予想通りイラン2チームの戦いとなった伊豆ステージ。両者アシストを失う激しい展開の末に、単独抜け出したヴァレリオ・コンティ(ランプレ・メリダ)がステージ優勝。ミルサマ・ポルセイエディゴラコール(タブリーズ ペトロケミカルチーム)はリーダーを守り抜いて東京へ。



2周目、タブリーズペトロケミカルチームがコントロールするメイン集団2周目、タブリーズペトロケミカルチームがコントロールするメイン集団 photo:Hideaki TAKAGI
厳しいコースで総合の入れ替わる可能性のある最終決戦が伊豆ステージ。5月23日(土)、静岡県伊豆市の日本サイクルスポーツセンターで第6ステージが行なわれた。コースは5kmサーキットと競輪学校内を含む園内外の道路をつないだ1周12.2km。これを10周する122.0kmがレース。今年は昨年よりも2周短い。ここは上りと下りしかなく、昨年は大量のタイムオーバーによる失格者を出した。

リーダージャージを守りきれば総合に王手をかけるリーダージャージを守りきれば総合に王手をかける photo:Hideaki TAKAGI8周目、日本競輪学校敷地内がコース。入学後2週間の学校生もTOJが気になる8周目、日本競輪学校敷地内がコース。入学後2週間の学校生もTOJが気になる photo:Hideaki TAKAGI

前日の富士山ステージでミルサマ・ポルセイエディゴラコール(タブリーズ ペトロケミカルチーム)がリーダーとなり、19秒差2位以下3人がピシュガマンジャイアントチームで。山岳コースといえるほどに上りの厳しいコースであることからも、このイランの2チームの攻防が軸となるレースが予想された。

1周目からアタックがかかり、9名の逃げができる。その後メンバーを入れ替えながら4周目に逃げは10名に。ピシュガマンジャイアントは総合中位のラミン・メフラバニアザルとアルヴィン・モアゼミが、ブリヂストンアンカーは内間康平と寺崎武郎が、アヴァンティはベンジャミン・ディボールとニール・ヴァンデルプローグが、さらにパブロ・ウルタスン(チーム右京)、フェン・チュンカイ(ランプレ・メリダ)、伊藤雅和(愛三工業)、ソーフィアン・ハディ(スカイダイブドバイ)が10名のメンバー。

5周目の上り、タブリーズペトロケミカルチームは6人全員が前に5周目の上り、タブリーズペトロケミカルチームは6人全員が前に photo:Hideaki TAKAGI8周目、8人の先頭集団はピシュガマンジャイアントチーム3人が牽引する8周目、8人の先頭集団はピシュガマンジャイアントチーム3人が牽引する photo:Hideaki TAKAGI

5周目、逃げ続ける10人5周目、逃げ続ける10人 photo:Hideaki TAKAGI8周目、タブリーズペトロケミカルチームのアシストは2名のみに8周目、タブリーズペトロケミカルチームのアシストは2名のみに photo:Hideaki TAKAGI

逃げは2位チームのピシュガマンジャイアントチームが引き、メイン集団はリーダーチームのタブリーズペトロケミカルチームが引く。タブリーズペトロケミカルチームはポルセイエディゴラコールを当初は全員の5人で引いたが次第にアシストはその数を減らし中盤過ぎには2名に。6周目でメイン集団との差がそれまでの1分から30秒ほどに縮まったときに、メイン集団からディディエール・チャパッロ(NIPPO・ヴィーニファンティーニ)、アミール・ザルガリ(ピシュガマン ジャイアントチーム)、ホセ・ビセンテ(マトリックスパワータグ)の3名が抜け出し先頭へ合流する。

6周目の後半には先頭集団は数名が入れ替わり9人に。ピシュガマンはメフラバニアザル、モアゼミ、ザルガリの3人を揃え、先頭集団を強力に牽引する。先頭集団はピシュガマンジャイアントが、メイン集団はタブリーズペトロケミカルが引く構図は変わらず、メイン集団も数を減らし20人ほどに。

