2014/06/20(金) - 14:32
5月28日からカザフスタンで行なわれたアジア選手権ロード。どのクラス・種目でも開催国カザフスタンの強さが際立った。男女ジュニア選手たちはいかに戦ったのか。レースに帯同したJCFロード部会の柿木孝之氏によるレポートをお届けする。
ジュニア男子ロード
2014年のアジア選手権ジュニアタイムトライアル、ロードレースが例年より遅い5月28日からカザフスタンのカラカンダで行なわれた。コースは全カテゴリー同じ1周15.7km(T.T.は15km)のほぼ平坦の周回コースで、Uターン箇所が3箇所ある。風が強く、風向きも頻繁に変わるため、コースプロフィール以上に厳しいレースとなることが現地での練習の中でも感じた。
男子ジュニアロードはこのコースを8周回125.6kmで争われた。日本からは孫崎大樹、草場啓吾(ともに北桑田高)、松本祐典(明治大)、石上優大(横浜高)の4名が参加した。今大会ではカザフスタンが4月にクロアチアで開催されたネイションズカップの走りからも最大のライバルとなる。カザフスタンは例年以上に強力なチームで、さらに自国開催ということもありいつも以上に気合を入れてこの大会に臨んできた。
レース前のミーティングでは、スタート直後からカザフスタンの攻撃が必ずあること、カザフスタンの複数名の攻撃には複数名で対応すること、風が強いコースであり特に横風区間ではチームでまとまって動くこと、集団スプリントの際にはスプリント力に長ける孫崎のために他の選手が走ることを確認する。平坦コースであるが、風が強いこととカザフスタンの攻撃的な走りを考えると、レースは非常に厳しいものになることが予想された。
気温が7℃ほどであるが風があるので体感温度はさらに低く、選手も震える寒さの中でスタートする。スタートと同時にカザフスタンが予想通りチームでまとまって複数名で攻撃を開始。この日は風が強く、横風となる区間もあり、チーム力のあるチームにとっては攻撃のかけやすい状況である。
1〜2周目にはカザフスタンの攻撃が掛かるが、モンゴルと日本が追走をかけて吸収。チームとして動けているのはカザフスタンと日本とモンゴルだけであり、チームに強力な選手がいてもチームとして動けない国はこの段階ですでに消耗していることが窺える。カザフスタンが前半からの攻撃で少し疲れが見えてきたかと思いきや、5周目の向かい風から横風区間に変わったところで複数名で攻撃。
この段階で応戦できるチームは日本チームしかいないが複数名で対応できず、日本の選手が追った後ろからさらにカウンターをかけられ4名のカザフスタンの選手だけの逃げが形成。日本チーム4名がまとまるのにも時間がかかり、アタックから5kmの間に20秒差をつけられてしまった。
モンゴル、チャイニーズタイペイ、イランが2名ずつ集団に揃えているのでこれらのチームと共同で追わねば厳しい状況の中、前半に強さをみせたモンゴルに協力を求めるが、前半の動きで消耗しており追う脚は残っていない。日本チームだけで追わねばならず、タイム差は周回毎に大きくなり、7周目の段階ですでに2分以上の差をつけられる。
メイン集団は日本チームだけが牽いており、他のチームの協力は得られないので日本チームの石上、松本、草場だけで抜け出す形をとるが、他のチームは本当に脚が残っていなかったようで対応できない。カザフスタンの4名を追って日本の3選手が追いかける形となる。このままタイム差は縮まることなくカザフスタンの選手が1位から4位までを独占する形でゴールする。そこから3分遅れて松本、草場、石上が5位から7位でゴールし、集団スプリントでは孫崎が2番手でゴールした。4位までが獲得することが出来るUCIジュニアネイションズポイントをカザフスタンに全て持っていかれてしまった。
カザフスタンが前半から攻撃をかけ続けた末、アジアの国々に力の差を見せつける走り。昨年のアジア選手権では日本のほかにウズベキスタン、マレーシア、ベトナムがカザフスタンに対抗する意思と力をレース後半までは見せていたが、今年は強風の影響もありチームでまとまって戦えない国は自国のエースが最初の50kmまででカザフスタンの攻撃で大きく消耗する状況となった。
日本の4選手は4月のネイションズカップでカザフスタンの強力な走りを見せつけられていたが、今回のアジア選手権ではほぼカザフスタン対日本との戦いとなり、さらに大きな力差があるのを認めざるを得ないレースとなった。力だけではなく、チームとしてのまとまりも彼らが抜きんでていた。
