106回目の開催を迎えるミラノ〜サンレモ(UCIワールドツアー)。フィニッシュ地点がサンレモのローマ通りに戻された293kmの闘いに、2015年もトップレーサーが集結する。雨の予報も出ている伝統の一戦の見どころをチェックしておこう。



サンレモのローマ通りに至る293kmの世界最長レース

ミラノ〜サンレモ2015ミラノ〜サンレモ2015 image:RCS SPORTイタリアに春の訪れを告げる伝統の一戦、ミラノ〜サンレモが3月22日にイタリア北部で開催される。イタリア国内で「ラ・プリマヴェーラ(春)」と呼ばれるミラノ〜サンレモは今年で開催106回目。「クラッシチッシマ(クラシックの最上級)」とも呼ばれ、極めて格式の高いクラシックレースだ。

ミラノ〜サンレモ2015フィニッシュレイアウトミラノ〜サンレモ2015フィニッシュレイアウト image:RCS SPORTコースはその名の通りミラノからサンレモまで。フランスの所謂「パリ〜○○○」と呼ばれるレースとは異なり、正真正銘ミラノの中心地をスタートし、リグーリア海岸のサンレモまでを線でつなぐ。

暗い海岸線を横目にメイン集団が走る暗い海岸線を横目にメイン集団が走る photo:Cor.Vosその距離は300kmの大台目前の293km。日本で言うならば東京〜愛知、大阪〜静岡に匹敵するほどの長旅だ。現存するロードレースの中で最長距離を誇っており、レース時間が7時間に達することも。

内陸部の大都市ミラノをスタートするコースは、ロンバルディア平原を突っ切る前半部が平坦基調。ジェノバ近郊のトゥルキーノ峠(標高532m)を越えてからはリグーリア海に沿ったオーシャンロードが続く。トゥルキーノ峠は大会の最標高地点だが、レース展開的には重要なポイントではない。勝負の鍵を握るのは、後半に登場するトレ・カーピ、チプレッサ、ポッジオの登りだ。昨年同様レ・マニエ峠(標高318m)は登場しない。

レースが慌ただしさを増すのが、トレ・カーピ(3つの岬)と呼ばれるカーポ・メーレ、カーポ・チェルヴォ、カーポ・ベルタの3つの岬。さらにゴール27km手前からチプレッサ(距離5.65km/平均4.1%/最大9%)とポッジオ(距離3.7km/平均3.7%/最大8%)が連続して登場する。最大の勝負どころであるチプレッサとポッジオでは、今年も激しいアタック合戦が繰り広げられるだろう。ここで飛び出した選手が、スプリンターチームの追撃を振り切ってフィニッシュまでの逃げ切りを図る。

第106回大会の大きなトピックは、1949年から1985年までと1994年から2007年までフィニッシュとして登場したローマ通りが復活したこと。2008年から2014年までは、道路工事などの影響によって海側のルンゴマーレ・カルヴィーノ通りにフィニッシュしていた。このレース変更(回帰)によってポッジオ頂上からフィニッシュまでの距離が6.1kmから5.5kmに短縮されている。

ポッジオ通過後のテクニカルなダウンヒルや、ゴール直前の平坦区間で飛び出す選手も出てくる。クライマーやパンチャーの逃げ切りか、それともスプリンターの追い上げ&スプリントバトルか。この2通りの展開が絶妙なバランスでクロスするコースレイアウトがミラノ〜サンレモ最大の魅力だ。



ミラノ〜サンレモ2015ミラノ〜サンレモ2015 image:RCS SPORT


多種多彩なトップレーサーが集結 降雨の可能性も

2014年 ゴールスプリントを制したアレクサンダー・クリストフ(ノルウェー、カチューシャ)2014年 ゴールスプリントを制したアレクサンダー・クリストフ(ノルウェー、カチューシャ) photo:Cor Vos伝統的なフィニッシュの復活はスプリンターに味方するのか、否か。2008年大会の優勝者ファビアン・カンチェラーラ(スイス、トレックファクトリーレーシング)の言葉を借りれば、「コース変更がレースに影響するとは思うけど、どんな展開になるのかは予想不可能。それよりも展開に大きく左右するのは天候だ」。天気予報によると当日の降水確率は50%ほど。

マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、エティックス・クイックステップ)マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、エティックス・クイックステップ) photo:CorVosポッジオからフィニッシュまでの距離は短くなったが、統計的にローマ通りでは大きな集団スプリントに持ち込まれていることが多い。歯を食いしばってチプレッサとポッジオを越え、チームメイトにリードアウトされるスプリンターが優勝候補の筆頭に挙げられる。

ペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ・サクソ)ペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ・サクソ) photo:Tim de Waele中でも2014年大会の覇者アレクサンダー・クリストフ(ノルウェー、カチューシャ)と、2009年大会覇者マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、エティックス・クイックステップ)が最有力候補だ。クリストフはパリ〜ニースのステージ優勝を含む今シーズン5勝を飾っている。

ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ) photo:Tim de Waeleカヴェンディッシュは今シーズン6勝を飾っており、リードアウトの布陣も揃う。しかし悪天候に見舞われたティレーノ〜アドリアティコの影響が心配される。なお、ミラノ〜サンレモに照準を合わせる選手たちはパリ〜ニースとティレーノ〜アドリアティコに分かれて調整を行うが、近年の傾向としてパリ〜ニース組が勝利を掴む回数が多い。

ファビアン・カンチェラーラ(スイス、トレックファクトリーレーシング)ファビアン・カンチェラーラ(スイス、トレックファクトリーレーシング) photo:Tim de Waeleティレーノで集団スプリントを制したペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ・サクソ)にとっては2013年大会の2位が最高位。そろそろ春のビッグタイトルが欲しいところであり、その準備は出来ている。サガン同様、ジョン・デゲンコルブ(ドイツ、ジャイアント・アルペシン)、マイケル・マシューズ(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)、フアンホセ・ロバト(スペイン、モビスター)と言った「登れるスプリンター」もタフな展開で強さを見せる。

ピュアスプリンターとして注目したいのはアンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ソウダル)やアルノー・デマール(フランス、FDJ)、ナセル・ブアニ(フランス、コフィディス)、アンドレア・グアルディーニ(イタリア、アスタナ)、ベン・スウィフト(イギリス、チームスカイ)、ダヴィデ・チモライ(イタリア、ランプレ・メリダ)、ハインリッヒ・ハウッスラー(オーストラリア、IAMサイクリング)らだ。

2013年大会でサプライズ勝利を飾ったゲラルド・チオレック(ドイツ)擁するMTNキュベカは、2011年に南半球勢初の勝利を飾ったマシュー・ゴス(オーストラリア)やエドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー)を揃えており、展開やその日の調子によってエースを変えてくるだろう。

スプリンターに対してチプレッサとポッジオで攻撃を仕掛けると見られるのが、ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)やアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)を始めとする、グランツールで総合優勝を争うようなオールラウンダーたち。

さらに2008年大会の覇者ファビアン・カンチェラーラ(スイス、トレックファクトリーレーシング)やセプ・ファンマルク(ベルギー、ロットNLユンボ)、グレッグ・ファンアフェルマート&フィリップ・ジルベール(ベルギー、BMCレーシング)、そしてラムナス・ナヴァルダスカス(リトアニア、キャノンデール・ガーミン)ら、つまり独走力を備えたクラシックハンターたちが登り&下り&平地でのアタックで突破口を開く。これほどまで多種多彩なトップレーサーが優勝争いに加わるレースは他に類を見ないと言ってもいいだろう。

text:Kei Tsuji