雨が降っては止み、路面は完全にウェットな状態。残り7kmでメイン集団を飛び立ったミカル・クヴィアトコウスキー(ポーランド)が登りで築いた10秒のリードをそのままフィニッシュラインまで連れていった。24歳の才能がアルカンシェルを獲得した。



観客が詰めかけたポンフェラーダの周回コース観客が詰めかけたポンフェラーダの周回コース photo:Tim de Waele


エリート男子ロードレースエリート男子ロードレース photo:www.mundialciclismoponferrada.comロード世界選手権最終日、世界一を決める一大決戦がポンフェラーダの18.2km周回コースで繰り広げられた。後半にかけて「コンフェデラシオン(5.2km/3.3%)」と「ミラドール(1.1km/5.5%)」の登りが登場する周回をエリート男子は14周。全長は254.80kmで、獲得標高差は4,284mに達する。

下りでスリップ事故を起こしたノルウェーのチームカー下りでスリップ事故を起こしたノルウェーのチームカー photo:Tim de Waeleレース序盤に意を決して飛び出し、10分以上のアドバンテージを得たカルロス・キンテロ(コロンビア)、オレクサンドル・ポリボダ(ウクライナ)、ジードルナス・サヴィカス(リトアニア)、マティヤ・クヴァシナ(クロアチア)ら4名を追撃したのは赤と白のポーランドジャージだった。クヴィアトコウスキーのチームメイトが淡々とメイン集団を率いて逃げを追う。

エドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー)を含む先頭グループエドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー)を含む先頭グループ photo:Tim de Waele晴れと雨を繰り返す周回コースはどこもウェットな状態で、ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア)をはじめとする多くの選手が落車に巻き込まれる。ニーバリは再スタートを切ったものの、終盤の勝負どころで力を発揮出来ずに脱落した。その他、ノルウェーのチームカーが下りでスリップ事故を起こして大破するなど、濡れた路面が波乱を演出。

ポーランドに代わってイタリアが集団先頭に立つとタイム差は瞬く間に縮まり、残り4周を切ったところで逃げグループのリードは1分を割り込む。最後まで粘ったキンテロが視野に入るとメイン集団からは次なる動きが生まれた。

「コンフェデラシオン」での断続的なアタックの結果、残り3周半でピーター・ケノー(イギリス)やジョヴァンニ・ヴィスコンティ(イタリア)、エドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー)率いる先頭グループが新たに形成される。続々と選手たちが後方から合流し、ウェットな下りで抜け出したトニ・マルティン(ドイツ)が独走状態になる。

マルティンは1周弱にわたって個人TTを行なったが、残り2周を前に追走グループに吸収される。しばらくしてそのグループもメイン集団に吸収。イタリアは攻撃の手を緩めず、「コンフェデラシオン」の登りで次はアレッサンドロ・デマルキ(イタリア)、ミカエル・アンデルセン(デンマーク)、シリル・ゴティエ(フランス)がアタックを成功させ、ここにヴァシル・キリエンカ(ベラルーシ)が合流。先頭4名で最終周回に突入した。



下りをこなす新城幸也(ユーロップカー)下りをこなす新城幸也(ユーロップカー) photo:Tim de Waele


雨に濡れた下りを攻めるトニ・マルティン(ドイツ)雨に濡れた下りを攻めるトニ・マルティン(ドイツ) photo:Tim de Waele雨のコースを先頭で駆けるデマルキ、アンデルセン、ゴティエ、キリエンカはメイン集団を引き離したまま最後の「ミラドール」へ。すると、下りで集団先頭に出たクヴィアトコウスキーが残り7km地点でアタック。勢い良く先頭までブリッジしたクヴィアトコウスキーが独走で「ミラドール」の頂上にたどり着いた。

最終周回の「ミラドール」を先頭で駆け上がるミカル・クヴィアトコウスキー(ポーランド)最終周回の「ミラドール」を先頭で駆け上がるミカル・クヴィアトコウスキー(ポーランド) photo:Tim de Waeleメイン集団からは遅れてアレハンドロ・バルベルデ(スペイン)やフィリップ・ジルベール(ベルギー)、サイモン・ゲランス(オーストラリア)がアタックを仕掛けたものの先頭クヴィアトコウスキーには追いつかない。この「ミラドール」で生まれた10秒に満たないギャップが勝負を決めた。公開されているSTRAVAアクティビティによると、クヴィアトコウスキーは「ミラドール」を平均スピード35.1km/h、出力503Wで駆け上がり、フィニッシュまでの下りを平均スピード72.8km/hで駆け抜けている。

