スタートからフィニッシュまで222kmを逃げ、残り100mで捕まるという現実。惜しくも逃げ切りを逃したジャック・バウアー(ニュージーランド、ガーミン・シャープ)が涙する中、劇的な展開のスプリントでアレクサンダー・クリストフ(ノルウェー、カチューシャ)が勝利した。


シストロンの街を通過するプロトンシストロンの街を通過するプロトン photo:Tim de Waele

ツール・ド・フランス2014第15ステージツール・ド・フランス2014第15ステージ image:A.S.O.アルプス決戦を終えたプロトンは足早にピレネーを目指す。222kmの長いルート上にカテゴリー山岳は存在しない。第15ステージは二つの山場を結ぶ、いわゆる"繋ぎステージ"。休息日を前に、大会2週目がスプリントフィニッシュで締めくくられると見られたが、強力な逃げとスプリンターチームの疲労が集団の計算を狂わせた。

逃げるジャック・バウアー(ニュージーランド、ガーミン・シャープ)とマルティン・エルミガー(スイス、IAMサイクリング)逃げるジャック・バウアー(ニュージーランド、ガーミン・シャープ)とマルティン・エルミガー(スイス、IAMサイクリング) photo:Tim de Waeleスタート直後、オフィシャルカーに乗るクリスティアン・プリュドム氏が旗を振るのと同時にスイスチャンピオンジャージがアタック。飛び出したマルティン・エルミガー(スイス、IAMサイクリング)にジャック・バウアー(ニュージーランド、ガーミン・シャープ)が合流すると、メイン集団はあっさりとこの2人を見送った。

ラベンダー畑の横を通過するプロトンラベンダー畑の横を通過するプロトン photo:Tim de Waele曇り時々雨という気象条件の中、雨雲が広がるプロヴァンスの丘を逃げたエルミガーとバウアー。ともに長身のルーラーは26km地点で8分50秒のアドバンテージを稼ぎ出す。ここからお決まりの3チーム、ジャイアント・シマノ、ロット・ベリソル、カチューシャが集団先頭でコントロールを開始した。

この日最も心配されたのはステージ後半の平野部を吹き抜ける風だった。過去に集団分裂などのドラマを生み出したミストラル(季節風)を警戒して、アスタナをはじめとする総合系のチームも集団前方にポジション取り。

狭いコースに吹き付ける横風とAG2RラモンディアールやBMCレーシングによるペースアップによって、メイン集団後方ではエシュロン(斜め隊列)が形成されるシーンも見られたが、集団を粉砕するような強風は吹かず。風が弱まると、スプリンターチームが再び逃げとのタイム差を削る作業に没頭した。

風は吹かないがしっかりと雨は降る。雨に濡れた危険な街中では、マイヨジョーヌ擁するアスタナが集団先頭に立って危険なペースアップを押さえ込んだ。

美しい並木道を走るプロトン美しい並木道を走るプロトン photo:Tim de Waele
ロット・ベリソルがアンドレ・グライペルの2勝目に向けて意欲を見せるロット・ベリソルがアンドレ・グライペルの2勝目に向けて意欲を見せる photo:Makoto Ayanoラベンダー畑を通過するマイヨジョーヌのヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)ラベンダー畑を通過するマイヨジョーヌのヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ) photo:Tim de Waele

カチューシャやジャイアント・シマノが牽引するプロトンがプロヴァンスを行くカチューシャやジャイアント・シマノが牽引するプロトンがプロヴァンスを行く photo:Tim de Waele先頭エルミガーとバウアーは雷を伴う雨雲に突っ込むようにして逃げを続行。しかしメイン集団とのタイム差は無情にも縮まり、残り46.5km地点のスプリントポイント通過時でタイム差は1分30秒に。ロット・ベリソルとジャイアント・シマノが引き続きメイン集団を牽引する。

横風区間を前に集団先頭に立つBMCレーシング横風区間を前に集団先頭に立つBMCレーシング photo:Tim de Waele残り15km地点でタイム差は1分。この頃になると雨はすっかりと上がり、暖かなプロヴァンスの太陽が射し込んだが、路面はまだ完全に濡れた状態。メイン集団からカウンターアタックで飛び出したミカル・クヴィアトコウスキー(ポーランド、オメガファーマ・クイックステップ)は先頭2人に届かないまま吸収される。

終盤にメイン集団から飛び出したミカル・クヴィアトコウスキー(ポーランド、オメガファーマ・クイックステップ)終盤にメイン集団から飛び出したミカル・クヴィアトコウスキー(ポーランド、オメガファーマ・クイックステップ) photo:Tim de Waeleニームに向かって道幅のある直線路が続いたものの、1km毎に登場するロータリーが集団追い上げを阻害する。スピードの上がり切らないメイン集団からはオメガファーマ・クイックステップのヤン・バケランツ(ベルギー)やトニ・マルティン(ドイツ)らが相次いでアタックを仕掛けたものの、失敗。15秒ほどのリードを保ったまま先頭2人がフラムルージュを通過した。