カザフスタンのジュニア代表チームはここ数年の間でロードチームの予算が増えたことでサポート体制が変わり、世界レベルで勝負できる国になりつつある。ジュニアの段階でプロ育成チームと同じ体制を確立するナショナルチームと戦うのは日本のジュニア選手の置かれている現在の環境を考えると厳しい面もあるが、彼らと対等な勝負が出来なければネイションズカップや世界選手権では結果を残すのは難しい。
今回の大敗に、レース後の選手からは今度戦うときには絶対に彼らには負けたくないという強い意志が感じられる。ジュニアのうちに世界で戦う選手らと力勝負することで、練習、レースに対しての意識が変わり、個の能力を向上させる必要性を感じるとともに、チームで戦うことの重要性を強く認識することが出来る。今回の負けを挽回するチャンスはまだまだジュニアのレースだけでもドイツ、カナダでのネイションズカップ、そして9月の世界選手権と多く残されている。
ジュニア男子ロード
1位 SHTEIN Grigoriy(カザフスタン) 3時間12分6秒
2位 GIDICH Yevgeniy(カザフスタン) 同タイム
3位 VOLOSHIN Alexey(カザフスタン)同タイム
5位 松本祐典 3分5秒差
6位 草場啓吾 同タイム
7位 石上優大 同タイム
9位 孫崎大樹 7分3秒差
ジュニア女子ロード
4人が出場したジュニア女子個人ロードレース。優勝はカザフスタン、日本は2位3位4位6位と男子に似た順位に。ここでもカザフスタンが強さを見せたが、レース内容は男子と違い、日本チームに有利な状況になっていた。これは日本チーム個人の力が強かったためだが優勝はできなかった。
ジュニア女子ロードには坂口聖香(日本体育大)、中井彩子(日向高)、伊藤真生(東北高)、梶原悠未(筑波大付属坂戸高)の4名が参加した。レースは15.7kmの周回を5周回する78.5km。坂口は昨年のアジア選手権では単騎で戦い2位に入っている。今年は日本チームとして力のある坂口と梶原が結果を残す役割を担い、伊藤、中井がアシストとして走り、日本チームでの金メダル獲得を狙った。
ジュニア男子ロードの行なわれた午前中より風は収まったが、それでも強い風が時折吹く。弱いチーム、選手は風の影響で何もせずとも集団に残れないので、中盤までは日本チームからは積極的な攻撃をかけず、他のチームの横風区間での攻撃にはチームでまとまって対応することと、風の向きを常に意識して集団内で位置取りすることを確認する。
日本チームの攻撃はラスト30kmから20km地点で、中井、伊藤が集団に揺さぶりアタックをかけてから、追い風区間手前からの梶原のアタックで集団を分断することにした。追撃には必ず坂口が入るように注意し、梶原はその後もアタックを繰り返し、逃げ切りを狙う。
梶原の逃げ切りが無理でも坂口はそれにより勝つチャンスが大きくなる。そしてスプリント力はないが独走力はある梶原はゴールスプリントでは期待できないので、坂口の先導をしないで自分のタイミングで攻撃をかけるようにした。ジュニアカテゴリーで走れる期間は2年しかなく、毎年どの国も選手が大きく入れ替わるため強い選手が分からないが、T.T.で圧勝したカザフスタンのYURAITIS Yekaterinaの攻撃には十分注意しないといけないこと等をミーティングで事前に確認する。
レースはスタートから単発アタックがかかるがチームでの動きではなく、カザフスタンチームが先頭を固める形で非常にゆっくりとしたペースでレースが流れて行く。横風区間でカザフスタンがチームで動くが、反対車線まで風下を使い集団が繋がり、ダメージを与える走りにはならない。
4周目の向かい風区間で坂口が2人での攻撃が有効と判断して、梶原と一緒に攻撃をすることにする。その前に伊藤が攻撃をしかけて集団を振っておいて、そのカウンターで梶原が攻撃してそれに坂口がついていく形での日本チームの攻撃が決まる。Uターン後に風向きが追い風となるのでここで集団との差が広がる。
集団からはカザフスタン2名が抜け出し追撃する。追い風から横風に変わった区間で梶原から坂口が遅れるが、追撃のカザフスタン2名と坂口は合流する。梶原の攻撃が強力で、それを追うのにカザフスタンの2名は脚を使う。向かい風区間で追走の3名が梶原に合流するが、追走に脚を使ったカザフスタンの選手1名が力尽きて遅れていく。
