1989年創業と比較的若いブランドながら数々の名車を世に送り出してきたカレラ。軽量ハイエンドモデルSL730の弟分に当たるミドルグレードの「SL950」をインプレッションした。レースと強く結びつく同社が初めてリリースしたグランフォンドモデルを検証する。



カレラ SL950カレラ SL950 photo:MakotoAYANO/cyclowired.jp
マルコ・パンターニ、ステファノ・ガルゼッリ、クラウディオ・キャプッチ、ミケーレ・バルトリらイタリアを代表する名選手達に共通すること。それはダビデ・ボイファーバとルチアーノ・バラキという2人の元プロ選手が興したピュアレーシングブランド、カレラ・ポディウム社のバイクと共に数々のビッグレースで勝利を上げてきたことにある。

1989年創業、2015年で26年目と比較的若いブランドながらも、前述した強豪選手がこぞって愛用し、通算プロレース勝利数は500以上とも数えられる。急速にレーシングブランドとしての地位を確立することができた背景には、高性能なバイクフレームを生み出したいという創業者たちの情熱があった。

スクエア断面のチューブ形状を多用したシンプルなフレームデザインスクエア断面のチューブ形状を多用したシンプルなフレームデザイン 下側1-1/4インチのテーパードヘッドによってハンドリング性能を高めている下側1-1/4インチのテーパードヘッドによってハンドリング性能を高めている ストレートブレードのシンプルなフロントフォーク。ブレードはやや幅広だストレートブレードのシンプルなフロントフォーク。ブレードはやや幅広だ


フレーム素材の主流がスチールからアルミへと徐々に移行し始める少し前の1990年代中盤、他に先駆けてカレラは軽量ながらもプロユースに耐えうる軽量アルミモデル「ALTEC」を発表。このバイクをキッカケに、カレラはトレンドメーカーとして一躍トップブランドに躍り出た。その後も1997年にはインテグラルヘッドとカーボンバックという当時の最新技術を採用した「HERCULES」など多くの名車を世に送り出してきた。

そんなカレラが2015年モデルとして送り出したのが、同社初めてロングライド/グランフォンド向けモデルである、今回のインプレッションバイクである「SL950」だ。超軽量ハイエンドモデルとしてラインナップされている「SL730」の弟分であり、グランフォンド向けながらカレラ伝統のレーシーなDNAを受け継ぐ1台である。

トップチューブと滑らかに接続するシートステー。薄く扁平させることで縦方向の柔軟性のみを高めているトップチューブと滑らかに接続するシートステー。薄く扁平させることで縦方向の柔軟性のみを高めている シフトは電動と機械式の両対応シフトは電動と機械式の両対応

チェーンステーはねじれ剛性に優れるスクエア断面チェーンステーはねじれ剛性に優れるスクエア断面 目一杯拡幅されたボトムブラケットはBB86規格目一杯拡幅されたボトムブラケットはBB86規格


フレームに使われるカーボン素材はSL730とほぼ共通であり、各社のハイエンドモデルに多用されるT-800HM-HS60TとSHM XN60という組み合わせだ。しかし、手で押しただけでたわむほど肉薄なSL730に対して、SL950は指で弾いても厚めにカーボンが積層されていることを思わせる。これは耐久性を重視した造りであり、さらに積層を工夫することで疲労しにくく程よい反応性を追求したものである。重量はフレーム単体900g(Mサイズ)、フォーク単体370gだ。

昨今では珍しい非常に直線的なフレームデザインは、素材と同じくSL730と多くの部分が共通だ。ロードバイク本来の反応性高い乗り味を目指し、大口径のトップチューブとチェーンステーはねじれ剛性に優れるスクエア断面としている。剛性の要となるBBにはシェル幅を最大限に拡幅できるプレスフィット式のBB86規格を採用した。

リアブレーキケーブルは下からトップチューブに入り、上から外に出るリアブレーキケーブルは下からトップチューブに入り、上から外に出る バンドを用いたユニークなフロントディレーラー台座バンドを用いたユニークなフロントディレーラー台座


一方で、トップチューブはヘッド付近ではスクエア断面であるものの、後方へ向かって徐々に扁平していくデザイン。そこから伸びるシートステーはトレンドにならって極めて薄い扁平形状とすることで横剛性を維持しながら柔軟性を向上させている。パワーロスの原因である不要なしなりを抑えつつ、長距離かつ厳しい山岳も含まれる本場ヨーロッパのグランフォンドに適した味付けがなされているのだ。

