ツール・ド・フランスや世界選手権など様々なビッグレースで勝利に貢献してきたピナレロDOGMAがフルモデルチェンジを果たし「DOGMA F8」が登場した。実績に甘んじること無く、素材やONDAデザインなど様々なテクノロジーを刷新した革新的な新型フラッグシップモデルをインプレッションする。



ピナレロ DOGMA F8ピナレロ DOGMA F8 (c)MakotoAYANO/cyclowired.jp
2002年に発表以来、現在までピナレロのフラッグシップとして君臨してきた「DOGMA(ドグマ)」。マグネシウム合金製フレームに湾曲したONDAフォーク&シートステーを組み合わせた第1世代、左右のバランスを突き詰めたアシンメトリックデザインや東レが独占供給するカーボンを採用した第2世代...と、12年の間に5回のモデルチェンジを行い、革新的なテクノロジーを取り込みながらブラッシュアップを続け、数多くのトップレーサーを魅了してきた。

マグネシウムDOGMAに乗ったアレッサンドロ・ペタッキ(イタリア)が2004年のジロ・デ・イタリアで一大会では最多となる9回のステージ優勝を達成。第2世代の最終版「DOGMA 65.1 THINK2」は、昨年のツール・ド・フランスでクリス・フルーム(イギリス)による総合優勝とナイロ・キンタナ(コロンビア)の新人賞+山岳賞獲得、そしてルイ・コスタ(ポルトガル)による世界選手権制覇という目覚ましい活躍をサポートしてきた。

だが、ピナレロは実績に甘んじること無く進化を押し進めた。そして、2015年モデルとして誕生したのが「DOGMA F8」である。従来より蜜月の協力関係を築いてきた「東レ」やピナレロのバイクを使用するUCIプロチームの「チームスカイ」に加え、イギリスの伝統ある自動車メーカー「ジャガー」との共同開発を実施。近年のトレンドとなっているエアロフォルムを纏ったオールラウンドバイクに生まれ変わっている。

ホイールのフォークブレードのクリアランスを大きく取ることで空力の向上を図るホイールのフォークブレードのクリアランスを大きく取ることで空力の向上を図る 従来のONDAより形状を一新した「ONDA F8」フロントフォーク従来のONDAより形状を一新した「ONDA F8」フロントフォーク 卵形のセクションの背面を平らにし乱気流を排除する真空状態を生み出すFlatbackデザイン卵形のセクションの背面を平らにし乱気流を排除する真空状態を生み出すFlatbackデザイン


従来からの大きな変更点の1つが新たに「ONDA F8」と名付けられONDAフォーク&シートステーだ。フォークは4つの急激な湾曲を持つ従来品に対して、F8はTTバイクのBOLIDEに倣い前方へとゆるやかに湾曲するブレード形状となった。シートステーからも急激な湾曲は姿を消し、緩やかにカーブするデザインへと変更された。同時にシートチューブとの接点を下方へ移動。そして、前後共に前方から見た際の車輪とのクリアランスを大きく取ることで様々な方向から吹く風の抵抗を低減している。

エアロダイナミクスを向上させる上で重要なファクターの1つであるチューブ形状の設計にはCFD(数値流体力学)を用い、300回に及ぶコンピューターシミュレーションから算出された70ものデザイン案のそれぞれに対して、風の迎角を変えながら再度シミュレーションを行い精査。その結果生み出されたのが、UCIのレギュレーションに準拠しながらも空気抵抗の低減を追求したチューブの断面形状「Flatback」だ。

このFlatbackとは卵形断面の背面を平らにすることにより真空状態を生み出し、結果気流を整えるデザインのことで、ほぼ各部分全てに採用されている。ただしヘッドチューブのみ前後に長い、Flatbackとは異なる形状とされ、ダウンチューブとのインテグレーテッドデザインはDOGMA 65.1から踏襲している。

前後に長いヘッドチューブ。下部の突起はブレーキキャリパーによる空気の乱れを整える前後に長いヘッドチューブ。下部の突起はブレーキキャリパーによる空気の乱れを整える ボトルによる空気の乱れを整えるため、ダウンチューブは僅かに断面形状を変化させているボトルによる空気の乱れを整えるため、ダウンチューブは僅かに断面形状を変化させている