9周目にはメイン集団のリーダー、ポルセイエディゴラコールのアシストがいなくなり自らが先頭を引く場面も。ここで代わって先頭に出たのはラファー・シティウィ(スカイダイブドバイプロサイクリングチーム)。フランシスコ・マンセボの総合5位を守るための動きだ。そして先頭集団からはチャパッロ、ザルガリ、ホセ・ビセンテの3人がアタック。ここに寺崎とディボールが追いつき先頭は5人に。メイン集団ではラヒーム・エマミ(ピシュガマン ジャイアントチーム)がアタックするがポルセイエディゴラコールが反応して逃がさない。

9周目、先頭から3人がアタック9周目、先頭から3人がアタック photo:Hideaki TAKAGI9周目、タブリーズペトロケミカルチームのアシストがいなくなり、ラファー・シティウィ(スカイダイブドバイプロサイクリングチーム)がメイン集団を引く9周目、タブリーズペトロケミカルチームのアシストがいなくなり、ラファー・シティウィ(スカイダイブドバイプロサイクリングチーム)がメイン集団を引く photo:Hideaki TAKAGI

9周目、メイン集団でラヒーム・エマミ(ピシュガマン ジャイアントチーム)がアタック9周目、メイン集団でラヒーム・エマミ(ピシュガマン ジャイアントチーム)がアタック photo:Hideaki TAKAGI9周目、メイン集団も数を減らす9周目、メイン集団も数を減らす photo:Hideaki TAKAGI

10周目に入る1km手前でメイン集団からヴァレリオ・コンティ(ランプレ・メリダ)がアタック。コンティのアタックは鋭く、すぐに先頭の5人に追いつきざまアタック。これに寺崎が反応し逆にアタックを仕掛け最終周回へ突入。すぐの上り区間でコンティは寺崎をふるい落とすが、後方からチャパッロとホセ・ビセンテが追いつき3人に。ラスト5kmの小さな上りでコンティがさらにペースを上げると独走となり、5kmを逃げ切って優勝。2位には同じランプレ・メリダのルカ・ピベルニクが入った。ポルセイエディゴラコールは9秒差の8位に入り、個人総合2位のエマミに対してさらに差を5秒広げてリーダージャージを守った。

10周目、寺崎武郎(ブリヂストンアンカーサイクリングチーム)がアタック10周目、寺崎武郎(ブリヂストンアンカーサイクリングチーム)がアタック photo:Hideaki TAKAGIラスト8km、メイン集団から3人が抜け出すラスト8km、メイン集団から3人が抜け出す photo:Hideaki TAKAGI

ラスト5km、ヴァレリオ・コンティ(ランプレ・メリダ)が単独抜け出してフィニッシュ地点へ向かうラスト5km、ヴァレリオ・コンティ(ランプレ・メリダ)が単独抜け出してフィニッシュ地点へ向かう photo:Hideaki TAKAGIラスト3km、メイン集団からフランシスコ・マンセボ(スカイダイブドバイプロサイクリングチーム)がアタックラスト3km、メイン集団からフランシスコ・マンセボ(スカイダイブドバイプロサイクリングチーム)がアタック photo:Hideaki TAKAGI

レースは予想通りイランの2チームによる攻防となり、お互いに正攻法で戦いアシストを使い切ってリーダーは自らが先頭を引き、2位チームは集団に吸収され、最終局面は他チームの攻撃が、圧倒的な登坂力を持つイランの2チームを上回った。だが2チームとも大崩れはせず、上位陣の総合順位は変わらない結果に。攻撃を仕掛け優勝の可能性も見えていたホセ・ビセンテは、UCIポイントの付く総合12位から14位へ落とした。安原昌弘監督は「守りに入る走りでなく、攻撃しステージ優勝する動きをホセ・ビセンテにさせた。その通りに動いたことが良かった」と評する。

終始メイン集団の先頭付近に位置していた土井雪広(チーム右京)は、レース最終盤にメカトラブルで後退し5分15秒遅れでフィニッシュという残念な結果に。いっぽうで逃げ続けてさらに優勝者と仕掛けあいまで演じた寺崎は、敢闘賞的存在として記者会見に呼ばれるほどの活躍を見せた。前日のミーティングでは逃げを自ら志願して有言実行の動き。水谷壮宏監督も「今日は予定していたすべての動きができた。特に寺崎がよく動けたことが良かった」と評する。

