パリ〜ニース(UCIワールドツアー)の締めくくりはコートダジュールの玄関口ニース。美しい地中海を眺める街で、いくつもの山岳を越えた選手たちがゴールスプリントを繰り広げた。フランスチャンピオンがステージ優勝を掴み、コロンビアの復権を唱えるクライマーが総合優勝に輝いた。



コートダジュールらしい岩肌と岩のガードレールコートダジュールらしい岩肌と岩のガードレール photo:Tim de Waele
パリ〜ニース2014第8ステージパリ〜ニース2014第8ステージ image:A.S.O.切り立った崖を繋ぐようにして架かる橋切り立った崖を繋ぐようにして架かる橋 photo:Tim de Waele



昨年まで定番化していたエズ峠の山岳個人タイムトライアルは姿を消し、代わってニースの海岸通「プロムナード・デ・ザングレ(イギリス人の遊歩道)」にフィニッシュする山岳ステージが復活した。ニースの内陸部に広がる切り立った山々に挑み、標高600m級の峠を繋いで行く128km。後半にかけて2つの1級山岳を越え、高速ダウンヒルを経てプロムナード・デ・ザングレに至る。獲得標高差は2200mほどだが、登りと下りしかないようなコースだ。

プロムナード・デ・ザングレを進むプロトンプロムナード・デ・ザングレを進むプロトン photo:Tim de Waele19km地点のスプリントポイントまでレースを支配したのは、ジョン・デゲンコルブ(ドイツ、ジャイアント・シマノ)のマイヨヴェール(ポイント賞)を確定させたいジャイアント・シマノ。オランダチームはしっかりとデゲンコルブを先頭通過させることに成功する。その後ようやく逃げの許可が下りた。

17名の逃げグループを率いるジェローム・クザン(フランス、ユーロップカー)17名の逃げグループを率いるジェローム・クザン(フランス、ユーロップカー) photo:Tim de Waeleシャビエル・ザンディオ(スペイン、チームスカイ)やジェローム・ピノー(フランス、IAMサイクリング)を含む17名の巨大な逃げが形成されたものの、レース距離の短さからタイム差は2分40秒で頭打ち。勝負が動いたのはゴール41km手前の1級山岳ペイユ峠だった。

内陸部にあるいくつもの峠を越えて行く内陸部にあるいくつもの峠を越えて行く photo:Tim de Waele登坂距離6.6km/平均勾配6.8%の登りでメイン集団からヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)がアタックを仕掛け、ウィルコ・ケルデルマン(オランダ、ベルキン)らとともに先頭グループに合流。しかしAG2Rラモンディアール率いるメイン集団がこれを許さず、頂上通過後のダウンヒルでニーバリらを飲み込む。

フランク・シュレク(ルクセンブルク、トレックファクトリーレーシング)とともに飛び出したサイモン・スピラック(スロベニア、カチューシャ)フランク・シュレク(ルクセンブルク、トレックファクトリーレーシング)とともに飛び出したサイモン・スピラック(スロベニア、カチューシャ) photo:Tim de Waeleその後も不安定な状態は続き、ユーリ・トロフィモフ(ロシア、カチューシャ)が単独先行した状態で最後の1級山岳エズ峠(登坂距離4.3km/平均勾配6.7%)に差し掛かった。

ゴールスプリントを繰り広げるアルテュール・ヴィショ(フランス、FDJ.fr)ゴールスプリントを繰り広げるアルテュール・ヴィショ(フランス、FDJ.fr) photo:Tim de Waele先頭トロフィモフが吸収されると、ダビ・ロペスガルシア(スペイン、チームスカイ)らのアタックを切っ掛けに集団は活性化。それまで積極的に動いたニーバリや総合3位ゼネク・スティバル(チェコ、オメガファーマ・クイックステップ)は脱落してしまう。

フランスチャンピオンのアルテュール・ヴィショ(フランス、FDJ.fr)が勝利フランスチャンピオンのアルテュール・ヴィショ(フランス、FDJ.fr)が勝利 photo:Tim de Waeleすると頂上まで距離を残してフランク・シュレク(ルクセンブルク、トレックファクトリーレーシング)が飛び出し、サイモン・スピラック(スロベニア、カチューシャ)がジョイン。2人はそのままニースに向かう高速ダウンヒルに差し掛かった。

モビスターやランプレ・メリダ、AG2Rラモンディアールが率いるメイン集団を振り切ってニースの街に差し掛かるシュレクとスピラック。残り1kmを切ってシュレクが独走を開始する。シュレクを視界に捉えたメイン集団の中では落車が発生し、総合2位ルイ・コスタ(ポルトガル、ランプレ・メリダ)らが巻き込まれた。

