アルミのオーソリティと呼ばれたキャノンデールがフラッグシップにカーボンモデルを据えて数年が経った。アルミよりもコストが掛かるカーボンになっても毎年のようにアップデートを欠かさない同社の探究心に感服させられる。尽きることのないレース現場からのフィードバックが、キャノンデールのバイクを更に進化させたようだ。

キャノンデール・ニュースーパーシックスHi-Modキャノンデール・ニュースーパーシックスHi-Mod (c)Makoto.AYANO/cyclowired.jp

2007年ジロ・デ・イタリアでデビューしたフルカーボンモデルのスーパーシックス。市販モデルとして1シーズンを経過し、数々のプロレースで輝かしい成績を残した。そして2010モデルのニュー・スーパーシックスHi-Modは、外観こそ変化が少ないものの、大幅な設計変更が施されている。

キャノンデール・ジャパンによると、完成するまでにじつに18回のカーボンレイアップ変更を行ったという。その結果、シートクランプやリアエンド小物などすべて含んだ状態で895グラム(560ミリ)という重量を達成。2009年モデルが1050グラムほどだったので、150グラム以上の大幅な軽量化を達成している。

近代バイクの標準スペックになりつつある、上下異径ベアリングを使用するテーパーヘッドチューブ。キャノンデールは上部が1-1/8インチ、下部が1-1/2インチの形式を取る。剛性の確保と軽量化が狙いだ。近代バイクの標準スペックになりつつある、上下異径ベアリングを使用するテーパーヘッドチューブ。キャノンデールは上部が1-1/8インチ、下部が1-1/2インチの形式を取る。剛性の確保と軽量化が狙いだ。 オーバーサイズチューブが普通になった現代ロードバイクでも一際太く見えるダウンチューブ。ファットチューブはキャノンデールの十八番であり、スーパーシックスの走りの軽さを生み出す。オーバーサイズチューブが普通になった現代ロードバイクでも一際太く見えるダウンチューブ。ファットチューブはキャノンデールの十八番であり、スーパーシックスの走りの軽さを生み出す。


開発期間は2年以上という長期に渡ったという。レイアップ変更は、リクイガスのプロ選手からの要望で8回、社内の変更で10回行われた。結果、重量と剛性のバランスが取れたスーパーシックスHi-Modが誕生したのだ。

2008シーズンのスーパーシックスは、スプリンターのベンナーティとクライマーのペリゾッティが乗ったバイクが、実は別モノだった。スプリンターはより剛性の高いバイクを求め、クライマーはより軽量なバイクを求める。それぞれに応じたバイクを用意するのもまた、当然の成り行きだったという。

BB30は通常のBBを遙かに上回る太さのシャフトにより高剛性を確保している。近頃賛同するフレームメーカーも増え、それに伴いコンポーネントメーカーからも対応品が用意されるようになった。BB30は通常のBBを遙かに上回る太さのシャフトにより高剛性を確保している。近頃賛同するフレームメーカーも増え、それに伴いコンポーネントメーカーからも対応品が用意されるようになった。 左右非対称のチェーンステーは、ペダリングの力が左右で異なるという研究結果に基づいている。継ぎ目がまったくわからない美しい仕上げだ。左右非対称のチェーンステーは、ペダリングの力が左右で異なるという研究結果に基づいている。継ぎ目がまったくわからない美しい仕上げだ。


しかし今回のモデルは違う。双方からの意見を取り入れ、高い次元でのバランスを実現した結果、スプリンターにもクライマーにも対応できるワンモデルのみの供給を実施したのだ。これにライダー側は高い満足度を示してくれたという。そしてそれが2010年に上梓するフレームとなった。つまりユーザーはプロ選手が供給を受けているバイクをそのまま味わえるということである。

バイクメーカーはBBとヘッド部分の剛性のバランスにもっとも苦心するものだ。ニュー・スーパーシックス Hi-Modには、ヘッドチューブとトップチューブ、ダウンチューブをフレームの内側に入り込む形で広い断面積を確保した新形状『ディープ・レディアス・ヘッドチューブデザイン』が採用され、剛性を高めつつ重量を削減。ヘッドセットの受けもアルミからカーボンに変更。フレームへの接着面もアルミより広くしたので剛性の向上にも一役買っている。BB部分も10%の剛性向上に成功した。この剛性向上がバイクの推進力により良い影響をもたらしている。

