岩手県八幡平で、3日間に渡るロード全日本選手権が開幕。初日に行われたタイムトライアルでは大本命の別府史之が佐野淳哉を下し、男子エリートで2011年以来の勝利。女子は萩原麻由子が戴冠し、男女エリート共に海外チーム所属選手が優勝した。



男子エリート 7位 井上和郎(ブリヂストン・アンカー)男子エリート 7位 井上和郎(ブリヂストン・アンカー) (c)Makoto.AYANO全日本選手権が2年ぶりに八幡平に帰ってきた。例年別日程、別会場で開催されていたタイムトライアルは今回初めて連日開催とされ、ロードコースの一部を使うことでアップダウンに富むコースレイアウトでの開催となった。

既報の通り、コースは岩手山焼走り国際交流村を拠点とし、ロードコース最初の直線区間を往復する距離13.4km。往路が緩い下り、復路が緩い登りで、高低差は1周で120mだ。

男子エリート 5位 岡篤志(EQA U23)男子エリート 5位 岡篤志(EQA U23) (c)Makoto.AYANO男子エリート 4位 阿部嵩之(宇都宮ブリッツェン)男子エリート 4位 阿部嵩之(宇都宮ブリッツェン) (c)Makoto.AYANO岩手山の麓は快晴に包まれ、スケジュールの進行と共に気温も上昇の一途をたどる。午後には30℃程まで気温が上がったうえ、コース上は下りが追い風、登りがほぼ向かい風という難しいコンディションに。ペースメイクの如何が好タイムへと繋がる重要なファクターとなった。

昨年はツール・ド・コリアやJプロツアーが重なったため選手層が薄かったが、今年は男子エリートに34名が、女子エリートに16名がエントリー。ディフェンディングチャンピオンの大場政登志(Cプロジェクト)や復調した佐野淳哉(那須ブラーゼン)、そしてジロ・デ・イタリアを完走した別府史之(トレックファクトリーレーシング)には特に大きな注目が集まった。

コースを3周、計40.2kmを走る男子エリートでは、まず第1ウェーブで松崎祥久(GRUPPO ACQUA TAMA)が好タイムをマークして暫定首位に立ち、結果的に松崎は8位に食い込んでいる。中盤には18歳ながらUCIポイント獲得を狙ってエリート出走した岡篤志(EQA U23)が56分34秒33(Ave.42.63km/h)をマークして暫定首位に躍り出る。

しかしその2つ後ろでスタートした阿部嵩之(宇都宮ブリッツェン)が全ての中間計測でトップタイムをマークし、岡をおよそ1分上回る圧倒的なタイムでトップフィニッシュ。「強風でペースを崩さないように注意して走っていた。ゴール後に倒れるくらい追い込みたかったが、良く走れた。」と言う阿部は、首位で後半にスタートする有力勢を待った。



スタートを待つ佐野淳哉(那須ブラーゼン)スタートを待つ佐野淳哉(那須ブラーゼン) photo:So.Isobe順番を待つ大場政登志(Cプロジェクト)と別府史之(トレックファクトリーレーシング)順番を待つ大場政登志(Cプロジェクト)と別府史之(トレックファクトリーレーシング) photo:So.Isobe

スタート台を駆け下りる別府史之(トレックファクトリーレーシング)スタート台を駆け下りる別府史之(トレックファクトリーレーシング) photo:So.Isobe


3位でフィニッシュした山本元喜(ヴィーニファンティーニNIPPOデローザ)3位でフィニッシュした山本元喜(ヴィーニファンティーニNIPPOデローザ) photo:So.Isobeそして13時45分から山本元喜(ヴィーニファンティーニNIPPOデローザ)、佐野、武井享介(チーム・フォルツァ!)、別府、大場というメンバーが続々とスタートを切っていく。

一時は別府史之とのラップタイムを8秒差までに縮めた佐野淳哉(那須ブラーゼン)だったが一時は別府史之とのラップタイムを8秒差までに縮めた佐野淳哉(那須ブラーゼン)だったが (c)Makoto.AYANOすると佐野は一周目終了時点で17分53秒をマークして暫定首位に躍り出るが、別府は17分35秒。最終走者・大場も別府から数秒遅れの好タイムで2周目に入る。

