ベルギー内陸部、アルデンヌ地方を駆け抜ける大会最長221kmで行なわれたエネコ・ツアー第4ステージは、連続する急坂でのアタックを全て封じ込めた80名ほどの集団によるスプリント勝負に持ち込まれ、写真判定が行なわれるほどの僅差のバトルでタイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン)が3勝目をマークした。

ベルギー内陸の平野部を駆け抜けるベルギー内陸の平野部を駆け抜ける photo:Cor Vos春のワンディクラシックシリーズの一つ、アルデンヌ3連戦。急坂が連続することで知られるリエージュ〜バストーニュ〜リエージュやフレーシュ・ワロンヌと同地域を、エネコ・ツアー第4ステージは駆け抜けた。

コース全長は今大会最長の221kmで、登場する急坂は計8カ所。平坦ステージがメインのエネコ・ツアーの中では、最も高い難易度を誇る。総合争いにおいて重要なステージだけに、一日中ハイスピードバトルが繰り広げることとなった。

逃げたニキ・テルプストラ(オランダ、ミルラム)やダミアン・ゴダン(フランス、Bboxブイグテレコム)逃げたニキ・テルプストラ(オランダ、ミルラム)やダミアン・ゴダン(フランス、Bboxブイグテレコム) photo:Cor Vos最初の1時間を平均48.6km/hで駆け抜けたメイン集団の中から、60km地点でアタックを決めたのはダミアン・ゴダン(フランス、Bboxブイグテレコム)、ニキ・テルプストラ(オランダ、ミルラム)、レイニア・ホーニッヒ(オランダ、ヴァカンソレイユ)の3名。テルプストラは2日連続の逃げだ。

このエスケープトリオのリードは最大8分近くまで広がったが、リーダージャージ擁するガーミンの集団コントロールによってタイム差は縮小。ゴールまで50kmを残してタイム差が1分まで縮まると、レースはさらに慌ただしさを増した。

ベルギー内陸のアップダウンをこなしていくベルギー内陸のアップダウンをこなしていく photo:Cor Vosまずメイン集団からカウンターアタックを仕掛けたトニ・マルティン(ドイツ、チームコロンビア・HTC)ら3名が逃げに合流し、先頭グループは6名に。この動きは長続きせず、続けざまに総合5位ブラドレー・ウィギンズ(イギリス、ガーミン)や総合7位ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス)がアタック。しかし総合で危険な選手だとして集団はスピードを弱めない。

ゴールまで32kmを残して今度はシルヴァン・シャヴァネル(フランス、クイックステップ)とマルコ・バンディエラ(イタリア、ランプレ)が飛び出し、これにニック・ナイエンス(ベルギー、ラボバンク)やマイケル・ロジャース(オーストラリア、チームコロンビア・HTC)、アンヘル・マドラソルイス(スペイン、ケースデパーニュ)が合流。ここからナイエンス、シャヴァネル、バンディエラの3名が先行し、メイン集団を20秒ほど引き離して逃げ続けた。

レース終盤に攻撃的な走りを見せたニック・ナイエンス(ベルギー、ラボバンク)やシルヴァン・シャヴァネル(フランス、クイックステップ)レース終盤に攻撃的な走りを見せたニック・ナイエンス(ベルギー、ラボバンク)やシルヴァン・シャヴァネル(フランス、クイックステップ) photo:Cor Vosしかしスプリンターたちを残したメイン集団はスピードを弱めずに追走し、ナイエンスら3名を残り7kmで吸収。マーティン・チャリンギ(オランダ、ラボバンク)やニーバリが諦めずに攻撃に出たが、メイン集団は全てのアタックを残り3kmで封印。最後は80名ほどの集団によるスプリント勝負に持ち込まれた。

混戦状態のままスプリント体勢に入った集団は、リーダージャージのファラー、エドヴァルド・ボアッソン(ノルウェー、チームコロンビア・HTC)、フランチェスコ・ガヴァッツィ(イタリア、ランプレ)、フレフ・ファンアフェルマート(ベルギー、サイレンス・ロット)を先頭にハイスピードで緩斜面を駆け上がった。

