トラック競技に続き、タイ・ナコンラチャシマで開幕したアジア選手権ロードレース。舞台となるのは、ナコンラチャシマの中心部を使った1周8.1kmの周回コース。暑さやテレビ中継を考慮し、ロードレースはすべて夜間(20時から24時)に開催されるユニークな大会となった。現地から田中苑子がレポート。



今年のアジア選手権ロードレースはナイトレースとなった今年のアジア選手権ロードレースはナイトレースとなった photo:Sonoko TANAKA
今回のコースの印象を、日本ナショナルチームの浅田顕監督に聞くと、「いわゆるクリテリウムのようなコースで、アジア選手権にふさわしいかと言うと、違うと思う。ここでの成績がリオの出場枠に関わるのは、リオのコースとは全く異なることもあり、ちょっと違和感がある」と話す。しかし、「コースの状況は事前にわかっていたので、日本ナショナルチームは結果を残せるように最大限の準備もしてきている」と続けた。



ジュニア女子で梶原悠未が独走逃げ切り勝利を決める

レースの出走準備をする梶原悠未(筑波大坂戸高校)と内村舞織(南大隅高校)レースの出走準備をする梶原悠未(筑波大坂戸高校)と内村舞織(南大隅高校) photo:Sonoko TANAKAスタートラインに並んだ梶原悠未(筑波大坂戸高校)と内村舞織(南大隅高校)スタートラインに並んだ梶原悠未(筑波大坂戸高校)と内村舞織(南大隅高校) photo:Sonoko TANAKAアジア選手権ロードレースの最初の種目となったのは、女子ジュニア。周回コースを7周回する57.1kmのレースで、優勝候補の筆頭は、トラック種目で3つの金メダルを獲得した日本の梶原悠未(筑波大坂戸高校)。

彼女自身も昨年のアジア選手権で勝てなかった悔しさから、強く勝ちたいと願うレースで、内村舞織(南大隅高校)と2人で出走した。

レースは中盤になって、台湾の選手が一人先行する。しかし、残り3周回で集団に捉えられると、そこで仕掛けるタイミングを待っていた梶原が単独でアタックを仕掛け、得意の独走態勢へと持ち込む。平坦のコースだが、カーブが連続する絶好のポイントでの出来事だった。

「レース前に柿木孝之コーチと『仕掛けるのはココだ』と話していた場所で、ちょうど逃げていた選手を吸収しました。作戦どおりの展開で、そこからは思い描いていたとおりの走りができました」と振り返る梶原。そこから約2周回を単独で走りきり、後続に58秒の差を付けて、大きなガッツポーズを掲げてゴールラインへと飛び込んだ。

この日はたくさんの日本ナショナルチームのメンバーが会場に駆けつけており、仲間に祝福された梶原は「本当に嬉しい!」と寄せ書きが詰まった日の丸を纏い、満面の笑みを浮かべた。「これで4つ目のメダルですが、絶対に5つ目も取って帰ります!」と、残る個人タイムトライアル(13日開催)への意気込みも語った。



ライトアップされた建造物の前を通過する選手たちライトアップされた建造物の前を通過する選手たち photo:Sonoko TANAKAゴールラインへ向けて独走する梶原悠未(筑波大坂戸高校)ゴールラインへ向けて独走する梶原悠未(筑波大坂戸高校) photo:Sonoko TANAKA

梶原悠未(筑波大坂戸高校)がアジア選手権女子ジュニアカテゴリーで優勝梶原悠未(筑波大坂戸高校)がアジア選手権女子ジュニアカテゴリーで優勝 photo:Sonoko TANAKA
優勝の喜びを分かち合う梶原悠未(筑波大坂戸高校)と内村舞織(南大隅高校)優勝の喜びを分かち合う梶原悠未(筑波大坂戸高校)と内村舞織(南大隅高校) photo:Sonoko TANAKAアジアチャンピオンに輝いた梶原悠未(筑波大坂戸高校)アジアチャンピオンに輝いた梶原悠未(筑波大坂戸高校) photo:Sonoko TANAKA