向かい風区間と横風区間で集団の動きは完全に止まり、この段階で3名の逃げ切りがほぼ確定する。梶原には予定通り攻撃するように伝える。その後も梶原、坂口に交互の攻撃を強く促すが動きを見せず、逆に牽制のような走りとなってしまい、チームとして有利な状況を全くいかせない。カザフスタンの選手にとっては非常にありがたい状況を作ってしまう。結局3名でのスプリント勝負となり、カザフスタンが先着して梶原が2位、坂口が3位になった。
坂口は指示が聞こえていたが、3名でのスプリント勝負ということのみを考えてしまい、日本チームが勝つ可能性が低くなる選択をしてしまった。例え坂口がスプリントに絶対の自信があったとしても、相手のスプリント能力が計れない中で、逃げの力を残している梶原に攻撃をさせずにゴールまでいってしまったのは良い選択ではなかった。
梶原の攻撃でカザフスタンの選手は脚を使わされることになり、坂口のスプリントでの勝利の可能性はより高くなる。また交互にかけることで、1名での逃げ切り、またはカザフスタンの選手が力尽きたところで合流すれば2名での逃げになり、日本チームで1,2位を獲得する可能性は非常に高かった。結局梶原は攻撃する意思と脚を残したままレースを終えた。勝つための展開を日本チームで作りながら、一番肝心なところでの適切な判断が出来なかったことは今後の大きな課題となった。
伊藤、中井は逃げが決まるまでチームで求められた走りをしっかりこなせなかったとレース後は悔しがっていたが、可能な限り集団の動きに対応して、梶原、坂口が逃げる前のお膳立てと、集団のコントロールを果たした。ゴールでは中井が集団から抜け出すほどのスプリント力を見せて集団の頭を獲り4位、梶原と坂口の逃げのきっかけの動きを作った伊藤も集団の3番手の6位となった。
日本のジュニアの女子レースでは展開が少なく、戦い方を学べる機会は多くはない。世界で戦うためには個人の能力をあげることはもちろん必須であるが、チームで戦うための走り方も学んでいかねばならない。
チームの戦い方の基本方針について共通の認識を持って選手が動けるか否かがレースの成績に直結する。そしてレース状況を把握していかに有利にレースを運び、それを結果に結びつけるか、ただ力勝負するだけではなく、頭をしっかり使う習慣も身につけていってもらいたい。
ジュニア女子ロード
1位 GENELEVA Nadezhda (カザフスタン) 2時間17分38秒
2位 梶原悠未(日本)同タイム
3位 坂口聖香(日本)同タイム
4位 中井彩子(日本)2分28秒差
6位 伊藤真生(日本)同タイム
JCFロード部会 柿木孝之
ジュニア男子ロード
2014年のアジア選手権ジュニアタイムトライアル、ロードレースが例年より遅い5月28日からカザフスタンのカラカンダで行なわれた。コースは全カテゴリー同じ1周15.7km(T.T.は15km)のほぼ平坦の周回コースで、Uターン箇所が3箇所ある。風が強く、風向きも頻繁に変わるため、コースプロフィール以上に厳しいレースとなることが現地での練習の中でも感じた。
男子ジュニアロードはこのコースを8周回125.6kmで争われた。日本からは孫崎大樹、草場啓吾(ともに北桑田高)、松本祐典(明治大)、石上優大(横浜高)の4名が参加した。今大会ではカザフスタンが4月にクロアチアで開催されたネイションズカップの走りからも最大のライバルとなる。カザフスタンは例年以上に強力なチームで、さらに自国開催ということもありいつも以上に気合を入れてこの大会に臨んできた。
レース前のミーティングでは、スタート直後からカザフスタンの攻撃が必ずあること、カザフスタンの複数名の攻撃には複数名で対応すること、風が強いコースであり特に横風区間ではチームでまとまって動くこと、集団スプリントの際にはスプリント力に長ける孫崎のために他の選手が走ることを確認する。平坦コースであるが、風が強いこととカザフスタンの攻撃的な走りを考えると、レースは非常に厳しいものになることが予想された。
気温が7℃ほどであるが風があるので体感温度はさらに低く、選手も震える寒さの中でスタートする。スタートと同時にカザフスタンが予想通りチームでまとまって複数名で攻撃を開始。この日は風が強く、横風となる区間もあり、チーム力のあるチームにとっては攻撃のかけやすい状況である。
1〜2周目にはカザフスタンの攻撃が掛かるが、モンゴルと日本が追走をかけて吸収。チームとして動けているのはカザフスタンと日本とモンゴルだけであり、チームに強力な選手がいてもチームとして動けない国はこの段階ですでに消耗していることが窺える。カザフスタンが前半からの攻撃で少し疲れが見えてきたかと思いきや、5周目の向かい風から横風区間に変わったところで複数名で攻撃。
