雨降る1級山岳アラモン・バルデリナレスで総合争いが加熱。レース先頭でビネル・アナコナゴメス(コロンビア、ランプレ・メリダ)が逃げ切り&総合ジャンプアップを決める中、集団ではアルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ)のアタックによって総合に明暗が分かれた。



山岳地帯を目指すプロトン山岳地帯を目指すプロトン photo:Tim de Waele


ブエルタ・ア・エスパーニャ2014第9ステージブエルタ・ア・エスパーニャ2014第9ステージ image:Unipublic休息日前の第9ステージには1級山岳アラモン・バルデリナレスの山頂フィニッシュが設定されている。3級山岳を含むアップダウンをこなした後、勝負は2級山岳サンラファエルから本格化。最後に待ち受ける1級山岳アラモン・バルデリナレスは登坂距離8km/平均勾配6.6%/最大勾配8.5%。数値上はさほど厳しくないように思えるが、7〜8%の勾配がコンスタントに続く休み所のない登りだ。

雨の中を逃げ続けるボブ・ユンヘルス(ルクセンブルク、トレックファクトリーレーシング)ら雨の中を逃げ続けるボブ・ユンヘルス(ルクセンブルク、トレックファクトリーレーシング)ら photo:Tim de Waele標高1,975mのスキー場に向かうこの日は、前日までとは打って変わって天気が下り坂。気温も上がらず、後半にかけて雷を伴う強雨に見舞われた。

マイヨロホを着て1級山岳アラモン・バルデリナレスを走るアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)マイヨロホを着て1級山岳アラモン・バルデリナレスを走るアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) photo:Tim de Waeleこの大会2回目の本格山岳ステージは集団が割れるほどのハイスピードな幕開けに。断続的なアタック合戦の末に31名の逃げグループが形成される。ライダー・ヘシェダル(カナダ、ガーミン・シャープ)やトム・ボーネン(ベルギー、オメガファーマ・クイックステップ)、ダミアーノ・クネゴ(イタリア、ランプレ・メリダ)、そして総合で2分50秒遅れのアナコナを含む巨大なグループが、モビスター率いる集団に対して8分15秒のリード(111km地点)を稼ぎ出した。

タイム差7分を保ったまま2級山岳サンラファエルが近づくと逃げグループ内の協調体制は崩壊。残り33km地点でのボーネンが仕掛けると、人数の多さからまとまりの悪い逃げグループはアタックモードに切り替わる。

雷鳴が轟き、叩き付けるような雨に降られながらアナコナ、ボブ・ユンヘルス(ルクセンブルク、トレックファクトリーレーシング)、ハビエル・モレーノ(スペイン、モビスター)の3人が抜け出した。

出遅れたヘシェダルを含む追走グループを40秒、そしてチームスカイが強力に牽引するメイン集団を5分引き離したまま2級山岳サンラファエルを先頭3名はクリアする。

続くハイスピードダウンヒルでトニ・マルティン(ドイツ、オメガファーマ・クイックステップ)がリゴベルト・ウラン(コロンビア)のためにペースアップし、逃げから下がってきたボーネンが協力するシーンも見られたがメイン集団は割れない。いよいよ1級山岳アラモン・バルデリナレスの登りが始まった。



総合上位陣の中で真っ先に仕掛けたダニエル・マーティン(アイルランド、ガーミン・シャープ)総合上位陣の中で真っ先に仕掛けたダニエル・マーティン(アイルランド、ガーミン・シャープ) photo:Unipublic1級山岳アラモン・バルデリナレスで集団を率いるダニエル・モレーノ(スペイン、カチューシャ)1級山岳アラモン・バルデリナレスで集団を率いるダニエル・モレーノ(スペイン、カチューシャ) photo:Unipublic

1級山岳アラモン・バルデリナレスで攻撃を仕掛けたアルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ)1級山岳アラモン・バルデリナレスで攻撃を仕掛けたアルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ) photo:Tim de Waele


雨の1級山岳アラモン・バルデリナレスを駆け上がるビネル・アナコナゴメス(コロンビア、ランプレ・メリダ)雨の1級山岳アラモン・バルデリナレスを駆け上がるビネル・アナコナゴメス(コロンビア、ランプレ・メリダ) photo:Tim de Waele登り始めてすぐにユンヘルスが先頭から脱落し、およそ頂上まで6kmを残してアナコナが独走を開始。「総合リーダーになることも夢じゃないと思っていた。チームスカイが強力なペースでメイン集団を引いていると聞いて、ステージ優勝を頭に入れながらアタックした」という26歳のコロンビアンクライマーが先頭をひた走る。

攻撃を仕掛けるアルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ)攻撃を仕掛けるアルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ) photo:Unipublic一方のメイン集団ではチームスカイ(カタルド、ダイグナン、フルーム、ニエベ)によるハイペース走行が継続。そこから残り3km地点でダニエル・マーティン(アイルランド、ガーミン・シャープ)がアタックするとチームスカイの体制が崩壊する。代わってカチューシャが主導権を握ってペースを上げると、そこからアルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ)が飛び出した。

