リドレー本社工場を見学した「三船雅彦さんと行くツール・デ・フランドルツアー」一行は、今度はリドレー社の特別な計らいにより同社がバイクスポンサーをつとめるロット・べリソルのチーム本拠地を見学できることになった。これは前日に決まった嬉しいサプライズだ。



サービスコース内部 ちょっと薄暗くて広大な倉庫然とした空間だサービスコース内部 ちょっと薄暗くて広大な倉庫然とした空間だ
チーム本拠地は”サービスコース”と呼ばれ、チームの事務所が置かれた、機材倉庫を兼ねた施設のことだ。機材スポーツであるプロサイクリングの世界では、バイク、ホイール、パーツは言うに及ばず、チームで使用するチームカーやトラック、選手運搬用のバスなど、活動に必要な機材は膨大な量になる。
世界最高峰のカテゴリーであるUCIワールドツアーチームであるロット・ベリソルともなれば、世界屈指の物資量になることは想像に難くない。

ロット・ベリソルのサービスコース外観。倉庫然とした巨大な建物だロット・ベリソルのサービスコース外観。倉庫然とした巨大な建物だ ロット・ベリソルのチームカーはちょっとレトロなデザインだロット・ベリソルのチームカーはちょっとレトロなデザインだ


ロット・ベリソルのサービスコースはリドレー本社からバスに乗ってほどなくのところにあった。バスが到着したのは、意外にも大型のショッピングセンターが入った施設に棟続きになった大きな倉庫のような建物。敷地にはチームカーが並んで停められているためすぐにわかったが、もしそれがなかったらただの倉庫のようなシンプルな外観だ。

チームスタッフと話し込む三船雅彦さん。かつての僚友だそうだチームスタッフと話し込む三船雅彦さん。かつての僚友だそうだ ロット・ベリソルのチームカーに施されたデザインは少々レトロな感じ。これは今現存するチームの中でもっとも長い同チームへのスポンサー歴を現したものだそうだ。

チームカーの写真を皆が撮っていると、そのクルマの窓が開き、「ヨ~、マッサ!」と声が掛かる。三船雅彦さんも懐かしげに彼の名を呼び、話し込んでいる。そのチーム助監督は聞けばかつて三船さんが一緒のチームで走った元選手だという。

入り口にトロフィーが飾られたチーム事務所の脇を抜け、通されたのはまさに倉庫のような空間。しかもそこは観光バスを改造した大型のチームバスやチームトラックが複数台、そのほかのチーム車両に加えて、膨大な数の自転車や必要な機材・資材を収容できる広大な空間だ。

薄暗いなか、遠くの奥のスペースで作業をしているメカニックたちの姿が見える。中に入り、目的のチームバイク目指し駆けていく一行。奥のメカニックたちのひとりがまた三船さんに気づいて声をかけた。この人も元選手時代に一緒だった旧知の仲のようだ。三船さんの顔の広さを思い知ることになる。

チームのチーフメカニック。メカニシャンに指示を出しながらスピーディにマシンを組み上げていくチームのチーフメカニック。メカニシャンに指示を出しながらスピーディにマシンを組み上げていく
メカニシャンたちはちょうど翌週の日曜に開催されるパリ〜ルーベ用のバイクのセッティングに入っていた。ロンド・ファン・フラーンデレンが2日後に控えているとあって、主要なレース機材はチームとともにすでに滞在先へと出払ってしまっているという。

組付けを待つケーブルやパーツが雑然と並んでいた組付けを待つケーブルやパーツが雑然と並んでいた 三船さんのかつての僚友がここにも。フラマン語で話し込んでいるのもさすが三船さんのかつての僚友がここにも。フラマン語で話し込んでいるのもさすが


しかしチーム一の勝利量産男、アンドレ・グライペルのバイクは彼が直前のレースで落車して負傷したため、そのほとんどが倉庫内に置かれていた。彼のバイクのトレードマークであるゴリラのイラストのバイクを手に取れる近さで見物できて、皆嬉しそうだ。

シーベルグが乗る予定のパリ・ルーベ使用のリドレー・Xナイトシーベルグが乗る予定のパリ・ルーベ使用のリドレー・Xナイト
パリ〜ルーベでは多くの選手がリドレーのフェニックスやヘリウムを駆るが、ちょうどセットアップ中だったマルセル・シーベルグのバイクはシクロクロスバイクのX-ナイトだった。ブレーキにはミニVブレーキを採用し、ハンドル幅が380mmと狭いのが印象に残った。

組付けを待つフレームとパーツ。「プロユース・オンリー」の箱が目に留まる組付けを待つフレームとパーツ。「プロユース・オンリー」の箱が目に留まる ケミカル類はベルギー製のモーガンブルー製品だったケミカル類はベルギー製のモーガンブルー製品だった


