8月23日、アンダルシア地方で第69回ブエルタ・ア・エスパーニャが開幕する。暑さ厳しいスペイン南部を駆け巡る前半戦。山頂フィニッシュの数は例年よりも少なめだが、「短くてナーバスなステージが多いので、興奮度は高い」とレースディレクターは太鼓判を押している。



8月23日(土)第1ステージ
ヘレス・デ・ラ・フロンテーラ 12.6km(チームTT)


ブエルタ・ア・エスパーニャ2014第1ステージブエルタ・ア・エスパーニャ2014第1ステージ image:Unipublic全長3239.9kmにおよぶ3週間の闘いは、スペイン南端のアンダルシア地方から始まる。初日はフラメンコとシェリー酒発祥の地であるヘレスの街中を駆ける12.6kmのチームタイムトライアル。恒例の夕刻レースであり、19時04分から4分毎に22チームがコースに繰り出して行く。

コース上に起伏はほぼ無く、直線路を60km/h前後で巡行することになるだろう。しかしコーナーやロータリーがいくつも登場するため気が抜けない。如何に隊列を崩すことなくテクニカルなコースを走り切り、最速タイムをマークしたチームの先頭フィニッシャーがマイヨロホを手に入れる。他のグランツール同様、チーム記録に反映されるのは5番目にフィニッシュした選手のタイムだ。



8月24日(日)第2ステージ
アルヘシラス〜サンフェルナンド 174.4km


ブエルタ・ア・エスパーニャ2014第2ステージブエルタ・ア・エスパーニャ2014第2ステージ image:Unipublicジブラルタル海峡の海岸線を行く第2ステージ。レース序盤18km地点で通過するタリファはヨーロッパ大陸最南端の街であり、海峡の向こうにはアフリカ大陸を望む。ヨーロッパ側のタリファ岬と対岸のモロッコは14kmしか離れていない。

スタート直後、11km地点で登場する3級山岳カブリト峠がこの日最初で最後のカテゴリー山岳であり、ここを先頭で通過すれば青い水玉模様の山岳賞ジャージが手元にやってくる。3級山岳通過後はひたすら平坦路が続くため、大集団スプリントに持ち込まれる可能性大。しかし海からの風がコンスタントに吹き付ける地域であるため、集団分裂によってビッグネームが後方に取り残されるような波乱も充分に起こり得る。



8月25日(月)第3ステージ
カディス〜アルコス・デ・ラ・フロンテーラ 197.8km


ブエルタ・ア・エスパーニャ2014第3ステージブエルタ・ア・エスパーニャ2014第3ステージ image:Unipublicカディスからアルコス・デ・ラ・フロンテーラまで、アンダルシア地方を象徴するような白い村が点在する地域を走る。暑さと闘いながら、選手たちは200km近いコースをおよそ5時間かけて走り続けることになる。

中盤にかけて4つの3級山岳が登場するが、スプリンターも難なくクリアすることが出来ると見られる。勝負の鍵を握るのは、白い街並で有名なフィニッシュ地点アルコス・デ・ラ・フロンテーラに至る短い登りだろう。残り2kmから高低差70mほどを駆け上がるため、パンチャー系の選手たちがピュアスプリンターのチャンスを潰しにかかるかも知れない。レース主催者は大集団によるスプリントには持ち込まれないと予想している。



8月26日(火)第4ステージ
マイレナ・デル・アルコル〜コルドバ 164.7km


ブエルタ・ア・エスパーニャ2014第4ステージブエルタ・ア・エスパーニャ2014第4ステージ image:Unipublic164.7kmコースの大半は平坦路。しかしフィニッシュ地点コルドバの街が近づくとコースは登りに転じる。110km地点でまずは3級山岳をクリアし、その後コルドバのフィニッシュラインを一度通過。そこから標高595mの2級山岳カトルセ・ポル・シエント峠に向かう。

平均勾配5%弱の2級山岳カトルセ・ポル・シエント峠(直訳すると14%の登り)と、その後の細かいアップダウンで集団は絞り込まれるだろう。小集団によるステージ優勝争いが濃厚だ。なお、この2級山岳とコルドバフィニッシュの組み合わせは2011年大会第6ステージにも登場しており、序盤から逃げた土井雪広(当時スキル・シマノ)吸収後、下りでチームメイト3名と飛び出したペーター・サガン(当時リクイガス)がグランツール初勝利を飾っている。



8月27日(水)第5ステージ
プリエゴ・デ・コルドバ〜ロンダ 180km


ブエルタ・ア・エスパーニャ2014第5ステージブエルタ・ア・エスパーニャ2014第5ステージ image:Unipublicコルドバ近郊のプリエゴ・デ・コルドバを発ち、渓谷によって分けられた断崖の街ロンダを目指す第5ステージ。緩やかにアップダウンを繰り返しながら標高400mほどの台地を進む。残り15km地点でピークを迎える3級山岳エル・サルティーリョ峠で、ピュアスプリンターを振るい落とすようなペースアップが計られるかもしれない。

神経質なワインディングロードを経て、映画「アンダルシア 女神の報復」の舞台となったロンダに向かってプロトンはハイスピードで突っ走る。残り800mから始まる緩い登りを、ピュアスプリンターたちは失速することなくこなすことが出来るだろうか?