ダウンチューブの左側にはDOGMAの文字が記されるダウンチューブの左側にはDOGMAの文字が記される 左チェーンステーに配されたJAGUARのロゴ左チェーンステーに配されたJAGUARのロゴ


パーツを装着した状態でのエアロダイナミクスを設計に反映させたこともトピックスだ。フロントブレーキによる空気の乱れを低減するため下部が前方へと張り出したヘッドチューブや、前方から見た際にリアブレーキが見えないように設計されたシートステー、ボトルによる空気の乱れに配慮したダウンチューブ形状など、どの作り込みも非常に緻密だ。シートポストクランプを内蔵式とするなどの細やかなアップデートと併せて、従来モデルに対してエアロダイナミクスを47%向上させることに成功したという。

素材には最新鋭の航空機にも使用されているという東レの「T1100 1K」 カーボンファイバーを採用。これは優れた比剛性・比強度を持つことが特徴で、通常のDOGMA 65.1に対して、寸法や強度はそのままに素材を「T1100 1K」に変更することで80g軽く仕上がる。DOGMA F8ではフレーム単体で860g(54サイズ)を実現した。

トップチューブはゆるやかな湾曲を持つトップチューブはゆるやかな湾曲を持つ 東レの最新カーボン「T1100 1K」を素材に採用する東レの最新カーボン「T1100 1K」を素材に採用する


そして、ピナレロの全バイクに採用される「アシンメトリックデザイン」も、16%の左右バランス向上とさらに進化。フレーム設計やFlatbackデザインのチューブ形状、カーボン素材などを突き詰め、DOGMA 65.1との比較で12%の高剛性化、120gの軽量化を生み出している。

その他の詳細な仕様としては、ステム下に取り付ける電動コンポーネントのジャンクションとフレームの干渉を防ぐためヘッドチューブ上部が段付きとなり、ドロップアウトは前後ともにカーボン化。BBについては信頼性を高めるための「最高の解決策」としてイタリアン規格を継続。ITA規格のBBはピナレロ全ての2015年モデルに導入されている。

販売パッケージはフレームセットのみで、サイズは13種類と豊富だ。ジオメトリーはほぼ従来モデルを踏襲し、コンポーネントは電動と機械式の両タイプに対応するTHINK2。カラーバリエーションも従来どおり豊富に、チームスカイモデルを含む10色が揃う。なお、今回のインプレッションバイクはコンポーネントにシマノ9070系デュラエースDi2をアッセンブル。足回りはフルクラムRACING ZEROにヴィットリアCORSA EVO CXの25Cという組み合わせだ。

アシンメトリックデザインを押し進めたリアトライアングルアシンメトリックデザインを押し進めたリアトライアングル 前から見た際にブレーキキャリパーを覆うように設計されたリアシートステーの集合部付近前から見た際にブレーキキャリパーを覆うように設計されたリアシートステーの集合部付近 専用設計のエアロシートピラーを採用。クランプは内蔵式に専用設計のエアロシートピラーを採用。クランプは内蔵式に


これまでとは大きく異なるフォルムで登場したDOGMA F8。この新世代のピナレロをテストするのは自らも歴代のDOGMAに乗り続け、DOGMAと共にツール・ド・おきなわを制した経験を持つ鈴木雅彦氏と、前作DOGMA 65.1登場時にもCWでテストを行った二戸康寛氏。早速インプレッションに移ろう。



ーインプレッション

「DOGMAらしさを残しつつ、乗りこなしやすくなっている」鈴木雅彦(サイクルショップDADDY)

まず、走り出す前にハンドル周りに力を加えて剛性感をチェックしました。数字上のデータでは剛性は上がっているとのことでしたが、明らかに今までのバイクより"しなり"があります。そのため、方向性を変えてきたバイクという印象を持ちインプレッションに臨みましたが、実際に走ると従来のDOGMAらしさを感じられるバイクでした。

最新のカーボンを使用することで積層の薄いカーボンでも数値的には高剛性に仕上げられているのだと思います。その積層の薄さが従来のモデルより"しなる"理由でしょう。特にダンシング時に、前後が絶妙なタイミングで倒れてくれるので、パワーを掛けやすかったです。実際に触れてみるまでは硬いバイクだろうと予想していたのですが、いい意味で裏切られましたね。