フロントフォークはシンプルなストレート形状ながら、そのブレード幅はやや広めのデザインだ。高品質な60トン級カーボン素材や下側1-1/4インチのテーパードコラムと合わせて、長く厳しい峠を下るに相応しいハンドリング/ブレーキング性能を確保した。フレームとフォークの両方で、シンプルな形状によって狙った性能の実現を狙うあたりには、堅実性を重んじるレーシングブランドとしての矜持が光る。

シートステーは薄いながらも横に幅を持たせ、横剛性と縦の柔軟性を両立シートステーは薄いながらも横に幅を持たせ、横剛性と縦の柔軟性を両立 ねじれに強いスクエア断面のトップダウンチューブ。パワーロスを最小限に抑えているねじれに強いスクエア断面のトップダウンチューブ。パワーロスを最小限に抑えている シートポスト径は31.6mmシートポスト径は31.6mm


細かい部分にも実用性を重視するレーシングブランドならではのノウハウが見て取れる。例えばトップチューブのリアブレーキワイヤー挿入口を例に取ると、ヘッドチューブ側は下面に、シートチューブ側は上面に設置。これによってレバーの引きが軽くなり、ワイヤーの出しろが短くなることからダンシング時に大腿に当たりにくくなる。またシフトは電動と機械式の両対応だ。

今回はコンポーネントにシマノ6870系ULTEGRA Di2を装備し、ホイールにはマヴィックR-SYS SLRをアッセンブルした試乗バイクをテストした。ミリタリーを思わせるマット仕上げのライトグレーペイントも特徴的だ。レーシングブランド・カレラが考えるグランフォンドバイクをテストする。



ーインプレッション

「イタリアンバイクならではの直進安定性の高さ ミドルグレードにとどまらない性能がある」
 山崎敏正(シルベストサイクル)


これぞイタリアンバイクと思わせる直進安定性の高さが特徴の1台です。昨年までハイエンドとしてラインナップされていたERAKLEにも通ずる乗り味がありました。踏み込んだ際にふらつくことなくスッとバイクが前に進み、パワーをロスしている感触が極めて希薄ですね。

直進安定性が高いと「かえって曲がりづらいのでは?」と疑問を持たれる方も少なくないでしょう。しかしながら、アンダーステアということはありません。ハンドリングはニュートラルで、今回の試乗バイクは適正サイズと大きく異なっていましたが、それでも不安なく下りを攻めることができました。

「イタリアンバイクならではの直進安定性の高さ ミドルグレードにとどまらない性能がある」山崎敏正(シルベストサイクル)「イタリアンバイクならではの直進安定性の高さ ミドルグレードにとどまらない性能がある」山崎敏正(シルベストサイクル)
このバイクは今季のハイエンドであるSL730をベースに快適性を高めたとのことですが、狙った通りの乗り味が実現できていますね。軽量バイクらしくパリっとしたSL730の尖った乗り味も良いですが、比較的マイルドな味付けをしたSL950はより万人受けするはずです。

SL730の横剛性をそのままに、縦方向の柔軟性を高めた印象で、軽快感は上位モデルとほぼ同等といえるでしょう。単なる弟分という域にとどまらない魅力があります。加速性も通り一遍のレーサーに負けておらず、ホビーレーサーであればビクともしません。つまり、ロングライド向けバイクにありがちなダルさは一切無いのです。

ただしどちらかと言うとスピードに緩急のある走り方よりも、一定ペースの方が気持ち良いことは確かです。海外のグランフォンドは国内のイメージと違ってかなりハイレベルですから、そうしたレベルの高い舞台で活躍することを前提としているのでしょうね。

薄く扁平したシートステーによって快適性を演出しており、SL730より重くなったとはいえフレーム単体で900gと充分に軽量。実際に乗ってみても質量的な重さを感じることはありません。他ブランドのハイエンドに匹敵するだけの性能を有した1台です。

パーツを自由に選べるフレームセット販売ですから、フレームの持つ快適性を活かすアッセンブルをおすすめしたいですね。個人的にはフルカーボンのクリンチャーホイールにワイドなタイヤを履かせて、振動吸収性を向上させてあげると良いと思います。剛性の高いミッドプロファイルのアルミホイールとの相性も良好でしょう。「現在はロングライドがメインだけど、ゆくゆくはレースにも参加してみたい」というマルチパーパスな使い方に対応するバイクが欲しい方におすすめですね。

「レーシングバイクの面影が色濃く感じられる ロードの基本に忠実な1台」
 鈴木卓史(スポーツバイクファクトリー北浦和スズキ)