この段階で応戦できるチームは日本チームしかいないが複数名で対応できず、日本の選手が追った後ろからさらにカウンターをかけられ4名のカザフスタンの選手だけの逃げが形成。日本チーム4名がまとまるのにも時間がかかり、アタックから5kmの間に20秒差をつけられてしまった。
モンゴル、チャイニーズタイペイ、イランが2名ずつ集団に揃えているのでこれらのチームと共同で追わねば厳しい状況の中、前半に強さをみせたモンゴルに協力を求めるが、前半の動きで消耗しており追う脚は残っていない。日本チームだけで追わねばならず、タイム差は周回毎に大きくなり、7周目の段階ですでに2分以上の差をつけられる。
メイン集団は日本チームだけが牽いており、他のチームの協力は得られないので日本チームの石上、松本、草場だけで抜け出す形をとるが、他のチームは本当に脚が残っていなかったようで対応できない。カザフスタンの4名を追って日本の3選手が追いかける形となる。このままタイム差は縮まることなくカザフスタンの選手が1位から4位までを独占する形でゴールする。そこから3分遅れて松本、草場、石上が5位から7位でゴールし、集団スプリントでは孫崎が2番手でゴールした。4位までが獲得することが出来るUCIジュニアネイションズポイントをカザフスタンに全て持っていかれてしまった。
カザフスタンが前半から攻撃をかけ続けた末、アジアの国々に力の差を見せつける走り。昨年のアジア選手権では日本のほかにウズベキスタン、マレーシア、ベトナムがカザフスタンに対抗する意思と力をレース後半までは見せていたが、今年は強風の影響もありチームでまとまって戦えない国は自国のエースが最初の50kmまででカザフスタンの攻撃で大きく消耗する状況となった。
日本の4選手は4月のネイションズカップでカザフスタンの強力な走りを見せつけられていたが、今回のアジア選手権ではほぼカザフスタン対日本との戦いとなり、さらに大きな力差があるのを認めざるを得ないレースとなった。力だけではなく、チームとしてのまとまりも彼らが抜きんでていた。
カザフスタンのジュニア代表チームはここ数年の間でロードチームの予算が増えたことでサポート体制が変わり、世界レベルで勝負できる国になりつつある。ジュニアの段階でプロ育成チームと同じ体制を確立するナショナルチームと戦うのは日本のジュニア選手の置かれている現在の環境を考えると厳しい面もあるが、彼らと対等な勝負が出来なければネイションズカップや世界選手権では結果を残すのは難しい。
今回の大敗に、レース後の選手からは今度戦うときには絶対に彼らには負けたくないという強い意志が感じられる。ジュニアのうちに世界で戦う選手らと力勝負することで、練習、レースに対しての意識が変わり、個の能力を向上させる必要性を感じるとともに、チームで戦うことの重要性を強く認識することが出来る。今回の負けを挽回するチャンスはまだまだジュニアのレースだけでもドイツ、カナダでのネイションズカップ、そして9月の世界選手権と多く残されている。
ジュニア男子ロード
1位 SHTEIN Grigoriy(カザフスタン) 3時間12分6秒
2位 GIDICH Yevgeniy(カザフスタン) 同タイム
3位 VOLOSHIN Alexey(カザフスタン)同タイム
5位 松本祐典 3分5秒差
6位 草場啓吾 同タイム
7位 石上優大 同タイム
9位 孫崎大樹 7分3秒差
ジュニア女子ロード
4人が出場したジュニア女子個人ロードレース。優勝はカザフスタン、日本は2位3位4位6位と男子に似た順位に。ここでもカザフスタンが強さを見せたが、レース内容は男子と違い、日本チームに有利な状況になっていた。これは日本チーム個人の力が強かったためだが優勝はできなかった。
ジュニア女子ロードには坂口聖香(日本体育大)、中井彩子(日向高)、伊藤真生(東北高)、梶原悠未(筑波大付属坂戸高)の4名が参加した。レースは15.7kmの周回を5周回する78.5km。坂口は昨年のアジア選手権では単騎で戦い2位に入っている。今年は日本チームとして力のある坂口と梶原が結果を残す役割を担い、伊藤、中井がアシストとして走り、日本チームでの金メダル獲得を狙った。
ジュニア男子ロードの行なわれた午前中より風は収まったが、それでも強い風が時折吹く。弱いチーム、選手は風の影響で何もせずとも集団に残れないので、中盤までは日本チームからは積極的な攻撃をかけず、他のチームの横風区間での攻撃にはチームでまとまって対応することと、風の向きを常に意識して集団内で位置取りすることを確認する。
