3年連続マイヨヴェール獲得が懸かったペーター・サガン(スロバキア、キャノンデール)に、マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、オメガファーマ・クイックステップ)やマルセル・キッテル(ドイツ、ジャイアント・シマノ)が待ったをかける。ポイント賞の仕組みと、注目のスプリンターたちの名前をチェックしておこう。



スプリンター有利のポイント配分 スプリントポイントにも注目

2年連続でマイヨヴェールを獲得したペーター・サガン(キャノンデール)2年連続でマイヨヴェールを獲得したペーター・サガン(キャノンデール) photo:Makoto AYANOステージの種類に関係なくゴール地点で同ポイントが与えられていたジロ・デ・イタリアとは異なり、ツールではステージを「平坦」「中級山岳」「上級山岳」「個人TT」の4種類に分類。それぞれ異なるポイント配分を設定している。

夕暮れの凱旋門に向かって走るプロトン夕暮れの凱旋門に向かって走るプロトン photo:Makoto AYANO「平坦ステージ」で優勝を飾ると45ポイント獲得。以下35、30、26、22・・・と、上位15名までポイントを付与。「上級山岳ステージ」では20、17、15、13、11・・・。つまりスプリンターが有利にポイントを稼ぐことの出来る配分となっている。

2011年にスプリントポイントのポイントシステムが変更され、1ステージ・1スプリントポイントに固定された。スプリントポイントでの獲得ポイントは全ステージ共通(TTを除く)。ポイント通過上位15名まで「平坦ステージ」のゴールポイントの約半分、「上級山岳ステージ」のゴールと同等のポイント(20、17、15、13、11・・・)が与えられる。

つまりスプリントポイントでの獲得ポイントが、マイヨヴェール争いに大きな影響を及ぼす。山岳ステージでも、コース前半にスプリントポイントが設定されている場合は、スプリンターチームがレースをコントロールするだろう。山岳ステージで逃げに乗るスプリンターも出てくるはず。上位15名までポイントが与えられるため、10名に満たない逃げグループが形成されている場合、集団前方は活性化する。

このシステム変更により「スプリントポイント」としての意味合いが増し、よりレース展開が刺激的になった。ポイント賞狙いの選手は、1日に2回スプリントすることになるだろう。スプリントポイントで脚を使えば、ステージ優勝に影響が出る。平坦ステージでも各チームの思惑が入り乱れそうだ。

また、山岳ステージを乗り切ることが出来ない限り、マイヨヴェール獲得のチャンスは回って来ない。そのためスプリンターたちはグルペットを形成し、タイムアウトの時間内にゴールを目指す。仮に審判の判断でタイムアウトが救済された場合は、その日のステージ優勝の獲得ポイントと同ポイントが減点される。



各ステージのポイント配分(いずれも上位15名に付与)
・平坦ステージ
優勝者45pts、以下35、30、26、22、20、18、16、14、12、10、8、6、4、2pts
・中級山岳ステージ
優勝者30pts、以下25、22、19、17、15、13、11、9、7、6、5、4、3、2pts
・上級山岳ステージ
優勝者20pts、以下17、15、13、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、1pt
・タイムトライアル
優勝者20pts、以下17、15、13、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、1pt
・スプリントポイント
先頭通過者20pts、以下17、15、13、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、1pt



サガンの3年連続グリーンを阻止するのは? カヴやキッテル、グライペルが火花を散らす

ツール・ド・スイスでステージ1勝したペーター・サガン(スロバキア、キャノンデール)ツール・ド・スイスでステージ1勝したペーター・サガン(スロバキア、キャノンデール) photo:Tim de Waele過去2年間、下位に大差を付けてマイヨヴェールを獲得したのがペーター・サガン(スロバキア、キャノンデール)だ。大集団スプリントではピュアスプリンターに敵わないものの、中級山岳ステージでも勝負に残り、毎ステージ着実にポイントを重ねたサガンが2年連続でマイヨヴェールを獲得した。

マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、オメガファーマ・クイックステップ)マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、オメガファーマ・クイックステップ) photo:Tim de Waele今シーズンはE3ハレルベークで勝利し、ツアー・オブ・オマーンとティレーノ〜アドリアティコ、デパンヌ3日間レース、ツアー・オブ・カリフォルニア、ツール・ド・スイスでそれぞれステージ1勝ずつ。少し大人しい印象を受けるが、このツールに合わせて調子は整っているという。ステージ優勝を狙っていくうちに自然とマイヨヴェールが手元にやってくるだろう。