黙々とパヴェ用のっスペシャルバイクをセットアップするメカニシャンたち。一刻の間を惜しんで作業しているといった感じだ。

ここではメカニシャンとチームスタッフに訊いたナンバー(数値)で、ワールドツアーチームの規模感や物量、仕事量を想像してみて欲しい。



■ロット・ベリソルのサービスコースが保管する資材量

選手一人あたりが使用するレースバイク選手たちのバイクが整然と並べられていた。レースに出払っているのでこれでも少ないほうだという選手たちのバイクが整然と並べられていた。レースに出払っているのでこれでも少ないほうだという ホイールのラック。レース期間ということで多くが練習ホイールだったホイールのラック。レース期間ということで多くが練習ホイールだった
(選手が自己保管する練習用バイクやスペアバイク除く)
3台 リドレー・ヘリウム、ノア、フェニックス
TTバイク 1台 リドレー・ディーン

選手たちが年間で使用するレースバイクとタイヤの数
レース用バイクの総台数 104
タイヤの数 一人あたり200ペア 400本
チューブ本数 1000本
予備フレームの常時在庫数 15本

車両
バス3台、トラック2台、ステーションワゴン(シュコダ・オクタヴィア:6台、シュコダ・シュパーブ3台、フォルクスワーゲン・カラベル(8人乗りバン)3台、カミオネット(中型のバン)2台
合計24台

スタッフ数ヘルメットが並ぶ棚。レース期間ということで多くが出払っていたヘルメットが並ぶ棚。レース期間ということで多くが出払っていた ジロ・デ・イタリア、ミラノサンレモなどチームカーに貼るステッカー。記念のようだジロ・デ・イタリア、ミラノサンレモなどチームカーに貼るステッカー。記念のようだ
選手 26人
ソワニエ (さまざまな役割をこなすスタッフ)10人
メカニック 9人
ディレクタースポルティフ(監督または助監督)6人
ゼネラルマネージャー 1人
VIPドライバー(スポンサー用運転手)3人
パーソナルアドミニストレータ(庶務係)1人
オステオパシスト(療法士)6人

ウェア&シューズ&ヘルメットの数量
半袖ジャージ 400着
長袖ジャージ 400着
キャップ1,000個 プレゼント用も
ヘルメット 100個
TTヘルメット 30個
ボトル 25,000本
シューズ(ペア) 90足

食料・飲料の消費量
エナジーバー(固形) 14,000本
エナジージェル 12,000個
ボトル用エナジードリンク粉末 230kg
ソーダ(アフター用缶ドリンク)4,000本
ミネラルウォーター(1.5リットルボトル) 9,000本




■バイクをセットアップしてブルージュ近郊をサイクリング

チーム本拠を見学して興奮冷めやらぬ一行は、今日の最終目的地であるブルージュのホテルに到着。市街地のど真ん中、ロンド・ファン・フラーンデレンのスタート地点であるマルクト広場にほど近い好立地のホテルだ。

ブルージュからバイクレーンを通って北海へ向かう一行ブルージュからバイクレーンを通って北海へ向かう一行 走りやすいバイクレーンが整備されている走りやすいバイクレーンが整備されている

リドレー本社で借りたレンタルバイクをセットアップして、試走へ出かけることに。三船さんの案内でブルージュから北へ向かう。
ブルージュ近郊には自転車専用のサイクリングロードが縦横無尽に張り巡らされており、バイクレーンを通って北海沿いのゼーブルッヘ港まで出ることができた。

30分も走れば田舎道へ入る。牧草地が広がるのどかな風景30分も走れば田舎道へ入る。牧草地が広がるのどかな風景 新婚旅行にこのツアーを選んだ新婚カップルさんも仲良く走る新婚旅行にこのツアーを選んだ新婚カップルさんも仲良く走る

バイクレーンには自転車マークと、サイクリングコースの道順が番号で示されているバイクレーンには自転車マークと、サイクリングコースの道順が番号で示されている 運河沿いを走る三船さん。ここも快適なサイクリングロードだ運河沿いを走る三船さん。ここも快適なサイクリングロードだ

海を眺めた一行は、運河に沿ってブルージュへと戻る。シャワーを浴びたら、ユネスコ世界遺産である旧市街へと出かける。すでにマルクト広場は日曜のロンド・ファン・フラーンデレンへの準備を着々と進めている。
土曜日の市民レース「ロンド・ファン・フラーンデレン・シクロ」に出場する参加者たちは、景気付けにマルクト広場のレストランへ。なんとリドレー社に食事のご招待を頂いたのだ。ベルギービールに酔いしれつつ、名物料理のムール貝や牛肉の煮込み料理を食べて明日に備えるのだった。

ベルギーといえばやっぱりビール。濃くて味わい深いテイストを堪能ベルギーといえばやっぱりビール。濃くて味わい深いテイストを堪能 マルクト広場のレストランで明日の健闘を祈り、皆で乾杯!マルクト広場のレストランで明日の健闘を祈り、皆で乾杯!

夜景の美しいブルージュ旧市街。世界遺産に登録されるのも納得夜景の美しいブルージュ旧市街。世界遺産に登録されるのも納得

次回はロンド・ファン・フラーンデレン市民レース参加レポートへ続く。

photo&text:Makoto.AYANO

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