上下異径ベアリングを使用するテーパーヘッドチューブ。上部が1-1/8インチ、下部が1-1/2インチの形式を取る。剛性の確保と軽量化が狙いだ。上下異径ベアリングを使用するテーパーヘッドチューブ。上部が1-1/8インチ、下部が1-1/2インチの形式を取る。剛性の確保と軽量化が狙いだ。 ヘッド周りの接合方式が変更されボリュームが増しているにもかかわらず、トップチューブにかけてスマートなラインを描くヘッド周りの接合方式が変更されボリュームが増しているにもかかわらず、トップチューブにかけてスマートなラインを描く


キャノンデールはいち早くBB部の重要性に気がつき、他社に先駆けて大口径BB規格、BB30(正確にはそのひな形)を採用し、オリジナルクランク「ホログラム」も開発していたのはまさに卓見。現在、世界中のブランドがインテグラルBBを採用しているのは、キャノンデールの功績があったからだと言っても過言ではないだろう。左右非対称チェーンステーは先代譲りだ。

近年、BB廻りは製作度の自由さから3~5ピースほどの部材を組み合わせて製作されることが多く、そのほとんどがラグ形式を取る。しかしスーパーシックス Hi-ModのBBは、型も違えば製造方法も別。前三角はモノコックになり、シートステーとチェーンステーをユニディレクショナルカーボンで包み込む「オーバーラッピング」という接合方法を採用する(旧モデルはラグ形式)。

派手さはないが、軽快な運動性能を生み出す一端を担うフロントフォーク。上下異径ヘッドに対応して、ヘッドチューブに隠れている部分がテーパー状になっている。派手さはないが、軽快な運動性能を生み出す一端を担うフロントフォーク。上下異径ヘッドに対応して、ヘッドチューブに隠れている部分がテーパー状になっている。 アルミ製バイクからの継承形状、アワーグラス(砂時計状)シートステー。素材が変わっても高い快適性は健在だ。アルミ製バイクからの継承形状、アワーグラス(砂時計状)シートステー。素材が変わっても高い快適性は健在だ。 左右非対称のチェーンステーは、ペダリングの力が左右で異なるという研究結果に基づいている。継ぎ目がまったくわからない美しい仕上げだ。左右非対称のチェーンステーは、ペダリングの力が左右で異なるという研究結果に基づいている。継ぎ目がまったくわからない美しい仕上げだ。


最小限の重量で広い接着面積を取ることができるオーバーラッピングは、軽量性と剛性を両立することができる。この方式は新世代の接合方法と言っていいだろう。

様々な新技術を投入されたフラッグシップモデル、スーパーシックス Hi-Modは、まさに生粋のレーシングバイクだ。ここまでくるとスーパーシックスと名前が同じでも、昨年モデルとはまったく別の製品ということがわかる。その違い、性能はどのようなものだろうか?




― インプレッション


「死角のない、現在究極にもっとも近いモデル」 鈴木祐一(Rise Ride)


「他のバイクより一段上の次元の性能をもっている」(鈴木祐一)「他のバイクより一段上の次元の性能をもっている」(鈴木祐一) キャノンデールは昔から、MTBでもロードでも軽量を全面に押し出してきている。今でこそ他社も軽量バイクを出してきているけれど、先駆け的存在だ。今回もその印象を裏切らない製品作りをしている。持ったときの印象はめちゃくちゃ軽く、びっくりしてしまうくらいだ。

職業柄インプレ企画に参加したり、自店でも色々な自転車を乗ってきている中で、「極端に軽い自転車イコール(=)硬い自転車」が多かった。全てではないものの統計的に見るとそういった感じがのバイク大勢を占めていた。

今回乗ったスーパーシックス Hi-Modは、「軽い=硬い」ではない。軽くて剛性が高いのは間違いないが、いやな突き上げ感はない。硬いだけのバイクはペダリングの上で重要な、ウイップ感が犠牲になっているものが多いが、このバイクにはしっかり残っている。そのウイップが残っていることで、漕ぐ時にバランスが取りやすくなり、リズムに乗りやすく仕上がっているのがとても高評価だ。