上り基調の最終ストレートにやってきたメイン集団上り基調の最終ストレートにやってきたメイン集団 photo:Cor Vos最後はファラーら4名がバイクを投げ出してゴール。あまりの僅差に誰も手を挙げず、写真判定に持ち込まれた結果ファラーの先着が決定。リーダージャージを着るファラーが、前日2位の雪辱を果たした。

ステージ3勝目を飾ったファラーは、レース公式サイトの中でこう語る。「この勝利は驚きだ。難易度の高いコースだったから、リーダージャージを失うと思っていた。終盤の上りはキツかったけど、何とか集団に食らいついた。上りをクリアしてから、チームメイトにスプリントで勝利を狙うことを告げたんだ。最後は上り基調で僕向きのコースレイアウトではなかったけど、ボアッソンの後ろについてチャンスを狙った」。

上りスプリントで競り合うタイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン)やエドヴァルド・ボアッソン(ノルウェー、チームコロンビア・HTC)上りスプリントで競り合うタイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン)やエドヴァルド・ボアッソン(ノルウェー、チームコロンビア・HTC) photo:Cor Vos最難関ステージを終えてなお総合首位の座を守り続けるファラーの目標は、エネコ・ツアー総合優勝へとスイッチ。「今はこのリーダージャージを最後まで守り抜きたい。アムステル・ゴールドレースのコースを通る明日のステージが鍵を握る。アムステルは一度も走ったことがないんだ。とにかくあと24時間もすれば、総合成績の行方が明らかになるよ」。好敵手トム・ボーネン(ベルギー、クイックステップ)が下位に沈んだため、ファラーと総合2位以下とのタイム差は20秒まで広がっている。

難コースで最後までメイン集団に残った新城幸也(Bboxブイグテレコム)は、前日の14位に続いてこの日も13位でフィニッシュ。連日上位に絡む走りを見せており、調子の良さが伺い知れる。翌第5ステージは、4月にユキヤが逃げに乗ったアムステル・ゴールドレースと似たルートを通る204kmだ。

エネコ・ツアー2009第4ステージ結果
1位 タイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン)5h27'01"
2位 エドヴァルド・ボアッソン(ノルウェー、チームコロンビア・HTC)
3位 フランチェスコ・ガヴァッツィ(イタリア、ランプレ)
4位 フレフ・ファンアフェルマート(ベルギー、サイレンス・ロット)
5位 クリストフ・ホダールト(ベルギー、トップスポート・フラーンデレン)
6位 ホセホアキン・ロハス(スペイン、ケースデパーニュ)
7位 アイトール・ガルドス(スペイン、エウスカルテル)
8位 ロイ・センチェンス(ベルギー、サイレンス・ロット)
9位 アレクサンドル・ウソフ(ベラルーシ、コフィディス)
10位 ラルスイティング・バク(デンマーク、サクソバンク)
13位 新城幸也(日本、Bboxブイグテレコム)

個人総合成績
1位 タイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン)17h51'13"
2位 トム・ボーネン(ベルギー、クイックステップ)+20"
3位 エドヴァルド・ボアッソン(ノルウェー、チームコロンビア・HTC)+23"
4位 シルヴァン・シャヴァネル(フランス、クイックステップ)+35"
5位 マーティン・チャリンギ(オランダ、ラボバンク)+37"
6位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス)
7位 ブラドレー・ウィギンズ(イギリス、ガーミン)
8位 ヨースト・ポストゥーマ(オランダ、ラボバンク)
9位 フアンアントニオ・フレチャ(スペイン、ラボバンク)+39"
10位 ニコラス・マース(ベルギー、トップスポート・フラーンデレン)+40"
63位 新城幸也(日本、Bboxブイグテレコム)+7'00"

ポイント賞
タイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン)

チーム総合成績
ラボバンク

text:Kei Tsuji
photo:Cor Vos