独走でフィニッシュするビネル・アナコナゴメス(コロンビア、ランプレ・メリダ)独走でフィニッシュするビネル・アナコナゴメス(コロンビア、ランプレ・メリダ) photo:Tim de Waele先頭アナコナが雨のフィニッシュに独走で飛び込んだタイミングで、約1500m後方の集団は一気に活気づく。ダンシングでペースを上げるコンタドールを追って、ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)とナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)がカウンター。これらの動きにクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)は反応出来なかった。

並んでフィニッシュするロドリゲス、コンタドール、キンタナ並んでフィニッシュするロドリゲス、コンタドール、キンタナ photo:Tim de Waele先頭から遅れた逃げメンバーに続いて、コンタドールが2分16秒遅れでフィニッシュラインへ。追走したロドリゲスとキンタナが辛うじて追いつき、コンタドールと同タイム扱いに。フルームやアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)はこのクライマートリオから23秒遅れでフィニッシュした。

ビネル(Winner=勝者)という名前に見合う走りでプロ初勝利を飾ったアナコナ。総合4位に浮上した勝者は「開幕前から総合トップ10を狙っていたけど、第3ステージで30秒を失い、昨日のステージでも風によって1分近くを失った。総合を諦めざるを得ないような状況だったけど、今日のステージで持ち直したよ」と語る。ディフェンディングチャンピオンを欠くランプレ・メリダに嬉しい勝利をもたらした。

そしてマイヨロホはバルベルデからキンタナの手に。「まだ本調子ではないけど、フルームを引き離したかった」と語るコンタドールが3秒差の総合2位に浮上している。精彩を欠き、総合5位にダウンしたフルームは「タイムを失ったけど大惨事ではないない。今はタイムトライアルを見据えているよ」とコメントしている。

総合6位まで、つまりキンタナ、コンタドール、バルベルデ、アナコナ、フルーム、ロドリゲスの6名は30秒以内。総合タイム差が少ない状態でブエルタは1回目の休息日を迎える。第10ステージは36.7kmの個人タイムトライアルだ。

選手コメントはレース公式リリースより。



マイヨロホを獲得したナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)マイヨロホを獲得したナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター) photo:Tim de Waele



ブエルタ・ア・エスパーニャ2014第9ステージ結果
1位 ビネル・アナコナゴメス(コロンビア、ランプレ・メリダ)
2位 アレクセイ・ルトセンコ(カザフスタン、アスタナ)
3位 ダミアーノ・クネゴ(イタリア、ランプレ・メリダ)
4位 ハビエル・モレーノ(スペイン、モビスター)
5位 ペイオ・ビルバオ(スペイン、カハルーラル)
6位 ジェローム・コッペル(フランス、コフィディス)
7位 ライダー・ヘシェダル(カナダ、ガーミン・シャープ)
8位 アダム・ハンセン(オーストラリア、ロット・ベリソル)
9位 ボブ・ユンヘルス(ルクセンブルク、トレックファクトリーレーシング)
10位 ファビオ・フェリーネ(イタリア、トレックファクトリーレーシング)
11位 ダン・クレーヴン(ナミビア、ユーロップカー)
12位 アルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ)
13位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)
14位 ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)
15位 エドゥアルト・ヴォルガノフ(ロシア、カチューシャ)
16位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)
17位 ファビオ・アル(イタリア、アスタナ)
18位 クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)
19位 リゴベルト・ウラン(コロンビア、オメガファーマ・クイックステップ)
20位 ダニエル・マーティン(アイルランド、ガーミン・シャープ)
4h34'14"
+45"
+50"
+1'04"
+1'12"
+1'21"
+1'33"
+1'45"
+1'49"
+2'08"
+2'13"
+2'16"


+2'22"
+2'39"





マイヨロホ(個人総合成績)
1位 ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)
2位 アルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ)
3位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)
4位 ビネル・アナコナゴメス(コロンビア、ランプレ・メリダ)
5位 クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)
6位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)
7位 ファビオ・アル(イタリア、アスタナ)
8位 ロバート・ヘーシンク(オランダ、ベルキン)
9位 リゴベルト・ウラン(コロンビア、オメガファーマ・クイックステップ)
10位 ワレン・バーギル(フランス、ジャイアント・シマノ)
35h58'05"
+03"
+08"
+09"
+28"
+30"
+1'06"
+1'19"
+1'26"


マイヨプントス(ポイント賞)
1位 ジョン・デゲンコルブ(ドイツ、ジャイアント・シマノ)
2位 ナセル・ブアニ(フランス、FDJ.fr)
3位 マイケル・マシューズ(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)
87pts
74pts
71pts


マイヨモンターニャ(山岳賞)
1位 ルイス・マスボネ(スペイン、カハルーラル)
2位 ビネル・アナコナゴメス(コロンビア、ランプレ・メリダ)
3位 ダン・クレーヴン(ナミビア、ユーロップカー)
20pts
18pts
13pts


マイヨコンビナーダ(複合賞)
1位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)
2位 クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)
3位 ビネル・アナコナゴメス(コロンビア、ランプレ・メリダ)
15pts
18pts
20pts


チーム総合成績
1位 モビスター
2位 カチューシャ
3位 ベルキン
107h27'19"
+3'11"
+5'37"


ステージ敢闘賞
ルイス・マスボネ(スペイン、カハルーラル)

text:Kei Tsuji
photo:Tim de Waele

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