今シーズン、チーム右京と湘南ベルマーレの2チームに供給されることが決まっており、国内レースでも目にする機会が増えるであろうTOKENのホイール。新形状のリムを採用することで、大幅に性能を向上させた新世代のTOKENカーボンホイールラインナップの中でも、もっともオールラウンドに使えるであろうT55をインプレッション。



TOKEN T55 (c)MakotoAYANO/cyclowired.jpTOKEN T55 (c)MakotoAYANO/cyclowired.jp (c)MakotoAYANO/cyclowired.jp
ヘッドパーツや、アルミプーリー、ボトムブラケットなどの回転系パーツ、アルミやチタンなどを駆使した軽量パーツに強い台湾の総合パーツブランドがTOKEN(トーケン)。2014年モデルでは、ホイールラインナップが大幅に進化を遂げ、有名ホイールブランドに肩を並べるまでになったといえよう。

ホイールを構成するリム・ハブ・スポークの3要素全てにおいて、市場にあるカーボンホイールの中でも一線を争うことができるレベルに到達していることが、2014年TOKENカーボンホイールラインナップの強み。その中でも今回インプレッションを行う55mmハイトの「T55」は、近年流行のワイドリムを採用したフルカーボンチューブラーホイールだ。

ニップルの力がかかる個所はマルチディレクショナルカーボンで補強されるニップルの力がかかる個所はマルチディレクショナルカーボンで補強される 55mmのハイトをもつカーボンリムは高い空力性能を発揮する55mmのハイトをもつカーボンリムは高い空力性能を発揮する

細身ながらもワイドフランジで横剛性を確保する設計のフロントハブ細身ながらもワイドフランジで横剛性を確保する設計のフロントハブ ドライブ側とノンドライブ側で2:1の穴数となるリアハブドライブ側とノンドライブ側で2:1の穴数となるリアハブ


25mm幅・55mmハイトのカーボンリムは見た目のボリュームとは裏腹に470gと軽量に仕上げられている。ハイプロファイルリムならではの平坦巡航の良さはもちろん、アップダウンでも他のホイールに引けを取らない活躍ができる。ワイドリムの採用によって、横風にも強いデザインとなっているため、よりオールラウンドに活躍できるようになるだろう。

TBT(ティラミックベアリングテクノロジー)TBT(ティラミックベアリングテクノロジー) (c)tokencycling.com回転性能の要ともなるハブには、TOKENが誇るTBT(ティラミックベアリングテクノロジー)を採用し、低フリクション化を実現。TBTとは、通常のセラミックボールを採用したカートリッジベアリングというだけでなく、ベアリングレースとコーンをチタンコーティングすることで、摺動抵抗を通常のベアリングから約40%減少させる技術。TOKENのヘッドセットや、ボトムブラケットにも採用されるほど、耐久性にも優れており、長い間高い回転性能を味わうことができることも特長だ。

スポークには名だたるホイールメーカーが採用する、サピムのCX-RAYのストレートスポークモデルを使用。素材ではなく、スポークパターンにもこだわっている。リアホイールにはドライブサイド16本、ノンドライブサイド8本と左右で異なる数のスポークを配することで左右のスポークテンションの差を是正し、駆動効率の向上を図っている。

ニップルは軽量なアルミ製でホイール外周部の軽量化に貢献。また外出しとされ、整備性の良さにも配慮されていることからも実戦での使いやすさにこだわったホイールと言えよう。

それでは早速インプレッションに移ろう。



―インプレッション

「カーボンディープホイールとして理想のスペックは全て網羅している」鈴木卓史(スポーツバイクファクトリー北浦和スズキ)

かかりが良く、レースで使ってもまず不満が出ることのなさそうな高いレベルのホイールですね。ディープリムであるため、ゼロ発進こそ得意ではないですが、いったんスピードに乗ってしまえば気持ちよく進んでいくホイールです。

全体的に剛性は高いです。2:1のスポークアレンジメントが実現した高いスポークテンションと、それを許容する高い強度を持つリムが生み出す剛性のおかげで、横方向へのヨレもなく、まっすぐ進んでいくと同時に、かかりの良いホイールに仕上がっています。