8月28日(木)第6ステージ
ベナルマデナ〜ラ・スビア 167.1km


ブエルタ・ア・エスパーニャ2014第6ステージブエルタ・ア・エスパーニャ2014第6ステージ image:Unipublic2014年大会に設定された合計8つの山頂フィニッシュの1つ目、1級山岳クンブレス・ベルデスの山頂フィニッシュが登場する第6ステージ。最初の1時間はほぼ真っ平らなオーシャンロードで、そこから一気に内陸へと進路を向ける。2級山岳サファラヤ峠を皮切りに山岳地帯に突入。3級山岳ベルメハレス峠とグラナダを経て、おそらく大集団のまま1級山岳クンブレス・ベルデスへの登りがスタートする。

ブエルタ初登場のこの1級山岳は登坂距離4.6km/平均勾配7.8%/最大勾配13%。平坦区間が含まれているため、実質的な勾配は10%前後。その急勾配が緩むことなくフィニッシュラインまで続いている。急坂が得意なピュアクライマーがマイヨロホを奪い取るはずだ。



8月29日(金)第7ステージ
アレンディン〜アルカウデテ 169km


ブエルタ・ア・エスパーニャ2014第7ステージブエルタ・ア・エスパーニャ2014第7ステージ image:Unipublicスタート地点アレンディン、フィニッシュ地点アルカウデテはともにブエルタ初登場。3級山岳と2級山岳が登場する169kmコースはアップダウンの繰り返しで、中級山岳ステージにカテゴライズされる。前日にマイヨロホを獲得したチームがレース前半から集団をコントロールするだろう。

断続的な登りと暑さにもめげず、集団内に食らいついてフィニッシュを目指すスプリンターもいるはず。しかし残り15kmを切ってからコースは登りに転じ、残り5kmから勾配が増して行く。標高690mのアルカウデテに向かって、平均勾配5%ほどの斜面で飛び出すアタッカーも出てくるだろう。登れるスプリンター擁するチームの動向によっては、小集団のスプリント勝負に持ち込まれる可能性も。



8月30日(土)第8ステージ
バエサ〜アルバセテ 207km


ブエルタ・ア・エスパーニャ2014第8ステージブエルタ・ア・エスパーニャ2014第8ステージ image:Unipublicアンダルシア地方を離れ、ブエルタはカスティーリャ=ラ・マンチャ地方を目指す。今大会最長207kmのロングステージにカテゴリー山岳は登場しない。高確率で大集団スプリントに持ち込まれる。何しろこの日を終えると翌日から4日間はスプリンターに出番が回って来ない。そろそろ緑のプントス(ポイント賞)ジャージの持ち主も定まっているはずだ。

カスティーリャ=ラ・マンチャ地方は風の強い地域として知られており、アルバセテにフィニッシュする際にはいつも風が大きなファクターを担ってきた。単純な平坦ステージと侮るなかれ、ステージ優勝争いだけでなく総合争いにも響くような集団分裂が起こることも考えられる。



8月31日(日)第9ステージ
カルボネラス・デ・グアダサオン〜アラモン・バルデリナレス 185km


ブエルタ・ア・エスパーニャ2014第9ステージブエルタ・ア・エスパーニャ2014第9ステージ image:Unipublic休息日前の第9ステージには1級山岳アラモン・バルデリナレスの山頂フィニッシュが登場。3級山岳を含むアップダウンをこなした後、勝負は2級山岳サンラファエルから本格化する。残り25kmを切ってから立て続けに登場する2級山岳と1級山岳はセットとして捉えたほうが良さそうだ。

最後に待ち受ける1級山岳アラモン・バルデリナレスは登坂距離8km/平均勾配6.6%/最大勾配8.5%。数値上はさほど厳しくないように思えるが、7〜8%の勾配がコンスタントに続く休み所のない登りであり、アタックを決めるには充分な難易度。休息日前だけにビッグネームによるアタックが繰り返されるはず。標高1,975mのスキー場で総合順位は入れ替わるだろう。



9月1日(月)休息日 




9月2日(火)第10ステージ
モナステリオ・デ・ベルエラ〜ボルハ 36.7km(個人TT)


ブエルタ・ア・エスパーニャ2014第10ステージブエルタ・ア・エスパーニャ2014第10ステージ image:Unipublic第69回大会に設定された個人タイムトライアルは2つ。1つ目がこの36.7kmの長距離TTで、2つ目が最終日の9.7km短距離TT。山岳ステージでタイムを失ったオールラウンダーたちがここで巻き返しを図る。逆にクライマーたちはタイムロスを最小限に抑え込みたいところだ。

一年を通して風が吹き付ける平野を選手たちが駆け抜ける。11km地点で高低差155mの3級山岳モンカヨ峠を越えてしまえば、後は下り基調の平坦路が続く。フィニッシュ地点は「史上最悪の修復キリスト画」として一躍有名になった教会があるボルハだ。なお、3級山岳モンカヨ峠は2013年大会第11ステージ個人TTで登場済み。1年前の個人TTも休息日明けで、距離は38.8kmだった。



text:Kei Tsuji