「DOGMAらしさを残しつつ、乗りこなしやすくなっている」鈴木雅彦(サイクルショップDADDY)「DOGMAらしさを残しつつ、乗りこなしやすくなっている」鈴木雅彦(サイクルショップDADDY) 素材が持つ高い剛性はペダリングパワーのロスを最小限に抑えてくれていますね。トン数が小さいカーボンで積層を重ねて高い剛性を出しているバイクでは、軽いギアを回した時に力を食われてしまいますが、このバイクはそれが全く感じられません。

さらに、重いギアでもたわまずにしっかりと力を受け止めてくれます。前のバイクより1枚余分に重いギアを踏み込めるような印象があるので、ロングスプリントでも途中で足がなくなることも少ないでしょう。早くレースで使ってみたいですね。

DOGMAの特徴であったONDAフォークに関しては、兄弟ブランドであるオペラのSUPER LEONARDOというバイクの末期モデルに近い形状になっていますね。ニュートラルなステアリングで、ハンドルを倒しこんでもフォークが潰れることなく、上手くバイクを支えていました。また、下りでのスピードの伸びが良かったです。意識してスピードを上げてみたところ、風切り音が小さくスムーズに空気が流れていると感じられました。

ジオメトリーはDOGMAらしくヘッド角が寝ていますが、それによるバイクのクセは感じられませんでした。また、BBはスレッドタイプを継続しており、メカニックやライダーの視点ではうれしいニュースですね。ピナレロとしては勝負の道具と考え、メンテナンス性や信頼性を重要視しているのでしょう。

バイクのデザインについては、今まであったピナレロらしいセクシーさは影を潜め、工業製品のような佇まいとなりましたね。自動車で例えるならば日本車らしいデザインですが、性能自体は至れり尽くせりといった所でしょうか。魅力的なフォルムという点では従来モデルに分がありましたが、性能を突き詰めるためこのような形状になるのは妥当でしょう。

しかし、コンピューター計算を行っても100点満点のバイクというのは絶対にありません。最終的には乗ってどう感じるかが車体の良し悪しを決めます。実際に乗ってみた中で、出てくる文句が少ないバイクが良いバイクということなのでしょう。個人的にはDOGMA F8を走る道具として考れば、何の不満もありませんでした。

このバイクはどのようなホイールを組み合わせても気持ちよく乗ることができますね。シマノ鈴鹿やツール・ド・おきなわ50kmレースなどではディープホイールとの組み合わせて、グランフォンドや距離が長いレースではアルミ製のロープロファイルホイールを履かせると性能を引き出せるでしょう。

このバイクは人によってその価値感が大きく変わってきます。前モデルはレーシングバイクとして乗りこなすには少し苦労しましたが、新型については中級者ぐらいから乗ってもその性能を引き出すことができる。間口が広いバイクです。


「従来モデルとは全く異なるマイルドな乗り味のレースバイク」二戸康寛(東京ヴェントス監督/Punto Ventos)

従来モデルのDOGMA 65.1とは乗り味が全く異なる、マイルドな味付けのバイクですね。DOGMA 65.1は高い剛性を備えていてカドが立っているというイメージでしたが、今回のDOGMA F8全く新しい乗りやすいテイストを醸し出しています。

一方で、無駄が少なくスムーズなペダリングに寄与するDOGMA元来の高い剛性感も感じられ、ペダリングパワーを効率よく伝達しているのは、ピナレロの特徴的な左右非対称の設計が効いているのでしょう。高回転なペダリングになればなるほど、気持ちよさが増してきます。また前モデルでも感じることの出来た、力をかけた際のトルクフルな加速感も兼ね備えてます。

登りについては、軽量級のライダーならばハイケイデンスを維持すると、パワー伝達のスムーズさと相まって軽快に走ることができます。一方、重量級のライダーがトルクフルなペダリングをしても、しなりすぎることは無いため一定ペースを維持しやすいはず。下りではDOGMAらしいしっかりとした造りが活きており、高速域でも安定感が損なわれることはありませんでした。

