ド平坦スプリントステージの末に待っていたのは、大落車とサーシャ・モードロのジロ初勝利。マリアローザは足止めを食らったアルベルト・コンタドールからファビオ・アルの元に移りました。



笑顔をのぞかせながらスタートへと向かうリッチー・ポート(オーストラリア、チームスカイ)笑顔をのぞかせながらスタートへと向かうリッチー・ポート(オーストラリア、チームスカイ) photo:Kei Tsuji
雨のステージに備えるスタート前の別府史之(トレックファクトリーレーシング)雨のステージに備えるスタート前の別府史之(トレックファクトリーレーシング) photo:Kei Tsujiスタート地点に現れたパオロ・ベッティーニ氏と昨日のステージ優勝者フィリップ・ジルベール(ベルギー、BMCレーシング)スタート地点に現れたパオロ・ベッティーニ氏と昨日のステージ優勝者フィリップ・ジルベール(ベルギー、BMCレーシング) photo:Kei Tsuji




この日逃げたジェローム・ピノー(フランス、IAMサイクリング)ら3名この日逃げたジェローム・ピノー(フランス、IAMサイクリング)ら3名 photo:Tim de Waeleこの日も雨に見舞われたジロ・デ・イタリアこの日も雨に見舞われたジロ・デ・イタリア photo:Tim de Waele「総合を狙う選手は今日は動かない。だから自分たちでレースをコントロールしていかなければならない」とスタート前に語ったのはアンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ソウダル)。確かに総合陣が自ら動くことは無かったが、ゴール前3km、集団前方で発生した落車が、各選手の明暗を大きく分け断つこととなった。

踏切でのストップに困惑の表情を浮かべるリック・ツァベル(ドイツ、BMCレーシング)踏切でのストップに困惑の表情を浮かべるリック・ツァベル(ドイツ、BMCレーシング) photo:Tim de Waeleモンテッキオ・マッジョーレからイェーゾロに向かう第13ステージは、「スプリンターが勝たずに誰が勝つ」というほどに真っ平らな147km。自転車競技が盛んなヴェネト州を駆け抜け、「アドリア海の真珠」と呼ばれるヴェネツィアをかすめ、そしてイェーゾロへと到達するショートステージだ。

現地の気温は15℃ほどで、天候は雨。多くの選手たちが防寒具を着込み、総合首位のアルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ)もマリアローザを黒いレインジャケットの下に隠した。

この日は前日に落車したサイモン・ゲランス(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)がスタートせず、全183名がモンテッキオ・マッジョーレを出発。リアルスタートが切られた直後、真っ先にフランコ・ペッリゾッティ(イタリア、アンドローニ・ジョカトリ)がアタックした。

ベルト・デバッカー(ベルギー、ジャイアント・アルペシン)らを引き連れたペッリゾッティのアタックは成功せず。変わって飛び出しに成功したのは、逃げのスペシャリストであるジェローム・ピノー(フランス、IAMサイクリング)、マルコ・フラッポルティ(イタリア、アンドローニ・ジョカトリ)、そしてエリック・ツァベルの息子であるリック・ツァベル(ドイツ、BMCレーシング)。

3名の逃げだったものの、距離が150km弱であること、雨であること、そしてスプリンターチームが徹底的に集団コントロールを担ったことが影響し、タイム差はおよそ2分止まり。この日も序盤の平均速度は50km/hに近づいた。



 手造りの海賊船でジロ・デ・イタリアを歓迎する 手造りの海賊船でジロ・デ・イタリアを歓迎する photo:Kei Tsuji


マリアローザではなくチームカラーのウェアでステージ終盤を走るアルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ)マリアローザではなくチームカラーのウェアでステージ終盤を走るアルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ) photo:Tim de Waele途中逃げる3名が踏切でストップするハプニングも起こったものの、メイン集団も時間調整を行ったことで特に問題無し。途中のスプリントポイントはフラッポルティが先頭で通過し、メイン集団ではジャコモ・ニッツォーロ(イタリア、トレックファクトリーレーシング)とエドワード・グロース(ルーマニア、NIPPOヴィーニファンティーニ)が争った結果、ニッツォーロが先着している。

 マキシミリアーノ・リケーゼ(アルゼンチン)から放たれたサーシャ・モードロ(イタリア、ランプレ・メリダ)が先頭でスプリントを開始 マキシミリアーノ・リケーゼ(アルゼンチン)から放たれたサーシャ・モードロ(イタリア、ランプレ・メリダ)が先頭でスプリントを開始 photo:Kei Tsuji濡れた交差点やコーナーを慎重にこなしながら、メイン集団ではロット・ソウダルやトレックファクトリーレーシング、ランプレ・メリダが牽引を開始する。早すぎる吸収を嫌って暫く時間調整が続いたものの、残り17km地点で果敢に逃げた3名は手を取り合いながら吸収された。