マルセル・キッテル(ドイツ、ジャイアント・シマノ)マルセル・キッテル(ドイツ、ジャイアント・シマノ) photo:Kei Tsujiマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、オメガファーマ・クイックステップ)はここまでステージ通算23勝を飾っており、エディ・メルクスがもつ34勝という最多勝記録に近づいてきた。アレッサンドロ・ペタッキ(イタリア)やマーク・レンショー(オーストラリア)がカヴを発射する。

アンドレ・グライペル(ロット・ベリソル)アンドレ・グライペル(ロット・ベリソル) photo:Tim de Waeleカヴェンディッシュは今シーズンここまで9勝。直前のツール・ド・スイスでステージ優勝を飾って調子の良さを確認済み。「キャリアの中で2度もツールがイギリスで開幕するなんて感激。まずは初日に勝利したい」とコメントしている。第1ステージのフィニッシュ地点ハロゲートはカヴェンディッシュの母親の出身地であり、祖父母や伯父はまだ住んでいる。「夏休みによく遊びに行った」という街でマイヨジョーヌを着るのがカヴェンディッシュが思い描く最高のシナリオだ。

昨年初出場ながらステージ4勝を飾ったマルセル・キッテル(ドイツ、ジャイアント・シマノ)は、ジロ・デ・イタリアでスプリント2連勝を飾りながらも、イタリアステージを走ることなく体調不良でリタイアした。"最速スプリンター"の名をほしいままにしているジャーマンが、ジロのフラストレーションを晴らすべくツールのスタートラインに並ぶ。クーン・デコルト(オランダ)やトム・フィーラース(オランダ)を揃えるジャイアント・シマノのトレインは屈強だ。

今シーズン最も勝っているのは他でもないアンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ベリソル)だ。3月のヘント〜ウェベルヘムで鎖骨を折りながらも、グライペルはすでにシーズン12勝。療養のためジロをパスしてツールに集中している。グレゴリー・ヘンダーソン(ニュージーランド)やユルゲン・ルーランズ(ベルギー)がグライペルのためにトレインを組むだろう。

フランスチャンピオンジャージを獲得したアルノー・デマール(フランス、FDJ.fr)はツール初出場。FDJ.frはジロ・デ・イタリアでステージ3勝&ポイント賞のナセル・ブアニ(フランス)ではなく、デマールにスプリントを託す。まだ22歳と若いが、グランツールのスプリントで勝てる脚の持ち主だ。

ミラノ〜サンレモの覇者アレクサンダー・クリストフ(ノルウェー、カチューシャ)やサーシャ・モードロ(イタリア、ランプレ・メリダ)、イェンス・ケウケレール(ベルギー、オリカ・グリーンエッジ)らもスプリントに絡んでくるはず。初日の第1ステージからハイスピードバトルが繰り広げられることになりそうだ。



ツール・ド・フランス2013ポイント賞ランキング
1位 ペーター・サガン(スロバキア、キャノンデールプロサイクリング)       409pts
2位 マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、オメガファーマ・クイックステップ)  312Pts
3位 アンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ベリソル)              267pts

歴代マイヨヴェール受賞者
2013年 ペーター・サガン(スロバキア)
2012年 ペーター・サガン(スロバキア)
2011年 マーク・カヴェンディッシュ(イギリス)
2010年 アレッサンドロ・ペタッキ(イタリア)
2009年 トル・フースホフト(ノルウェー)
2008年 オスカル・フレイレ(スペイン)
2007年 トム・ボーネン(ベルギー)
2006年 ロビー・マキュアン(オーストラリア)
2005年 トル・フースホフト(ノルウェー)
2004年 ロビー・マキュアン(オーストラリア)
2003年 バーデン・クック(オーストラリア)
2002年 ロビー・マキュアン(オーストラリア)
2001年 エリック・ツァベル(ドイツ)
2000年 エリック・ツァベル(ドイツ)
1999年 エリック・ツァベル(ドイツ)
1998年 エリック・ツァベル(ドイツ)
1997年 エリック・ツァベル(ドイツ)
1996年 エリック・ツァベル(ドイツ)
1995年 ローラン・ジャラベール(フランス)
1994年 ジャモリディネ・アブドヤパロフ(ウズベキスタン)
1993年 ジャモリディネ・アブドヤパロフ(ウズベキスタン)
1992年 ローラン・ジャラベール(フランス)
1991年 ジャモリディネ・アブドヤパロフ(ウズベキスタン)
1990年 オラフ・ルードヴィッヒ(ドイツ)

text:Kei Tsuji