変わらずハイペースを刻む佐野に対して、別府と大場は2周目にタイムを落とす。だが別府のこれは後に「中一日空けてロードがあるので、できる限り力をセーブしようと思った」と語るように作戦の内だった。このため2周目終了時点で、別府と佐野の差は8秒までに縮まり、会場をどよめかせた。

群を抜いたスピードで駆け抜ける両名の一方で、昨年のU23チャンピオンである山本も「勝負を分けるのはパワー。」と語る通りの力強い走りで阿部のタイムを更新。最後まで追い込み、暫定トップとなる55分11秒72でフィニッシュする。

しかしすぐさま誰の目にも「速い」と思わせるスピードで佐野がゴール。タイムは山本を2分弱引き離す53分31秒。その場にいた全員が固唾を飲んで別府の到着を待った。


最終周回に向けてペースを上げる別府史之(トレックファクトリーレーシング)最終周回に向けてペースを上げる別府史之(トレックファクトリーレーシング) (c)Makoto.AYANO
男子エリート 6位 大場政登志(Cプロジェクト)男子エリート 6位 大場政登志(Cプロジェクト) (c)Makoto.AYANOフィニッシュ直後に笑顔を見せる別府史之(トレックファクトリーレーシング)フィニッシュ直後に笑顔を見せる別府史之(トレックファクトリーレーシング) photo:So.Isobe



クールダウンしながら喜びを噛みしめる別府史之(トレックファクトリーレーシング)クールダウンしながら喜びを噛みしめる別府史之(トレックファクトリーレーシング) (c)Makoto.AYANOその2分後、ストレートに姿を現した別府の勢いもまた速かった。TTポジションのままもがき、歯を食いしばった表情でゴールにやってきた。タイムは53分01秒82。佐野を最終周回で突き放し首位に立った。そして最終走者、大場は岡に次ぐ6位でフィニッシュし、別府の優勝が決まった。

表彰台の中央に登った別府史之(トレックファクトリーレーシング)表彰台の中央に登った別府史之(トレックファクトリーレーシング) (c)Makoto.AYANO自身のフィニッシュ直後、勝利を確信して笑顔を見せた別府。2006年と2011年に次ぐ3度目の勝利を飾った別府は、「狙い通りのレース運びができましたね。全体的には自分の60〜70%で走っていて、最終周回は追い込みました。具体的な数字で言えば380Wほどで、最後の坂では420Wほど出ていた。スポーツに必ずは無いけれど、今日は勝ちがマストでした。」と振り返る。

30秒差で破れた佐野はこれが3回目の2位。しかし表情は明るく、「3回目の2位は非常に悔しいけれど、去年が絶不調だったので、今ここまで走れたことが素直に嬉しい。」と言う。高い独走力は日曜日のロードレースでも大いに武器になるだろう。

今回のTTでは別府はもちろんのこと、佐野や山本らの力量が明らかとなった。特に別府は単騎であっても2011年のように展開を自ら作っていけるはずだ。本人は喜びもそこそこに「まずは一つ目ですから。フィーリング的には良い感じて踏めているので、日曜日が楽しみです。」と、その視線は既に日曜日を見据えている。



全日本選手権タイムトライアル2014
男子エリート結果 40.2km
1位 別府史之(トレックファクトリーレーシング)
2位 佐野淳哉(那須ブラーゼン)
3位 山本元喜(ヴィーニファンティーニNIPPOデローザ)
4位 阿部嵩之(宇都宮ブリッツェン)
5位 岡篤志(EQA U23)
6位 大場政登志(Cプロジェクト)
7位 井上和郎(ブリヂストンアンカー)
8位 松崎祥久(GRUPPO ACQUA TAMA)
9位 土井雪広(チーム右京)
10位 椿大志(ブリヂストンアンカー)
53分01秒82(Ave.45.48km/h)
53分31秒22
55分11秒72
55分35秒91
56分34秒33
56分36秒45
56分44秒51
56分50秒52
56分03秒83
56分05秒11


text:So.Isobe
photo:Makoto.Ayano,Hideaki.Takagi,So.Isobe