落車を免れた集団先頭ではスプリントが始まり、ヴィショやホセホアキン・ロハス(スペイン、モビスター)らが先頭シュレクを残り50mでパス。トリコロール(フランスチャンピオンジャージ)を着るヴィショがロハスとの一騎打ちを制した。

ゴール14km手前のスプリントポイントでボーナスタイム1秒を獲得し、フィニッシュでボーナスタイム10秒を得たヴィショは、ステージ優勝と総合表彰台を同時にゲット。ヴィショは「トリコロールジャージでの初勝利。パリ〜ニースのクイーンステージでそれを達成したのだから素晴らしい」と喜ぶ。

2010年、プロデビュー戦ツアー・ダウンアンダーに出場した際に、オーストラリアの自転車ファンが考案した「最も知名度が低く、最もサラリーが安そうなネオプロを驚かすサプライズ企画」で白羽の矢が立ち、手荒い歓迎を受けたヴィショも今年でプロ5年目。2012年にはクリテリウム・ドゥ・ドーフィネでステージ優勝を飾り、昨年フランス選手権ロードで優勝。フランスを代表する選手に成長を遂げた。「スプリンター向きのコースに変更されたとは言え、ミラノ〜サンレモに集中している。アルデンヌクラシックでもこの調子を維持したいと思う」とコメントしている。

そして総合優勝はベタンクールの手に。ステージ2勝に加えて、安定したチーム力と山岳力で総合リードを最後まで守り抜いた。南米出身選手によるパリ〜ニース制覇は史上初めて。

「こんな格式あるレースで勝利し、コロンビアの復権を見せつけることが出来て誇りに思う。昨年のジロ総合5位よりも深みのある勝利だ。AG2Rの強さも同時に見せつけることが出来た。今シーズンはこれからクラシックを走り、ツール・ド・フランスに向けて仕上げて行きたい」と、第72代チャンピオンは語る。3月16日付けのUCIワールドツアーランキングでベタンクールは首位に立った。

選手コメントはレース公式サイトより。



残り500mで落車したルイ・コスタ(ポルトガル、ランプレ・メリダ)が肩を落としてゴール残り500mで落車したルイ・コスタ(ポルトガル、ランプレ・メリダ)が肩を落としてゴール photo:Tim de Waele総合優勝に輝いたカルロスアルベルト・ベタンクール(コロンビア、AG2Rラモンディアール)総合優勝に輝いたカルロスアルベルト・ベタンクール(コロンビア、AG2Rラモンディアール) photo:Tim de Waele



パリ〜ニース2014第8ステージ結果
1位 アルテュール・ヴィショ(フランス、FDJ.fr)
2位 ホセホアキン・ロハス(スペイン、モビスター)
3位 シリル・ゴティエ(フランス、ユーロップカー)
4位 ダミアーノ・カルーゾ(イタリア、キャノンデール)
5位 ウィルコ・ケルデルマン(オランダ、ベルキン)
6位 フランク・シュレク(ルクセンブルク、トレックファクトリーレーシング)
7位 トムイェルテ・スラグテル(オランダ、ガーミン・シャープ)
8位 カルロスアルベルト・ベタンクール(コロンビア、AG2Rラモンディアール)
9位 ジョージ・ベネット(ニュージーランド、キャノンデール)
10位 エドゥアルド・セプルベダ(アルゼンチン、ブルターニュ・セシェ)
3h06'56"











個人総合成績
1位 カルロスアルベルト・ベタンクール(コロンビア、AG2Rラモンディアール)
2位 ルイ・コスタ(ポルトガル、ランプレ・メリダ)
3位 アルテュール・ヴィショ(フランス、FDJ.fr)
4位 ホセホアキン・ロハス(スペイン、モビスター)
5位 ヤコブ・フグルサング(デンマーク、アスタナ)
6位 シリル・ゴティエ(フランス、ユーロップカー)
7位 ステファン・デニフル(オーストリア、IAMサイクリング)
8位 サイモン・スピラック(スロベニア、カチューシャ)
9位 ペーター・ベリトス(スロバキア、BMCレーシング)
10位 トニー・ギャロパン(フランス、ロット・ベリソル)
35h11'45"
+14"
+20"
+21"
+29"
+31"
+35"
+36"
+39"
+41"



ポイント賞
ジョン・デゲンコルブ(ドイツ、ジャイアント・シマノ)

山岳賞
ピム・リヒハルト(オランダ、ロット・ベリソル)

ヤングライダー賞
カルロスアルベルト・ベタンクール(コロンビア、AG2Rラモンディアール)

チーム総合成績
モビスター

text:Kei Tsuji
photo:Tim de Waele