大集団スプリントを制したアレクサンダー・クリストフ(ノルウェー、カチューシャ)大集団スプリントを制したアレクサンダー・クリストフ(ノルウェー、カチューシャ) photo:Tim de Waeleエルミガーとバウアーが振り返ったその視線の先にはスプリンターチーム率いるメイン集団の姿。アレッサンドロ・ペタッキ(イタリア)がマーク・レンショー(オーストラリア、オメガファーマ・クイックステップ)のために最後のリードアウトを見せる。

牽制状態に陥る暇もないほどの接戦となり、好位置でスプリントをスタートさせたレンショーやアンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ベリソル)らが残り100mでエルミガーとバウアーをパス。そこからクリストフのスプリントが伸びた。

「まさかグランツールでステージ2勝するなんて」と驚きの声をあげたクリストフが勝利。喜びに溢れた表情を浮かべながら、まだ慣れない仕草で表彰台に上がる。グルペットでヴォージュ山塊やアルプス山脈を乗り越えてきたクリストフが再び栄冠を掴んだ。「体重が軽いので、通常、平坦なステージではグライペルやキッテルに敵わない。でもその体重が有利に働いたんだと思う。アルプスでの消耗度は自分のほうが軽かったようだ」。

一方、「なんて苦くて苦しい落胆なんだろう」とコメントしたのは、フィニッシュ後に地面に倒れ込んで涙を流したバウアー。敢闘賞はステージ10位のバウアーではなくファーストアタックを仕掛けたエルミガーの手に渡っている。

翌日は大会2回目の休息日。マイヨジョーヌを着るヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)が4分半を超える総合リードを保ったまま、そしてマイヨアポワ(山岳賞)とマイヨブラン(ヤングライダー賞)争いが接戦のまま、勝負のピレネー山岳3連戦が近づいてきた。

選手コメントはレース公式サイトより。

逃げきれなかったジャック・バウアー(ニュージーランド、ガーミン・シャープ)を慰めるチームメイト逃げきれなかったジャック・バウアー(ニュージーランド、ガーミン・シャープ)を慰めるチームメイト photo:Makoto Ayanoヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)は集団内でリスク無くフィニッシュヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)は集団内でリスク無くフィニッシュ photo:Makoto Ayano
ステージ2勝目を飾ったアレクサンダー・クリストフ(ノルウェー、カチューシャ)ステージ2勝目を飾ったアレクサンダー・クリストフ(ノルウェー、カチューシャ) photo:Tim de Waele

ツール・ド・フランス2014第15ステージ結果
1位 アレクサンダー・クリストフ(ノルウェー、カチューシャ)
2位 ハインリッヒ・ハウッスラー(オーストラリア、IAMサイクリング)
3位 ペーター・サガン(スロバキア、キャノンデール)
4位 アンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ベリソル)
5位 マーク・レンショー(オーストラリア、オメガファーマ・クイックステップ)
6位 ブライアン・コカール(フランス、ユーロップカー)
7位 ラムナス・ナヴァルダスカス(リトアニア、ガーミン・シャープ)
8位 ロメン・フェイユ(フランス、ブルターニュ・セシェ)
9位 ミハエル・アルバジーニ(スイス、オリカ・グリーンエッジ)
10位 ジャック・バウアー(ニュージーランド、ガーミン・シャープ)
4h56'43"









マイヨジョーヌ(個人総合成績)
1位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)
2位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)
3位 ロメン・バルデ(フランス、AG2Rラモンディアール)
4位 ティボー・ピノ(フランス、FDJ.fr)
5位 ティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシング)
6位 ジャンクリストフ・ペロー(フランス、AG2Rラモンディアール)
7位 バウク・モレマ(オランダ、ベルキン)
8位 レオポルド・ケーニッヒ(チェコ、ネットアップ・エンドゥーラ)
9位 ローレンス・テンダム(オランダ、ベルキン)
10位 ピエール・ロラン(フランス、ユーロップカー)
66h49'37"
+4'37"
+4'50"
+5'06"
+5'49"
+6'08"
+8'33"
+9'32"
+10'01"
+10'48"

マイヨヴェール(ポイント賞)
1位 ペーター・サガン(スロバキア、キャノンデール)
2位 ブライアン・コカール(フランス、ユーロップカー)
3位 アレクサンダー・クリストフ(ノルウェー、カチューシャ)
402pts
226pts
217pts

マイヨアポワ(山岳賞)
1位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)
2位 ラファル・マイカ(ポーランド、ティンコフ・サクソ)
3位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)
88pts
88pts
86pts

マイヨブラン(ヤングライダー賞)
1位 ロメン・バルデ(フランス、AG2Rラモンディアール)
2位 ティボー・ピノ(フランス、FDJ.fr)
3位 ミカル・クヴィアトコウスキー(ポーランド、オメガファーマ・クイックステップ)
66h54'27"
+16"
+14'34"

チーム総合成績
1位 AG2Rラモンディアール
2位 ベルキン
3位 チームスカイ
200h46'47"
+12'42"
+38'32"

ステージ敢闘賞
マルティン・エルミガー(スイス、IAMサイクリング)

text:Kei Tsuji
photo:Tim de Waele, Makoto Ayano