アジア選手権U23個人ロードレースにおいて優勝した小石祐馬。アジアチャンピオンとなり、U23世界選手権ロードへの参加枠も3年ぶりに獲得した。日本チームの走りを小石自身が振り返る。そして現所属チームの橋川健監督が小石の歩んだ道を解説する。



U23アジア選手権ロードレースの表彰台 中央が優勝した小石祐馬U23アジア選手権ロードレースの表彰台 中央が優勝した小石祐馬 photo:Sonoko.Tanaka


小石祐馬によるレースレポート

アジア選手権U23個人ロードは今シーズン最初のレースで、大陸選手権であるためナショナルチームとしてもすごく大事なレースでした。コースはフラットな市街地内で、8.1kmの周回を10周回するもの。ところどころ危ないコーナーもあるが、特に難しいコースプロフィールではなかった。しかしスタートは夜の8時と、いつものレースとは違い、真っ暗な中で設置された街灯の光のなか走るレース。距離は短かったため、最初から全力で行くイメージでした。

作戦について選手同士で話し合う日本ナショナルチーム。同じメンバーで何度も遠征を行っている仲だ作戦について選手同士で話し合う日本ナショナルチーム。同じメンバーで何度も遠征を行っている仲だ photo:Sonoko.Tanakaチームとしては岡選手がスプリントになった時に控えててくれていたので、自分は動きやすく、最初の周から8人の逃げに加わる事ができました。この逃げは有力国であったカザフスタンやイラン、その他の5つの国の選手もいたためジャパンチームとしても誰かが入るべき動きだったので自分がカバーした。

沿道に集まった観客たち。平日だが夜間ということもあり、多くの人が観戦する沿道に集まった観客たち。平日だが夜間ということもあり、多くの人が観戦する photo:Sonoko.Tanakaそこから数周逃げるも、カザフスタンの選手がパンクで遅れて下がっていき、後ろの集団がカザフスタンによってペースが上がることが予想されたので、ここからは逃げ集団にいつつも出来る限り脚を溜め、次の展開にも加わることが出来る準備をしていた。

スタート直後から積極的に動いた小石祐馬(チャンピオンシステム)スタート直後から積極的に動いた小石祐馬(チャンピオンシステム) photo:Sonoko.Tanakaそこからいったん集団に吸収されてレースは振り出しに戻った。そのまま次の展開には参加せず、少し様子を見ていたら徳田選手や面手選手が展開に加わってくれていて、自分は安心して休むことができた。

そこから徳田選手が6人の逃げに入る。そこに選手を送り込めなかったカザフスタンの選手2人が入った追走グループができたので、自分もそこに乗っかる。前には徳田選手がいたので、自分は無理に先頭交代してペースを上げる必要もなかったので、流れで回る程度。同じく前に選手がいたイランの選手はペースを乱し、このグループでは前に追いつきそうも無かった。

前の集団は見える位置にいたが、なかなか追い付きそうもなかったので、コーナーを利用して、立ち上がりで後ろが離れた時に一人でブリッジをかけた。無事前に追いつき、すぐ後には2人の選手も追いついてきてグループは9人になった。ジャパンチームはここに2人送り込めたので、徳田選手と話し合いながら交互にアタックに反応してお互い体力をセーブしつつ走った。

最後の2周のとき、イランの選手が単独で飛び出したとき、後ろは追わずに少し差が開いた。「これは逃げ切れる」と思ったので、自分も集団から飛び出した。フィリピンの選手が着いてきたが、なんとか振り払って1人でイランの選手に合流して2人になった。

そこからいいペースで回して、気がつけば最後の周に入るころには30秒差があると聞いた。ここで逃げ切る可能性が出てきたので、最後のことを考えて最大限脚を溜めながらイランの選手と2人で進む。

スプリントになると勝てる可能性が低かったので、アタックして単独でゴールするイメージで、ラスト2kmからはアタック合戦を繰り返す。最後の1kmを切ってからイランの選手をちぎって単独ゴールすることができました。今シーズンの初戦を良い形でスタートすることができました。これから始まるヨーロッパのシーズンに向けて準備していきたいと思います。(小石祐馬)

勝利の喜びを浅田顕監督とともに分かち合う勝利の喜びを浅田顕監督とともに分かち合う photo:Sonoko.Tanaka



CCT p/b ChampionSystem 橋川健監督のコメント
「ベルギーで着実にステップを踏み成長したからこその勝利」


小石は2012年、高校卒業と同時に渡欧。チームユーラシアに所属し、ベルギーを拠点に2シーズンを過ごしました。ベルギーでの成長がVini Fantini - NIPPOのGマネージャーの大門宏氏の目に留まり、本人の強い希望もあり、2014シーズンは Vini Fantini-NIPPOのメンバーとしてイタリアを拠点に活動していました。

2014シーズン、Vini Fantini-NIPPOでの走りが自転車競技連盟ロード監督の浅田 顕氏にも認められ、ナショナルチームへ選出されます。5月に行われたツール・ド・熊野へ初めてナショナルチームメンバーとして選出され、その後も順調に成長した1年となりました。

2015シーズンはCCT p/b ChampionSystemのメンバーとしてベルギーを拠点にUCIヨーロッパツアーを中心に活動します。小石は今回U23のアジアチャンピオンとなり、とても貴重な勝利を掴んだことは事実です。しかし、私達の目標とするところはまだまだ遥か先にあることも十分承知しております。

グランツアーで活躍するような選手を輩出する過程を「ホップ・ステップ・ジャンプ」で例えれば、チームユーラシア-IRCタイヤの活動(若手育成のためのアマチュアチーム)でホップし、CCT p/b ChampionSystem(ヨーロッパツアーを中心とした活動)でステップし、NIPPO-ヴィーニファンティーニ(グランツール、プロツアーへの参戦=プロコンチネンタルチームへの所属)でジャンプとなります。

これだけで言えば簡単に聞こえることですが、それぞれのレベルで切磋琢磨し、勝ち抜いていくことのできる選手はほんの一握りの選手ですし、ジャンプしても飛距離が足りなかったり、着地に失敗して活躍の場を失う選手も多数存在します。今の小石はまだホップしただけです。これまでスポンサー、ファン、関係者の多くの方々のご支援を承り、チームを運営することができました。

今後も気を引き締めて、チームユーラシア-IRCタイヤでのホップ、CCT p/b ChampionSystemでのステップを踏める若手選手の強化、育成を行ってまいります。引き続きご声援をよろしくお願いします。

text:橋川健(CCT p/b ChampionSystem監督)