 ロベルト・フェラーリ(イタリア)と勝利を分かちあうサーシャ・モードロ(イタリア、ランプレ・メリダ) ロベルト・フェラーリ(イタリア)と勝利を分かちあうサーシャ・モードロ(イタリア、ランプレ・メリダ) photo:Kei Tsuji危険回避のためにティンコフ・サクソが先頭に立ち、運河沿いの平坦路を駆け抜ける。残り5kmを切っていよいよトレックファクトリーレーシングがリードアウトトレインを発車させると、救済措置が適用される残り3kmすぐ手前で落車が発生した。

タイム差を最小限に食い止めるべく集団を率いてゴールラインを切るアルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ)タイム差を最小限に食い止めるべく集団を率いてゴールラインを切るアルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ) photo:Tim de Waele選手のタイヤどうしがハスったことで発生したクラッシュ。集団の前方左側から連鎖的に波紋が広がり、ここにコンタドールら総合上位陣も巻き込まれてしまう。

落車を回避した50名弱によるスプリント。最も人数を残したランプレ・メリダが残り2kmから主導権を握り、ゴール前でマキシミリアーノ・リケーゼ(アルゼンチン)からサーシャ・モードロ(イタリア)が発進した。番手につけたニッツォーロの追い上げを許さず、モードロが力強いガッツポーズを繰り出した。

「リケーゼが完璧なリードアウトをしてくれた。僕が勝てたのはチームの働きのおかげだ。彼らの素晴らしい働きのおかげで、最後のストレートで思い通りのスプリントに持ち込めた。今日はスプリンター達にとって、ミラノを除けば最後のチャンス。このチャンスをモノにしたかった」と、完璧なリードアウトに感謝を述べるモードロ。イタリアンスプリンターの争いを制したモードロにとっては、今回が嬉しいジロ初勝利だ。

そして落車に巻き込まれ、遅れを喫してしまったコンタドールは必死の追走叶わず40秒遅れでフィニッシュ。アルが無事に先頭集団(正確にはモードロから4秒遅れ)でゴールラインを切っているため、この時点で総合順位が逆転。アルは19秒差を持ってマリアローザを手にすることとなった。

また今大会トラブル続きのリッチー・ポート(オーストラリア、チームスカイ)も足止めを食らい、総合で5分遅れにまで転落することに。不意にマリアローザを失ってしまったコンタドールにとって、個人TT前の一日が悪夢の13日の金曜日となってしまった。

※現地取材中の辻啓が第13ステージ後、車上荒らしによって機材を盗まれたため、数日間現地レポートの配信を停止させて頂きます。



マリアローザを獲得したファビオ・アル(イタリア、アスタナ)マリアローザを獲得したファビオ・アル(イタリア、アスタナ) photo:Kei Tsuji


ジロ・デ・イタリア2015第13ステージ結果
1位 サーシャ・モードロ(イタリア、ランプレ・メリダ)                3h03'08"
2位 ジャコモ・ニッツォーロ(イタリア、トレックファクトリーレーシング)
3位 エリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、チームスカイ)
4位 アレクサンドル・ポルセフ(ロシア、カチューシャ)
5位 エドワード・グロース(ルーマニア、NIPPOヴィーニファンティーニ)
6位 マキシミリアーノ・リケーゼ(アルゼンチン、ランプレ・メリダ)
7位 モレノ・ホフランド(オランダ、ロットNLユンボ)
8位 ニコラ・ルッフォーニ(イタリア、バルディアーニCSF)
9位 ルーカ・メスゲツ(スロベニア、ジャイアント・アルペシン)
10位 ハインリッヒ・ハウッスラー(オーストラリア、IAMサイクリング)
18位 ファビオ・アル(イタリア、アスタナ)                       +04"
22位 別府史之(トレックファクトリーレーシング)
46位 アルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ)             +40"
102位 リッチー・ポート(オーストラリア、チームスカイ)                 +2'08"

個人総合成績
1位 ファビオ・アル(イタリア、アスタナ)
2位 アルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ)
3位 ミケル・ランダ(スペイン、アスタナ) 
4位 ロマン・クロイツィゲル(チェコ、ティンコフ・サクソ)
5位 ダリオ・カタルド(イタリア、アスタナ)
6位 リゴベルト・ウラン(コロンビア、エティックス・クイックステップ)
7位 ダミアーノ・カルーゾ(イタリア、BMCレーシング)
8位 アンドレイ・アマドール(コスタリカ、モビスター)
9位 ジョヴァンニ・ヴィスコンティ(イタリア、モビスター)
10位 ユーリ・トロフィモフ(ロシア、カチューシャ)
17位 リッチー・ポート(オーストラリア、チームスカイ)
54h20'35"
+19"
+1'14"
+1'38"
+1'49"
+2'02"
+2"12"
+2"21"
+2"40"
+3'15"
+5'05"


マリアロッサ ポイント賞
ニコラ・ボエム(イタリア、バルディアーニCSF)

マリアアッズーラ 山岳賞
ベナト・インチャウスティ(スペイン、モビスター)

マリアビアンカ ヤングライダー賞
ファビオ・アル(イタリア、アスタナ)

チーム総合成績
アスタナ

text:So.Isobe
photo:Kei.Tsuji