後続を振り切ってフィニッシュするミカル・クヴィアトコウスキー(ポーランド)後続を振り切ってフィニッシュするミカル・クヴィアトコウスキー(ポーランド) photo:Tim de Waele追走グループを形成するバルベルデ、ゲランス、ジルベール、フレフ・ファンアフェルマート(ベルギー)、トニー・ギャロパン(フランス)、マッティ・ブレシェル(デンマーク)を現ポーランドTTチャンピオンのクヴィアトコウスキーが引き離す。そのすぐ後方にはスプリンターを含む20名の集団が位置。

登りで築いたリードを守りきったクヴィアトコウスキーが、スプリントで迫るゲランスやバルベルデを背にガッツポーズ。両手を広げ、そして胸元のポーランド紋章にキスをした。

「(独走が決まった)2日前のU23ロードレースを見て、今日のような雨の日にはアタックが決まると信じていた」と語るクヴィアトコウスキーが作戦通りのアタックで独走勝利。次世代オールラウンダーとして注目を集める24歳がアルカンシェルを手に入れた。クヴィアトコウスキーはサガンやキンタナ、アル、バルデ、ピノ、マシューズ、ブアニ、フィニーら数多くのトップ選手を送り出している1990年生まれだ。

「ずっと調子の良さを感じていたので序盤からチームメイトたちが徹底的に集団をコントロールしてくれた。捕まるリスクを負いながら最後の登りでアタック。登りで後続を引き離し、そのリードをフィニッシュまでキープすることが出来た。信じられないよ」と世界チャンピオンは語る。ポーランド人による世界選手権エリート男子ロードレース制覇は史上初めて。

「今日のレースに悔いはない。自分より強く、良い戦略で走った選手に負けたんだ。自分の成し遂げたことに満足している」と語るのは2位に入り自身初めてのメダルを獲得したゲランス。3年連続3位で、6度目の表彰台となったバルベルデは「プレッシャーはいつもと変わらなかった。でも今日は沿道から多くの声援を受けることが出来た。雨が降ったけど選手ならそれに適応しないといけない。スペインはほとんどのアタックを潰し、素晴らしいレースを展開した。ただ他のチーム同様、クヴィアトコウスキーの力を過小評価してしまった」と打ち明ける。

雨によるタフコンディションの中、出走した203名のうち完走したのは半分に満たない95名。新城幸也(ユーロップカー)と土井雪広(チーム右京)は終盤のペースアップに対応出来ずにDNF。清水都貴(ブリヂストンアンカー)が唯一レースに残り、94位でレースを終えている。日本人選手たちのコメントは現地レポートをお待ち下さい。

選手コメントはUCI公式サイトより。



2位サイモン・ゲランス(オーストラリア)、優勝ミカル・クヴィアトコウスキー(ポーランド)、3位アレハンドロ・バルベルデ(スペイン)2位サイモン・ゲランス(オーストラリア)、優勝ミカル・クヴィアトコウスキー(ポーランド)、3位アレハンドロ・バルベルデ(スペイン) photo:Tim de Waele



ロード世界選手権2014ロードレース エリート男子結果
1位 ミカル・クヴィアトコウスキー(ポーランド) 6h29'07"
2位 サイモン・ゲランス(オーストラリア)      +01"
3位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン)
4位 マッティ・ブレシェル(デンマーク)
5位 フレフ・ファンアフェルマート(ベルギー)
6位 トニー・ギャロパン(フランス)
7位 フィリップ・ジルベール(ベルギー)       +04"
8位 アレクサンダー・クリストフ(ノルウェー)    +07"
9位 ジョン・デゲンコルブ(ドイツ)
10位 ナセル・ブアニ(フランス)
11位 ファビアン・カンチェラーラ(スイス)
12位 ベン・スウィフト(イギリス)
13位 ソニー・コルブレッリ(イタリア)
14位 マイケル・マシューズ(オーストラリア)
15位 ラムナス・ナヴァルダスカス(リトアニア)
16位 ダリル・インピー(南アフリカ)
17位 マチェイ・パテルスキー(ポーランド)
18位 バウク・モレマ(オランダ)
19位 ワレン・バーギル(フランス)
20位 ミカエル・アンデルセン(デンマーク)
94位 清水都貴(ブリヂストンアンカー)      +20'22"
DNF 新城幸也(ユーロップカー)
DNF 土井雪広(チーム右京)

text:Kei Tsuji
photo:Tim de Waele

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