休息日明け、総合上位陣に明暗が分かれたツール・ド・フランス第16ステージ。ピレネー初日を制したマイケル・ロジャース(オーストラリア、ティンコフ・サクソ)を中心に、総合上位の選手たちのコメントを紹介します。



ステージ初優勝を飾ったマイケル・ロジャース(オーストラリア、ティンコフ・サクソ)

深々とお辞儀をするマイケル・ロジャース(オーストラリア、ティンコフ・サクソ)深々とお辞儀をするマイケル・ロジャース(オーストラリア、ティンコフ・サクソ) photo:Tim de Waeleキャリアも後半に差し掛かって、スマートに走る術を覚えた。今日は必ず逃げに乗って、勝とうと思った。これまでは消極的になりがちだったんだ。今は常々「まずはベストを尽くしてみろよ。駄目なら駄目でもいい。最悪の場合、レースで負けるだけだ(死ぬわけじゃない)」と自分に言い聞かせている。そう考えることで多くのチャンスが巡ってくるようになった。ツールで勝つなんて全ての選手の夢だ。

ステージ初優勝を飾ったマイケル・ロジャース(オーストラリア、ティンコフ・サクソ)ステージ初優勝を飾ったマイケル・ロジャース(オーストラリア、ティンコフ・サクソ) photo:Tim de Waeleレースを離れていた期間(クレンブテロール検出による暫定出場停止期間)に人生の教訓のようなものを得たんだ。あの一件以降は人生の見方が変わった。「他人の人生を歩むのはやめよう」と強く思い始めた。人生の目標を的確に捉えるのは時に難しい。

昔はグランツールで勝ちたいと思っていたけど、今思えば1週間ほどのステージレースが現実的だ。グランツールでコンタドールやニーバリ、バルベルデと真っ向勝負で勝てるとは思わない。総合争いを諦めることでステージ優勝への道が開かれたんだ。アルベルトが落車していなければ、今こうしてステージ優勝者としてインタビューを受けていなかっただろう。マイヨジョーヌ防衛に力を使って、この時点では疲れ切っていたはずだから。

アルベルトが残っていたとしても、ツールで簡単に勝っていたとは思わない。ニーバリは今キャリアで最高のコンディションにある。2人による最高の闘いが繰り広げられていたはず。これから数年間は彼らのバトルに注目だ。アルベルトはすでに来年のツールに向けて動いている。彼がリタイアしたことで勝利のチャンスが巡ってきた。胸が張り裂けるような思いだ。

ステージ優勝を狙うために、慎重にコースを研究してプランBを遂行。今日と明日のステージが自分向きだと思っていた。2010年にヴォクレールが勝ったときと同じレイアウトだったので、彼がモチヴェーション高く挑んでくると思ったよ。序盤は向かい風が強かったので、逃げに乗るのが相当厳しかった。ガーミン・シャープが逃げに選手を送り込むまでアタックが止まらなかった。30km地点で4名で先行したものの、ユーロップカーの選手(レザ)が先頭交代を拒否。そのとき彼は「後ろでチームメイトが追走しているから」と言った。最後のバレ峠の下りで先頭が3人に絞られたときヴォクレールは「協力出来ない。後ろでチームメイトが追走しているから」と言った。思わず「同じことを200km前に聞いたよ!」と突っ込んでしまった。でも平常心を保って走ったよ。

マイヨブランを獲得したティボー・ピノ(フランス、FDJ.fr)

8分32秒遅れでフィニッシュするマイヨジョーヌグループ8分32秒遅れでフィニッシュするマイヨジョーヌグループ photo:Tim de Waeleファンタスティックな一日になった。今日の目標はマイヨブランを獲得することと、バルベルデとバルデとのタイム差を広げることだったんだ。今日はこの3週間の中で一番コンディションが良かったので、攻撃しない理由がなかった。バレ峠でペースを上げるとヴァンガーデレンとバルデが脱落。素晴らしいチームワークだった。ジェレミー・ロワが逃げグループから下がってアシストしてくれたことも大きい。彼についてダウンヒルをこなす作戦が完全に上手く行った。

マイヨブラン争いにおいてバルデから1分30秒を奪い取り、何もトラブルが無ければ彼より僕のほうがTTが得意。でもツールではいつバッドデーがやってくるか分からない。今はバルベルデとヴァンガーデレンに対してもっとタイム差を稼がないといけない。総合2位も見えてきたけど、バルベルデを引き離すのはかなり難しそうだ。TTスペシャリストのペローをもっと警戒すべきかもしれない。

1ポイント差で山岳賞トップに立ったラファル・マイカ(ポーランド、ティンコフ・サクソ)

マイケル・ロジャースのステージ勝利について語るビャルヌ・リース監督マイケル・ロジャースのステージ勝利について語るビャルヌ・リース監督 photo:Makoto.AYANO今朝の時点ではマイヨアポワを獲得出来るかどうか半信半疑だった。逃げを懸けたアタック合戦を眺めながら、最初のKOMで1ポイントを獲得。同じポーランド出身のミカル・クヴィアトコウスキーをチェックして、頂上手前で彼を追い抜いてKOMを先頭通過したんだ。

自分に続いてマイケル・ロジャースがステージ優勝したことを嬉しく思う。まだツールは終わっていない。残る山岳2ステージでも何かを仕掛けたい。ホアキン・ロドリゲスとヴィンチェンツォ・ニーバリを相手にマイヨアポワを争うのは本当にハードだ。

ステージ2位のトマ・ヴォクレール(フランス、ユーロップカー)