翌24日(日)は最終第7ステージ東京。ポルセイエディゴラコールはほぼ総合優勝を手中に収めた。見どころは逃げ切りや個人総合ポイント賞争い、あるいはUCIポイントの付く個人総合12位を巡るキナンやマトリックスの攻防などだ。

ラスト5kmを逃げ切ったヴァレリオ・コンティ(ランプレ・メリダ)が優勝ラスト5kmを逃げ切ったヴァレリオ・コンティ(ランプレ・メリダ)が優勝 photo:Hideaki TAKAGI
逃げ続けそして動いた寺崎武郎(ブリヂストンアンカーサイクリングチーム)逃げ続けそして動いた寺崎武郎(ブリヂストンアンカーサイクリングチーム) photo:Hideaki TAKAGIミルサマ・ポルセイエディゴラコール(タブリーズ ペトロケミカルチーム)がリーダージャージを守り抜いて最終東京ステージへミルサマ・ポルセイエディゴラコール(タブリーズ ペトロケミカルチーム)がリーダージャージを守り抜いて最終東京ステージへ photo:Hideaki TAKAGI



ツアー・オブ・ジャパン2015 第6ステージ伊豆 結果
1位 ヴァレリオ・コンティ(イタリア、ランプレ・メリダ)
2位 ルカ・ピベルニク(スロベニア、ランプレ・メリダ)
3位 トマ・ルバ(フランス、ブリヂストン・アンカー)
4位 フランシスコ・マンセボ(スペイン、スカイダイブドバイ)
5位 トーマス・ディヴィソン(ニュージーランド、アヴァンティ)
6位 ディディエール・シャペロ(コロンビア、NIPPOヴィーニファンティーニ)
7位 ジャイ・クロフォード(オーストラリア、キナンサイクリングチーム)
8位 ミルサマ・ポルセイエディゴラコール(イラン、タブリスペトロケミカル)
9位 ホセイン・アスカリ(イラン、ピシュガマンジャイアント)
10位 ダミアン・モニエ(フランス、ブリヂストン・アンカー)
3h26'58"
+5"




+9"

+11"


個人総合成績
1位 ミルサマ・ポルセイエディゴラコール(イラン、タブリーズペトロケミカル)
2位 ラヒーム・エマミ(イラン、ピシュガマンジャイアント)
3位 ホセイン・アスカリ(イラン、ピシュガマンジャイアント)
4位 アミール・ザルガリ(イラン、ピシュガマンジャイアント)
5位 フランシスコ・マンセボ(スペイン、スカイダイブドバイ)
6位 トマ・ルバ(フランス、ブリヂストン・アンカー)
7位 ディディエール・チャパッロ(イタリア、NIPPOヴィーニファンティーニ)
8位 ダミアン・モニエ(フランス、ブリヂストン・アンカー)
9位 ガデル・ミズバニ(イラン、タブリーズペトロケミカル)
10位 イリア・コシェヴォイ(イタリア、ランプレ・メリダ)
14h00'39"
+24"
+52"
+53"
+1'02"
+1'18"
+1'37"
+1'55"
+2'36"
+2'38"


個人総合ポイント順位
1位 ヴァレリオ・コンティ(イタリア、ランプレ・メリダ)
2位 ルカ・ピベルニク(スロベニア、ランプレ・メリダ)
3位 フランシスコ・マンセボ(スペイン、スカイダイブドバイ)
54点
53点
47点


個人総合山岳順位
1位 ラヒーム・エマミ(イラン、ピシュガマンジャイアント)
2位 フェン・チュンカイ(台湾、ランプレ・メリダ)
3位 アミール・ザルガリ(イラン、ピシュガマンジャイアント)
25点
14点
14点


新人賞
イリア・コシェヴォイ(イタリア、ランプレ・メリダ)

チーム総合順位
1位 ピシュガマンジャイアント
2位 ブリヂストン・アンカー
3位 アヴァンティ
42h03'59"
+8'11"
+11'00"



photo&text:Hideaki TAKAGI
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