ロードバイクの基本に忠実というのが第一印象です。踏み込めば滑らかに進んでくれる、軽快ながらも骨のある1台ですね。恐らくカレラの考えるロングライド向きとは、グランフォンドを速いペースで走るためのバイクということなのでしょう。レーシングブランドの色を濃く感じますし、ギミックで衝撃をいなす北米ブランドの「ロングライド向け」とは毛色が異なります。

「レーシングバイクの面影が色濃く感じられる ロードの基本に忠実な1台」鈴木卓史(スポーツバイクファクトリー北浦和スズキ)「レーシングバイクの面影が色濃く感じられる ロードの基本に忠実な1台」鈴木卓史(スポーツバイクファクトリー北浦和スズキ) 同社のレーシングバイクと比較するとやや穏やかな雰囲気ですが、剛性については高すぎず低すぎず、丁度良いレベルに仕上がっていますね。ダンシングとシッティングのどちらにおいても、登りの軽快感は非常にハイクラスです。このバランスの良い乗り味は、直線的でオーソドックスなフレーム設計と、T800という高品質なカーボンに起因するものでしょう。

フレーム設計の中で唯一特徴的なのが薄いシートステー。振動をしっかりと吸収してくれるため、荒れた下りでも安心です。特定の性能だけというわけではなく、ロードバイクに求められる様々な要素に優れた高バランスで、「ロングライド用」と謳うのがもったいないくらいの優れた走行性能があります。乗り味がニュートラルであることから、ロングライドはもちろんのこと、ロードレースやヒルクライムまで様々な用途に対応してくれるはずです。

細部に目をやってもミドルグレードであることを感じさせない造りの良さがあります。その一つが駆動側チェーンステーの根本に設けられたアルミ製のプロテクターですね。メカトラのリスクを可能な限り排除するというのはロングライドにおいては極めて重要なことです。

FD台座はフレキシブルなバンドでシートチューブに巻きつけるという、ユニークながら理にかなった固定方法をとっています。試乗した限りでは固定強度に不満はありません。ワイヤリングは存在を感じさせないほどスムーズです。この仕上がりでフレーム単体24万円という価格設定は良心的といえるでしょう。

手持ちのバイクのパーツを流用して、フレームだけを変えたいという方には有力な選択肢ですね。高品質なバイクを比較的リーズナブルに手に入れることができますから。そして、初めてのロードバイクだけど良質な1台が欲しいというビギナーにもピッタリですね。また、フレーム形状とは対照的にグラフィックは個性的ですから、周りとは違うバイクが欲しいという方にもぜひオススメしたいと感じます。

カレラ SL950カレラ SL950 photo:MakotoAYANO/cyclowired.jp
カレラ SL950
フレーム:T-800HM-HS60T/SHM XN60 special nano
フォーク:FF43 carbon 60HM 1K 1-1/8" - 1-1/4"
ボトムブラケット::BB86
シートポスト径:31.6mm
サイズ:XS、S、M、L、XL
重 量:900g(フレーム単体、Mサイズ)、370g(フォーク単体)
カラー:A5-13、A5-12、A5-11
価 格:240,000円(税抜、フレームセット)



インプレライダープロフィール

山崎敏正(シルベストサイクル)山崎敏正(シルベストサイクル) 山崎敏正(シルベストサイクル)

「てnち」のニックネームで親しまれているシルベストサイクル総括店長。選手としてはモスクワオリンピックの日本代表に選出された経験を持つ一方で、サンツアーの開発部に在籍していたことから機材への造詣も深い。現在もロードレースで現役で、実業団ロードで入賞する好調ぶり。シルベストサイクルは梅田、箕面、京都と関西に3箇所に店舗を構え「頑張るアスリートのためのショップ」として信頼の技術力や確かなフィッティングサービスなどを提供している。加えて、ロードレースやロングライド、トライアスロン、トレイルランなど様々なジャンルのソフトサービスを展開している。

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鈴木卓史(スポーツバイクファクトリー北浦和スズキ)鈴木卓史(スポーツバイクファクトリー北浦和スズキ) 鈴木卓史(スポーツバイクファクトリー北浦和スズキ)

スポーツバイクファクトリー北浦和スズキの店長兼代表取締役。大手サイクルショップで修行を積んだ後、独立し現在の北浦和に店を構える。週末はショップのお客さんとのライドやトライアスロンに力を入れている。ショップでは個人のポジションやフィッティングを追求すると同時に、ツーリングなどのイベントを開催することで走る場を提供し、ユーザーに満足してもらうことを第一に考えている。「買ってもらった方に自転車を続けてもらう」ことをモットーに魅力あるバイクライフを提案する日々を送っている。

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ウエア協力:reric
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photo:Makoto.AYANO
text:Yuya.Yamamoto
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