広げてゴールした。
2位は窪木を追わせたブリッツェンの増田をゴール前で楽々交わした畑中が、こちらも大きなガッツポーズでチームUKYOのワン・ツーフィニッシュを祝福しながらゴール。ロード日本チャンピオンとなった窪木はチームメイトたちと抱き合って喜びを噛み締めた。
ロードでの活躍は4月の宇都宮クリテリウムでの勝利が記憶に新しいが、窪木はトラック競技のスペシャリストでもある。なかでも2日間で計6種目のトラック競技を行い、各順位をポイント換算して合計ポイントを争う「オムニアム」競技では、2014年11月開催のトラック全日本選手権で優勝。オムニアムの全日本チャンピオンに輝いている。今回獲得するロードのナショナルチャンピオンジャージはそれに次ぐものとなる。
窪木はレース後、今回のレースではチームUKYOのエースとして勝負を託されていたことを明かした。
「前夜のチームミーティングで、僕と土井さんのどちらかが優勝を狙うということで走りました。そしてとくに最後のスプリントのために控えながら走っていたので、脚を溜めることが出来ました。
終盤、先行する小グループには後半のアップダウンで追いつけるという自信がありました。そして前の小グループにジャンプして追い付くときに、スプリントでライバルになると意識していたマトリックスの吉田隼人、NIPPOの黒枝士揮選手を置き去りに出来たので、もうスプリンターは自分以外にいなくなった。そして自分にはまだチームメイトが2人もいたので、勝てると確信できました。勝負を任されていたのは確かにプレッシャーでしたが、チームメイトが護ってくれるので自信がありました」と話す。
高校時代から続けているトラック競技。近年はトラックに比重を置いたトレーニングを積んできたが、トラック競技は秋から冬にレースを行なうことが多いが、最近はロード中心の練習を行い、同時にこの全日本ロードに向けては勝利を狙う前提で試走に試走を重ね、万全の準備をして今日を迎えたという。
勝負の鍵を握った土井雪広は、序盤から逃げに乗り、レース全体を通してほとんどを集団前方で展開した。そして終盤は畑中とともに窪木のために動いた。
「チームとしてはこれ以上ないほどのいい展開でした。ずっと前で走りながら、誰に脚があるのかを見ていました。そして ”ここで行ったら皆が嫌がるだろうな” というところでアタックしました。もし西薗選手が追ってこれなければ僕が逃げ切ることも考えたし、その動きが結果的には彼らの脚を削ることにつながった。それはスプリントになった場合にも大事なことです。最後はロードレースらしくて面白かった(笑)」。
増田成幸をアシストした鈴木譲(宇都宮ブリッツェン)は言う。「今日のラストの展開は、増田さん単独だと厳しかったですね。アタック合戦で僕と増田さんの2人になってしまったので、そのときに畑中選手に行かれてしまったのは厳しかった。ブリッツェンとしては最後に人数を残せなかったのが痛いですね。僕にはもう脚が残っていなかった。今日は ”展開次第のレース” でした。逃げかスプリントか、どちらかを選ばなければいけないような難しさがありました。UKYOは全員、個人個人も強かったですね」。
ブリヂストンアンカーはスタートからアタックを繰り返したが、表彰台の一角を手に入れることはできなかった。水谷監督は言う。「ゴールスプリント勝負に持ち込ませないようにアタックを繰り返して、先手先手で攻撃を続けましたが、UKYOは強い選手を何枚も揃えていて、作戦通りの展開に持ち込みましたね。いいレースをしたと思います。彼らが強かった」。
何度もアタックしたが、結果的には勝負に絡めなかった内間康平。逃げを繰り返したが、タイミングも悪かったようだ。
「待つことも大事なんですが、攻撃することが僕にとっての勝つためのスタイル。西薗さんらが序盤に逃げてくれたおかげで脚をためることができ、それが捕まってからまた新たな逃げを作ろうとアタックしたんですが、そこで女子のゴールと重なりニュートラルになってしまって...。かなり踏んでいたのでリズムが狂ってしまいましたね。最終局面に向けて僕も残れればよかったんですが、そのせいで厳しくなったので最後は西薗さんにアタックを、初山にスプリントを任せるようにしました。まぁこれもレースなので仕方がないです」。
今回のレースでは男子・女子エリートの混走を避けるためのニュートラリゼーションが数周・数度に渡り指示され、レースに水を差す結果になってしまった。
アップダウンコースでの240kmのレース。「このコースでこの長距離。厳しいレースだった?」の問いに、土井雪広はこう応えた。「あれだけの人数が最後まで残ったんだから、ラクなレースだったと言わざるをえない。もしフミ(別府史之)やユキヤ(新城幸也)がいればもっとハードなレースになったはずです」。
全日本選手権ロードレース2015 男子エリート結果
1位 窪木一茂(Team UKYO)
2位 畑中勇介(Team UKYO)
3位 増田成幸(宇都宮ブリッツェン)
4位 吉田隼人(マトリックスパワータグ)
5位 鈴木龍(那須ブラーゼン)
6位 鈴木真理(宇都宮ブリッツェン)
7位 黒枝士揮(NIPPOヴィーニファンティー二)
8位 中島康晴(愛三工業レーシング)
9位 山本隼(Team UKYO)
10位 初山翔(ブリヂストンアンカー)
2位 畑中勇介(Team UKYO)
3位 増田成幸(宇都宮ブリッツェン)
4位 吉田隼人(マトリックスパワータグ)
5位 鈴木龍(那須ブラーゼン)
6位 鈴木真理(宇都宮ブリッツェン)
7位 黒枝士揮(NIPPOヴィーニファンティー二)
8位 中島康晴(愛三工業レーシング)
9位 山本隼(Team UKYO)
10位 初山翔(ブリヂストンアンカー)
5h55'33.647"
+04.481"
+05.704"
+07.000"
+07.072"
+07.315"
+07.588"
+07.784"
+07.956"
+07.961"
+04.481"
+05.704"
+07.000"
+07.072"
+07.315"
+07.588"
+07.784"
+07.956"
+07.961"
photo&text:Makoto.AYANO
関連ファイル
エリート男子/女子リザルト
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