しっかりと剛性も高い。だけれど適度なウイップ感もあってリズムも取りやすく、ペダリングがしやすいという印象をもった。ペダリングは加速感が特筆モノ。クルクル回しても、グイグイ力を入れてもどちらでもいい感じで進んでくれる性能はとても優秀だ。どんなライダーが乗っても、どんな乗り方をしても応えてくれる。万人に勧められる自転車に仕上がっている。

ペダリング性能ともう一つ、このスーパーシックスの目玉となるのがコーナーリング性能だと感じた。

非常に軽い重量のため、バイクを振りやすいということもあると思うが、低速ではクイックな感じだ。しかし、高速でもクイックかと言えば、そうではない。まるでステアリングダンパーが搭載されているかのようにハンドリングが安定する不思議な自転車だ。

「レースはもちろんロングライド、ツーリングなどすべてに最高のパフォーマンス」(鈴木祐一)「レースはもちろんロングライド、ツーリングなどすべてに最高のパフォーマンス」(鈴木祐一) 軽くて振りやすいバイクは高速で不安定になりやすいが、そのようなデメリットはまったく感じない。むしろ少し重さを感じるくらいの落ち着いたフィールになる。これが下りの高い性能に繋がる。安心してリラックスして走れる。この二点が特に素晴らしい。

スーパーシックスはいわゆるレーシングバイクだが、今流行りのコンフォートバイクのように使うことも可能だ。もっともそういったユーザーにとって必要度と値段とが釣り合うかは別問題だが。今までレーシングとコンフォートは異なるカテゴリーで、それぞれの要望に応えるためには異なるバイクが必要だった(キャノンデールにもコンフォートバイク"シナプス"シリーズがあるように)。しかしこのスーパーシックスは違う。両方の要求を満たしてくれる性能を持っている。

究極のバイクは、やはり一台に行き着くのだと考えざるを得ない。何台も所有するのは手間が掛かってしまうから、乗り手としてもそちらのほうがありがたい。このバイクは複数のカテゴリーに分化したバイクを、もう一度一つにまとめるような懐の深さを感じさせる。

オジサンが乗ってもいいと思うし、初心者が乗ってもいいと思うし、もちろんプロや上級者が乗ってもいい。他の人より試乗経験の多い自分が乗っても驚きの多い自転車だった。どんなライダーも驚きと共にその高性能を堪能できるだろう。褒めすぎてしまっただろうか?死角が無さすぎて欠点が書けない(笑)。

本当にいい自転車だった…。試しに走ったオフロードでも(笑)、安定して積極的に走れる。本来ならロードバイクで砂利が浮いているような路面を走ると怖さが出るはずなのに、このバイクだと怖くない。剛性感は高いのに、振動吸収性もすごく高くて、オフロードもゴキゲンで走れてしまうくらいだ。荒れた路面ですら安心して走れる性能はシクロクロスバイクとライバルになれるくらいと感じる程で面白かった。

結論としては、今までの自転車の概念ではうまく整理がつかないくらい良いバイクだ。正直、今まで乗ってきた自転車からは想像もしなかったような高機能を両立させている不思議な感覚の自転車。なんでこうなるんだろう? それくらい良い。

現存する各モデルの中では明らかに一歩抜きん出ている。自転車の理想に最も近づいた1台なのは間違いない。



「満点に近いバイク。とびきりの感動を約束してくれる!」 浅見和洋(なるしまフレンド)


「とにかくゴキゲン。乗ることが楽しくなるバイク」(浅見和洋)「とにかくゴキゲン。乗ることが楽しくなるバイク」(浅見和洋) 乗ってすぐわかるのは非常に剛性が高いこと。ガンガン加速して、グングン伸びていく。重量が軽いので、その軽さとしっかりと確保された剛性が、ともにこの加速性能を支えている。ゼロからびっくりするくらい加速していく。

ダイレクトな加速感はキャノンデールの美点。それに拍車を掛けているのはオーバーサイズBB規格の「BB30(ビービー・サーティ)だ」。その効果を疑う人もいるだろうが、シャフトの太さによる高い強度と、圧入された大口径カートリッジベアリングが生み出す高剛性は間違いなく理に適っている。