9秒遅れでフィニッシュするトマ・ヴォクレール(フランス、ユーロップカー)ら9秒遅れでフィニッシュするトマ・ヴォクレール(フランス、ユーロップカー)ら photo:Tim de Waeleまさに残念無念。ステージ2位という結果に満足する選手もいるが、それは自分には当てはまらない。バレ峠を2番手で越えて、セルパとロジャースと一緒にダウンヒルへ。すると下りで2人が交互にアタックし始めたんだ。下りの途中でシリル・ゴティエが合流してそのまま先頭で飛び出した。ロジャースのカウンターアタックには反応出来なかった。今日のような下りフィニッシュで逃げメンバーを振り切るのは並大抵のことじゃない。もしシリルがロジャースに食らいついていれば、彼が勝っていただろう。2人を残していながら勝利に手が届かなかった。敗戦としてこの結果を受け止めなければならない。ツールが開幕してからずっと主役になれずにいる。

失意のシリル・ゴティエ(フランス、ユーロップカー)

超級山岳バレ峠で動くシリル・ゴティエ(フランス、ユーロップカー)超級山岳バレ峠で動くシリル・ゴティエ(フランス、ユーロップカー) photo:Tim de Waeleずっと先頭でレースを展開しながらステージ優勝を逃したことが残念でならない。これが5回目のツール出場で、これまで常にアタックを仕掛けてきた。トマ(ヴォクレール)と一緒に、このステージに懸けていた。残り10kmの時点で全てが完璧だったのに、ロジャースに先行を許してしまった。彼の後輪に食らいつけなかったんだ。落胆の気持ちに苛まれている。

バレ峠で遅れ、総合6位にダウンしたティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシング)

ただ単にライバルたちに食らいつく脚が残っていなかった。スッカラカンだった。下りではチームメイトの力を借りてタイムロスを押さえ込む走りに徹したよ。アルプスで感じた調子の良さが戻ってくることを願う。今日はモビスターが作る強力なペースにやられてしまった。でもまだツールは終わっていない。まだ総合を占う上で重要なステージが3つ残っている。早く復活したい。

マイヨブランを失ったロメン・バルデ(フランス、AG2Rラモンディアール)

バレ峠でタイムを失い、ティボー・ピノに逆転されたロメン・バルデ(フランス、AG2Rラモンディアール)バレ峠でタイムを失い、ティボー・ピノに逆転されたロメン・バルデ(フランス、AG2Rラモンディアール) photo:Makoto Ayano今日はずっと調子が良かったのに、最後のバレ峠で失速してしまった。登りに差し掛かった時は有頂天だったけど、徐々に苦しんでしまった。そんな難局を耐え忍ぶ力が必要だと感じたよ。アタックする余裕なんて全くなかった。精神的にも追い込まれたけど、パニックにならないようサポートしてくれたチームメイトのみんなに感謝している。逃げていたサミュエル・ドゥムランが待ってくれたおかげでダメージを最小限に抑え込めたんだ。

今日は闘いに敗れた。でもまだピレネーの2日間が残されている。総合で少し順位を下げたことで自由度も上がるし、明日のステージは僕向き。今日よりも良い調子で挑めればと思う。今年はおそらくジャンクリストフ(ペロー)が表彰台に登るだろう。その可能性がどんどん上がってきている。これからチーム首脳陣と戦略について話し合うよ。

ピレネー初日を難なく終えたヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)

ティボー・ピノ(フランス、FDJ.fr)がヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)を引き連れてバレ峠を登るティボー・ピノ(フランス、FDJ.fr)がヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)を引き連れてバレ峠を登る photo:Makoto Ayanoファビオ・カザルテッリのモニュメントの前では、彼の家族に思いを馳せた。彼の事故は子どもの頃の記憶に焼き付いている。ちょうどテレビでツールを観戦していたんだ。若い時には彼の名前を冠したレースで勝ったこともあった。このツールで勝つことが出来れば、彼の家族に勝利を捧げたいと思う。

全長240kmの長いステージ。序盤の70kmはチームメイトたちが危険なアタックを封じ込めてくれた。そしてバレ峠に差し掛かったところでモビスターがペースアップ。バルベルデが最も危険な存在だと思っていたから警戒したよ。しかも彼には素晴らしい下りのテクニックがある。頂上手前でピノとの距離が少し開いたけど、それはちょうど糖分補給のためにボトルに手を伸ばしている最中だった。決してピノを過小評価しているわけじゃない。ライバルたちを甘く見ているなんてことはないよ。昨年のブエルタでの経験が生きている。ピノがアタックした時はすぐに反応した。さもなければ危険なギャップが生まれてしまうから。

第2ステージでマイヨジョーヌを獲得してからというもの、チームメイトたちはレースコントロールのために働き続けてくれた。だから勝負どころで周りにチームメイトがいない状況が生まれても無理はない。他のチームも同様に人数を減らしていたので何も心配はなかった。今日のようなステージで蓄積した疲労は後々響いてくるだろう。

今日は終盤にだけレースが盛り上がったけど、明日は全く違ったものになる。全長はたった120kmで、より密度の濃いレースになる。短いからって簡単なレースにはならない。これからもマイヨジョーヌを守るために走るよ。

(コンタドールがマイヨジョーヌを着ていたはずとコメントした)オレグ・ティンコフが直々に祝福してくれた。逆に自分もステージ2勝を祝福したよ。彼はこのスポーツを愛し、情熱をもって打ち込んでいる。ただ出資するだけではなく、各地のレースに顔を出している。彼のような熱いスポンサーがどのチームにも必要だ。

text:Kei Tsuji
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