「従来モデルとは全く異なるマイルドな乗り味のレースバイク」二戸康寛(東京ヴェントス監督/Punto Ventos)「従来モデルとは全く異なるマイルドな乗り味のレースバイク」二戸康寛(東京ヴェントス監督/Punto Ventos)
ハンドリングはニュートラルで、スムーズに操作することができます。フレーム形状を大幅に変更しながらも、ハンドリングは現状維持を目標としているとのことでしたが、軽快感が増しているように感じました。また、アンダーやオーバーステアが出ないため、狙った通りのラインをトレースすることができます。

振動吸収に関しては、形状ではなくカーボン素材が効いているのでしょう。これはこれまでのピナレロのバイクにも共通しているフィーリングですね。ザラザラとしたアスファルトの細かい振動はカットをしてくれますが、大きなギャップなどからくる突き上げは素直に伝えてきます。

やはり、ベンドが緩やかになったONDAフォークは注目。ブレード間が拡幅しながらも、厚みを抑えることでエアロダイナミクスを高めているのでしょう。また、中央部が広げたことのよる剛性面での影響はほとんどありません。空力性能については顕著な効果を感じませんでしたが、高速かつ長時間になれば大きな差が出てくるのでしょう。

組み合わせるホイールについては、角がとれて乗り心地が良くなった点を活かすならソフトなカーボンホイールを、レースなどで必要な機敏性を求めるならば高剛性のアルミホイールが良いでしょう。バイクのクセがない分だけ、乗り手次第でどんなタイプの自転車にも変えられる楽しみがありますね。

最近のフレームは剛性一辺倒ではなく乗り心地の良さも同時に追求してきています。このモデルはその中でも非常に完成度が高く、価格も納得ができます。レース志向の人はもちろん、安定感があり乗りやすい性能から、高級車を楽しみたい初心者やロングライド派にも良いかもしれません。所有欲を満たすことのできるラグジュアリーなプロスペックレーシングバイクです。

ピナレロ DOGMA F8ピナレロ DOGMA F8 (c)MakotoAYANO/cyclowired.jp
ピナレロ DOGMA F8
カラー:950/ネイキッドレッド(マットフィニッシュ)他、計9カラー
付属品:フルカーボン専用シートポスト
サイズ: 42、44、46.5、47、50、51.5、53、54、55、56、57.5、59.5、62(CC)
マテリアル:T1100 1KカーボンTORAYCA NanoalloyTM 
フォーク:ONDA F8 T1100 1KカーボンTORAYCA NanoalloyTM 1”1/8-1”1/2
価格:648,000円(税抜)



インプレライダーのプロフィール

鈴木雅彦(サイクルショップDADDY)鈴木雅彦(サイクルショップDADDY) 鈴木雅彦(サイクルショップDADDY)

岐阜県瑞浪市にあるロードバイク専門プロショップ「サイクルショップDADDY」店主。20年間に及ぶ競輪選手としての経験、機材やフィッティングに対するこだわりから特に実走派ライダーからの定評が高い。現在でも積極的にレースに参加しツール・ド・おきなわ市民50kmで2007、09、10年と3度の優勝を誇る。一方で、グランフォンド東濃の実行委員長を努めるなどサイクルスポーツの普及活動にも力を入れている。

CWレコメンドショップ
サイクルショップDADDY


二戸康寛(東京ヴェントス監督/Punto Ventos)二戸康寛(東京ヴェントス監督/Punto Ventos) 二戸康寛(東京ヴェントス監督/Punto Ventos)
高校時代から自転車競技を始め、卒業後は日本鋪道レーシングチーム(現 TEAM NIPPO)に5年間所属しツール・ド・北海道などで活躍。引退後は13年間なるしまフレンドに勤務し、現在は東京都立川市を拠点とする地域密着型ロードレースチーム「東京ヴェントス」を監督として率いる。同時に立川市に「Punto Ventos」をオープンし、最新の解析機材や動画を用いて、初心者からシリアスレーサーまで幅広い層を対象としたスキルアップのためのカウンセリングを行っている。

東京ヴェントス
Punto Ventos


ウェア協力:アソス

text:Yuya.Yamamoto, Gakuto.Fujiwara
photo:Makoto.AYANO
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