剛性の高いバイクなので、振動吸収性を高くするのは難しいと思う。マイルド指向の人には好まれない乗り味かもしれない。それでも剛性が高く、パイプが極薄で大径タイプのフレームの中では、一定以上の振動吸収性はクリアしていると言っていいだろう。アワーグラス式シートステーという独特な形状の細身のステーが効いているのかも知れない。

ハンドリング特性は車重の軽さも手伝い、ふらつき感がある。体のブレがすぐに現れてしまう。なので身体でこまめにステアリングを修正しながら走ってあげた方がいいだろう。初心者が乗るとふらふらしてしまうと思うが、体幹がきっちり保てるベテランサイクリストなら問題ないだろう。

もし初心者モデルから乗り換えた場合、上記の軽さにより扱いにくい面も出てくるかも知れない。販売側からはその点への注意喚起が必要かもしれない。

全体の印象としては、満点をあげたいくらいゴキゲンになるバイクだ。とにかく乗る事が楽しくなれるバイクだと思う。価格もアンダー100万円で、なんて良心的な価格なんだろう! この値段が高く感じるのか安く感じるのかはユーザーの価値観次第だが、個人的には性能に見合う価格だと思う。

キャノンデールならではのアメリカンなデザイン。私にはギラギラしている感じが何ともいえないぐらい好みだ。欲しいけれど、私が所属する店舗では取り扱っていないのでダメかな(苦笑)。もし幸運にも購入できた人は、店から走り始めてすぐに、とびっきりの感動を手にすること請け合いの最高のバイクだ。


キャノンデール・ニュースーパーシックスHi-Modキャノンデール・ニュースーパーシックスHi-Mod (c)Makoto.AYANO/cyclowired.jp



キャノンデール・スーパーシックス

フレーム スーパーシックスHi-Modカーボン BB30
フォーク スーパーシックスHi-Modモノコックフルカーボン1-1/2~1-1/8テーパードステアラー カーボンドロップエンド
ヘッドセット スーパーシックス1-1/2ロワーベアリング 30ミリカーボン W5ミリヒドゥンアロイトップカバー
カラー レッド
サイズ 48、50、52、54、56、58、60、63
希望小売価格(税込み)
スーパーシックス・ Hi-Mod・アルティメイト \1,500,000
スーパーシックス・ Hi-Mod・アルティメイトホログラムSL ダブル \1,200,00
スーパーシックス・ Hi-Mod・チーム \1,200,000
スーパーシックス・ Hi-Mod・チームホログラムSL ダブル \899,000
スーパーシックス・ Hi-Mod・チームホログラムSL コンパクト \899,000
スーパーシックス・ Hi-Mod DI2 デュラエース ダブル \929,000
スーパーシックス・ Hi-Mod DI2 デュラエース コンパクト \929,000
スーパーシックス・ Hi-Mod 1 SRM  \999,000
スーパーシックス・ Hi-Mod 1 ホログラムSL ダブル \729,000



インプレライダーのプロフィール


鈴木祐一(Rise Ride)鈴木祐一(Rise Ride) 鈴木祐一(Rise Ride)

サイクルショップ・ライズライド代表。バイシクルトライアル、シクロクロス、MTB-XCの3つで世界選手権日本代表となった経歴を持つ。元ブリヂストンMTBクロスカントリーチーム選手としても活躍した。
2007年春、神奈川県橋本市にショップをオープン。クラブ員ともにバイクライドを楽しみながらショップを経営中。各種レースにも参戦中。セルフディスカバリー王滝100Km覇者。
サイクルショップ・ライズライド


浅見和洋(なるしまフレンド)浅見和洋(なるしまフレンド) 浅見和洋(なるしまフレンド)

プロショップ「なるしまフレンド原宿店」スタッフ。身長175cm、体重65kg。かつては実業団トップカテゴリーで走った経歴をもつ。脚質は厳しい上りがあるコースでの活躍が目立つクライマータイプだ。ダンシングでパワフルに走るのが得意。最近の嗜好は日帰りロングランにあり、例えば東京から伊豆といった、距離にして300kmオーバーをクラブ員らと楽しんでいる。
なるしまフレンド

ウェア協力:パールイズミ



ニュースーパーシックスHi-Modのすべてが分かるシクロワイアードのスペシャルコンテンツも参照して欲しい。