「カーボンディープホイールとして理想のスペックは全て網羅している」鈴木卓史(スポーツバイクファクトリー北浦和スズキ)「カーボンディープホイールとして理想のスペックは全て網羅している」鈴木卓史(スポーツバイクファクトリー北浦和スズキ)
コーナーリングでは、少し意識的に車体を倒す必要があるのですが、50mm程度のリムハイトを持つホイールとしては標準的な範囲に収まっています。横剛性はしっかりしているのでコーナーの中で変によれるような感覚はなく、曲がるきっかけを与えてあげれば素直に曲がっていくホイールです。

上りに関しては、ディープリム特有のスポークの短さやリム剛性の高さからくるかかりのよさで、勢いで踏めてしまうような短めの上りであれば、気持ちよくこなせます。長い上りになれば、より軽量なリムを使ったハイトの低いホイールに分がありますが、決して上れないというわけではありません。

セラミックベアリングを使っているためか、転がりは非常に軽く感じました。フリーの回転も特に渋いということはなく、好感が持てます。振動吸収性については、ホイールではなくタイヤで対応するのがよいでしょう。25cの太めのタイヤや、ラテックスチューブを使ったタイヤを使用することでバランスの良い乗り心地になると感じます。

「実業団などでシリアスにレースをする人でも何ら不満の出ないホイール」鈴木卓史(スポーツバイクファクトリー北浦和スズキ)「実業団などでシリアスにレースをする人でも何ら不満の出ないホイール」鈴木卓史(スポーツバイクファクトリー北浦和スズキ) 「よりよい製品を作ろうという姿勢が伝わってくる」鈴木卓史(スポーツバイクファクトリー北浦和スズキ)「よりよい製品を作ろうという姿勢が伝わってくる」鈴木卓史(スポーツバイクファクトリー北浦和スズキ) 現在、カーボンディープホイールで考えられる理想のスペックは全て網羅しているといって良いでしょう。

セラミックベアリング、ワイドリム、外出しニップル、2:1のスポーク配置、リアハブのハイローフランジといった、ホイールを良くするための工夫は余すところなく持っているため、有名ホイールブランドと並べて戦っていけるレベルの性能を有しています。実業団などでシリアスにレースをする人でも何ら不満の出ないホイールでしょう。

現状、ホイールブランドとしてのTOKENの認知度はあまり高くないでしょうし、その性能を疑問視するユーザーも多いかもしれませんが、価格と性能のバランスでみれば非常に優秀ですね。

高い性能を持っているので、どんな人でも使って不満が出ることはありませんが、特に平地が好きな人、ディープリムの見た目にこだわる人、人と同じホイールを使いたくない人にはおすすめのホイールです。

一方で、最新スペックを身にまとった優等生であるがゆえに突出した性能はありません。例えば重量を犠牲にしても平地に特化していたり、登りだけを考え軽さに特化していたりと「特徴」を求める人にとっては魅力を感じないかもしれません。

ただ、グラフィックひとつとっても、ただロゴを張り付けるだけでなくグラデーションを入れてみたりと、よりよい製品を作ろうという姿勢が伝わってくるため、今後も注目していきたいブランドですね。

TOKEN T55
サイズ:700c
リム形式:チューブラー
リ ム:55mm エアロプロファイル カーボンリム
ハ ブ:TK198TBT Arsenal Hub、F20/R24H、ティラミックベアリング
対応スプロケット:シマノ11S/スラム
スポーク:サピム CX-RAY エアロブラック
ニップル:アルミ
平均重量:1,414g(前後セット)
価 格:190,000円(税抜・前後セット)



インプレライダーのプロフィール

鈴木卓史(スポーツバイクファクトリー北浦和スズキ)鈴木卓史(スポーツバイクファクトリー北浦和スズキ) 鈴木卓史(スポーツバイクファクトリー北浦和スズキ)

スポーツバイクファクトリー北浦和スズキの店長兼代表取締役を務める。過去には大手自転車ショップで修行を積んだ後、独立し現在の北浦和に店を構える。週末はショップのお客さんとのライドやトライアスロンに力を入れている。ショップでは個人のポジションやフィッティングを追求すると同時に、ツーリングなどのイベントを開催することで走る場を提供し、ユーザーに満足してもらうことを第一に考えている。「買ってもらった方に自転車を続けてもらう」ことをモットーに魅力あるバイクライフを提案する日々を送っている。

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スポーツバイクファクトリー北浦和スズキ


ウェア協力:reric

text:Naoki.YASUOKA
photo:Makoto.AYANAO

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