日本チームの攻撃はラスト30kmから20km地点で、中井、伊藤が集団に揺さぶりアタックをかけてから、追い風区間手前からの梶原のアタックで集団を分断することにした。追撃には必ず坂口が入るように注意し、梶原はその後もアタックを繰り返し、逃げ切りを狙う。
梶原の逃げ切りが無理でも坂口はそれにより勝つチャンスが大きくなる。そしてスプリント力はないが独走力はある梶原はゴールスプリントでは期待できないので、坂口の先導をしないで自分のタイミングで攻撃をかけるようにした。ジュニアカテゴリーで走れる期間は2年しかなく、毎年どの国も選手が大きく入れ替わるため強い選手が分からないが、T.T.で圧勝したカザフスタンのYURAITIS Yekaterinaの攻撃には十分注意しないといけないこと等をミーティングで事前に確認する。
レースはスタートから単発アタックがかかるがチームでの動きではなく、カザフスタンチームが先頭を固める形で非常にゆっくりとしたペースでレースが流れて行く。横風区間でカザフスタンがチームで動くが、反対車線まで風下を使い集団が繋がり、ダメージを与える走りにはならない。
4周目の向かい風区間で坂口が2人での攻撃が有効と判断して、梶原と一緒に攻撃をすることにする。その前に伊藤が攻撃をしかけて集団を振っておいて、そのカウンターで梶原が攻撃してそれに坂口がついていく形での日本チームの攻撃が決まる。Uターン後に風向きが追い風となるのでここで集団との差が広がる。
集団からはカザフスタン2名が抜け出し追撃する。追い風から横風に変わった区間で梶原から坂口が遅れるが、追撃のカザフスタン2名と坂口は合流する。梶原の攻撃が強力で、それを追うのにカザフスタンの2名は脚を使う。向かい風区間で追走の3名が梶原に合流するが、追走に脚を使ったカザフスタンの選手1名が力尽きて遅れていく。
向かい風区間と横風区間で集団の動きは完全に止まり、この段階で3名の逃げ切りがほぼ確定する。梶原には予定通り攻撃するように伝える。その後も梶原、坂口に交互の攻撃を強く促すが動きを見せず、逆に牽制のような走りとなってしまい、チームとして有利な状況を全くいかせない。カザフスタンの選手にとっては非常にありがたい状況を作ってしまう。結局3名でのスプリント勝負となり、カザフスタンが先着して梶原が2位、坂口が3位になった。
坂口は指示が聞こえていたが、3名でのスプリント勝負ということのみを考えてしまい、日本チームが勝つ可能性が低くなる選択をしてしまった。例え坂口がスプリントに絶対の自信があったとしても、相手のスプリント能力が計れない中で、逃げの力を残している梶原に攻撃をさせずにゴールまでいってしまったのは良い選択ではなかった。
梶原の攻撃でカザフスタンの選手は脚を使わされることになり、坂口のスプリントでの勝利の可能性はより高くなる。また交互にかけることで、1名での逃げ切り、またはカザフスタンの選手が力尽きたところで合流すれば2名での逃げになり、日本チームで1,2位を獲得する可能性は非常に高かった。結局梶原は攻撃する意思と脚を残したままレースを終えた。勝つための展開を日本チームで作りながら、一番肝心なところでの適切な判断が出来なかったことは今後の大きな課題となった。
伊藤、中井は逃げが決まるまでチームで求められた走りをしっかりこなせなかったとレース後は悔しがっていたが、可能な限り集団の動きに対応して、梶原、坂口が逃げる前のお膳立てと、集団のコントロールを果たした。ゴールでは中井が集団から抜け出すほどのスプリント力を見せて集団の頭を獲り4位、梶原と坂口の逃げのきっかけの動きを作った伊藤も集団の3番手の6位となった。
日本のジュニアの女子レースでは展開が少なく、戦い方を学べる機会は多くはない。世界で戦うためには個人の能力をあげることはもちろん必須であるが、チームで戦うための走り方も学んでいかねばならない。
チームの戦い方の基本方針について共通の認識を持って選手が動けるか否かがレースの成績に直結する。そしてレース状況を把握していかに有利にレースを運び、それを結果に結びつけるか、ただ力勝負するだけではなく、頭をしっかり使う習慣も身につけていってもらいたい。
ジュニア女子ロード
1位 GENELEVA Nadezhda (カザフスタン) 2時間17分38秒
2位 梶原悠未(日本)同タイム
3位 坂口聖香(日本)同タイム
4位 中井彩子(日本)2分28秒差
6位 伊藤真生(日本)同タイム
JCFロード部会 柿木孝之
Amazon.co.jp