ジュニア男子は沢田桂太郎がゴールスプリントで勝利

スタートラインに並ぶ冨尾大地(南大隅高校)スタートラインに並ぶ冨尾大地(南大隅高校) photo:Sonoko TANAKA男子ジュニアカテゴリーのレースがスタート男子ジュニアカテゴリーのレースがスタート photo:Sonoko TANAKA幸先のいいスタートを切った日本ナショナルチーム。続いて、開催されたジュニア男子は、石上優大(横浜高校)、沢田桂太郎(東北高校)、冨尾大地(南大隅高校)、渡邉歩(学法石川高校)の4選手が出走。近年、ジュニアカテゴリーは多くの海外遠征や国内でのトレーニング合宿を積み、昨年はUCIのネイションズカップでステージ優勝するなど、着実にステップアップを遂げている。レース前に柿木コーチも「十分に勝てる実力がある」と彼らに太鼓判を押した。

9周回、73.3kmのレースで、中盤になって石上優大がカザフスタンの選手と先行する。逃げ切りも考えられたが、日本ナショナルチームは「2選手によるスプリント勝負になった場合、カザフスタン選手のスプリント力のほうが高い」と判断し、そこからは2選手を吸収して、沢田桂太郎をエースとした集団スプリントの展開をめざす作戦をとった。そして最終周回で2選手を吸収すると、冨尾大地と渡邉歩が沢田桂太郎を牽引して、発射。

沢田は「韓国の選手がいかにもスプリンター体型で、前に上がってきたときはマークしていましたが、スプリントをかけはじめて、すぐに『勝てる!』という確信がもてました」と振り返るが、チームの素晴らしいチームワークもあり、見事に後続を引き離して、ゴールスプリントを制して優勝。ジュニア女子カテゴリーに続いて、日本人選手がアジアチャンピオンに輝いた。



集団前方で走る渡邉歩(学法石川高校)集団前方で走る渡邉歩(学法石川高校) photo:Sonoko TANAKA石上優大(横浜高校)がカザフスタンの選手と先行する石上優大(横浜高校)がカザフスタンの選手と先行する photo:Sonoko TANAKA

沢田桂太郎(東北高校)がゴールスプリントを制して優勝沢田桂太郎(東北高校)がゴールスプリントを制して優勝 photo:Sonoko TANAKA
レース後に喜び合う沢田桂太郎(東北高校)と渡邉歩(学法石川高校)レース後に喜び合う沢田桂太郎(東北高校)と渡邉歩(学法石川高校) photo:Sonoko TANAKAアジアチャンピオンに輝いた沢田桂太郎(東北高校)アジアチャンピオンに輝いた沢田桂太郎(東北高校) photo:Sonoko TANAKA



「めっちゃ嬉しいです。トラックで勝てず、ロードレースにかけていたので、とても嬉しいです。チームメート全員が全員のために動けていた。みんなのおかげで、自分にとって最高の形でスプリントを仕掛けることができた。本当にチームメートに感謝しています」と沢田はレース後に話した。

大会2日目の11日は、20時から男子アンダー23が、22時15分に女子エリートのレースが開催される。レースの模様はタイPBSのサイトでストリーミング放送される。視聴はこちらから。なお開始時刻等の情報はBicycle Thailandのサイトに詳しい。



第35回アジア自転車競技選手権大会/
第22回アジア・ジュニア自転車競技選手権大会
女子ジュニア個人ロードレース(57.1km)

1位 梶原 悠未(埼玉・筑波大坂戸高校)1時間29分30秒
2位 CHANG Yao TPE 1時間30秒28秒
3位 LEUNG Hoi Wah HKG 1時間30分30秒
15位 内村 舞織(鹿児島・南大隅高校)1時間30分42秒

男子ジュニア個人ロードレース(73.3km)
1位 沢田桂太郎(宮城・東北高校)1時間37分09秒
2位 PHONARJTHAN Patompob THA 1時間37分09秒
3位 KANG Tae Woo KOR 1時間37分09秒
23位 渡邉  歩(福島・学法石川高校)1時間37分09秒
38位 冨尾 大地(鹿児島・南大隅高校)1時間37分24秒
39位 石上 優大(神奈川・横浜高校)1時間37分29秒

text&photo:Sonoko TANAKA

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